Life 77 The story of everyday life cut out 日常に変態は必要ですk?
まだまだ残暑が厳しい時期。何をするわけでもなく、淡々と日常を送っている。
ようやく大学の後期授業が始まったらしく、娘もまたいつものサイクルに戻った。だから、やっぱり家に最初にたどり着くのは、僕だったりする。
「ただいま~っと。今日も、僕が一番か。」
部屋に入って、娘が朝スイッチを押していた洗濯物を取り出し、たたむ。
二人の下着なんかもあるんだけど、本来それが見られたくないから、娘がたたむはずだったのに、娘も短いバイト時間とはいえ、18時から22時のアルバイト時間だから、帰ってきたら、大体ご飯を食べて、お風呂に入ってと、それはそれは規則正しい生活になっている。
そういうこともあるけど、う~ん、僕がこれをたたむって、少し抵抗を持って欲しいんだよ。自分から言う事じゃないと思うし、黙ってるけどね。
その後、なんとなく夕飯を作り始める。と言っても、特に凝ったものではなく、野菜炒めだったり、ちょっとした具の入った味噌汁だったり、あとは、買ってきたお惣菜をお皿に移し替えたり。忙しい時は、お惣菜はそのままパックで出してるけど、その辺も別にこだわりがないらしく、黙々と食べている。
二人とも、夕飯ではお米を食べない。さすがにお寿司とか、出来合いのお弁当なんかだと食べるけど、僕が準備をすると、大体にして、お米はいらないという。なので、最近はもっぱらパックのご飯を温めて、僕だけ食べている。不満はないけどね。
夕飯を作り終わる頃に、奥様が帰ってくる。
「ただいま~。」
「あ、お帰り。今日も頑張った?」
「うん、頑張った。褒めて褒めて。」
そばまで寄って、頭を撫でてあげる。この辺は、あの娘とそんなに変わらないのかもしれない。
「はいはい、良く頑張りました。毎日ありがとう。」
「ありがとう。ご飯出来てる?」
「出来てるよ。食べようか。」
そんな感じでリビングに夕飯を持っていく。彼女はそのまま寝室に入り、着替えをしてる。
程なくして、出てくる。
夕飯を食べ始めると、コンビニの袋からビールを出してきた。
「はぁ、なんか、やっぱり40歳過ぎて、新しいことに取り組むっていうのは、難しいものね。」
「会社のこと?知らないことなら、別に聞いてやってもいいじゃない。」
「そうは言っても、時間が許してくれないわよ。もうすぐ半年。まるで畑違いの人間なのに、なんでこうなったんだろう。」
「それって、社長さんが決めた人事って言ってたよね。確か、駄目な社員を査定するためにポストを用意したって。」
「まあ、今年はいいわよ。何もしない部長がいなくなったら、私がそのポストなのよ。考えられないでしょ。」
「何もしないって。さすがに日常業務ぐらいはやってるんでしょ?」
「やってるけど、部長なのに、なんにも教えてくれないのよ。」
「名誉職?」
「確かにそうかも。いつも早期退職後の話をしてるわ。田舎で暮らしたいんだって。テレビに毒されてるわよ。」
「田舎か。僕らも田舎暮らししてたわけだけど、都会に住んでしまうと、難しいよね。」
「野木が田舎?私の親戚の家みたいなのを田舎って言うのよ。車がないと生活が厳しい世界で、都会育ちが生活できるわけないでしょ。」
「僕らも出来ないじゃん。」
「やる必要ないでしょ?それとも、あなたも同じこと言うわけ?」
「終の棲家が僕の実家じゃ嫌?」
「あなたの実家なら、まあ、やぶさかではないけど。」
そうして、今日も350mlの...あ、今日はスーパードライだった。さすがにエビスとかプレモルとかは買ってこなくなったのかな。
