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Life 75.1 It Happened One Night, Part I 季節が気分を狂わせる

お盆休みを実家で過ごした僕らは、またいつもの部屋に戻ってきた。

さすがに3日も留守にしていると、外より余計に暑く感じるものだ。


「暑いわね。早くエアコンの前に行って、涼みたいわ。」

「まあ、そう言われてもね。すぐに涼しくなるわけでもないからね。」

娘を一番槍で突入させたので、エアコンはすぐに動作してくれたはず...はず。

「ね~え、オトーサン、ちょっと来て?」

「うん。」

声は寝室のほうから聞こえてきた。

「なんか、リモコンのスイッチを入れても、エアコンがつかないんだけど。」

「え、そんなことある?」

リモコンの電池が消耗してるのかな。ま、とりあえず電池を入れ替えてみるか。

リビングに戻ってみると、エアコンの前で冷風を浴びている彼女がいた。

「ほら、涼しくなってきた。やっぱり、厳しいときには、文明の利器よね。」

「こっちの部屋は問題ないのか...。」

とりあえず、充電式の電池に入れ替えた。ちょっと薄かった文字盤が、しっかりと黒くなった。リモコンの電池切れだったのだろう。


「ほら、リモコンの電池入れ替えてみた。」

「お、早いね。んじゃ、スイッチオ~ン。」

あれ?

「つかないね。」

「つかないな。」

思ったより状況は深刻なのか。

「もしかして、エアコン壊れた?」

「もしかしなくても、壊れたっぽいか。」

面倒くさいことになってきた。さて、とりあえず、リビングに避難するか。


「...というわけでして、エアコンの修理って、どれぐらいかかります?」

「業者の手配はしておきますけど、少なくとも今日はもう無理ですね。明日以降で、どなたか立ち会って頂ければ。」

「分かりました。それじゃあ、お手数ですが、手配をお願いします。」

とりあえず不動産会社に電話をしておいた。これで、あとは修理が出来れば御の字だが。

「今日はさすがに無理だって。」

「そっかぁ。どうする?寝室を開けっ放しにして、少しでもリビングの空気を取り込む?」

「それぐらいしか方法がないよな。もしくは、三人そろってこたつで寝るとか。」

「布団がないと寝られないし、そもそも、うちには布団がないわよ。」


無駄にキングサイズのベッドだから、それはどうしようもない感じ。いいところ、枕は持ってこれるとしても、さすがに掛け布団、もしくはタオルケットでもあればなんとかなったのかもしれないけど、あるわけない...いや、あるじゃん。

