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Life 75.8 That's what happened at the end of summer. 夏休みの終わりに

さすがに8時過ぎだし、誰もいないかな。

「たっだいま~。」

アレ?明かりがついてない。けど、エアコンはついてる。

そういえば、おねえちゃんって今日休みなのかな。その割にカーテンが閉じられてるよね。

「誰かいないの?」

う~ん、リビングにもいない。ということは、惨状となってる寝室も誰もいないかな?

「入るよ?」

明かりをつけたら、そこにはおねえちゃんが寝てた。

「う~ん、あれ、アンタどこにいたの?」

「あ、うん、オトーサンに、ホテルに避難してって。」

おねえちゃんが起き上がると、裸だった。確かに、年齢の割に、小振りな胸には、弾力がありそう。

どれ、朝から盛ってる感じはするけど、ちょっと触ってみるか。

「ちょっとごめんよ、おねえちゃん。」

「え、何?どうしたの?」

横に座って、おねえちゃんの胸に手を伸ばして、鷲掴みにしてみる。

なんか、掴んでも元に戻ろうとするな?多分私のほうが柔らかい。サイズも大きい。それって、私のほうが体の年齢は上ってことだよね。

「ふんふん、なんか、オトーサンが言ってたの、本当だね。」

「その前に、寝起きで胸を触られてる私には?」

「ごめんなさい。あまりに裸のおねえちゃんがキレイだったもので。てか、シャワー浴びてないの?」

すると、顔を両手で覆いながら、

「浴びたわよ。寝る前にお風呂場でやっちゃったわよ。どうかしてるわよ、私。」

「なんか...今日が休みで良かったね。ああ、オトーサンは辛いか。」

そんな会話をしつつ、また布団の中に入っていくおねえちゃん。顔を目だけ出して、

「ねぇ、どこまで知ってるのよ?」

「二人が当たり構わず部屋中で盛って、オトーサンが4回ゴムを使ったことは知ってる。」

「その他は?」

「う~んと、あ、そう言えば、4回ってことは、私が買ってきた避妊具は使ったってことだよね。」

「正確には5回よ。もしかして、アンタが買ってきたの?」

「そうだよ。おねえちゃんが盛り上がってる時、オトーサンから避妊具が足りないって言われて、買って玄関に置いておいたけど?」

「頼むほうも頼むほうだけど、そんなの受けたらダメじゃない。」

「ゴム無しでやろうとしたらしいじゃん。自分でした約束、破ろうとしたらダメだよ。」

「ごめんなさい。理性が飛んでたとはいえ、情けないわ。」

「あ、それと、オトーサンには言ってないけど、大きな喘ぎ声だったよ。玄関入る前から聞こえてた。」

「ウソ。......ウソよね。」

「聞いたことない激しい声だったよ。理性が飛ぶと、あんなに高い声で喘ぐんだって。」

「終わった。...もう、私、外に出られない。このまま死ぬわ。」

「んじゃ、死ぬ前に、とりあえずベッドから出てもらえるかな。シーツ洗っておいてって、オトーサンから。」

「私が洗うから。あなたも慣れないところで寝て、大変だったでしょ?」

「駅前のホテルに泊まっちった。オトーサンに出してもらったし、ご飯も好きなの食べられたし、しかも2食も。」

「じゃ、私、今日休みだから、シーツは洗濯乾燥機に入れて、デートしよ、ね。」

「いやいや、今日は、エアコンの修理の人が来るんだよ。だから、おねえちゃんもここで裸になってると、業者さんに見られちゃうよ。」

「分かった。服着る。ちょっと待ってて。」

「そう言えば、リビングに放り投げられてる下着とTシャツ。どう見ても女性のものだと思うんだけど。」

「もしかして、私、ベッドで始めたときには、すでに裸?」

「さあ、どうだったんだろうね。当事者しか知らないから、帰ってきたら、オトーサンに聞いてみれば。」

