Life 72 We do the same thing even when we are apart. 三者三様
「おはよう、おかーさん。なんか手伝おうか?」
「嬉しいねぇ、でも、掃除機なんて、掛けられるのかい?」
為せば成るって言うけれど...
「う~ん、やっぱり娘ちゃんも掃除出来ないのね。」
「え、おねえちゃんも?」
「ふたりとも、なんであの子を選んだのか、よく分かるわ。あの子は家事もやれば出来るからね。」
「を、知ってるんだ。おかーさん。」
「しかし、ふたりとも家事が出来ないのね。親子揃って、面白い。」
「あはははは....はぁ。なんで駄目なんだろう。私。」
「娘ちゃんは若いんだから、やり方が分かれば出来るようになるよ。安心しなさいな。」
「うんうん、やり方教えてよ。」
「それは明日ね。悪いけど、招かざる客が来てるからね。」
「おはよう、早いね。」
「おはようございます、お姉さん。」
「オハヨウコザイマス。」
「Oh,Good Morning Brother.」
そして、両親の影に隠れてる、息子。
「ばぁ」
「を、おはよう。弟くん。」
「むすめちゃん、おはよ~。」
すっかり私に懐いてくれてる。本当に可愛いな、この子。
4人揃って、朝ごはんを待ってる感じ。ちなみにおとーさんは、自分で勝手に起きてきて、自分でパンを焼いて食べるんだって。
「ぼくね、あさおきられるようになったよ。」
「偉いじゃん。私は目覚まし使わないと起きられないよ。」
「ぼく、えらい?」
「偉い偉い。良く出来るね。」
頭を撫でてあげる。ニコニコしながら、ご機嫌なようだ。そして、私のおかげなのか、お姉さん夫婦は、TVを見てる。
「しかし、不思議だよね。普段は他人には警戒するのに、娘ちゃんはこの子に警戒されずに色々やらせてるもんね。」
「私が母親に見えるんですかね。でも、こんなに懐かれると、そのうち一緒に寝たりとか出来るかな?」
「一緒に昼寝したりしてくれると、私もやりたいことやるんだけどね。」
旦那さんは特に何も言わない。いつも優しく見てる。というか、あんまり私達と会話しないのかな。
「まったく、何やっても可愛いんだから。本当にどうしてこんなに可愛いの?」
「かわいい?ぼく、かわいい?」
「あ、でも男の子だから、かわいいのは嫌なのかな?」
「かわいくていーよ。むすめちゃん。」
娘ちゃんって呼ばれてるけど、私はこの子と同列なんだよな。立場とはいえ、まだまだ子供に見られてるのは、なんか嫌かな。
「ありがとね。面倒見てくれて。」
「私はいつもオトーサン達に面倒見てもらってる身だから、こういうときは下の子の面倒ぐらい見ないと。」
「真面目だよね。おにいにその辺似てる。不思議と、奥さんの連れ子なのに、おにいの面影がある。」
あれ、私とオトーサンが5年同居してるの、バレちゃってるかな。私の憧れで、私の恋人。そりゃ、背中を追いかけてるんだもん、似てくるかもね。
「えへへへ、オトーサンに似てるって言われると、ちょっと複雑。」
「おにい?おにいどこ?」
「今は来てないよ。また別の日に会おうね。」
ま、でも今日はオトーサンは仕事中だよね。今回は会えないかな。
「はぁ~~~~~~~。」
あなたは今日、仕事だから、見送ったあと、張り切って掃除機掛けてみたけど、案外これはこれで疲れるのね。
あなたの言うように、一応部屋の隅まで掛けてみた。あなたが週末だけ掛けてる理由がわかった。
「意外と掃除って大変なのね。あの人の実家、お母様って本当に良くやってるわよね。」
私は花嫁修業とかやったことないから、そもそも一人で生きることは出来ても、維持したりとかは苦手なのよね。あの娘が部屋に来る時だけきれいにしてて、クローゼットは大変なことになってたの、思い出すなぁ。でもあれもまだ2年前の出来事なのよね。
