Append Life EX4? 覚えていたい。
「あ、出番かな?」
「あの、一人で喋るのが寂しいんだ。君も来て欲しい。」
「呼んだ?」
「呼んだ。だって、一人語りって、こういう時に不便だから。」
「やる前から諦めるクセ、いい加減、治ってないね。性格的なものなんだね。」
「ところで、何を話すの?」
「まあ、彼らの生活を脅かすもの、それが、絶対的な神。」
「っても、今頑張って、話を考えながら、キーボード打ってるじゃん。それで十分じゃないの?」
「実は、神はやってみたいことがある。それは、作中に登場している、4人の女性を、一同に集めてみたいと思った。」
「あ、解説回ってやつ?それとも、これっきりのネタ回ってやつだよね。」
「さて、問題は、どうやってその意識を繋いで、4人の空間を作り出そうか。前回、それで大目玉を食らったもんだから、今度は君に集めて欲しいんだ。」
「それって、私の過去の人を二人と、彼と関わった女性で、かつ好意を抱いている人。残念ながら、一人は時空を歪め、現実世界とリンクしてるので、彼女は呼べないよ。」
「だから4人。少なくとも、全員、何かしらの形で恋心を抱いたことのある人で、好きに話してもらおうってわけ。」
「やだな。意識をつなげるってことは、絶対起きたときに、泣いてるってアレだよね。」
「実体験のある人は、さすがに分かってるね。」
私は、もう呼ばれるはずのない声に、再び呼び出された。
う~ん、あれ?なんか、向こうで何人か話をしてる。こんなこと、今までなかった。
「知ってるんだぞ、プレオトーサン。説明してよ?」
「久しぶり。君を泣かせてしまったことは、心から謝罪するよ。」
「まあ、それはいいけど、あちらの人たちは?あ、一人は分かる。私のおねえちゃん。」
「あとの二人は、中学2年生の、彼の話し友達、そしてもうひとりは、高校時代に彼が恋をした、漫画貸しの彼女だ。」
「...で?」
「それはなに?」
「イマイチ事情がつかめないんだよね。どうして、私達が集められたのか?」
「なに、簡単なことだよ。君の言う、オトーサンを4人揃ってダメ出しする回だ。」
「オトーサンは、それで何か知ってるの?」
「彼に伝わるわけないでしょ?ま、もっとも、君が能力を使えば、人一人ぐらいは送り込むことも出来るかもしれないけど、精神体と分離することになって、現実の君の肉体に負担が大きい。僕たちが精神体となってる理由が分かった?」
「じゃあ、しょうがないね。理解したということで。私も起きて痛いとか嫌だし。」
「では紹介しておこうか、プレオトーサンと呼ばれてる僕と対になる、君の精神体...昔の関係どおり、娘にでもしておく?」
「懐かしい、私が、この世界のあなた。前にも言ったけど、あなたは時空を観測するために、こうやって精神体になっちゃうはず。はずって言うのは、あくまで可能性の話で、あなたが肉体を失ったとして、必ず私になれるとは限らないの。そこは、その、ごめんなさい。」
「う~ん、精神体になると、ナイスバディになるの?」
「あ、これは、あなたの可能性の一つでもある。だけど、こうなることも、多分ないんじゃないかな。」
「ともあれ、4人を集めて、何をするの?」
「ただ、おしゃべりに花を咲かせるのがいいんじゃないかな。君達には、彼という共通項がある。知らない彼を知っておくのも、今のうちの勉強だと思うよ。」
「ちなみに、いつもはあなた一人だから、この空間では裸だったと思うんだけど、今回、私がいるので、頑張ってみんなに白いワンピースを着てもらいました。これも、精神体から作ってるから、自分の意識で脱ぐことも出来るよ。」
「それ、使うことあるのかな?ま、いいや。私も混ざろうかな。」
椅子が4つ、向かい合わせに、四隅に置かれている。
「私、なんでこんなところにいるのかしら?あ、アンタもいる。」
「そうだよ。おねえちゃん。これは夢の出来事だから、すぐに忘れると思う。」
「あ、久しぶり。元気にしてる?」
「元気よ。あなたも元気?」
「私はどうだろう。ちょっと疲れてるかも。」
「あれ、あの、その...。」
「落ち着いてください。あなたは、昔オトーサンに告白された高校の同級生の方ですよね?」
