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Life 29 Marine Date, Part 2 マリンデート、その2

娘がアルバイトで家を空ける日、彼女(奥様)が「私もデートに行きたい」と僕を誘いました。


「海」が見えるデート

僕は、彼女を「海」が見える場所に連れて行くことにしました。向かったのは、京浜東北線の鶴見駅から乗るローカル線。まずは、古き良き商店街が残る昭和駅で、昭和にタイムスリップしたような雰囲気を楽しみます。そして、終着駅である海芝浦駅へ。ホームの先には、海と首都高の橋が見える、都会の中の不思議な空間でした。


二人の時間

電車が1〜2時間に1本しか来ない静かな駅で、僕たちはゆっくりと会話を楽しみます。彼女は、僕の仕事内容や、40歳になっても若々しい身体を保つ秘訣を語り、僕もまた、彼女との穏やかな時間が幸せだと感じます。また、彼女は僕が自由奔放で、常に驚きを与えてくれるところに惹かれたこと、そして結婚指輪を欲しがらない理由を話してくれました。


幸せな帰宅

日が沈み、海と夜景が両方楽しめる絶景に感動した僕たちは、電車で帰路につきます。駅の構内で夕食を済ませ、娘のためにお土産も買って帰宅します。娘は二人のデートの様子を尋ね、彼女は僕とゆっくり話せて楽しかったと話します。そして、彼女は「若さを保つ秘訣」として、年相応の言動を隠していることを明かしました。