そう思うと、この前話した通り、私達、急速に家族になってるのかな。お互いが好きだから、お互いも尊重出来る。それで十分なんだよね。はっきり言って、家族と暮らすなんて、出来ないと思ってたけど、慣れるともう離れられない。あなたも、あの娘も、5年も一緒に暮らしてるんだから、当然、あなたも心配するわよね。もう、立派な親だもん。
「正直、暇よね。」
たま~に思う。一人の過ごし方がわからなくなってしまった。刺激が欲しい人は、昼間っからホストにでも通ったり、あるいは浮気でもするのかな。モラルには反する感じがするけど、私だって、憧れないわけじゃない。でも、家族が壊れることをしたいとも思わないのよね。ま、大体、得体の知れない旦那様と、本来いないはずの娘と暮らしてるんだから、それだけでちょっと違う刺激を受けてるのは間違いないのよね。だからこそ、一人で暮らしてた時に部屋でどうしてたのか分からなくなっちゃったのよね。
そんなことを考えながら、テレビを付けて、Youtubeの見出しをパラパラっとする。せっかくの夏休みなのに、不思議なものよね。
一人は好きじゃないと思えるようになったのは、あなた達のおかげなのかもしれない。だから、一人が退屈だと思えるのか。
「たまには、カフェにでも行ってみようかな。流石にお酒はマズイよね。」
昼飲み出来るファミレスとかでビールを煽るのもいいのかもしれない。まあ、見た目はそうでもないですけど、私だって42歳ですし。でもね、やっぱり私も女性ですし、その辺はちょっと悩むところだよね。あなたとあの娘に見つからなければいいかと思ってしまうけど、それって他の人の浮気みたいなものなのかな。
真剣に悩むところなんだろうか。昼間からビールを飲みたい。掃除機も掛けたし、早朝ランニングもした。そのご褒美に、一杯ぐらい煽ってもいいと思う。ねえ、あなた、こんな女、本当にどう思う?
「へっくしょん。」
「どうしたの?エアコン効きすぎ?」
「ん~~~、いやさ、世間的には、このPCパーツ業界、書き入れ時じゃない。」
「そうだね。でも俺たち問屋連中にはあんまり関係無かったりするよね。営業ぐらいでしょ。量販店で手伝わされてるの?」
「え、あれはもう派遣法とかで禁止になったんじゃないの?今どきそんな危ない橋を渡れるぐらいのパーツ屋ってある?」
「あそことか、あそことか。」
「まあ、わからんでもないけど、自社で人がいるだろ。別に手伝いいらないと思うんだけどね。」
「ま、いいじゃない。そのおかげで、朝からでっかい画面でウマ娘。いい加減UDぐらいのクラスが作りたいよね。」
「よくやるよね。僕はどう頑張ってもUFクラスが限界だ。何が違うんだろうね。」
「デッキもそうだけど、その割に、な気がする。」
「僕の育て方に問題があるんだろう。なんとなく、こういう育成ゲーは、突然活路が見いだせるときがあるからね。」
「経験値の差ってね。それは十分な理由に値する。」
「...なぁ、今日ってさ、ウマ娘を終業までやるわけ?」
「幸いやることはなにもないし、そういう日があってもいいんじゃない。あ、別に秋葉原へ出掛けても、黙っといてあげるよ。」
「そしたら、適当な時間で、ちょいとメシ食いがてら、秋葉原行ってみるかな。」
「じゃ、ビールと、山盛りポテトフライで。」
ごめん、私。ごめん、あなた。たまにはこういう日があってもいいでしょ。
やっぱり、私、意思が弱い。いや、なんというか、意地を張って生きる必要がなくなったからかな。
今まで、会社に行って、嫌でも回ってくるお局ポジションを10年近くやってきて、それも私の役目かなと思ってたけど、本当の役目は、二人の大きな子供の行く末を見守る母親だった。それが嫌なわけじゃない。でも、やっぱり、女のワガママを感じてしまう。私、40過ぎのオバさんなのに、あなたの気を引きたくてしょうがない。でも、それが本来、恋人同士で通ってくる道だってことは、なんとなくわかってきた。二人とも、大人の男女から入ってきてしまったから、何気ないことが恥ずかしく感じるだよね。
「ビール、おまたせしました。」