「はい、え、皆さんも、あの人に関係ある人なんですか?」
「大有りよ。私が妻、そしてこの娘が娘、そして、私の親友。」
「親友って紹介されるの、なんか恥ずかしいね。あ、私は、正確には関係してるけど、彼を好きになっていたわけではないの。まあ、多少恋心を持ってたけどね。」
「共犯関係なんだっけ?」
「よく覚えてるね。それぐらいの関係。」
「彼って、逮捕されたりしたんですか?」
「真面目に受け取られちゃうと困るなぁ。そういう感じのお友達かな。」
「ちょうどいいわ。あの人の知らない過去の話を、穴埋めしていこうかしら。」
「あ、一応。多分、私達がここで会ったことは、おそらく記憶に残らないです。そして、起きたときには、涙を流しています。」
「どうしてわかるの?」
「それは、私が被験者だったからです。これで信じてもらえたかな。」
「あなたの真剣な目、事実だと信じます。」
「二人は?」
「ま、ちょっとした運命の巡り合わせみたいなものよね。」
「そうそう。楽しく話が出来れば、それでいいんじゃない。」
ここに集まっている人間は、彼とは、懇意の友人、妻、娘、そして過去の片思いという関係だ。
妻、つまりおねえちゃんは、説明不要だろう。最近、恋焦がれる乙女になりつつある、頼りになる女性だ。相変わらずのショートボブスタイルに前髪ぱっつん。今の白いワンピースを着ているおねえちゃんは、まさに美少女そのものに近い。
懇意の友人、私達の出会う前、中2の頃に話していたという。私の記憶では、その頃の面影は残っているけど、40代できれいめのお姉さんと言ったら、こういう人を言うのだと思う。若干長めで、こげ茶色のような髪、7割ぐらい前髪で隠しているけど、優しそうな眼差しをしている。白いワンピースをまとった彼女はスリムで、もし、順当におねえちゃんが年齢を重ねて行ったなら、もう少しキャリアウーマン的な空気を出しちゃうんだろうけど、この人の空気は、すごく落ち着いて、物事を俯瞰出来ている感じがする。私に姉がいるのなら、この人になって欲しいと思う。
そして、過去の片思いだった人は、私の目からみても、理想の母親像をしている。雰囲気そのものに包容力があり、やや控えめな印象はあるものの、黒髪のロングヘアで、真ん中分けしたその顔には、慈愛に満ちた、芯の強そうな顔をしている。そして、白いワンピース越しにもわかる、40代独特の豊満な体と言ったらいいんだろうか。年齢を積み重ねた色気がある。こんな人がもし母親だったら、自慢の母に出来ると思う。
「そもそも、私達があの人に抱いているイメージって、多分一致してないですよね?」
「そうかな?落差の激しい人だと思ってるけど。」
「それは、私達が一緒に暮らしてるからで、二人はなんとなく違うイメージがあるんじゃないですか?」
「そうだね。私は、話し相手としての彼が好きだったけど、別に異性って感じではなかったかな。」
「その、私は、すごくカッコいい人だと思ってました。私をかばってくれたり、最後まで諦めないでいてくれた。それだけで、私は嬉しかったんです。」
「あなたの話は、あの人に聞いたことがあるけど、今の彼とはちょっと違うイメージよね。」
「高校生の彼は、もっと不器用で自信のなかった私に、諦めないことを教えてくれた人です。おかげで、高校も1年留年したけど、卒業できました。」
「オトーサンの話では、その後は聞いたことなかったんですけど、今は幸せなんですよね。」
「今は、別の人と幸せに暮らしています。どことなく、彼に雰囲気が似てるし、すごくあったかい人なんです。」
「あなたが幸せだってこと、あの人に伝えてあげたいわね。でも、残念だけど、覚えてないんじゃね。」
「覚えていてもらうには、恥ずかしいです。」
「そっか。カッコいい彼。ちょっと見てみたい気がする。」
「え、それを言っちゃう?大丈夫?」
「だって、私は今でも、男性としての彼ってイメージがないの。それは、彼の発する空気がそう思わせるだけで、実は私も、彼を好きになってるのかもね。」
「オトーサンってカッコいいとは思わないけど、親として、彼氏として、頑張ってるところが好きだよ。」
「そうそう。そこは、本妻である、あなたの意見も聞かなくちゃ。」