「終わった...。私、真面目に詰んだ気がする。やっぱり、もう死ぬしかないかも。」

「決意を固めるのはいいけど、私達がいるんだからね。オトーサンの稼ぎだけじゃ、また狭い部屋に引っ越しかな。引っ越し費用どうしよう。」

「出すわよ。大黒柱は私だもの。死ぬまで奉仕させていただきます。」

「別に、そこまでのことはしないし、おねえちゃんを見捨てるなんて出来ないのは知ってるでしょ?」

「知ってます。だから、生きててごめんなさい。」

「ま、言うほど迷惑もかかってないし、生きてたほうが楽だと思うよ。一時の恥と思えば。」

「ご近所さんには一生の恥だわ。顔を合わせたら、挨拶出来るか心配よ。」

「ま、いいや。とりあえず、シーツを取るから、ベッドから出てね。」

「すぐに出ます。え、待って、裸のまま出るの?」

「クローゼットがすぐそこなんだから。それに、もう私しかいないよ。」

「あ、そうか。あの人は今日から仕事なんだっけ。」


そんなことを言いつつ、イヤイヤながらにベッドから出てくるおねえちゃん。

「あっ、」

明るいところでまじまじと見るのは初めてだけど、どう見ても、この時代に来た時の私を見てるみたい。あれ、私って、実は結構育ってる?

「えっ、どうしたの?」

「ごめん。なんか、キレイな身体だなって。」

「前にも話したかもしれないけど、もう20年以上スリーサイズが変わらないのよね。やっぱり鍛えてると、キレイなボディラインになるって。」

「そうなんだ。でも、逆に言えば、私のほうがボリュームもあるし、悪いことでもないと思うよ。」

「アンタは基礎代謝がまだまだ活発なのよ。それに、食べれば食べた分だけ、大きくなるわよ。」

「羨ましい?」

「アンタはアンタ、私は私だから。でも、さすがに下っ腹が出てくると思うぐらい、酒も、甘いものも飲み食いしてるはずなんだけどね。」

「やっぱり、本当に体型が変わらないんだ。すごいな。」

「そう思うわよね。だから、不思議なのよね。」

「いや、夢の中の話なんだけどね。おねえちゃんって、体型が変わらない呪いがかかってるって聞いたんだよね。」

「なんか、正夢じゃない。でも、なんでアンタがそれを見てるんだろう。」

「私も分からないし、正夢なのかも知らないけど、なんか、説得力あるよね。」


おねえちゃんが着替えてるそばで、私はベッドからシーツを外してる。こんなにでかいシーツだったっけ。洗濯乾燥機でまとめて洗うのは無理な気がしてきた。

しかもエアコンがついてない部屋。いくらリビングのドアを開けてても、暑くなってしまう。

「あっついな。よく、こんな部屋で寝てられたね。ふたりとも。」

「暑かったから、裸で寝てたのよ。勢いで...はだかに...。」

「なっちゃったんだ。また、どうせオトーサンにでも言っちゃったんでしょ?」

「...なんで分かるのよ。」

「忘れてもらっては困るな。私はおねえちゃんなんだから。おねえちゃんと同じ状況になったら、オトーサンに同じこと言ってると思うもん。」

「なんか、アンタって本当にあの人が好きなのね。」

「言ってるじゃん、恋人なんだって。手が届かなくったって、恋人は恋人だし。」

話してる間に、おねえちゃんも服を着た。他の人に裸を見られなくて済んだ。

万が一に見られたら、ここでコナン君が謎解きしちゃいそうな勢いで、自殺現場になりそう。


シーツ、どうしようかな。コインランドリーで、布団が洗えるサイズのやつがあったから、そこに持っていくか。

しかし、あっついな。早く業者さん、来ないかな。さすがに今日は、ホテルに泊まれないぞ。


「おねえちゃん、ちょっと、シーツをコインランドリーに持っていくから、留守番ついでに洗濯乾燥機回して。」

「分かった。業者さん来たら、修理してもらってるね。」

「うん、お願い。」


あれ、終わらない?私の知らないところで、話が進んでる?