「僕の引っ越し荷物の中に布団ってなかったっけ?僕と、君の分。」

「あ、そっか。あれってどこにしまってるの?」

開けたくないが僕の押入れの中だよなぁ。僕の服が上に乗ってるから、出しにくいんだよなぁ。

「いや、労力をかける割に、1日程度しか使わないなら、わざわざ引っ張り出すのもどうか。」

「あ、え~と、もしかしたら涼しくて、かつ寝室で寝る方法を思いついちゃったんだけど?」

「正直嫌な予感しかしないけど、どんな感じ?」

「私もヤキが回ったのかな。寝るときに裸でベッドに入ればいいんじゃない。まあ、裸と言わず下着ぐらいならそれほどでもないんじゃないかしら。」

「なんか、それはそれでいかがわしい感じするけど。裸のほうが、普段からなれてるというか。」

「でも、エッチすることなく...あ、そうか、あなたは運動より睡眠なのよね。」

「なんか辱める感じで嫌なのは重々承知の上で、裸で寝るのが正解なのかもしれない。」

「これが本当の裸の付き合いってやつなのかな?」

「絶妙に意味が違ってる。けど、まあ似たようなものか。お風呂に入るか、ベッドに入るかの違いみたいなものだし。」

「そういう勘違いさせるようなことを言ってどうするのよ。私達、男女なんだから、一応節度は持ったほうがいいわよ。」

「でもさ、君がいい始めたことじゃん。あ、そんなに意識しちゃうの?」

「それはそうよ。暑いってだけで、全裸で寝る家族がいるって思っちゃった私よ。逆に気持ち悪いとか思わないの?」

「どこが気持ち悪いのかがわからないけどね。君がいいなら、別に僕も抵抗感はないし。」

「あ、じゃあさ、三人で一緒にお風呂入ろうか。ちょっと狭いけど、面白そうだよ。」

「う~ん、お風呂は、ちょっとアレだね。なんか、エッチなことしてる感じがする。」

「そうかな?あ、でも、確かに物足りない時って、終わったあとのお風呂でも始めちゃうもんね。」

「あ~あ~、分かったわよ。私が変なこと言ったのがいけないのよね。ごめんなさい。」

「別に変なことじゃないのに。」

「まあ、世間様には、あんまり口外することではないよね。」


とは言え、確かにリビングを開けっ放しにしてたとして、寝室が涼しくなるかわからないし、何をきっかけにして、急にエンジンがかかるかもわからない。

どうせ娘が冗談とかいいながら、僕を色々煽って、そのまま始めるとか、ある程度想像がついちゃうんだよね。

「もしかして、溜まってるのは、おねえちゃんなんじゃないの?」

ビクッと体が震えてた。あんなにわかりやすいのは、初めて見た気がする。人間というものは、案外正直に出来てるものだな。

「そんなことは......、うん、ちょっとあるかも。」

「珍しいこともあるんだね。いつもそんなにノリノリな感じじゃないのにね。」

「でも、いいんじゃない。さすがにまだ昼間だから、ちょっと始めようって気にはならないけど、君がしたいならしよう。」

彼女が珍しく、本当に恥ずかしがったような顔をしていた。いたたまれない感じなのかな。

「ごめんなさい。なんか、最近、うまく発散出来ない。いつもだったら、こんなこと思わないのに。」

娘が軽いため息をついた。

「なんとなく分かってた。なんか、最近のおねえちゃん、あんまり落ち着きがなかったもんね。」

「うん、ごめん。最近、あなたが遠い感じがするのよ。いつも横にいてくれるのに、なんでそう思っちゃうのかなって。」

「うん、分かった。普段は甘えるほうだけど、こういうときは、僕に甘えていいんじゃない。」

「ふしだらな女だって思わない?」

「なんで思うの?別に、そういう関係なんだから、当然のことだよ。」

「私、おばさんなんだよ。この娘が発情してるのと、違うんだよ。」

「うん、だけど、現にそう思ってるんだから、素直に言っていいんじゃない。」

「なんか、すごく恥ずかしいよ。」

「恥ずかしがってもいいじゃない。それは、生きてれば思っちゃうことだよ。」

「本当にごめんなさい。」

「謝るようなことじゃないでしょ。君がしたいなら、僕も頑張るからさ。」

彼女が僕にしがみついてきた。そんなことしなくても、僕は逃げないのにね。

落ち着かせるために、背中に手を回して、抱き寄せた。それでもしっかり掴んだままだった。


「で、オトーサン、真面目な話なんだけどさ。」