「私、う~ん、私は彼をずっと好きでいたわけじゃないの。それは、年齢によるものかもしれないし、口約束をただ守ってただけなのかもしれない。だけど、この人は支えて行かないとダメって、私が思っちゃったのよね。ある意味、結婚してからのほうが、ちょっとときめいちゃったりするし。」
「イメージとちょっと違いますけど、彼のこと、本当に好きなんですね。話し方でわかります。」
「やっぱり、愛の力は偉大だね。」
「む~、あんまりカッコいいと、良さがバレる気がする。」
「アンタが心配することじゃないでしょ?それとも、娘としては、心配?」
「あ、そうか、娘ちゃんがどういう立ち位置なのか、私達にはよくわからないね。」
「そう言えば、お二人って、そっくりですよね。本当に親子なんですか?」
「秘密にする必要もないんで、私から説明しますけど、私はもうひとりのおねえちゃんなんです。」
「ん...?」
「あなただけ若い理由が、ちょっとわからないです。」
「う~ん、言葉足らずだったかもしれない。この娘は、20年前からどういうわけかタイムスリップに巻き込まれて、この時代に来た人間なの。だから、17歳ぐらいまでの記憶は、まったく同じものを持っているの。私とこの娘の熱量の差があるとすれば、私と彼が離れていた時間の差ということになる。そして、この娘は、あの人の娘という立場に敢えて収まっていると言えばいいのかな。もちろん、血の繋がりどころか、私とDNAは100%一緒。本当は、この時代にいちゃいけない娘なの。」
「なんか、そう言われると、ちょっと居づらくな。」
「でも、私の知ってる、昔のあなたって、こんな娘だったね。今は、少しおしゃれしてるのかな。無事に溶け込めたんだね。」
「うらやましいな。好きな人の娘って立場には、私達には絶対になれない立ち位置です。」
「というわけで、一応、私とあの人が親代わりということで、この娘と生活してるって感じかな。」
「あらためて聞くと、私ってやっぱりおかしいですよね。」
「自分の気持ちに正直になっているのは、おかしいと思いません。彼がそれを受け入れてるなら、娘として甘えてもいいと思いますよ。」
「ははは、なんか、恥ずかしい。」
「可愛いね。若いうちは、色々恥ずかしいこともしなくちゃ。」
「ま、それで、恥ずかしいことしちゃってるから、色々ややこしいのよ。」
「来るもの拒まず、去るもの追わず。流れに身を任せるような生き方だもんね。普通は、そういう人ってあんまり好かれないんだけどね。」
「ということは、女性として、男女の関係もあるってことですよね?」
「罪悪感が半端ないな。そういうことです。」
「やっぱり、男の人なんだね。若い人のほうが、盛り上がるのかな。」
「歳を取るって、意外と女性には残酷ですからね。でも、想像つかないな。彼に抱かれる覚悟、私に出来たでしょうか。」
「あなたは高校時代の彼を知っているのよね。その頃、そういう妄想とか、してたり?」
「思わなかったです。私は、彼と話すことが楽しかった。彼をもっと知りたかった。だけど、彼は私を待ってくれたのに、私が自分から、離れてしまったんです。だから、その先を考えることは出来なかったです。その、私の旦那様が、私の初めての人だったので。」
「イメージに違わないですね。こんなにいい人を待てなかったオトーサンが悪い気がするね。」
「それが、彼の優しいところじゃない?さっきも言ったけど、来るもの拒まず。だけど、本人に去る意思があったら、それを止めることはしない。ある面では、残酷であり、ある面では救いでもある。私達も、年齢が上がるにつれて、そういうことが理解出来るようになってしまったんだ。娘ちゃんがわからないのも、理解できるよ。」
「ありがとうございます。嬉しいな。なんか、新しいおねえちゃんが出来たみたい。」
「もっと懐いてくれていいんだよ。本当に、可愛いな。」
「あの、それ、私なんだけど。」
「そう言わずに、優しくしてあげようよ。」
「同じ人は同時に存在出来ないですから、娘さんは、もう娘さんなんです。それでいいじゃないですか。」
「あとで覚えておきなさいよ。まったく。」
「そういえば、本妻の愛情に関しては触れてなかったね。そこのところは、どうなの?」