「ヘックション。うぅぅ、なんか寒いな。」

「どうしたの?まさか夏風邪ってやつ?」

「昨日実家から帰ってきたらさ、寝室のエアコンが壊れてて、で、あれやこれやで、裸になってベッドで寝てたら、この有様だよ。」

「家族は?」

「娘だけ避難させた。で、夜更かしして、夜の営みに付き合ってたら、もう3時。そりゃ、4時間ちょいの睡眠じゃ、この歳には堪えるよ。」

「どこのジジイだよ。そんな歳じゃないでしょ?」

「だから、朝からリポDとレッドブルの合わせ技をしているんだけど。」

「確実にどっちかの効果はかき消されそうな組み合わせ。」

「ま、それで昼休みまで耐えられれば、今日は1時間と言わず、3時間ぐらい昼寝してても怒られないだろ。」

「なぁ、思うんだけどさ、そもそも30人ぐらいしかいない会社でさ、なんで出社してるの、俺たちだけなんだろう?」

「ローカルルールでもあるんじゃない。っても、中国だって、1週間ぐらいしか休みないんじゃない。」

「それは別にいい。だけど、本来会社の花形たる営業が、誰もいないってのはおかしくね?」

「夏休み明けにそんなにガバガバとゲーミングPCも出ないだろうし、営業するにしても、本国が夏休みじゃ、特に新製品も出ない。そして、それ以前に、そもそも営業力がない。」

「手厳しいよな。案外、この業界に未練がある?」

「そりゃね。僕は能無しのリーダー、出来る有能なサブリーダーが君、会社そのものは、潰れないと思うんだけど。」

「例え話ね。お飾りでも、リーダーはリーダーだよ。モチベーション維持さえすれば、誰でもリーダーってね。そこんとこ、サブリーダーのほうが、役割が多いだろ、辞退する。」

「そんなにうまく行ってたら、そもそも代理店で、こんなことをやってないと思う。この業界、あっという間に気づけば3社ぐらいに統合されてるからな。」

「零細企業は残念だけど、BTO業者へ卸すのがやっとな感じでしょ。それで成り立つなら、十分じゃない。」

「で、なんでこんな話をしてるんだっけか。」

「この会社は社員二人でも大丈夫だって言い訳をしてたんじゃない。誰か来たって、言い訳はいくらでも出来る。誤魔化しとくから、あんまり辛いようなら、帰ってもいいよ。」

「それはありがたいけど、残念ながら、今日は寝室で工事中だ。エアコン壊れてたら、おちおちと眠れないよ。」

「風邪ならいいが、熱中症で死ぬとか、そんな残念な最後は見たくないしね。ここで寝てていいよ。」

「君が優しい人間で本当に感謝してる。そういうわけだから、ちょっと漫画喫茶で仮眠してくるわ。」

「何かあったら呼び出すかもしれないから、その時は対応してくれ。ここにいると、多分という言葉は、必ず何か起こるサインみたいなものだから。」

そういいながらも、でっかい縦画面のディスプレイでウマ娘やってる同僚。漫画喫茶で仮眠を取るのと、どっちが罪深いだろうか。




「ヘックション。うぅぅ、なんか寒いな。」

コインランドリーでシーツが乾くのを待ってる。家に帰ってもいいんだけど、帰ったところで暑いだけ。だったらと思ったけど、意外に人が来ないから、キンキンに冷えてやがる。

ランドリーって、なんでコンビニに売ってるコミックとかが置いてあるのかな。本棚あるところは、多分オーナーさんが置いてるんだと思うけど、ここは洗濯の取り出しカートに適当に置いてあるし、しかも今読んでるカイジの次の巻はないんだよね。新聞の日付も3日前だし。あれ、今日は確か8月17日だったよね。