でも、そんな恥ずかしいことを考える時間はおしまい。というか、これからが至福の時間だもんね。ま、別にバレても、今日は鬼はいないし、存分に休みを過ごそうかしら。
「う~ん、19,800円か。」
僕の目の前には、XPERIA 5 IIIの赤ROM品がディスプレイされている。XPERIA 5の中でもMK.IIIは特別な存在。XPERIA 1の機能をほぼ詰め込んだ最後のモデル。
眼の前にあるとはいえ、19,800円には悩んでしまう。でも、これは赤ROMとはいえSIMフリー。だから、別に使えないわけじゃない。少々高い値段を叩いてでも、買ってしまうべきなのだろうか。でも、買ったことを知られると、またちょっとしたお小言を言われてしまう。思いっきり怒られるならいいんだけど、お小言ぐらいが一番効くと、あの人も知っているんだよね。だから、個人的にはそのお小言を聞く覚悟で、お金を出すしかないと思っている。
とはいえ、19,800円あれば、別のものも買えるんじゃないかなと思ったりする。う~ん、こればっかりはなんとも出来ないな。悩むというのは、余裕がある証拠だから、贅沢なもの。そう考えると、もっと贅沢な使い道があってもいいんじゃないかって思うんだよね。
安心しきってるのかな。子供は昼寝するぐらいがちょうどいいと言うけど、私といると、この子は言うことを聞いてくれる。お姉さんの旦那さんより言うことを聞くあたり、彼のお気に入りに私は入っているんだろうなって思う。
お姉さん夫妻は、しまむらに行ってくると言って、私にこの子を預けていった。無論、おかーさんにも頼んでいたけど、私の行動に対して、この子は何かしらの反応を示してくれる。いま、ゆっくり眠っているのも、私と一緒にいて、はしゃぎすぎたのかもしれない。ねえ、オトーサン。私って子育ても出来るようになったんだよ。
「さて、お昼でも作ろうかね。娘ちゃんは食べる?」
「あ、私も手伝う。」
「いいよ。アンタはその子を見ている係。今は親代わりだよ。」
「分かった。じゃ、お願いします。」
料理を教えてもらえる機会も、そうそうあるわけじゃなさそう。ま、それにしても、君が帰るまでは、私も親代わりを頑張らないとね。
う~む、グリーンなんだよな。これがシルバーだったら即決だったんだけど、どうしたものかと悩むものだ。
良くわからないが、意外に数が出ないんだよな。出てるものはきれいなものばかり。もちろん歓迎すべき点ではあるが、そうそう手が出せる金額じゃないんだよね。XPERIAって、やっぱり潜在的な人気はずっとあるんだよな。それとも、数が出ないから高いのか。まあ、理由は良くわからないけど、キレイだからという理由で倍の金額はちょっとつらい。
大人しく諦めるべきか、それともここは勢いで行ってしまうべきか。やっぱり、二人が歯止めになってるんだよな。こういう時に思ってしまうよ。
「っぷはぁ~。」
いやあ、ファミレスでやる一杯もなかなかいいわね。とりあえずポテトをつまみにしてたけど、デザートもいいわよね。
あれ、プリンなんかあるじゃないの。そうか、ここはジョナサンじゃないからチーズケーキはないのね。ガストって、もうちょっとかゆいところに手が届くというか、微妙なラインナップよね。ま、デザートも追加で頼んで大丈夫そうだわ。
でも、あなたにはまた酒臭い女って言われるんだろうなぁ。いっそ、怒ってほしいんだよね。優しくされるのが、やっぱりいちばんキツイ。
「トイレっと、忙しいな、君は」
「むすめちゃん、いそがしい?」
「まあ、主に君のことに忙しいんだけどね。」
「トイレいく、おしっこ。」
「トイレまでもう少しだから頑張れ。男だろ。」
「がんばる。おしっこ、もうすこしがまんする。」
...やれやれ、昼寝から起きたと思ったら、トイレだったか。でも、このフルスロットル感が、小さい子って感じするよね。
残念ながら、君の相手は、私しかいないんだよ。私の言う事聞いてくれるかな?