「う~ん、あの人を測りかねてる、自分がいるのは確かよね。思いつきなのか、本気でそう思ってるのか、実際にわからないことが多かったりする。あの人に試されてるみたいな気持ちで、毎日生活してるかな。」
「高校時代の彼は、もっとまっすぐだったと思うんです。少し、変わりました?」
「ああ、そうか。彼、実は精神を病んているのよ。だから、二人が思ってるイメージとは、かけ離れてるかもしれない。」
「そうなんだ。話してて、そう感じることはなかったけど。色々あったんだよね。」
「真面目なんですよね。だから、病んでしまうことも、分かる気がします。考えてないようで、色々考えてくれる。」
「そうなのよ。性分なのか、それともそういう生き方しか出来ないのか。いつも私達のことを考えてる割に、自分はおざなりになる。いいところだけど、悪いところにもなる。」
「いいところなんだけど、本人が無理していることに気付かないのかな。それぐらい、愛されてるってことだよ。いいんじゃない。」
「その不器用なところ、あの人が素敵な理由なのかもしれない。」
「あれ?そう言えば、今のオトーサンの姿って見たことないですよね?」
「ないです。でも雰囲気は変わってないんだなって分かります。」
「ねぇ、プレオトーサン。ちょっと見せること出来ない?」
「別にいいよ。みんなの真ん中に、今の彼の映像を出してあげる。」
すぐに、なんか不思議な感じで、映像が表示される。あ、なんか寝てるな。
「丸くなりましたね。」
「そう思うよね。私も、最初は間違えたかなって思ったよ。」
「だけど、この人が特異じゃないのは、こういうところなのかもしれない。誰が見ても、人柄がいいのが分かりそうなものよね。」
「オトーサンも、ここ4年で少し痩せてるんだけど、外観が変わらないのはしょうがないのかな。」
「これだと、可愛く見えますね。こんな感じになってるのがわかって、嬉しい。」
「あ、でも、イメージを定着させるには、本人を見ないとダメみたいです。起きてから、どこかでオトーサンと会えると、多分分かるようになります。」
「でも、この前も見て思ったけど、外見がどうであれ、存在感が希薄なのに、いて欲しい時にいる感じはするよね。」
「たまたまそういう時にいるのかもしれませんけど、それは個性ですよね。」
「どうなのかしらね?邪魔だと思うこともなければ、存在が強いわけでもない。だけど、いて欲しい時にいるというのは、的を得てる。頼りにしちゃうわけよね。」
「なるほど。皆さんにはそう思えるんですね。私はずっと一緒にいるから、そんなこと感じなかったな。」
「娘ちゃんの特典だよ。だから、お父さんなんでしょ?」
「家族だと意識が自然に向くと思いますからね。ずっと彼を見てたから、そこにいることが普通だと思ってたんですよ。」
「自分でもよく分からないですけど、ずっと助けてくれて、今もそうしてくれるから、私は今を生きていられるのかもしれません。」
「そう言えば、私はお二人のこと、覚えてますね。前に、私のお店にいらっしゃってましたよね。」
「そうだったかしら。あなたは、今も宇都宮に?」
「はい、宇都宮駅のテナントに努めてます。そっくりだったから、すごくインパクトがあったんです。親子だけど、同一人物だったと知って、すんなり受け入れることが出来ましたし、そういうことなんだと妙に納得してしまったんです。」
「普通はそういうことって絶対にありえないし、私も娘ちゃんには会ったことはない。でも、納得は出来てる。不思議な感じだけど、そういうことだと理解は出来るよ。」
「アンタ、どうしてそんなに存在に説得力があるのかしらね。私も初めて見た時、私がいるって思うと同時に、存在を受け入れることが出来た。持って生まれたものだったら、私も持ってるはずだけど、それはないと思う。」
「いやいや、あなただって、存在がおかしいと思うよ。なんで、娘ちゃんと同じ容姿で、私達と同級生なのか、それがわからないよ。」
「本当ですね。似てるじゃなくて、同じだからっていうのは分かりますけど、こう見ていると、娘さんのほうが、年齢が上に見えたりもします。」
「あ、じゃあ、せっかくだから、おねえちゃんと私、裸にしてもらって、違いをわかってもらおうか。」