そういえば、スマホしか持ってきてないな。誰も掛けてこないだろうし、LINEでやり取りすればいいことだし。あ、日付は合ってた。

暇だ。いっそのこと、原神にでも手を出してみようかな。バイトの友達に聞けば、誰かしらはやってそう。

「ん、なんだこれ?」

デレステって書いてある。渋谷凛ちゃんのゲームか。なんでインストールされてるんだろう?さては、オトーサンが勝手にインストールしてアカウントを移し替えたな。

「これは、何をするゲームなんだろう?」

凛ちゃんは可愛いけど、正直なところ、チュートリアルが欲しい。アカウント削除してイチから...もなんだかなぁ。

いいや、オトーサンにLINE通話しちゃおう。大体分かるよ。


「もしもし、どうしたの?」

「あ、仕事中ごめん。ちょっと教えて欲しいことがあって。」

「僕の知ってること?」

「多分そうじゃないかな。デレステっていうゲームが私のiPhoneに入ってるんだけど、オトーサンがインストールしたよね。」

「したのかな。あ、もしかするとiPhone用のゲームアカウントが動くかテストしたときに、借りたかもしれない。」

「つよくてニューゲーム?」

「まあ、本垢じゃなくてサブ垢だけど、手札は揃ってると思う。音ゲーだから、直感的に分かるでしょ。チュートリアルはあったかな?」

「それより、仕事中に電話って出られるの?」

「あ~、うん、別に掛けてくるのは出られるよ。だけど、出づらい時はあるかな。」

「そう言えば、オトーサンは大丈夫?寝不足でしょ?」

「そう、寝不足。どっかのおばさんが寝かせてくれなかったの。」

「でも、私と通話したあとも1回やってるらしいじゃん。」

「聞いたんだ...。あれは、つい、いつもの流れで。」

「というか、オトーサンは今どこにいるの?仕事してないでしょ?」

「いや、早い昼休みってやつだよ。これから、漫画喫茶で3時間ぐらい仮眠を取る。仕事もないから、寝てるよ。」

「大丈夫?もしかして体調悪いんじゃない?」

「まあ、正直言うと、結構辛い。寝不足じゃなくて、夏風邪のような気がする。」

「でもなぁ、まだ業者さんも来てないし、帰ってきても寝る場所ないしね。」

「漫画喫茶で寝てるのが一番いいと思うんだよ。アイスも食べられるし、ドリンクも飲み放題だし。」

「はあ、そういうものですか。」

「そういうもの。アレ、漫画喫茶とか行ったことないか。今度連れて行ってあげるよ。」

「とりあえず、夏風邪を直してからだね。定時で帰って、おねえちゃんに看病してもらいなよ。」

「そうする。んじゃ夜にでも。」

「仕事しろよ。じゃあね。」


仕事してないって、そんな自由な会社なんだな。一体何をしている会社なのか、私には分からないな。



「お、戻ってきたね、大将。」

「特に何もなかっただろう?」

「特ではないが、一応起こったことはある。」

「焦らすようなこと?」

「なんというか、その、お前のPC、突然落ちて、起動しなくなった。」

「は?」

「また口止めのために4Kモニターを搭載したノートPCを買ってくれるかね。」

「困ったな。ダミーを用意するにしても、ヤフオクで領収書は切れないからね。」

「いいじゃん、アークにでも行って、適当なゲーミングPCでも買ってきて、SSDだけ換装すれば。」

「裏側ってカバー1枚なんかね、ああいうやつ。僕はどうも良くわからない...。を、起動した。」

「そりゃ良かった。熱暴走かね。」

「ああ、これACアダプタの付け根の接触が悪いのか。バッテリーが0%になってた。」

「大事に至らず、何より。」

