Life 30 Today, having children is not necessarily a blessing. 三人で生きていくということ
夜の団らん中、娘が「二人は子供を考えていないの?」と尋ね、僕と彼女は戸惑います。
子供を持つことへの葛藤
僕と彼女は、互いに41歳になる年齢を考えると、子育てに必要な体力や、子供が成長する頃に高齢になっていることへの不安を語ります。特に、僕らのエゴで子供を産むことには消極的でした。
娘の提案
そんな中、娘は「お父さんと私の子だったらどう思う?」と突飛な発言をします。彼女は「女として若さに嫉妬する」と複雑な心境を明かし、現実的な問題として、子育てには多くの苦労が伴うこと、そして僕の年齢が子供のいじめの原因になる可能性を指摘します。僕も、倫理観や娘の人生を考えると、その提案には同意できないとはっきり告げます。
3人の決意
僕は、この3人で生きていくことが最適解だと話し、娘も「二人を困らせてまで話す内容じゃない」と納得します。彼女は、娘の気持ちを理解しつつも、まずは大学生活を謳歌すべきだと諭します。しかし、娘は「お父さんとの子供を諦めたわけじゃない」と僕に告げ、僕と彼女は、娘の愛情の深さを改めて感じます。最終的に、3人はそれぞれが互いを尊重し、支え合いながら生きていくことを再確認するのでした。
今日も今日とて、一日の疲れを癒やすいつもの団らん。普通のご家庭は家族のだんらんが22時過ぎに始まることなんてないだろうなあ。
「そういえば、二人は子供とか考えてないの?」
娘にしたら、当然疑問に思うことなんだろう。
「「う~ん」」
二人でちょっと悩んでしまった。
「まあ、確かに出来婚とかではないし、なかなかお互いの年齢を考えるとね。」
「確かに子育てをしてみたいと思うけど、今から出産となると、やっぱり心配かな。」
僕らは割と消極的である。そう、最大の問題は年齢。お互い、今年は41歳になってしまう。
仮に子供を授かったとして、子供が20歳になる頃には、お互いに60歳を超えてしまっている。まあ、その時に娘が42歳になっているわけだけど。
「この年齢になると、確かに子供を産むにも体力が必要だし、育てる体力も必要。ましてあなたにも迷惑を掛けることになると思うかな。」
「あ、私が面倒を見るってこと?う~ん、おねえちゃんとは言え、自分の子供じゃないっていうのが、責任感強め。」
あれこれ言っているけど、やっぱり歳を取るということが、良いことだけではないというのがよく分かる。せめて30代だったらと思うけど、再会したときには僕は40歳だったわけで、こうなることはすでに分かっていた事だった。
「とは言え、僕は子育てと呼べるようなものじゃないけど、一応君を育ててきたし、もう責任は果たしたかなって思ってるんだよね。」
イマイチ煮え切らない娘に対して、僕が一応ツッコミを入れておいた。
「私が思ってる夫婦って、やっぱり子供がいて楽しくやってるってのが、理想だったりするの。私達3人でも楽しいけど、そこに加われる子がいたら、幸せじゃない?」
「いやさあ、そうは言うけど、現実問題として、この3人暮らしが4人になって、5人になってになるのかわからないけどさ、君が僕より愛せる存在が出来るかもしれないってことはないの?」
帰ってくる答えはある程度予想が付くけど、一応聞いてみる。
「オトーサンより好きな存在は今後一切現れないです。私は、年老いていってもオトーサンが好きなままだぞ。」
「それでいいうちはそれでもいいのよ。例えば、この人が突然亡くなったりした場合、私と二人で暮らしていくつもりはある?」
彼女が、あり得ないとは言い切れないことを言っていた。
「オトーサンがいなくなったら、私はどうしたらいいんだろうね。おねえちゃんと暮らすのか、それとも絶望しちゃうのか、どちらにしても迷惑は掛けそう。」
「子供を産んで、育てていくっていうのは、それぐらい家族のバランスが崩れることなのよ。だから、敢えて産まないというのが、私達の結論ってことかな?いいよね?」