私が、自分とおねえちゃんを裸にしたいと思った瞬間、白いワンピースは消えて、文字通り裸になってしまっていた。
「アンタ、なにやってんのよ。アンタはいいかもしれないけど、私はこの身体、コンプレックスだったりするのよ?」
言った手前、私は特に隠したりしないけど、おねえちゃんは見られるのが嫌...まあ、そりゃそうか。それもあって、器用に胸の先と股間を隠している。
「その割と言ってはなんだけど、娘ちゃん、育ちがいいというか、グラビアアイドルでもやってるの?」
「そうなのよねぇ。この娘、私なんだけど、ここ1年ぐらいで急激に身体つきが変わってきちゃって、成長期の子どもよりお金が掛かるわよ。大体、毎月、バストカップが一つずつ大きくなる女性なんで、聞いたことないわよ。」
「そういうけどさぁ、買ってもらった時には特に問題なくても、本当に一ヶ月もすれば、カップに収まらなくなってきちゃうんだもん。でも、今はFカップかな。さすがに成長が止まったみたいだよ。それに、お尻も大きくなってるから、あんまりいいとは思えないんだけどね。」
「娘ちゃんさ、モテるタイプだよね。笑うとあどけないのに、そんなに豊満な身体つきしてたら、男ウケいいでしょ?」
「合コンには行ったことないです。ナンパはたまにされますけど、彼氏がいると言って断ってます。大体、おじさんと付き合ってるって言えば、察してくれるというか。」
「危険な断り方よね。パパ活そのものなのよ。この娘の場合は、別にパパ活ではないけど、相手がおじさんなのは間違いないわけでね。」
「そのおじさんというのは、彼のことですか?」
「そうです。私の彼氏なんです。オトーサンだけど、彼氏。」
「で、その本妻は...、えっ、ちょっと待って、ひいき目に見て、20歳ぐらい?実年齢42歳で、20歳の身体つき?娘ちゃんよりよほど変。」
「でも、清純な美少女ってイメージがありますね。慎ましやかな色気って言ったらおかしいかもしれないですけど、男女問わず好まれる佇まいがありますね。」
「それ、褒めてもらってるのかな?事実、私はスリーサイズが18歳から変わってないし、身長も体重も変わってない。唯一違うとすれば、身体つきが引き締まったところと、ムダ毛は生えてきたところね。18歳の頃なんて、脇も、デリケートゾーンも、毛なんか生えてなかったんだけどね。」
「しっかり処理してるんだ。処理してるにしては、綺麗すぎるけどね。」
「私は幸い、薄いみたいね。それに、若い頃に脱毛サロンで、永久脱毛も試してみたから、今は脇だけなのよ。」
「へぇ~、おねえちゃん、永久脱毛してたんだ。私もしようかな?」
「社会人になってからしなさいよ。バイトで学費をまかないきれないで、洋服関係は私が面倒見てるんだから、自分の身体のケアは、自腹でやりなさいよね。」
「そっか、私の親友って、身体まで18歳だったとは。でも、そんなに成長しなかった私は、親近感湧いちゃうな。」
「羨ましいです。愛する旦那様に、ずっと若いまま、抱かれることが出来るっていいですよ。きっと、彼も喜んでるんでしょうね。」
「そうね。彼は、私のほうが好みみたい。でも、男の本能とやらは、この娘が好きらしいわよ。」
「両極端だもんね。片や、可憐な美少女。片や豊満な愛されボディ。同居してる彼、本当に落ち着いていられる時間あるのかな。」
「まったくですね。両方とも、女性としては憧れる体型ですしね。世の男性からしたら、羨ましい同居生活ですよね。」
同じ女性に見られてるとは言え、私も、おねえちゃんも、やっぱり恥ずかしさは感じるらしく、乳首も立ってきてるし、身体も赤みを帯びてきた。私に至っては、下も少し潤ってきてる。見られるって、快感なんだよね。
「じゃあ、もとの姿に戻ります。ごめんね、おねえちゃん。」
念じると、私達はまた白いワンピース姿。まあ、身体は興奮してるままだから、胸は立ってるけど、じきに収まるよね。それに、ふたりとも気にしてないし。
「あらためて秘密がわかったとはいえども、そこまで変わらない人は、私の知る限りいないです。面影は残るけど、歳は取っていきますし。本当にそのままなんですね。」
「あなたはそういうところは真面目なのね。もっと、ぼっちっぽい感じだと思ってた。あ、悪い意味じゃなくてね。」