「でも、秋葉原でそんなワークステーション用のACアダプタなんて売ってるかね。」

「アマゾンか、最悪はメーカーでいいんじゃね。どうせ、僕はお金を払わないし。あ、そう言えばakibajunksで昔170WのACを買った覚えがあるな。」

「170Wって。そのノートPC、なにかおかしくね?」

「おかしいかな。家でも同じの使ってるけど。まあ、NVIDIAのGPUが載ってるから、その分の上乗せなんでしょ。」

「無駄にハイスペック。ゲーミングPCと同じじゃん。」

「モバイルワークステーションだから。言い訳だけど、ゲームはやらないから、ワークステーションだよ。」



ようやくエアコンの修理が終わったみたい。修理というより、交換?よくこんなに早く手配して、交換してくれたよね。不動産会社は凄いな。

使えるようになったからその辺はどうでもいいんだけど、それにしても、エアコンなしで裸で寝てて、かつ風邪をひいてるオトーサンはどうなんだろう。

「は~、ようやく昼寝が出来そう。」

「そういえば、なんかオトーサン、風邪ひいたみたいだったよ。」

「あの人も無理がたたったか。私のせいだよね。」

「多分。だけど、今更な気がする。元々昨日から、体調が良くなかったのかもね。」

「そうあって欲しい。私が、どこまで責められなきゃいけないのか。」

「責任逃れをしようとしても、ご近所さんに喘ぎ声を聞かせた罪は消えないよ。」

「アンタって、結構サラッと酷いこと言う娘になったわね。」

「そう言われても、事実だし。しょうがないんじゃない。もしかしたら、私だって思われることもあるだろうし。」

「アンタだって、してるときには、小声で悩ましい声を出すじゃない。」

「あ~、それとは比較にならないほど、大きな声でしたよ。いいとか、イッちゃうとか、本当に言う人いるんだって。少なくとも三軒先までは聞こえるような声だった。なんか、雄叫びみたいな感じ。」

「また、私に首を括れと?」

「やっちゃったものはもう忘れるしかないよ。それに、オトーサンも一緒だから、大丈夫だよ。オトーサンはともかく、おねえちゃんは見た目はまだ20代ぐらいにしか見えないし。」

「フォローになってないのよ。あの人を巻き込んで、恥を晒すなんて、奥さん失格じゃない。」

「そう思ってるのはおねえちゃんだけ。完璧主義が仇になったってことで。」

「......。」

おねえちゃんは、今日はずっと顔面蒼白というか、赤くなったり、青くなったり忙しい。


「あ、そうそう。昼寝するのは別にいいけど、シーツはちゃんと敷いてから寝てね。」

「ねぇ、せめて手伝ってよ。」

「う~ん、ま、いいや。手伝う。」



「ただいま~。」

とりあえず定時で帰ってきたものの、明かりがついてない。

「う~ん、どうしたものか。出掛けてるのかな。」

連絡もなかったし、昼寝でもしてるんだろう。それにしては、夜眠れなくなる時間のような気がするけど。

リビングにも明かりがついてない。エアコンはついてるけど、これは夏場はずっとついてるものだから、別におかしなことはないか。

明かりをつける。やっぱりいないけど、寝室の扉が閉まってる。やっぱり寝てるのか。

「ごめん、入るよ。」

自分の寝室に入るのに、なんでこんなことを言ったか、自分でも分からなかった。

明かりを付けてみる。ベッドでふたりとも寝てる。微笑ましい...いや、年齢を考えるとちょっと脅威だよな、仮に親子ほどの年齢差あるのに、同じ寝顔って。

「ん...あ、オトーサン?」

娘が気づいたみたい。

「ただいま。」

「あ、うん、おかえり。」

そうしてベッドから出てくる娘...え、なんで裸なの?