「うん、どうしようか。普段だったら、別になんとも思わないんだけどさ。」

「よりによって、エアコンが壊れたときに、こうなっちゃうのって。」

「それ以上は言わなくてもいいよ。ごめん、また君を一人きりにしちゃうね。」

「いやいや、それはいいんだけど、音がさ、やっぱり聞こえるわけじゃん。」

「そうだなぁ。あ、じゃあ、悪いんだけどさ、今日はホテルを予約してあげるから、そこに泊まってくれないかな。ここより快適だと思うから。」

「え、いいの?私はまた二人で何処かにしけこむのかと思ったのに。」

「難しい言い回しを知ってるんだな。あ、そうじゃなくて、明日は僕らも仕事だし、泊まったあと、修理の立会をお願いしたいんだ。」

「あ、そうか。大学が休みだから、私が見てなきゃダメなのか。」

「ごめんなさい。娘に迷惑かけるとか、親として最低だよね。」

「大丈夫だよ、おねえちゃん。おねえちゃんも甘えたい時があるって知ってるし。」

「ごめん、僕は逃げないから、ちょっと手を離してもらえないかな?」

「あ、ごめんなさい。私、必死だったから、つい。」

「分かってるよ。少し落ち着いた?大丈夫?」

「大丈夫。なんだか、恥ずかしいところ見せちゃったかな。」

「じゃあ、オトーサン、一つ約束。」

「うん、大体見当は付くけど、なに?」

「私と後でデート1回、もちろん休憩付ね。」

「休憩と来たか。分かった。君がそれでいいなら、一緒に行こう。」

「約束だからね。じゃあ、ホテルに泊まる準備しようかな。」

「別に手ぶらでいいんじゃない。あ、駅前のところでいいよね。」

「ちゃんと決済しておいてよ。」

「カードで予約しておくから心配しなくていいよ。」


「んじゃ、明日の朝には帰ってくるね。」

「業者が来るのかも含めて、明日LINEするから、ちょっと気にしてて。」

「はいはい。それじゃ、お二人さん、お楽しみに。」

そんな感じで、ファミレス2食分のお小遣いをあげて、ホテルに行った娘。いつも、こういう時に犠牲になってくれるのはありがたいけど、そうさせないようにしなきゃいけないよな。

さてと、うつむきがちなこの人が、また僕の顔を見られるようにしないと。

「ごめんなさい。あの娘にも、あなたにも、私のつまらない欲求だけで、無理強いさせちゃって。」

「君の欲求がつまらないわけないだろう。いつもは大黒柱って言ってる人が、そんなところでくじけてもらっても困るんだけどな。」

「じゃあ、今日は何でもしてくれる?」

「...エアコンついてない寝室でいいなら。もしくは、お風呂かな。」

「場所はどこでもいいの。ただ、今日はいっぱい愛して欲しい。」

時々思う。この人は、一度タカが外れると、ずっと求めて来る。普段我慢しているのかどうかわからないから、なおさらに彼女に応えられるのか。最初から自信がない。そんな自分に悔しさを覚える。


「ふたりとも大丈夫かな。」

私の発言で、おねえちゃんのスイッチが入ってしまった。それに対して、私が出来ることは、多くはない。

別におねえちゃんと慰め合うとか、そういうことは考えてないし、それじゃあ、いつものエッチな日と変わらない。私が身を引いて、その間に二人で立ち直ってもらうぐらいしか、私には出来ない。もどかしさというか、立場的に私が一番悩まなきゃいけない。恋人だけど、私の父親。そして恋敵だけど、私の母親。私にはわからないけど、きっと、二人だけの時間が必要になってしまったと考えれば、不思議なことはない。だけど、それにしては、おねえちゃんの感情が少しおかしい気がした。

「信じるしかないよね。オトーサン。」

そう、私じゃ二人の関係を助けることは出来ないんだから、二人でなんとかしてもらわないと。

「お待たせ致しました。ヒレカツ御膳です。」

「はーい。ありがとうございます。」

っと、ま、私は私でホテルを楽しめばいいだけ。二人には二人の時間を楽しんでもらおう。



そうしてまで二人きりにしてもらったものの、ひざ枕をしてあげたら、そのまま眠ってしまった。時々こういう感じになると、本質的な可愛い部分が出てくる。

何か、張り詰めていたものが、彼女をおかしくしてしまったのだろう。特に何をするわけでもなく、ただ寝顔を見ているだけ。案外、あの娘に寝顔を見られたくなかっただけなのかもしれないとも思ってしまう。それぐらい、可愛い寝顔だった。