「当時は多分そうだったんでしょうね。私もあまりはっきりと物言いが出来ませんでした。あれから20年以上経って、今の感じになれたんです。」
「自分のそういうところを前向きに直していけるのは、うらやましい。バツイチだから、やっぱり後悔はしちゃうんだよね。」
「バツイチなのが、何か悪いことなんでしょうか?」
「あ、擁護してくれてる。私にとって、息子には後悔をしてないけど、その父親と添い遂げようとして、出来なかったのは心残りなんだよ。」
「なんとなく分かる。私も、最初に付き合った人に、半ば捨てられたわけだし、その負い目は、なぜか感じてしまうのよね。」
「あの、意味合いとしてはちょっと語弊があるかもしれませんけど、その方って体目当てで迫ってきたんですか?」
「違うのよね。私が付き合って欲しいって言ったのよ。だけど、だらしない人は、他が完璧であっても、だらしない場面が出てしまう。その付き合ってた人は、女の人に見境ない人だった。多分、体目当てと言えばそうなのかもしれないけど、要は、コレクションの一つって扱いを受けたというわけ。」
「男の人って、やっぱりそういう武勇伝が好きなんだよ。モテ自慢じゃないけど、話したがる人はいるよ。そういう人に引っかかった過去があるんだ。なんか、意外。」
「恋愛脳になってた、とかいう話だったよね。おねえちゃん。」
「思い返せばって話。やっぱり私の見る目がなかったのかなって思って、その後はお付き合い出来るだけの関係は築けなかったのよ。臆病になってた。だから、ある意味、彼の伴侶になれたことが、自分では一番しっくり来てるかな。」
「昔も好きだったんですよね?」
「特別だと思ってた。けど、それを私が、体よく拒絶した。もちろん、もう一回受け入れてもらえる自信もなかった。二人以上に私が彼への思い入れがあったかというと、それもなかった。だけど、この娘がいたおかげで、私はもう一回チャンスを拾えた。それが運命なんだなって。」
「そういうところ、変に乙女チックだね。見た目に違わぬというか。」
「ある意味で成長してなかったから、すんなり受け入れてもらえたのかもしれない。それもこれも、この娘が現れることが、あらかじめ仕組まれていたような気がしてならない。だから、私はもうひとりの私を守ってあげなきゃいけないとも思えた。それが、結果的に良かったのかな。」
「今の彼が、あなたを愛してるというのは、話を聞くだけでも分かります。すごく嬉しそうに、嫌なことも話しますし。でも、そのきっかけが、娘さんだったのも、不思議ですよね。」
「なんか、みんなお姉ちゃんみたいで嬉しいな。私のお姉ちゃん、三人になったみたい。」
「甘えていいんだよ。本当に会ってから、かわいがってあげるからね。」
「その、私、一人っ子だったんで、妹がいるって感覚がわからないですけど、こんな妹も、娘も、欲しいです。」
「だって。おねえちゃんが私の親の座を脅かされる危機なんじゃないの?」
「大丈夫よ。ここで見たこと、話したことはすべて忘れるんでしょ?」
「う~んと、ちょっと言いづらいんだけど、実は記憶に残ってる。ただ、使われないだけで、簡単なきっかけがあれば、すぐに思い出すぐらいには残ってる。事実、僕の娘と呼んでいるこの娘は、そこにいる娘ちゃんとほぼ同一の精神体。「ほぼ」なだけで、イコールにはならない。」
「あれ、じゃあ、さっきも聞いたけど、私が、プレオトーサンの娘にはならないってこと?」
「そういうこと。あなたに見えてる私の姿は、別のあなただった人...だったと思う。ごめんね。私も、そこはよく分かってないけど、あなたの体験してる記憶も、なぜか持ち合わせている。多分、これが使われない記憶なんだと思う。」
「例えば私が、二人と今後会うことになると、自然と誰なのかが理解出来るんですか?」
「僕が好きだった人だから、その辺の理解が早いね。本人の気持ち次第で、記憶は出し入れが出来てしまう。だから、君と、今眠ってる現実の僕が会ったら、一目で分かるぐらいにはなってると思う。無論、一度会ってる二人の認識は、もっと確かなものになってる。」
「私は?好きじゃなかったの?」