「トイレのとびら、あけて?」
「はいはい、開けますよ。」
開けると、彼専用の台にのぼる。その間に、便座を上げる。
そのまま、おしっこをしてる。漏らすよりはいいけど、トイレ行くのに一人付き添いがいるのは、ちょっと大変だよね。お姉さんはすごい。
「ズボン、あげて?」
「そのぐらい自分でやりなさいよ。ったく。」
ズボンを上げると、無邪気な男は、また居間に戻っていった。私は水を流し、便座を戻して、彼の使った台を横に寄せる。
しかし、まあ、これぐらいとは思ってるけど、普段やりなれないことを楽しく出来なくなってる自分がいるな。あんまり良くないよね。
「どれ、お昼食べようか。」
「うん、あ、息子くんは?」
「今日はそうめんだから、少しは食べるかな?」
「プリンと、チョコバナナサンデー、それとパンケーキも頂こうかしら」
タッチパネルを操作すれば、わけわからん猫型ロボットが運んでくるんだから、いい時代よね。そして、二杯目行っちゃおうかしらね。
どうしよ。急に悪いことしてる感じがしてて、面白くなってしまった。この背徳感。なるほど、浮気とか、ホスト通いとか、ほんのちょっとだけわかっちゃう感覚ね。
...やっぱりダメよね、私も。早朝ランニングしてるとか、規則正しい生活してるとか言っても、バレないところで昼間からお酒を飲んでる。これじゃあダメよね。言い訳出来ないもの。でも、その背徳感がうまさに繋がってると思うと、ジレンマを感じてしまう。
私、一人で暮らしてた時、こんなにお酒を飲んで、気分良くなってたのかしら。たった2年前ぐらいの話なのに、お酒を飲む量は増えてる。ああ、もしかして、これが同居の代償なのかもしれない。あんまり隠していることもないと思ってたけど、案外、二人と暮らしてて、生活面で甘えてしまうようになったのかもしれない。まして、二人は許してくれちゃうから、私は甘え続けてしまう。二人を信頼しているからこその、この行動に、二人は幻滅しないかな。あれ、急に心配になってる。
「お、真夏の秋葉原散策はどうだった?」
「うん、我慢の連続だね。ハッキリ言って、キャッシュで暮らしてない僕には厳しい環境なんだよ。」
「いいじゃん。でも、少しは現金を持ってたほうがいいんじゃない。」
「現金があると、使っちゃうんだよ。消費行動に貢献してるってね。」
「どれ、俺もマックに行ってこようかな。昼飯は食べてきたんでしょ?」
「一応ね。僕は昼間は食べないけど、ケバブ食ってきた。たまに食いたくなる。」
「ケバブねえ。マックと大差ない気がするけど。ま、そんじゃ行ってくるわ。」
同僚が事務所を出ていく。なんやかんやで、やっぱり事務所が秋葉原に近いのはメリットだ。
「しかし、事務所が俺一人だけど、本当に顔見せして帰ってるんじゃないのか、アイツらめ。」
「あーあ、食事は、やっぱり家族じゃない食べないのね。まだまだ代わりにはなれないってことなのかな?」
「でも、食べ物でいたずらしないだけ、分かってきてるから、それだけでも十分でしょ。」
息子君は、一人でミニカー遊びしてる。なんだかわからないけど、男の子はみんな乗り物に憧れるものなんだよね。
「オトーサンも、一人でこんな感じで遊んでたの?」
「大変よ。悪いことをすれば、お父さんがあの子をバンバン殴ってたから。今だったら保護観察対象になりかねないよ。」
「しつけ?でも、間違ってることを鉄拳制裁するっていうことが、今の理屈っぽいオトーサンになったのかな。」
「そういえば、あの子ね、2歳ぐらいからずっとキティちゃんのぬいぐるみを離さなかったんだよ。ほら、今でもぬいぐるみ買ってくるでしょ?」
「そうそう。オトーサンって、なんかぬいぐるみ好きだけど、そういうことだったんだ。」
「殴られたり、押入れに閉じ込められたりしても、ずっとそのぬいぐるみを持ってたのよ。あの子にとって、本当の親はぬいぐるみなのかもしれない。」
「そのぬいぐるみは?」
「最後は中身が出るぐらいになっちゃったから、わざわざお祓いして、供養してもらったよ。流石に、なにかに取り憑かれてたら嫌だったからね。」
「だから、今でも膝の上で、ぬいぐるみを抱きしめてることがあるんだ。よ~くわかった。変に可愛いところあるよね。」
「私達は、あの子に一生の傷を負わせてしまったのかもね。だから、誰かに相手にされたいのかもしれないね。」