「あ~、ビールの一口目ってなんでこんなに美味しく感じるのかしら。」
僕が不思議そうに見てると、気づいたみたい。
「あ、そうだ。アマゾンでまとめ買いして欲しいんだけど。エビスは単価が高いからたまに買うとして、黒ラベルがいいかな。」
「今日はスーパードライ飲んでるのに?」
「スーパードライでもいいけど、辛口のお酒を飲むと、無性にのどが渇くのよ。」
「ビールじゃなくて、カクテルとかのほうがいいんじゃない。あなたにはそっちが合ってるよ。」
「今更可愛くなれって?あなた達に飲酒が見つかった時点で、私はもうビールで行くことにしたの。なんなら、あなたも飲む?」
「僕がお酒好きじゃないの知ってて言ってるよね。甘いお酒しか飲めないよ?」
「そういうところだけ、なんか変に健康なのよね。体が弱いから?」
「言ったことなかったっけ?僕は、お酒で大失敗してるからね。大学時代に、居酒屋で暴れたらしいよ。」
「なに、その「らしい」って?」
「記憶がないんだよ。朝起きたら、友人が自宅で寝てて、そのことを聞いてヒヤッとしたよ。損害賠償かなって。」
「ま、でも今シャバにいるってことは、特にお咎めなしか。」
「壊したりとかはなかったらしいけど、なんかグラスをいくつか割ったみたいね。まあ、それでも、お酒の失態は、消えないからね。」
「普通の人なら武勇伝にしそうだけど、そこんところがあなたっぽいね。」
「失敗を武勇伝にする人って、やっぱり自分を強く見せたい感じがあるから、僕は好きじゃない。素直に悪いことをしたと言えばいいのにね。」
「あ、じゃあ、あなたにお酒を無理やり飲ませれば、理性が飛ぶってこと?」
「まあ、そういうことになる。だけど、それはもう犯罪になっちゃうでしょ?」
「あら、無理やりやられちゃう私も、従順でいいと思わない?」
「それは理性の飛んだあなただけで十分。無理やりやろうとしたのはそっちだし。」
「可愛くないわね。まったく。」
「ごちそうさまでした。」
「はい、お粗末様でした。んじゃ、食器を洗おうか。」
「私がやるけど、手伝ってもらっていいの?」
「あの娘が帰ってきてないんだから、僕が手伝ったほうがいいでしょ?」
「相変わらず優しい人なんだから。でも、なにか私と話したいんでしょ。」
「あ、バレた?いや、どうでもいいことなんだけどさ。」
「なに?またなにか買おうとしてるわけ?」
「半分は当たり。」
台所、僕一人だと広いんだけど、二人で並ぶと、なんとなく狭い感じ。
「言ってみなさいよ。」
「僕が変態だって思わない?」
「え、今までそう思ってなかったの?」
「あ、そう......。もう認識は変態なんだ。」
「マニアックじゃない。どうせ、そういう話なんでしょ。夜だからって、発情してるんじゃない?」
「うん、......うん。」
なんか、急に恥ずかしい気がする。
「あら、急に元気が無くなってきちゃった。もしかして、深刻な話?」
「いや、僕、結構どうでもいいことを話そうとしてるなって?」
「別に嫌いになるってわけでもないし、気軽に言ってみなさい。」
「あ、じゃあ、その、......コスプレを、して、欲しいなぁって...。」
一瞬、睨んだような視線を感じた。あ、ヤバい、殺される。
「はぁ~。そんなことか。私が断るって思ってた?」
「半々ぐらいかなって思ってた。なんというか、ほら、ねぇ。」
「あなたと一緒に暮らしてて、そういうことをさせられてたから、もうとっくに恥じらいもなにもないわよ。まったく。」
「え、だって、それはあの娘のコスプレ衣装だからでしょ?そうじゃなくて、......ごめん、やっぱりいいよ。」