「あなたは、僕の伴侶なんでしょ?現実に毎日見てるんだから、別になにか特別なことはないよ。あなたは好きというより、愛してると言ったほうがいいんじゃない。」
「...恥ずかしい。そんなに堂々と言えちゃうあたり、あの人なのね。」
「その話も、まあ、難しいところかな。僕は、都合よく神様に存在を書き換えられるようになってる。だから、今はあなたへの思いが出ているだけで、実際には、その娘の旦那として生きてる記憶も持ち合わせてる。まあ、言わずもがなだけど、ここに呼んだ4人のうち、本当の記憶として残されているのは、あなたとの生活。おかしな話だけど、二人との婚姻関係と、その記憶も僕は持ってる。」
「あれ、それじゃあ、私と彼が結婚して、ずっと喋ってるような生活もあったりする?」
「お互い、仲良くとは行かなかったかもしれないけど、末永く爆発するような関係だったんだよ。」
「そのものの例え、なんかオトーサンだよね。」
「あの、私との関係も、もちろん知ってるんですよね?」
「実は色々あって大変だった。だけど、大恋愛の末に、君とも結婚した。その時の君は、今の君とは違って、僕としか話せないような、シャイな人だったよ。今の君のほうが、僕は好き。」
「そんな...私にはもったいないです。彼を好きになって、その一言だけで、嬉しくなります。」
「なんか、ずるいよね。そうやって、浮気じゃないのに、記憶だけはとっかえひっかえ出来るなんて。」
「そう言われても、僕だって色々知りたかったわけじゃないし、神様がそういう風に僕を作ってしまったから。不思議なもんだよ。自分の結婚相手であって、娘でもある。君の存在は僕の中では、変なことになってるよ。それだけならいいんだ。君の存在そのものがない記憶もあるわけだから、如何に君が特異な存在か、自分でも分かるでしょ?」
「う~ん、そうなのかな。私は生きてるけど、実感がないや。ねえ、そうだよね?」
「そうそう。だから、私も娘と言われると、そうなのかな?って思うぐらい。あ、私の記憶は、あなたの記憶しか残ってない。だから、同一ではないけど、あなたの思いを私は知ってる。それを知ってて、一緒にいるのが、私もなんか変な気分。気分なのかな?」
「しかし、相変わらず、天然なのは同じなのね。」
「そう?あなたと話してて、これぐらいは普通なのかなって思ってたけど。」
「気付かないんだ。そんなに二人で、冗談を言いあえるって、仲良しだよね。」
「それを言われると、君との生活も面白かったよ。冗談を冗談で返せる間柄だったし、子供から本当の夫婦漫才とよく言われたよ。」
「嬉しいけど、そういう関係は暴露しちゃダメだよ。本妻がいる場所なんだよ。」
「本妻...って言われると、全員本妻になっちゃうんだよ。僕の存在は、そういうポジションなんだ。」
「そうなるんですね。彼との可能性は、無数にあって、そのすべての出来事を、あなたは知っているってことですか?」
「うん、まあ、そうなるよね。何も、ここにいる4人だけじゃなく、僕の過ごした人生の記憶を持ち合わせてる。君達と一緒にいるから、君達の記憶は理解出来るようになった。でも、それも単なるきっかけに過ぎないんだよ。だから、君達も、彼の存在を覚えていて欲しい。まあ、そうは言っても、3人とすでに会ってるし、じきに全員が、僕と会うことになる。」
「私とも、会うときがあるんですね。」
「彼もシャイだし、今の君との関係では、おそらく話すこともないはず。だけど、そのきっかけを君は知ってる。さすがにそれは教えられないんだ。」
「私がそれを知ってしまったことで、関係が崩れるとか、そういうこともありうるってことですね。」
「そこまでは僕もわからない。一つ言えるとすれば、そうそう関係が崩れるようなことにはならないということ。それに、君は僕がいなくても、前に踏み出せた。だから、踏み出してみても大丈夫。もし、僕が気付かない時は、ごめんね。」
「いえ、私も、もう一度踏み出してみます。」
「なんだかんだで優しいよね。誰にでも優しいけど、それが君だもん。」
「そうなのかな?僕は、伝えられる限りの話をしているだけ。君達は、僕なんかよりずっと強い。僕はそれに応えられてるかな。」
「そういうところ。分かってて話してくれる。あ、でも、私が言う事じゃないよね。」
「......。」