「あなたには申し訳ないと思っているけど、これから生まれて来て、育って行くにしても、やっぱりどこか家族がバラバラになりそうなのは、僕も思ってるかな。やっぱり僕らのエゴで産むってのは、どうしても賛成できないなあ。」
「じゃあさ、オトーサンと私の子だったらどうだと思う?」
娘の突拍子もない発言である。まあ、生物的には娘が20歳違うという点で、確かに問題ないとも言える。
「堂々と不倫しますって言うのね。まあ、あなたらしい考え方だと思うけど。」
「君が僕を好いてくれる。僕はそれだけで十分なんだけど、君は僕の子供が欲しいの?」
「堂々言うと、そういう事かな。ただ、私も大学生だし、大学に通いながら子供を育てるというのはなかなか難しいよね。」
「女としては、こういう時若さに嫉妬しちゃうのよね。そういう思い切ったことが年齢的に出来ないというのが、確かに悔やまれるかな。」
「現実を見た時、あなたと産んでも、君と産んでも、いずれにしても苦労がかかるってことなのは間違いないからね。まあ、あと君と子供を作るというのは、やっぱり倫理感が許さないよね。」
「そうねぇ。人のいい優しそうな旦那で通っていたあなたが、伴侶を捨てて娘と子作りをする。世間様は当然のように問題視するだろうね。」
「そうは言うけど、私もおねえちゃん公認の恋人なんだけどなあ。子供を産むぐらい、しっかり出来ると思うんだよね。」
「その考え方が甘いわよ。じゃあ、さっきもいった通り、誰が育てる?あなたが休学して、その合間に私達が見るとしても、少なくとも今みたいな家族団らんの時間はなくなる。確実に子供が中心の生活になる。」
彼女が、娘に対して厳しい意見をいうのは珍しい。まあ、事実ではあるんだけど。
「あと、この人も平等に歳を取る。仮にあなたが母親であっても、父親だけやたら歳をとったおじさんになっている。今ですらおじさんなんだし、あなたの父親役が一番似合うのよ。」
「そういうものですか。う~ん、納得が行かないなあ。だって、オトーサンとおねえちゃんの子供なんて、絶対可愛いに決まってるじゃない。」
「まあ、仮にそういうことにしても、親は年を取る一方。すぐに、自分の両親が他の両親達との年齢差を知って、現実を突きつけられてしまう。それが可哀想だし、子供がいじめられる原因にもなりかねないかな。」
ちょっとヒートアップしてきたので、落ち着かせる意味も込めて。
「僕はこの3人で暮らしていくことを選んだんだ。残念だけど、娘は唯一無二の君だけと決めている。そして奥様はあなた。そういうふうにして生きていくのが、一番幸せな生活だと思っているんだよ。」
「やっぱり娘?恋人じゃなくて?」
「それは、時と場合による。」
ちょっと彼女の方に視線を向けながら、
「あなたもそれを許してくれている。なら、それで仲良くやっていく日常が幸せだと思わないかな?」
「そうね。あなたは私であると当時に、彼の寵愛を受けられる権利を持っている、もうひとりの私。あなたのタイミングでそれは切り替えながら生きていいのよ。」
「じゃあ、オトーサンの伴侶になるって選択肢は?さっきからダメって言ってるけど、私は別にいいと思ってるよ。」
娘の必死の抵抗。自分と結婚して欲しいって言ってるようなものだ。
「う~ん、まあ、そう言われちゃうと、確かにあなたの意思でそれを望むのだから、私としては許さないといけないと思う。でも、立場としては反対しなきゃいけないかなって思ってるかな。現に、この人は、私の夫と法的に認められてるしね。」
「君の気持ちは嬉しいし、確かに子育てに憧れがないわけじゃないんだ。だけど、簡単に言ってしまうと、育てていくには、3人でも厳しい。僕がその子の父親だったとして、特に君の負担が大きくなるのを黙って見てるわけに行かないけど、それを手伝えるほどの体力が、どこまで続くか、それが僕らは不安なんだよ。まあ、逃げてるように聞こえるかもしれないけど、僕らもこれから老いと戦わなきゃいけない。そんな中で若い命を育めるほど、余裕はある?ってことなんだよ。」