こうして、僕たちは、家族として、そして夫婦として、それぞれの時間を大切にしながら、穏やかな毎日を送るのでした。

「突然ですけど、私もデートに行きたいです。」

奥様からそんなことを言われた。この前、娘とデートに行ったことが、結構効いたらしい。

「いや、行くのは構わないけど、あの娘は?」

さすがに娘がいる状況で、二人で出かけるのは気が引ける。

「あ、私はこれからバイト。ちょっとシフトずらしてもらったんだよね。」

この娘の心遣いというか。年上が娘に気を使わせるなよって言いたい。


「ねえ、行こう。一緒に連れて行ってほしいです。」

若い人のような口調で彼女が話掛けてくる。40にもなるんだから、そろそろそういうのは止めてほしいところ。

「で、どこか行きたいところはある?」

時間はいつものようにもうすぐ正午を指していた。当然ながら、遠出するにもかなり距離に制限がある。


「あ、じゃあ、私も海が見たいな...なんてね。」

「同じリクエストしてどうするんだよ。まったく。」

少し考えた。あ、まあ、海といえば海なところが一つ浮かんだ。

「それじゃあ、海へ行ってみましょうか。ついでに、行きたい場所もある。」

「え、オトーサン。おねえちゃんのほうが豪華?そういうことはない?」

「もっと近場だから。そんなにいくつもバリエーションもないしね。」


と、彼女がベッドルームで着替えている。出てくると、白い帽子に、水色のブラウスに白いロングスカート。

この前、娘が似たような服で出てきたところを見ると、やっぱり同一人物なんだなと実感する。しかし、どこかの広告に出てきそうな格好だな。

本来なら、歳を考えなさいと言いたいところだけど、この人はとにかく若く見えるので、この恰好でも特に違和感がない。

「どうかな。かなり若作りしちゃったけど。」

「いや、いつもとちょっと違うなあって思って。褒め言葉で若いねって。」

「いつもは若くないってこと?」

「いや、あなたにしては、ずいぶん攻めた恰好だなって。あの娘でも似合う。」

「はいはい、どうせ若くないです。」

「そうじゃない。あなたは僕に比べたら、まだまだ十分に若く見られてますよ。羨ましい。」


家を出る時、

「それじゃあ、お土産買ってくるから、バイト頑張ってね。」

「うん、そっちも、気をつけてね。こういう時のおねえちゃんは危なっかしいから。」

「子供じゃないもん。私だってもういい歳したおばさん。」

おばさんを強調されても、それはそれで困るんだが。

「あ、あんまり歩くとは思わないけど、出来ればスニーカーのほうがいいよ。」

「分かった。あなたがそういう時は、絶対スニーカーがいいもんね。」


ガチャ。


「ん?」

左手を出してきた。

「うん。」

右手で繋いであげた。と言っても、夏だし、案外そこはフレキシブルに対応。


「ねぇ、考えてみたら、あなたとのデートって、久しぶりよね。」

「そうか。一緒に住んでから、初めてだったりするかも。」

「なんか、毎日がデートみたいな感じだものね。まだまだ、私達は知らないことが多い。」

「そのためのデートでいいんじゃない。僕も、なんとなくで行く場所決められるだけ、成長したでしょ?」

「本当よね。でも、あなたは出来る子よ。必ず面白いところへ連れて行ってくれるはずよね。」

「どうかな。ま、珍しい体験は出来ると思うよ。」


今日は京浜東北線を延々と南下する。

「ねぇねぇ、もう少し雰囲気とかないの?」

「いや、そんなに遠出することはしないから、このままでいいんだよ。」

「海って言うけど、もしかして羽田空港とかから見えました、とかで誤魔化されてもなんか嫌だなあ。」

「まあ、近い場所には行くけど、行くのは間近が海ってところかな。」


で、乗り換えるのは、鶴見駅。

「着きましたよ。乗り換えです。」

「え、なんか都会の駅だけど。」

「いいんだ。ここが始発駅だからね。」

「???」


ホームから階段を上がると、その先にホームがあり、短い電車が止まっていた。

「今日はこれから、この沿線をウロウロしたいと思います。」

時刻は14時ぐらいだった。まあ、小旅行にはちょうどいいだろう。

「へー。なんか、ローカル線みたいな感じ。」

「まあ、都会の中の、って感じかな。」

休日だけあって、乗客はそれほど多くない。まあ、そういうところだからね。


電車で一駅。明らかに古そうな駅で降りる。

「足元気をつけてね。結構広く空いてるよ。」

手を差し伸べた。

「ありがとう。なんか、スカートはいてくるようなところじゃなかったね。」

「それは、海まで取っておけばいいよ。」


古めかしい階段を下りていき、Suica出場機にタッチする。

「どう?」

「うーん、なんか暗いね。」

「じゃあ、ちょっと駅の出口に出てみようか。」


外が異様に明るく見える。

「どう?」

「うーん、あ、これってなんか昔の白黒映画とかで見たことがあるかも。昔の商店街みたいな感じ。」

「ここは、そういう場所。1930年にできてから、ほぼ姿が変わってない。それぐらい、時代が止まっている世界。」

「もうすぐ100年経つんだね。こんなところだったんだ。ちょっと見方が変わるねえ。」