「あれ、おねえちゃん?」
「あなたが私達といっしょに暮らしていること。やっぱり、ちょっとおかしな話なのかな?」
「僕はそんなこと思ったことない。僕は、君達と暮らせたことが、どんなに生き生きと出来たか。」
「そう...。そう言ってもらえるだけで、私はここで話が出来たことが、良かったと思ってる。新しい友達も増えたし。」
「私ですか?でも、起きても、また会えるかわからないですよ?」
「この人があなたと会う時、それは、私達も一緒にいる時。それは分かる。絶対に、思い出すわ。あ、でも、私は多分お客さんの立場なのよね。」
「それでも、私なりになにか分かるサインが出せるように考えます。再会が楽しみになってきました。」
「ありがとう。私も、思い出すように...でも、私達はもう分かるんだっけ。」
「その時になれば、思い出せる。思い出さなくても、分かると思います。」
「ま、そんなに力まなくていいんじゃない。なんか、さっきから私の言う事じゃないけど、その時が来れば、思い出すよ。」
「あなたとは、ほとんど毎日連絡取り合ってるから、今更よね。」
「もちろん。私も楽しいよ。これからも仲良くしよ。」
「これで良かったのかな?」
「僕が褒められるようなことをしてないし、元は神様が仕組んだこと。でも、神様もこうなるとは思ってなかったんじゃない。」
「満足してもらえたかな?」
「う~ん、まあ、いいや。満足してもらえたなら、そろそろ開放してくれないかな?あっちの3人は、ずっと喋ってるよ。」
「名残惜しいけど、そうするよ。君だけじゃなく、色々な人を巻き込んでしまって、ごめん。」
「みんな、元の生活に戻るよ。えっと、なにかあったんだっけ?」
「神様のワガママを聞いてくれてありがとう。君達も、幸せでありますように。」
「...あれ?」
「あ、ピーマンぶつけられると思ってた?実は、そんなことをしなくても、戻せる方法を知ったんだよ。」
「あなたとはまた会える。いつも迷惑を掛けてるから、今回だけ特別に、悪夢を見ない方法で、戻してあげる。」
そうやって、私そっくりの娘さんが、指をパチンとならした。
「うわああああああ。あれ?」
いつものベッドで3人で寝てる。私だけ、記憶が維持できてる?
「大丈夫?また、怖い夢を見た?」
オトーサンが私に問いかけてくる。あれ、これってオトーサンだよね。
「ちょっと気持ち悪い夢を見てたのかもしれない。でも、大丈夫。」
「ああああああ、助けて。」
急におねえちゃんが叫び始めた。そして、びっくりしたように起き上がる。
「あれ、私、助かった?」
「怖い夢を見てたの?さっきこの娘も飛び起きたけど。」
「あ、そうだったのね。...いくつになっても、怖い夢は見るものなのね。」
「大丈夫?君がそんなことになったことなかったから、僕もびっくり。」
「じゃあ、いつものやってあげるよ。おねえちゃん。」
そうして、おねえちゃんを真ん中に、私とオトーサンで挟んであげた。
「ごめんなさい。迷惑を掛けてるわよね。」
「いいよ。毎日だったら厳しいけど、たまの機会だよ。」
「それに、おねえちゃんが見た夢。怖いばかりじゃなかったんじゃない。」
「思い出せないわ。でも、なにか、心に響くことはあったかもしれない。」
そう言ったときには、涙を流していた。私もこんな感じだったんだ。
「落ち着こう。それで、また明日からも、生きていこう。」
「ありがとう。やっぱり、あなたが好きよ。」
「なんか唐突だね。ありがとう。僕も愛してる。」
...気づいてないのかな。やっぱり、オトーサンは天然なんだね。いつまでも、そのままでいてね。オトーサン。
そして、私はすべてを知っている。言わないでおこう。誰に言っても、信じてもらえないだろうしね。
「怒られるよ?」
「分かってるけど、一緒に怒られてくれるでしょ。オトーサン。」
「そういう時だけ娘の顔をして。でも、君がいてくれるだけで、心強い。僕も、なにかに取り込まれそうになったら、君を呼ぼうかな。」
「呼ばれるまでもなく。これからも一緒にいるよ。」
「いいのかな?また、神様に怒られるよ。」
「それも神様のさじ加減。それに、私には頭が上がらないでしょ、神様。」
続くかもしれない。また、今度ね。