「そっか、オトーサンは、もしかすると家族が必要だったのかも。おねえちゃんも、私も、オトーサンにいいようにされてるのかもね。」
「そしたら、あの子も立派になったってことかな。一応ね、心配はしてるの。ただ、やっぱりここ数年はメンタルの浮き沈みが少ないと思うよ。あなた達のおかげ。」
「やだなぁ、おかーさん。私は、オトーサンが嫌じゃなかったし、今はすっごく頼りにしてる。それは、オトーサンの強さだと思う。」
「ねぇ。だからといって、連れ子まで引き受けちゃうあたりが、あの子の優しさなんだろうね。昔から、何故か基本的なことはできないのに、誰もできないようなことを理解できる。だから、いきなり結婚して、いきなり娘ちゃんがいる状況でも、なんとなく暮らしていけちゃうんだろうね。」
「褒めてないね。おかーさん。」
「あの子は褒められることに慣れていないし、疑いも持つ。用心深いといえばその通りなんだけど、他人が信用できないのよ。親も含めてね。」
「...ずっと孤独で、20年も独り暮らししてれば、家族が欲しくなるのかな?」
「なぜか運が悪いのよ。ここまでの20年で飄々と暮らしていたわけではなく、何も考えることができなくなってしまうぐらい、独りぼっちのこともあったと思うのよ。そして、切り替えができない子だから、雰囲気が悪くなるのよね。悪循環に陥るというか。でも、結婚して、家族を持ったせいか、少し前向きになれるようになった。それぐらい、二人には力があったんだね。」
おかーさんがなんとなく感傷的にそんなことを言っていた。私がいるおかげで、オトーサンが少しでも前向きになれるのなら、私はいつでもオトーサンの味方になるよ。
「私って、あの人の伴侶なのよねぇ。」
頭でっかちといえばいいのか。でも、起こったことを起こったように話せるだけの観察眼を持ち、それでいてコミュニケーション能力も高い、更に天然ジゴロ。今までモテない人生だったのは環境だって言うけど、あの人の魅力を誰も理解できなかったような気がする。あの娘が最初に気づいて、そして私もそこに入って行って、今はちょっとした依存関係にもなってる。人生って不思議なものよね。15歳のときに、すでに別の能力が開花して、私を好きだと言って泣いてくれた。それだけでも異質な存在よ。その人が、隣にいてくれる。心強さ半分、興味本位半分って感じよね。
いつも思う。15歳の私が素直にあのとき、彼を受け入れることができただろうか。それは、この年齢になることで、初めて受け入れられるように、仕組まれていたのだろうか。でも、今ならあなたの言ってることをだいたい理解できるのだから、私が大人になっただけなのかもしれない。そう、彼は15歳にして、すでに半分大人の思考を持っていたのだろう。当然、周りに馴染めないけど、なんか変な人止まりだったのは、誰も彼を知ろうとしなかったからなのかもしれない。そう、彼の孤独は、もっと昔から始まっていて、私達に出会うまで、いや、きっと私があなたに会おうと思ったとき、初めてその孤独から開放されたのかもしれない。
「強がりなのに弱くて泣き虫なんだけどなぁ。」
私のこのファミレスの豪遊も、彼は特に咎めないだろう。そして、合流しかねないだろう。あなたが変わっているからではなく、きっと、あなたがそう望んでくれるから、私達をめったに咎めないのだろう。私はまだまだあの人の思考を読むことができない。けど、私達が一番いい方法を理解して、その方向へ導くのだろう。それが、私の伴侶、あなたなのよね。だから、あなたが泣いてくれた時は、何かに導くための行動だったのよね。少なくとも、私はそう信じたい。だから、今のあなたの伴侶と胸を張って言えるのかもしれない。
「でも、昼間からファミレスでビール飲んでるような奥さんは、やっぱり嫌よね。」
きっと、この行動も許してしまう。私を信頼して、一人の人間として自立してることを知ってるから、多分なんにも言わないんでしょう。でも、時々思う。少しはあなたも干渉してほしい。
ひとりの会社、やることはなし、そして適当にネットサーフィンをしている中、ふと考える。