「良くないわよ。言ってみなさいって。怒らないから、ね。」
「じゃあ、君に着てもらう用の、コスプレ衣装を買いたいです。」
「うん、で、それはどんな衣装?」
「あの、水着なんですけど。」
「あ、そんなもん?全然いいわよ。あ、あの娘が持ってるような競泳水着みたいなやつ?」
「そう、......です。」
「さては、あの娘が留学してた時に、私が着たのを見て、惚れたな。」
「惚れてはいます。けどさ、なかなか言い出しづらいというか、僕が恥ずかしいというか、」
「あなたが恥ずかしがることはないじゃない。じゃあ、私から一つ提案。あなたも水着を着れば、それで恥ずかしくないんじゃない?」
「うん、...本当にいい?やっぱり、駄目でしょ?」
「はぁ~。男だったら、一度言ったことを撤回するようなことしないの。それに、ラブホに行ったみたいで、なんだかおもしろそうじゃない。」
「ラブホのコスプレの自販機のこと言ってる?ああいうやつじゃなくて、ちゃんとしたやつだよ?君に似合いそうな、かっこいい競泳水着。」
「なら、なおさらOKよ。私に似合う水着を買って、あなたとエッチをするってことでしょ?最近ご無沙汰だったから、なにかと思えば、そういうことだったの。」
「なんか、ごめん。もう、普通に裸でエッチしてても、あの日のあなたぐらい乱れるようなことはないと思って。」
「え、でも、コスプレでエッチした時ってやっぱり興奮するものなの?」
「だって、あの娘が留学に行った日、あの娘の水着を着て、お風呂でエッチした時、すごく興奮したから...。」
「それで、あなたの気が済むなら、全然安いものよ。で、いくらぐらいなの?」
「大体2万円ぐらいです...。」
「えっ、それって、本当の選手が着るようなやつ?」
「そうです...。」
「だって、あの娘の持ってるやつって、なんかコスプレ衣装みたいなやつじゃない。」
「お金がないときに、あの娘に水着代って1万円を渡したら、プールで着る水着と、あの水着を買ってたの。だから、そんなに高いものじゃないと思う。」
「で、私に似合う競泳水着ってのは、本当に水泳をしてる人が着てるような、本格的なやつってこと。」
「うん、あなたの裸は本当にキレイで、スタイルもいいから、絶対似合うと思うんだ。」
「子供みたいな言い方。でも、あなたがそういう私を好きって言ってくれるなら、私はそれを着てあげる。それに、似合うなんて言われたら、もう着るしかないじゃない。」
「ごめん、ありがとう。」
「どっちなのよ。まったく。」
と、一区切りついたところで、娘が帰ってきたみたい。
「あ、ただいま~。二人して、食器洗ってるんだ。仲良しだね。」
「ええ、仲良しよ。ね、あなた。」
「はい、仲がいいです。大好きです。」
「???、どしたの?オトーサン。」
「今、恥ずかしい話をしていたのよ。ね、お父さん。」
僕は、多分真っ赤になっていたに違いない。こういう時、お酒の力を借りられる人は、勢いで押せるんだろうけど。僕にはこれぐらいが限界だ。
「あら、可愛いわね。あ、どうせなら、この娘にも教えてあげちゃう?」
「それは駄目。絶対にだめ。」
「???、いや、本当にどうしたの?オトーサンのほうが、恥ずかしい話なの?」
「う~ん、どうなのかな。この人が申告したこと自体は、まあ、結構恥ずかしい話かな。でも、内容が、あまりにも普通で。」
「え、普通?どうして?」
「だって、トレーニングウェアを着て、夜明けぐらいに10キロ走ってるんだよ。恥ずかしいことないじゃない。」
ああ、そうなの。でも、それより恥ずかしい衣装だと思うけどな。いや、いかがわしいのか?