「...ん、ん~ん。」

起きたかな。至福の時はここまでだった。

「おはよう。」

「あれ、なんで寝てたんだっけ?」

「僕も良くわからないけど、ひざ枕してあげたら、気持ちよく寝てたよ。」

「あ、なんか、すごく恥ずかしい。」

「そんなに恥ずかしがることじゃないよ、それより、落ち着いた?」

どうも、寝つく前のことを思い出したらしく、顔を真赤にして、手で覆い隠した。

「やだ、なんでそんなことを聞くの?私が発情してるような感じじゃない。」

「でも、そうなんだろ?別におかしなことを言ってないよ。君から誘ってきても、別にいいじゃない。」

「......そう言われちゃうと、甘えたくなっちゃうじゃない。」

「ま、甘えるのか、興奮するのか、どっちでもいいけど、今夜は君と二人きりだから。気が済むまで、君の相手をしてあげるよ。」

「ごめんなさい。私、また嫌われるようなことをしちゃった。」

「大丈夫。僕も、あの娘も、君を思ってそうしたんだ。嫌いになるわけないよ。だから、甘えちゃえばいいんだよ。」

「うん、君は、本当に優しいね。やっぱり、出来る子だよ。」

久々に聞いたな。この人が出来る子って言う時は、若干若いときの君になってる時だ。彼女が混乱気味になると、そういう言葉を使うようになる。

ひざ枕から頭を離し、起き上がって僕にしがみついてくる。不安になってるのだろう。

また、背中に手を回して、抱き寄せてあげた。それぐらいしか、出来ることはない。

「大丈夫だから。君がしたいことをしていいんだよ。」

「じゃあ、夕食が食べたい。そういう時間でしょ。」

言われてみれば。昼も食べてなかった。実家から帰る時、普段は夕飯まで食べてから帰ってるから、なんにも準備してなかったな。

「ごめんね。準備してない。出前でもいい?」

「うん、しょうがないよね。私のために、動かなかったんだよね。」

まあ、いつもの出前戦法でちょうどいいか。さすがに、彼女を家においたまま買い物に行くと、不安に潰されてしまうかもしれない。

背中に回していた手を、そのまま頭に乗せ、撫でてあげる。娘には効果あるんだけど、彼女に効果あるかな。まあ、やってみるか。

「安心した?どこにもいかないから、とりあえず出前注文したいな。」

「うん、ごめんなさい。私、君が頼んだものなら、なんでもいいよ。」

あれ、なんかおかしい。こんなに依存してくるような人だったかな。僕の奥様は、もっと強欲で、ちょっとワガママで、何より芯の通った人だと思ってた。

知らない一面だ。1年半も暮らしてるのに、こんなに落ち込むようなことはなかった気がする。


とりあえず、夕食のリクエストはなかったので、ガストの宅配サービスで、なんとなく注文。

もちろん、デザートも注文しておいた。と言っても、ガトーショコラを食べてるシーンを見たことないんだよなぁ。ま、いいや。

落ち着いたのか、良くわからないけど、とりあえずこたつの定位置に座って、ずっと僕の左袖を掴んでる。

ささやかな抵抗なんだろうか。それとも、僕がどこかに行ってしまうと思ってるのだろうか。


ピンポーン

「お、きたきた。」

僕が立ち上がろうとすると、袖を離してくれた。けど、その視線は僕にずっと向けられている。

そして、僕は、玄関で夕食を受け取って、リビングまで持ってきた。あ、そう言えば、今は食器がついてないんだな。

「ちょっと食器を持ってくるから、好きなのを選んで。」

こういう時に、気の利いた言葉が出てこない。彼女からしたら、今日はリクエストは特にない。デザートまで注文しちゃったし、これで拗ねることはないと思うんだけど。

そんなことを考えながら、台所からフォークやら、スプーンやらを持って戻る。


あれ、特に興味はない?