「あの、服着ようね。」

「あ、ごめん。そう言えば裸で寝てたんだった。」

答えになってないんだけどな。

「ん...え、あなた?」

「あ、ただいま。」

彼女はなんか真っ赤になっていた。

「おかえり...なさぃ。」

こっちはこっちで、ベッドから出てこない感じ。

「あの、ちょっとリビングで待っててもらえるかな?」

「どうしたの?別にいいけど。」

「あ、おねえちゃんも服着てないから、出られないんだよ。」

いやいや、理解が出来ないんだが。なんで、二人とも裸なの。

「じゃあ、ごゆっくり。」

と僕はリビングに出て、扉を閉めた。

なんだか良くわからない状況になってきたぞ。


「で、なんで二人とも裸で寝てたの?」

尋問というより、素朴な疑問だった。

「う~ん、何から説明すればいいのかな。おねえちゃん。」

「黙秘します。」

「じゃあ、代わりに説明するけど、オトーサンに電話したあと、エアコンの修理が終わって、私達、結構汗をかいてたんだよね。それで、二人でシャワーを浴びようってなったんだけど、そこで、その...え~と、」

「その辺は察するから別に言わなくていいよ。」

「話が分かるね。それで、ちょっと疲れちゃって、そのままベッドで寝てたというわけ。」

「...溜まってる?」

「そういう意味では、発散した。」

「で、そちらの黙秘権を行使している方は?」

「当然、発散してた。理性があっても、結構大きな声を出すんだなって。」

「ちょっと、言わなくていいことを言うなっての。」

「だけど、可愛い声だったじゃない。あ、そういう甘えた声は、自分から出ないと思ってたりする?」

「む~...。」

「ははは、あ、うん。」

「やっぱり引くじゃない。この人は私達が思っている以上に純粋なのよ。」

「やったことはその通りだし、しょうがないよ。ね、オトーサン。」

「親としては、娘と何やってるんだって話になるけど、まあ、昨日のこともあるし、しょうがないんじゃない。」

「あなたもそこに同調しないでよ。」

「いや、生きてて、発散したい時はあるでしょ?あなたもずっと疼いてたってことでいいじゃない。」

「そうやって、モラハラよ。親子揃ってモラハラ。」

「事実を話す...というより、何をやったか別に話してないよ?」

「察するって言った時点で、言ったようなものじゃない。」

「別に気にしてないし、僕も、昨日はごめん。」

「ごめんじゃないわよ。あ~もう、私だけが生き恥を晒し続けてるじゃない。」

「あ、じゃあ、生き恥ついでに。連絡なかったから夕飯を買ってきてないんだけど。」

「分かりましたよ。私が払えばいいんでしょ。好きなものを出前すればいいわ。」

「別にそこまではいいけど。」

「私の気が収まらない。お願い、出させて。」

「脅してるような感じで、なんかやだな。」

僕も結構酷いこと言ってる気がする。それでも、よほど恥ずかしかったんだな。生理現象なのに。

「じゃあ、何を食べようか。オトーサン。」

「好きなものを注文していいよ。僕もそれに合わせるから。」

「それじゃあ、今夜は、とんかつです。決定ね。」

「あ、じゃあ僕はヒレカツにしてね。」

僕らは割とあっけらかんとしてた。彼女にしたら、面白くないんだろうな。


そして、あっという間に定例会の時間。

「しかし、昨日も驚いたけど、あなたは大丈夫?」

「何よ。そうやって分かったみたいな顔して。」

「まあ、確かにそうなんだけどさ。なんというか、あの娘がいないうちに聞くけど、本当は子供が欲しい?」

「...うん。我慢しきれなかった。母性なのか、それとも単に私がはしたないだけなのかわからないけど、あなたの両親と、私の親戚に会って、ちょっとその気になったのよ。」

「そっか。本心を言えば、僕も欲しいけど、この年齢だと、リスクも大きいし、君の負担が大きすぎる。」

「でも、やっぱり女の幸せって、愛する人と子供を授かるところに行き着いちゃうのかなって。」

「君がそう思うのも無理ないか。自分がもう一人いて、その娘を娘だと思えって言っても、実感が湧かないだろうしね。だから、あの娘の親ってスタンスじゃないんでしょ?」

「そうねぇ。私もずっと思ってるけど、やっぱり娘って感覚がないのよ。歳の離れた姉妹って感覚。そうなってる自分が怖いのよ。」

「あなたも、娘と言ってる自分がいて、自分が突き放されてるような感覚になってるのかもね。だから、意地でも、僕との関係を繋ぎ止めたかったんだよ。」

「......。」

「見放されないと思っていても、本能がそれを理解出来なかった。だから、理性が飛ぶぐらい、僕を求めたし、あの娘とも感覚を共有したかった。そういう大人な答えじゃ、ダメなのかな。」