「オトーサンはおねだりが下手だもんね。それに、自分が思っている以上に焦点がズレてるもんね。」
え、そうなの?僕って、違うところで恥ずかしいことを聞いてる?親失格だよ。
「本当に、可愛い人。それだけで、甘やかしたくなるものね。」
娘が夕飯を食べてるけど、さっきから同じ話題だ。僕は、針のむしろみたいな罪悪感を感じてしまう。
「へぇ~、コスプレか。前は結構やってたよね。」
「え、コスプレしてエッチしたことって、1回あったぐらいじゃなかったっけ?」
「おねえちゃんと暮らす前、私が渋谷凛ちゃんのコスプレして、で、そのあと...。」
「あれ、そんなに前からエッチしてたの?私、初耳なんだけど。」
「エッチはしてない。ただ、私が興奮しちゃって...。」
「そういえば、なんでコスプレすると、興奮するの?」
「なんて言えばいいのかな。なんか、恥ずかしい思いと、見られてる快感みたいなのが一緒に来て、それで気持ちが高ぶっちゃうのかな。」
「そういうものなのか。私は、あなたの昔の制服着せられた時、大学時代の黒い服を着た時、どっちもすごく恥ずかしかったけど。」
「それは思い出補正じゃない?やっぱり、昔の自分って、なんか恥ずかしい時あるよ。」
「オトーサンも?」
「今はあんまり思ってないけど、やっぱり、トラウマになるような恥ずかしいことはいっぱいあるよ。それをこじらせると、僕みたいに発作が出てきちゃう。」
「あれって、そういう類のものなんだね。ってことは、トラウマを克服出来れば、オトーサンも完治するの?」
「だって、電車に轢かれる寸前だったって、どうやったら克服出来るの?」
「そっか。難しいね。」
「でも、二人のおかげで、随分と回数は減った。そう思わない?」
「そうそう。最初は、私もびっくりしたもん。夜中、急にダッシュでトイレに行って、嗚咽が止まらないんだから。」
「そう考えると、君が一番の良薬になったのかな。良薬口に苦しとは言うけど、僕の場合は甘かったのかな。」
「うん、オトーサンには、いつも甘々だよ。」
「一人で悩むより、誰かに知って欲しかったのかもね。私達は大人だし、いくつかはトラウマがあってもおかしくないわよ。」
「まあ、あなたの場合、誰がどう見ても、現役の女子校生に見えたし、黒い服だって、似合ってると思うけどね。」
「そういうこと、言わなくていいのよ。しかし、自分の妻にコスプレ要求するなんてね。おじさんがおばさんにそんなことを頼むのがおかしい。」
「でも、いいんじゃないの。私は喜んでしてあげちゃうけどね。」
「そういうことを言うんじゃないの。この人がつけ上がるわよ。まあ、アンタぐらい着映えするとね。」
「着映え?もしかして、オトーサンがお願いしてるコスプレって、エッチなやつだったりする?」
「アンタがいつだか私に貸してくれたような水着、着てほしいんだって。」
「なんで言っちゃうんだよ。この娘に知られたくなかったよ。」
「とか言って、前は着て、楽しいことしたじゃん。あ、エッチはしたことなかったね。」
「結構興奮するのよ。アンタもやってみたら?おばさんになって、楽しいエッチって、なにか刺激がある時なのよねぇ。」
「今度、私もしてあげちゃおうか。」
「だから知られたくなかったんだよ。君だと、大変なことになりそうだし。」
「そうねぇ。可愛い顔して、いやらしい身体になっちゃったもんね。」
「...そうなのかな?最近、下着のサイズが合わなくなってきてるんだよね。」
「はいはい、じゃあ、あとでまた下着を買いに行きましょう。本当に、私なのかな?この娘。」
そうか、僕は変態だと自覚していたけど、二人からも変態だと思われてたんだな。
いや、別にいいんだけど、家族に変態がいることで、二人に優位に立たれるのも、しょうがないのかな。
性癖を色々なところに暴露しなけりゃいいんだけどなぁ。奥様、ああ見えて、割と人のことをだしにするしなぁ。
今夜もこの辺で。あ、僕の性癖は、バラさないでよ?