「一箇所。ここを見せておきたかったんだ。僕らが生まれるずっと前から、今もある風景。」

アーチ状の柱に、暗い感じ。いいところに昭和30年代ぐらいに戻ってしまった感じ。この雰囲気がいい。

「イマイチピンと来ない感じするけど、雰囲気は確かにいい感じよね。」

「まあ、ピンと来ないのもわからくはない。でも、こういうところもあるって、知ってほしかったんだ。ここは、戦争も、地震も耐え抜いた場所って意味でね。」

「なるほど。そんな場所なのねぇ。また大地震が来ても、ちゃっかり耐えそう。」

「そうだなぁ。こんなところが今もあることに、未だに不思議だもんね。今後も残っていくことを願うよ。

まったり眺めていたが、そろそろまた電車に乗る時間が来た。


「それじゃあ、海の見えるところ。行ってみようか。」

「う~ん、ここから行けるって、やっぱり想像出来ないのよね。」

再び、短い電車に乗る。

ゆっくりとした速度で電車は走っている。山手線ですらそんなに飛ばしていないように思えてるけど、それよりゆっくり。

そしてゆっくりと支線へと進んでいく。

「なんか、ここって東京から20キロぐらいって忘れちゃうね。」

「車窓も工業地帯だから、今日はほぼ動いてないしね。時間の流れもゆっくりとしてる感じだよね。」


おおよそ10分。終着駅が、目的地。

「さ、ここが今日のデートスポット。」

「あ、ホームの先端が海じゃない。こんな駅があるんだね。目の前に橋あるよ。あれは?」

「あれは、確かつばさ橋だったかなあ。首都高の橋だね。」


有名な海芝浦駅。ここでも、海の香は十分にする。

「ここは駅から出ずに、目の前の公園に行くから。とりあえず、自販機で飲み物でも買おうか。」

「あ、買う買う。ちょっと待ってて。」


と、公園の中のベンチに二人で腰掛ける。

「へぇ。海かあ。海って言うより、なんか、運河?」

「まあ、そうね。純粋に海って感じじゃないけど、時間はまだまだあるし、ここは夕暮れが綺麗なんだよね。」

「ちょっと早く来すぎたってこと?でも、二人でゆっくり話す時間も久しぶりだし、ちょうどいいかもね。」


電車は1~2時間に1本程度。割と界隈ではメジャーな駅だし、電車が着くと賑やかな駅。

ただ、電車が出発すれば、また二人っきり。静かなでのんびりとした空間に戻る。これが都会の中にあるという不思議。

いつもは三人で和やかな感じだけど、今日は中年夫婦ののんびりとした会話。年相応になってしまうのは、そういう年齢だもんね。

「さてと、何を話そうか。」

「そうねぇ。まずは、なんでこんな暑いところで喋ってるのかなって。」

「まあ、でも海風みたいなものもあるから、そこそこ涼しいでしょ?」

「言われてみても、暑いものは暑いわよ。」

一口、さっき買った麦茶を口に含んだ彼女。


「しかし、ここも東京なのよね。」

「東京...神奈川だけど、まあ、多摩川の向こうは東京か。」

「あんまり変わらないでしょ?川崎だって、東京みたいなものよ。」

「地理ガチ勢だと、この辺がちょっと気になるんだよね。」

「あなたはその辺、細かいのよね。正しいのはあなただけど、世間一般のイメージって私の方じゃない?」

「どうなんだろうね。まあ、確かに川崎だ横浜だって言っても、結局は東京...横浜だと横浜かなぁ。」

「はいはい、分かりました。ここは東京。今日は東京でいいでしょ?」

「ごもっとも。ゆっくりと時間が流れてるんだから、まあ、焦らず、実のない話を。」

「そうねぇ。つまらない話をしないと、時間なんて潰せないかもね。」


「ところで、あなたの仕事って結局は総務部なんだっけ?」

「う~ん、まあ、合ってると思うんだけどね。総務部の備品係って扱いなのよ。私は係長。」

「そうなんだ。勤続約20年って?」

「そうね。新卒からずっと同じ会社。別にいい事もあるわけでもないし、悪いこともそれほどないから、特に不満はないのよ。」

「そうなのか。そうだよな。あの時期に新卒で入れたんだもんね。」

「そういうあなたは、なんか訳の分からない中国系の企業よね。」

「会社とは名ばかりで、実際は名ばかりで色々やらされてるよ。お金の関わらない裏方みたいなもん。」

「大丈夫なのかしらねぇ。色々問題があるとは言われてるけど。」

「問題しかないよ。大体、日本の法律に照らし合わせれば、何人も逮捕者出てるレベル。当然、僕も逮捕されるだろうね。」

「いやいや、旦那が犯罪者なんて、紹介出来ないわよ。さすがに嘘でしょ?」

「冗談だよ。だけど、まあ、会社が会社の体をなしてない。だから、危険なのはしょうがないと思ってるし、そういうリスクを負っても、この仕事は合ってるんでね。」

「イヤよ。あなたが塀の中に入って、面会室でしか会えないとか。」

「さすがにそういうことはしてないから。ね。安心して。」

「ま、じゃあ、旦那様は裏社会の人とでも言っておきましょうか。」

「それカッコいいね。なんか厨二病っぽいけど。」

「言うわけないでしょ。私が恥ずかしいわよ。」



「どうでもいいこと...でもないか?聞いていい?」

「なんでも聞いていいわよ。」

「じゃあさ、君の身体、どうしてあんなにキレイなのかなって。」

「ん?私の身体。」