「どうしたの?好きなものを食べていいよ。あ、デザートは君のだから。」

う~ん、オムライスとパスタ、それとなんとなくポテトフライを注文したんだけど、お気に召さないのかな。

「先に選んでいいよ。私は、どっちでも大丈夫。」

んじゃ、僕はパスタにするかな。容器を開けていく。特に気にしなかったけど、僕が開けるのを待ってたような感じだった。

「はい、じゃ、オムライスね。ポテトは好きにつまんでいいよ。あと、好みかどうかわからないけど、ガトーショコラも君のもの。」

「ありがとう。なんか、デザートまで用意してもらって。嬉しい。」

「今日はお酒飲む?」

「今日はいい。君に、これ以上醜態を晒したくない。」

「なら、いつも醜態を晒してるの?ま、そういう日もあるよね。」

「うん、ごめんなさい。」

思ったより、なんか落ち込んでる。逆に怖い。


彼女は黙々とオムライスを食べ、僕がつまめないぐらいの速さでポテトフライを平らげ、そしてデザートのガトーショコラも消してしまった。

「ちょっと、元気が出てきたかも。」

「やっぱり、落ち込んでたんだね。」

「なんか、今日の私、おかしくない?」

「うん、いつもとは違う気がする。もっと色々話しながら、ご飯を食べる感じだよね。」

「私も良くわからないけど、すごく緊張してる。君と二人で部屋にいるなんて、いつもと同じなのにね。」

「そういえば、久々に聞いた、僕を君って呼んでるの。」

「いつもってなんて呼んでたっけ。あなただっけ?」

「いや、別にいいんだ。君が緊張してるなら、そのままでいいよ。」

とは言ってみたけど、多分このあとのことを想像して、それで緊張してるのかな。そういう仲でもないし、君のことを何度も抱いてるのにね。


「あの、私、お風呂、先に入っていい?」

「あ、いいけど、沸かさないとダメじゃない?」

「じゃあ、沸かしてくる。」

「うん、片付けは僕がしておくから、お願いね。」

別におかしなことを言ってる感じではないけど、多分、一人でお風呂に入りたいんじゃなくて、二人で入りたいんだろうな。

ということは、食後の運動ってやつになるのかな。まだ早い時間だけど、まあ、別にいいか。

そんなことを思いつつ、食器の片付けをして、ちょっと座椅子にもたれかかった。彼女の緊張が、僕にも伝染しているようだ。

「お風呂沸かしてきた。お湯が溜まるまで、その、え~と、」

「二人で入りたいんだよね。そう顔に書いてあるよ。今日は暑かったし、シャワーを一緒に浴びよう。」


一緒にシャワーを浴びるだけじゃ済まされない気がする。少なくとも、3回戦ぐらいまでは覚悟してるけど、自信がない。

「じゃあ、私、先に入ってるから。少ししたら、君も入ってきて。」

「うん、分かった。」

そうやって、そそくさとお風呂へ向かっていく彼女。ぎこちないというか、本当に単に緊張しているだけじゃない気がする。

念のためとは思うけど、少なくとも、避妊だけはしっかりしておいたほうがいいか。



「なんだろうなぁ。二人きりにしたのがまずかった気がする。」

ホテルに泊まってる私が言うのもおかしいけど、多分、おねえちゃんは、子供が欲しくなってる気がする。

そうでもない限り、昼間からあんなことを言うのはおかしい。私は約束をちゃんと守ってるけど、おねえちゃんが自分から破ろうとしてる。

オトーサンは心配しなくても大丈夫だけど、おねえちゃんの勢いにのまれる可能性はある。でも、二人の子供を見てみたいという思いもある。

「どっちが正しいんだろう。やっぱり、オトーサンに伝えておくべきなのかな。」

邪魔しちゃいけないという思いもあるけど、間違いが起きてもいい状況でもない。だからこそ、私が止めなきゃいけない気がする。

そう思って、私はケータイで電話をしてみることにした。


「あ、もしもし、何かあった?」

「ごめん、私がおねえちゃんだったらって考えて、一つ伝えたいことがあるんだ。」

「多分だけど、それ、僕も今思ってる。あの人、子供を作りたいんだろうって。」

「やっぱりオトーサンだよね。私も、ずっとその辺が気になってたの。なんで、あんなことを言い始めたのか、最初は分からなかったんだけど。」

「思考はほぼ一緒ってことか。二人になってから、よそよそしくなったり、変に緊張したりしてたから、何かあるのかなって思ってさ。で、可能性を色々考えたんだけど、そこにしか行き着かないんだよね。」

「どうするの?まさか、すんなりと乗るわけじゃないよね。」

「そこは心配ない。僕はその気がないから。でも、一つまずいなと思ってることがあって。」

「もしかして、避妊具のストックがないとか?」

「そうなんだよ。まさか、君に頼むわけにもいかないし、幸い、3個はあるから、それで収まればいいんだけどね。」

「そうは言ってもだよね。私、ドラックストアに行って、家に持っていこうか?」

「そんなことを子供に頼むのは、親として情けないけど、今は君にお願いするしかないか。ごめん。」

「しょうがないよ。私も、オトーサンも、そこに行き着くには、時間がかかったし、そうしよう。」

「本当にごめんね。休憩じゃなくて、お泊りになっちゃうかな。」

「冗談言ってるような状況じゃないでしょ。とりあえず、30分ぐらいで家に買って戻るから。」

「あ、それじゃあ、もう一つお願い。気付かれたくないから、靴棚に置いておいてもらいたい。」

「お安い御用。なるべく静かに入るから。」

「分かった。ちなみに、今は一緒にお風呂に入る前で、彼女はシャワーを浴びてるから、なんとかこっちでもするのは止めるようにしておく。」

「待ってて。すぐに届けるからね。」


なんで当たっちゃったかな。そこまで考えちゃうオトーサンもすごいけど、偶然の一致にしては、出来過ぎな話だよなぁ。

ま、とりあえず、ドラックストア...って、この近辺にあったっけ?え、まさか、西日暮里にしかない?

ごめん、オトーサン。ちょっと時間がかかるかも...。



真夏の夜の出来事は、次回に続く。

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