僕には、なぜ家族ができたのだろう。娘は、責任上僕が面倒を見た。けど、もう自立できるぐらいに成長した。そしてあなた。彼女は、事あるごとに僕を安心させてくれるけど、それは彼女にとって、負担になっていないものだろうかと思う。それが家族というものだったら、別に問題ではない。でも、やっぱり心配させたくないし、不安にさせたくない。彼女達は許してくれるけど、僕のように壊れてしまわないか、心配になる。おそらく、僕は完治しない。一度壊れた人間は、もう元には戻らない。常に何かしらに不安を感じることがストレスとなって、それが暴発して、発作を起こしてしまう。正直、二人はどう思ってるのだろう。僕から離れていくようなことにはならないだろうか。
「本当は、ただ付き合ってくれてるだけなのかもな。」
そう思ってしまう。それぐらい、僕はすべてがダメだと思う。こんな面倒くさいおっさんを、なぜあの二人は家族として暮らしているのだろうか。
...また、ネガティブ思考になっていると思った。二人を守れるとは思えないけど、彼女達を笑顔にすることは出来るかもしれない。そのための家族なのかもしれない。
「帰りたいな...。はやく、マックから帰ってきてくれないものかな。」
「ただいま~。」
「あ、おかえりなさい。こんな感じなのね。迎えるって。」
「そう?あ、お酒の匂いがするよ。あの娘じゃないけど、ちゃんとお酒の量を守らないと、大変なことになるよ。」
「あら、バレちゃった。やっぱり、あなたは私のこと、しっかり見てくれてるよね。」
「いやいや、匂いでバレちゃ、そんなに意味がないよ。どうせ昼間からビールでも飲んでたんでしょ。嫌でも分かる。」
「そう言ってくれるのは、あなただけ。やっぱり、私はあなたなのよね。」
「???なんか考えてた?」
「いや、たまには怒られてみたいかなぁ~って思ってたの。でも、あなたは絶対に怒らないだろうなって。」
「そんなことで僕は怒らないよ。あなたはそういうことを出来ない人。例えば、あなたがリストカットしたら、流石に怒るけどさ。」
「そんなことしないわよ。生きていられるうちは、思いっきり楽しんで生きるの。」
「...そうだよね。いや、僕ね、昼間、ちょっと不安になっちゃって、どうして家族が出来たのか良く分からなくなってた。ずっと考えてたけど、あなたの顔を見て、わかったよ。」
「なに?家族が出来た理由って?」
「きっと、こんな感じで楽しく話していれば、もう家族なんだなって。」
「そっか。今日は悩んだのね。偉いわけじゃないけど、あなたは十分、家族の一員よ。というより、あなたがいないと、家族じゃないんだよ。」
「そうなのかな。でも、その言葉だけで十分過ぎる答えだよ。僕は、やっぱり必要ないことを心配し過ぎなんだろうな。」
「そうねぇ。あなたは、まず心配が最初に来るものね。だけど、その性格が、私達のことを助けてくれてる。私達はそこまで慎重じゃないのよ。だから、あなたは家族の中で、唯一ストッパーとして働ける存在なのかもしれない。いい役割でしょ?」
「で、賑やかしとリミッターでちゃんと役割が果たせるって?でも、あながち、そういう形になってきたのかな。僕が、もっと頼ってもいいのかもね。」
「それを今更言うのね。全然頼っていいわよ。だけど、あなたはあなたにしか分からないものを持ってるから、それを活かしてもっと頼って欲しいのよ。」
「活かしちゃったら、頼る意味がなさそうだけどね。」
「そう思わないの。別に、あなたが考えるような難しいことじゃなくて、簡単なことは、私達に頼って欲しいな。家族だもの。」
「そういうことにしておくよ。ま、部屋を丸く掃除する人には、もう少し掃除の仕方を教えないとダメな気がするけどね。」
「あははは~。気づかれちゃったか。頑張ってやってみたんだけどね。」
「二人が来るのが待ち遠しいなぁ。」
「でも、二人が来たところで、それほど変わりはないでしょ。」
「私、おかーさんに掃除の仕方を教えてもらうもん。二人に家事出来ないって思われるのは、もう嫌だったりするからね。」
「そうねぇ...。あなた達、家事はからっきしダメなんだものね。だから、二人でも暮らせたのかもしれないね。」
「どういうこと?」
「あなた達、あなたの母親もそうだけど、同じような失敗をするのよ。料理を教えても、うまく出来ないし、多分、掃除するときは丸く掃除するタイプでしょ?」
「う~ん、そうかもしれない。私がやってる家事って、洗濯物を畳むだけだから。」