「あとは、母親になる覚悟かな。あなたはまだ若い。子育ても多分問題ないとは思う。でも、立場としてシングルマザーになってしまうの。私達が援助するにも限界がある。社会で生きていくにも、まだまだハンデは大きい。ましてあなたは大学生なのよ。例えば、今後正社員として会社に入社するとしても、会社に理解がないと、採用はされない。まだまだこの国ではシンママに理解がないのよね。それをひっくるめて、あなたが受け入れて生きていけるのかな?」
「...納得は行かない、理解もできてるんだけど、やっぱり気持ちが追いつかないんだよね。衝動みたいなものかな。私は、それで産んでみたいと思ったの。」
これが若い証拠かなとも思った。理解より感情が先に出てしまう。僕も今ですら制御出来るか怪しいところだ。
「じゃあ、はっきり言っちゃうけど、僕は君と子供は作れない。さっきも言ったけど、気持ちは嬉しいし、子供がいる環境も悪くはないと思ってる。けど、それが君の人生を大きく変えてしまうことになるのが分かってる。だから同意することは出来ない。何も、子供が欲しいと思っているのは、君だけじゃないからね。その上での結論。僕らは、今は三人で生きていくのが最適解なんだよ。」
「...うん、分かった。二人を困らせてまで話す内容じゃないし、私のことは考えてなかった。それがどんなに大変かって、なんとなく理解出来たような気がする。」
「いいのよ。あなたはまだ若い。その考え方は間違ってないの。でも、自分のいる場所を見失ってはダメ。あなたは20歳、大学1年生。子供を育てることになれば、大学生活も難しくなる。だから、今は大学生活を謳歌するのが、今のあなたの仕事。それに、私達も歳を取るけど、あなたは大学を卒業して社会人になっても、まだ25歳よ。その時にまた考えればいい。もっとも、そこでシンママになるってのは反対ね。」
「僕もさすがに自分の娘と子育てってことは、考えてないからね。僕はその頃46歳。さすがに、子供が成人するまでに死にたくないしね。」
「しかし、まさかそんなことまで考えてたとは思ってなかったよ。意外と、君はいい母親になるかもね。」
「それはオトーサンが一生懸命育ててくれたからだよ。えらいえらい。」
娘が僕の頭を撫でてきた。いつもと逆だ。
「私達がもっと話し合うべきことだったよね。あなたが一番にそれを考えてるなんて、意外だったかな。」
「だっておねえちゃん、結婚したら、子供を作るって普通に思ってなかった?」
「今はそういう時代じゃないのよ。パートナーと幸せに生きていく、それも一つの家庭の形。家庭の形も、昔とは変わってきてるから。」
「ふーん、そういうものなのか。でも、私はオトーサンとの子供、諦めたわけじゃないからね。」
そうやってもう一度僕と目を合わせる。僕は目を泳がせたいけど。
「君の言う事はなるべく聞いてあげたいと思ってるけど、さすがに子作りはしないよ。これは、君が社会人になってからも同じ。君に、大きな負担を掛けられるほど、僕も他人事には思えないんでね。」
「でも、エッチなことはするんだよね。真面目な割に、その辺が事流れ主義と言うか。」
「あなたも目の前の人をほっとけないタイプなのね。この娘が寂しがるから、一緒にエッチするとか、普通に考えないでしょ。普通の家庭なら、事件だぞ。」
彼女の言ってることが正しくて、思わず赤面してしまう。でも、最初に始めたのはそっちだったくせに。
「でも、私は嬉しいよ。ちゃんと私のことを見てくれてるって思うもん。来る者拒まずがオトーサンのいいところだよ。」
「じゃあ、去る者は追わずなのかしらね?私は、体力的に降りて、二人の行為でも横で見てようかしら。」
「そこは参加義務あるよ。おねえちゃんの旦那さんでしょ。オトーサンも頑張るんだから、一緒に頑張らないと。」
まあ、最後はともかく。
我が家には一人、自慢の娘であり、恋人がいる。彼女も頼りになる大人なのはよくわかった。
どうしても、子供扱いしちゃうけど、もう立派な大人だよ。もっと自由に生きてほしいのが親の願いだけど、未だに恋人は僕だからなあ。
今日はこの辺で。