「...案外、客観的に見てるのね。元をたどれば、そういう気持ちになってたのも事実かもね。」

「気にすることじゃないよ。それに、君がいなくなったら、困るのは僕らのほうだしね。」

「利害の一致?そう見られてもしょうがないか。」

「それは寂しい答え。好きで愛してるってだけで、君は満足出来なくなってるんじゃない。だから、無性に溜まってしまったのかも。」

「ごめんなさい、本当にどうかしてたと思ってる。あなた達は、私のことを本当に好いてくれて、私に優しいから、甘えたくなる。」

「それはお互い様だよ。まあ、僕が普段甘えてばかりだし、あなたも、僕にも、あの娘にも、甘えていいんじゃない。そんなに後悔することはないよ。」

「...だけど、声がダダ漏れだったって。」

「あ、うん、そうだね。だけど、それで君は気持ちよかったんでしょ?」

「一番気持ちよかったのは、最後の一回だった。やっぱり、私は、理性があって、初めて快感を覚えるんだなって。」

「夜中の話をしてます?結構、僕はキツかったんだけどな。」

「あ、そう言えば、風邪をひいてるって。」

「多分、睡眠不足がたたったんだよ。ちょっと大変だった。」

「ごめんなさい。エアコンが壊れた状況で、何やってるんだって話よね。」

「そうでもないよ。あんなに可愛い声で喘ぐんだって、僕も初めて知ったしね。」

「...モラハラよ。そうやって、あなた達は面白おかしく話をするんだから。」

そう笑いながら、彼女もようやく気分が晴れたみたいだ。


「お風呂上がったよ。おねえちゃん、先に入ったほうがいいんじゃない。」

「うん、そうする。」

彼女は着替えを持って、お風呂に向かっていった。


右肩により掛かるように、いつものように体を預けてくる。この娘はいつまで、こうしてくれるのかな。そんなことを思いつつ、

「...で、結局昼間はどうしてたの?」

「いや、昨日さ、オトーサンが、あの人歳を取ってないとか言ってて、ついつい確かめたくなったんだ。」

「それで、気づいたら、お風呂でレズプレイってわけね。どう思った?」

「オトーサンの言ってること、あながち間違ってないと思う。おねえちゃんの身体つきは、私より幼い。幼いが正しいのかな?オトーサンと会った頃の、私の身体みたいだった。」

「う~ん、なんか、納得行かないよね。」

「私達のこと、言えないよね。おねえちゃんが、高校生時代の私の身体みたいだって、自分で分かってるのかな?」

「多分、気にすることなく生きてたから、そういうものだと思ってたんでしょ。で、君が成長してるから、不思議に思う程度で。」

「深刻に考えることもないのかな。なんか、腑に落ちない。」

「そうでもない。前にも言ったけど、あの人と君を知らない人が見た時、双子だって言う人がいるぐらいだけど、君は徐々にサイズアップしてるわけで、それを喜ぶ男のほうが多いってことだよ。親としても、恋人としても、悪い虫はついて欲しくないけど、それぐらい君のほうが女性なんだよ。」

「でも、おねえちゃんも女性だよ?」

「意味合いがちょっと違うかな。性別じゃなくて、より女性らしいのはどっちかと言った時、今だったら、君のほうが女性らしい。あの人は、まだ成長過程のような感じを受ける。」