「家事って言えるのかい?それはともかく、部屋を汚さないから、それほど掃除が必要ないのかもしれないね。週一であの子が掛けてるでしょ。」
「そう。おかーさんって、やっぱりオトーサンの親って感じで、何でも分かるんだね。」
「家を出てってもう20年経つものね。なんとなく、想像がつくのかな。娘ちゃんをかわいがってる、というより、自分の奥さんと同じぐらい大事にしてる。だから、やれることは自分でやろうと思ってるんでしょうね。いい心がけよ。」
「ねぇ、私が一人暮らしするって言ったら、おかーさんはどう思う?」
「そうだねぇ。心配することはないけど、栄養が偏りそうだね。料理が本当に出来ないものね。まさか味噌汁まで作れないとは思わなかった。」
「それ以外は?」
「小さな部屋だったら大丈夫だと思うわよ。でも、少し大きい部屋になったら、ちょっと不安かもしれない。家が汚れると、やっぱり気分が落ちていくものなのよね。」
「そういうものなんだね。ねぇ、一人暮らしってどういう気分なのかな?」
「私はやったことないからね。良くわからないけど、やっぱり孤独で寂しいらしいよ。だからTVに相槌打ったりとかしてるらしいね。」
「歳のせいじゃなかったんだね。おねえちゃんと二人でTVに相槌打ってるし。」
「似た者夫婦なんだね。まあ、両方とも40歳を過ぎて結婚してることを考えれば、なれてしまってるのかもしれないね。」
「そっか。二人とも雰囲気は違うけど、うまく噛み合ってるし、似てるのかも。」
「子供は心配しなくていいのよ。成人してるとはいえ、娘ちゃんは子供だから、あの子達を信じてあげればいいだけ。もっとも、ウチはそれでも心の傷を与えてしまったけど。」
「あ、オトーサンのこと。今は別に気にしてないみたいだけど、やっぱり親は後悔するものなの?」
「そりゃあするものよ。あの子が今も精神的に異常な部分があることは知ってるし、だからといって解決出来るものでもないの。そう、生きている限り、一回やってしまったことは、死ぬまでその印象しか持てないのよ。あの子は、ずっと死ぬまで苦しむことになる。多分、あの子は父親に未だに恐怖を持っている。」
「優しいのにね。おとーさん。」
「あの人も可哀想な人なの。頑固に生きてきて、しつけと称して、虐待に近いことしか出来なかった。あの子のように、もっと知的で理性を保てる人間だったら、そういうことにはならなかったと思うのよね。だからね、連れ子とはいえ、人の親となって、優しく育てていることが、反面教師になってるんだなって思ったのよ。」
「...オトーサン、なんであんなにいつも悲しそうなんだろうね。」
「ずっと孤独に生きてきてるんでしょう。本当ならあなたなり、あなたの母親がそこをこじ開けてくれることを祈ってる。だけど、それでもあの子の心の傷は、一生塞がらない。」
おかーさんは泣きながら、私に望みを託しているような感じだった。
「大丈夫だよ。オトーサンが拒絶することはないし、私とおねえちゃんが、オトーサンを見捨てることはないよ。だって、あの人は私の自慢の父親だと思ってるもん。」
「...そう。ありがとうね。あの子は本当にいい伴侶と娘を持てた。あとは、あの子自身の問題なのかもね。」
「ごめん。寝る前に話すことじゃなかったよね。私、悪い子だった。」
「いいんだよ。あなたがそういうことを考えてくれてることが嬉しかった。だから、あの子を見捨てないでやって欲しいよ。」
「私達はオトーサンを見捨てることはしないよ。オトーサンの最後の瞬間まで、私が幸せにしてあげるの。それでいいでしょ?」
「...本当に、あの子は幸せ者だね。ありがとね。娘ちゃん。」
オトーサンは、あんな感じだけど、ちゃんと家族を守ってくれてる。それはおねえちゃんも一緒。だけど、私はどうなんだろう。私は若いだけで、仮とはいえ、子供で、無邪気に息子くんと遊んでるぐらいでいいんだろうか。いや、オトーサンの実家にいるときは、おかーさんの家族だもんね。
一旦、心配するのはやめよう。そして、東京では、二人で仲良くしてるはず。ああ、そうか。これが一人暮らしの感覚に近いのかもしれない。やっぱり、そう考えると、二人がいないのは寂しい。オトーサンとおねえちゃん、3日後に会えるけど、今、どうしてるのかを知りたい。
「私、待ってるから、早く来てよ。ふたりとも遅いよ。」
読んでくれてありがとうございました。また今度ね。