「いつも抱いてるときに思うんだよ。あなたの身体って、40歳にしては、たるんだところもないし、引き締まってる。僕みたいな感じじゃないからさ。」

「それってさぁ、誰もいないとは言え、外で聞くこと?」

「いや、なんでもいいと言われたから、なんか聞いてみたかったの。」

「そういう人だったわね。私も、見えない苦労をしてる。そんな感じでいいのかな。」

「君は、本当に女性として、いい女。容姿も完璧、体つきも完璧、そして僕を愛してくれてる。たまにそのことで不安になるんだよね。」

「あら、どうして?普通、そういうときって自惚れない?自分の女よ?」

「たまに見るんだけどさ、夢だったらどうしようって思う時があるんだ。気づいたら、娘も、あなたもいなくなってる夢。」

「ふふふ、あなたもそういうことを考える人なのね。私はね、あなただから好きなのよ。あなたじゃなければ、今頃結婚指輪もらうなり、結婚式なりやってると思うわよ。」

「そう言えば、結婚指輪、どうしていらないって言ったの?婚約指輪も?」

「それは簡単。あなたが経済的に死んでしまうからよ。それに、指輪だけが絆の証じゃないでしょ?特にあなたの場合、指輪なんて無くしそうだし。」

「なるほど。確かに、僕も不幸者だと思ってるけど、指輪を失くすところまで考えてなかったよ。」

「そもそもキーボードが打ちにくいとか、そういう理由で外しそうじゃない。で、どこかになくなりました、じゃ、私の気持ちが収まらないでしょ?」

「なら、最初からない方が安心、って訳か。」

「それにね、あなたをそういうもので縛るのは、どうかと思ったのよ。私があなたを好きな理由。それって、あなたの自由なところなのよ。」

「自由なところ?」

「そう。あなたと一緒だと、斜め上の発想が出てくることが期待できたりするの。昔、京都で私を助けてくれたりとか、文化祭でやることやって昼寝してたりとか、私を好きだと泣いてくれたこと。常に、あなたからは驚きしか出てこない。でも、一緒に暮らして、あなたがそんなにすごい人でもないんだなってことがわかっちゃったけどね。」

「前から言ってるけど、僕は大したことをしてない。君たちが、それを過剰に受け取ってくれていただけないんだよ。」

「でも、そういう人が、一番に驚いたのは、私を育ててくれてたこと。まあ、変な状況にはなってるけど、あの娘もあなたも自然体で生きてる。そこが、羨ましくなっちゃったのかな。最初は心配ばかりしてたけど、あなた達と会って、話をして、一緒に暮らして、私も会社では猫をかぶってるけど、家の中ではすごく気楽に生きていられる。」

「う~ん、そういうものなのかな。僕は真面目に生きてるつもりなんだけどなぁ。」

「あなたの生き方の問題かもね。私は、昔から真面目なつもりで、あまり道を外れるような生き方はしてこなかったと思うの。でも中学の時に、同じクラス、同じ班になったから、あなたの生き方が好きになってしまったのかもしれない。だから、あなたのこと、好きなのよね。」

「それは、君も同じだよ。同じことをやって、面倒をかけて、そして泣き虫だった僕をなだめて、そういう人をずっと好きに思ってた。でも、今までの彼女達には、それを感じなかった。いや、僕が好きでもなかったのかもね。そういう意味で、あなたが迎えに来てくれたこと、あなたが一緒にいてくれるところ。これだけで、僕は嬉しい。」

「やっぱり、私達、あの頃の気持ちが続いていて、今も何か期待してるのかもね。」

「そうかもしれない。だから、一緒にいてくれることが、楽しいのかも。」

「そうね。不毛なやり取りかなと思ってたけど、意外に気持ちが入ってた。そうさせるのも、あなたの魅力なのかもね。」

「それは、君が僕に伝えたいことがあったからだよ。そうじゃなきゃ、本気で話をしないものね。」

「やっぱり、あなたには不思議な魅力があるのかな。あなたにはごまかしも、嘘も、少なくとも私のことに関しては見抜かれる気がする。」

「それは、きっと君が真面目で、正しいように生きたいからだと思うよ。僕は、不真面目で、無気力、楽しければそれでいいんだ。だから、冗談も言うし、必要なら嘘も付きとおす。でも、君の前で、それは通用しないことを、僕はもう知っているしね。少なくとも、君には、冗談ぐらいかな。」

「だいたい、あなたは嘘を突き通せるほど、ひねくれてないものね。素直で、優しくて、騙すようなことを出来るような人じゃないもの。」

「そう?あんまりそう言われることがないから、なんか...恥ずかしい。」

「そうやって、褒めると恥ずかしがるの。可愛いんだから。」


「しかし、そうか。あなたがそんなに身体を褒めてくれると、色々やってる甲斐はあるかな。」

「僕も同い年だからだけど、本当に無理はしないでよね。まだまだ、ずっとあなたと一緒に居たいんだから。」

「大丈夫よ。自分の体は自分が一番知ってるし、辛い時はしっかり休む。あなたにも、甘えさせてもらうんだから。」

「でも、おおっぴらに甘えるってことをしてこないよね。やっぱりあの娘がいるから?」

「う~ん、単純に、慣れてないのよ。私が家族と暮らしてる時間より、一人でいた時間のほうが長くなってしまった。それはあなたもかもしれないけど、やっぱり甘えるって、大事なことだと思うのよね。」