「そうやっておだてても、なんにもないよ。」

「おだてとか、そういう話じゃない。君は、自分であんまり大人だと思ってないけど、立派な女性になったんだよ。」

「...認めてくれたの?」

「そうだね。だけど、君は僕の娘だからね。良い意味でも悪い意味でも、君に感情移入もするし、君を守り抜く必要があると思ってるしね。」

「なんか、そう言われちゃうと、私も、もっとオトーサンを好きでいることを考えないといけないのかな。」

「いや、もういいよ。諦めてるから。僕は、最後まで親であり、恋人であり続けるような努力はする。その代わり、君と並び立つことは出来ない。」

「その相手は、おねえちゃんなんだもんね。」

「本当に好きなのは、もしかすると、僕が告白した頃の君達なのかもね。だから、納得は行かないけど、すんなり受け入れることは出来たんだよね。」

「オトーサンって、ロリコン?」

「キレイよりは、可愛いのほうが好きかな。」

「私は?」

「可愛いけど、あんまりキレイにはなって欲しくない。」

「そういう時は素直だね。」

「そう?そう思ったから言ったんだけど。」

「でも、分かる気はする。ずっと可愛くいられるかわからないけど、私のことも、気にかけてよね。」

「え、今でも十分気にかけてるけど。足りない?」

「そんなことはないよ。それに、私はそこで努力しないといけないってことも分かったしね。」

「あんまり人のこと言えないけどさ、君はまだ好きなものだけ選んでいても、大丈夫な年齢だから。今を楽しんでいたほうがいいよ。」

「オトーサンのほうが、ジジくさいというか。揚げ物が駄目って、どういう内臓をしてるんだか。」

「衰えは早いよ。あっという間にもう40超えてるしね。」

「覚悟しておく。毎日が楽しいだけだったら、苦労しないだろうしね。」

頭を撫でてあげる。なんか、久しぶりに撫でてる気がする。

「ごめんね。昼間は君に迷惑を掛けちゃった。お礼にもならないけど。」

「久しぶりに撫でてくれた気がする。なんか、嬉しいな。」

「あ、やっぱりそうだよね。なんか、そんな気がした。」


「で、最初に戻るけど、君から攻めてったわけでしょ?」

「そういうとこだよね。オトーサンの駄目なところ。」

「いやいや、気になるよ。だって、同じ顔...あ、そうか、君はちょいロングにしてたんだっけか。」

「どうせ、自分で自分を慰めてるとか、そういうことが言いたかったんでしょ?」

「よく分かるね。」

「オトーサンの緩急の付け方は、普通の人とはかなり違うから。自覚しといたほうがいいよ。」

「そうなのかな?自覚するように頑張る。で、どうだった?」

「なんか、結構しつこいね。そうだなぁ。不思議な感覚だったよ。ほら、初めてだったから。なんか良くわからないまま、気持ちよくなってたというか。」

「自分でするよりも?」

「恥ずかしいこと聞くなよ。でも、他人に触れられるっていうのが、すごく気持ち良かったのかな。多分、オトーサンとエッチしてる時と、そんなに変わらないよ。」

「なんか、ますます僕はどうでもいい感じになってない?」

「いやいや、男女でやるから、エッチは興奮するんでしょ。どっちかというと、今日はいけないことをしてたような気がする。」

「いけないことか。昨日も言ったけど、やっぱりエッチに対して、僕は罪悪感があるんだな。」

「律儀というか、純粋というか、なんか、本当に可愛い人だね。君は。」

「う~ん、別に、僕は可愛くなくてもいい気がするけどね。」

「そういう意味じゃない...いや、まあ、もういいや。」


それから、おねえちゃんがお風呂から上がり、オトーサンもお風呂に入って、エアコンの帰ってきた寝室で寝ることが出来た。

なんだか、この2日間、すごく長かったような気がする。でも、いろんなことがあって、いろんなことが分かった。分からなくてもいいことも分かったしね。

やっぱり、三人で仲良く暮らすのが、私達には合ってるのかもしれない。

もうしばらくは、二人の娘で生きていこう。そんなことを、改めて思った2日間でした。




じゃあ、今日はこんなところで。またね。

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