「甘えることって、素直になることなんじゃないかって思うんだよ。あの娘を見てるとそう思う。あの娘の甘え方は、本能に訴えかけてくるし、ダメな時はしっかりダメと言ってあげれば、引く。そうして、親密になっていくんじゃないかな?」

「私達は、まだお互いに素直になりきれてないのかな?」

「そりゃ、素直になれって言われて、いきなり出来るものじゃないでしょ。僕はともかく、君は真面目に肩肘張って生きてきたんだろうし。」

「じゃあ、例えば、あなたが素直に甘えてきたら、どんな感じなのかしらね?」

「ここじゃ言えないようなことを頼むと思うよ。家庭の中だから、言えること、そんなことはたくさんあるよ。あなたは?」

「私も...う~ん。でも、髪の毛を乾かして、セットしてくれるじゃない。私は、あれが今は限界かもしれない。そのうちすごいことを言い出すのかもしれないけどね。」

「楽しみは取っておいたほうがいいよ。あ、でも、取っておいたままじゃ意味がないよね。」

「大丈夫。色々聞いて欲しいお願いもあるし、ね。」

「あ、お金の掛かるお願いは無理だからね。」

「言わないわよ。お金なら、私のほうが多分持ってるもん。」


こうやって、体調のこと、仕事のこと、娘のこと、将来のこと、そして他愛も無いどうでもいいこと。ゆっくりと、会話を楽しむというのはこういう事なのかな。

二人共、こういうところは大人になったなと実感する。娘につられて普段は若い感じになってるけど、本来はこうあるべきなのかなって。

いやいやそんなことない、別に会話ぐらい若くてもいいか。と、余計な心配をしながら、そろそろ日が落ちかけてきた。


「あ、こんな感じになるんだ。海と夜景が両方楽しめる。」

「都会の中でもこういう場所がある。多分、普段何気ない場所でも、夜景が綺麗な場所だってあるはずだけど、僕らは見逃しがちなのかもね。」

「しかし、よく知ってたね。どこでこういう情報仕入れてくるわけ?」

「いや、ここは自分で来たことがあったんだけど、夕方、ちょっと急ぎで回ってて、ゆっくりと来てみたいなと思ったから、今日来てみた。」

「思い出の場所?」

「というより、心残りの場所だった。今が18時半。結構長い時間いたけど、どんな感じで夜景が映るのかが知りたかった。」

「よかったね。綺麗な夜景を、最愛の奥様と見れて。嬉しい?」

「一人で来るより、二人で来るほうが、やっぱり嬉しいね。同じものを見て、分かち合うって、意外と大事かもね。」


それから、来た電車に乗り、帰路についた。年甲斐もなく、電車の中で恋人繋ぎして乗ってたり。見られてると思うと意外と恥ずかしいんだなと実感。

別に遠い場所に行ったわけじゃない。帰りに品川の駅ナカに寄ったり、東京駅で下りてグランスタでレストランに入ったり。

そんなことをやってるうちに、気づけば、21時を回っていた。待ってる娘のために、ちょっとしたお土産も買った。





ガチャ

「ただいま~」

「おかえり、おねえちゃん。デート楽しかった?」

「うん、まあまあ、かな。この人がもう少し深く知れたような気がした。」

「僕は、色んな話が出来て楽しかったよ。もっと年相応の事を家でも話せばいいのに。」


玄関で僕の方を向き直し、

「そういうことは、隠しておくのが、若さを保つ秘訣なの。」

「ははは、変なの。別に隠さなくても、あなたは十分若々しいのにね。」

我が家の奥様は、娘以上にチョロい。すぐ赤くなって、わかりやすい。


「夕飯は食べてきたから。これお土産ね。」

「あ、Tops、ということは、チョコだね。」

「なんだかんだでちょっと疲れたよ。開けて、みんなでちょっとゆっくりしよう。」



どうせ明日も休みだし。のんびりしながら、過ごせばいいよ。

まあ、僕と娘がお昼まで寝てる未来しか見えない。見えなくてもいいよね。



今日はこの辺で。

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