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Life 64 Sweet to see you in front of me. 二人で行ってみよう

「「カンパ~イ」」

定例会の最初は乾杯から始まるようになってしまった。娘が留学へ行って1週間。僕はつくづく甘い人間だなと思いつつ、毎日、奥様のお風呂上がりの1本を許していた。

彼女に支障が出ないならそれでいいし、僕のワガママも聞いてもらっている。その代わりに聞いているワガママだ。


「やっぱり、最初の一口に尽きるわね。ホント、このために頑張ったって思えるわよ。」

ちなみに僕はダイエットコーラ。ま、これが万病の元とも言われそうだけどね。

「美味しそうでなによりだよ。君は、思っているほど弱くないんだろうけど、お酒に溺れそうになったことがあるからね。そこまでは面倒を見切れないよ?」

「そう言われちゃうと、ちょっと自分でも毎日はどうかなって思うのよね。でも、土日は飲んでないし、立派でしょ?」

「立派なのかなぁ。う~ん、僕はちょっとわからないな。」

「ん?なんか困った顔してる。私で良ければ、話してくれないかな?」

「ごめん、あんまり面白い話じゃないよ。自分以外でもそうだけど、物の判断基準が、僕には良く分からなくなって来てる気がするんだよ。」

「それって善悪の問題とか?」

「さすがにそれぐらいは分かるんだけど、いいのか悪いのかが、どうも僕には良く分からなくて。君に350ml缶を3本飲ませるのは、間違いなく危険だと思うんだけど、2本なら大丈夫なのだろうか、1本だけに抑えられてるなら立派なのだろうかって、疑問が湧いてしまうんだ。」

「まな板の上の鯉みたいな考え方ね。私に対する考え方。」

「それよりは、自分の意思で制御出来るんだから、全然マシだとは思うんだけどね。でも、基準を0にするべきか、1にするべきかで、話が変わってくるじゃない。」

「私は1のほうが当然いいわよ。飲めるなら、どんどん飲めるわけだし。」

「どんどん飲ませようとはしないよ。でも、不思議だなって思えてるんだよね。許容というのは、ある意味恐ろしいのかなって。」

「あの娘に何か言われてるんでしょ?そういう時の、押しの弱さよね。」


「毎日適量ってことで1本なんじゃない。デリケートな話、生理のときでも、浮き沈みが気持ち少なくなったのは、お酒を適量に監視されてからなのよね。それだけでも、あの娘には何かご褒美よね。そういうところまで見れる視野の広さを持ってるのか知らないけど、あの娘にも不思議な観察眼があるわよね。」

「元々持っているものだと思うんだよね。あなたがそれを活かしたところを見たことがないけど、不思議と、変化を見抜く能力が備わったんだよ。」

「あ、そういうことなら、私も少しはあなたのこと、わかったりするかも。」

「興味を持って対象を見ていると、その日だけ違うときがある。その違いに気づけるかどうかで、その日が変わることがある。なぜなのかは分からないけど、面白い考えだと思う。」

「あなたは、どういうわけか物事の基準が曖昧だとかいいながら、物事の違いに敏感だったりする。普通、そんな境地に達することはない気がするんだけど。」

「自分でも相反するようなことを言ってるなって思うよ。でも、それが僕の感じ方。独特と言われるけど、僕の普通。それを不思議に思っちゃうと、今度は興味がそっちに行くから、大体無視してるけど、毎日気づくこともあれば、忘れていくこともある。それでいいんじゃないかなって。」

「ま~た、訳の分からない話をしてるわよね。でも、そういう感じ方が、あなたを構成している要因なのよね。だから、あなたは面白い。」

「面白い?僕は思ってることを言ってるだけだよ?」

「それが面白いのよ。私には。あなたも言った通り、感じ方はひとそれぞれ。あなたの感じ方に、私は面白さと親しみを感じるのよ。」

「そういうもの?なんか、いつも聞いてる気がするけど。」

「そういうもの。あなたが言うと、説得力が増すようなことだってある。それこそ、感性が独特だから、すべてを理解するのが難しい。でも、どういうわけか、それが本当だったりするから、面白いって言ってるかな。」


「例えば?」

「もう、なんとも思わなくなったけど、あなたと裸で寝るって発想よ。普通は、ただ寝るだけとは思わないはず、下心があって当然なのよ。でも、あなたは本当にただ寝るだけ。ま、生理現象はともかくとして、特にエッチなことをする素振りもない。それどころか、子供のように良く寝てる。」

「あ、やっぱりあのお願いって、辱めてた感じだったんだ。」

「辱められてるというより、純粋に恥ずかしかったのよ。だけど、互いの体温を感じながら寝るって、本当に心地いいって知ったら、なんか恥ずかしがってた自分が馬鹿みたいだったなあって。」

「あれって、僕の勝手な思い込みでお願いしてみたんだよね。エッチしてて気持ちいいなら、素肌で体温を感じるのも、気持ちいいんじゃないかって。」

「え、そうなの?どこで、その発想に行き着くのよ?」

「なんというか、素肌に触れてて、何が気持ちいいかって思った時、触り心地より、その熱が気持ちいいなって思ったんだよね。」

「普通の男なら、胸だの尻だの言うのにね。」

「あ、もちろん、あなたもその部分は、とってもいいと思ってるよ。」

「褒めなくていいところよ。」

「でもね、例えば最低の例えで悪いんだけど、胸を鷲掴みにした時、本当に感じるものって、体温だと思うんだよね。」

「...う~ん、触ってる方の感覚だと、そうなるのかしらね。私はただ、感覚的に気持ちいいと感じるだけだから。」

「それじゃ、もっと下品な例えで言うと、セックス中に性器は感じてるけど、その他にも気持ちいいと思えるのが、体温だと思うんだ。」

「そっちのほうが納得が行くかもしれない。確かに、抱き合ったりすると、体が触れているというより、体温を感じてるって感覚になってるのかも。」

「どう?タネ明かしすると、こういうこと。」

「正直、あなたはレスでは無敵じゃないかって思うことあるわ。普通は、そんなことを、理詰めで考えられないかな。やっぱり、あなたは本当に面白い。だから、好きになるのよね。不思議な魅力。あなたにしかない魅力。」

「お褒め頂き光栄です。」

「とは言ったけど、さすがに今日はやらないからね。せめてやっても、抱き合って寝るだけ。」

「それは毎日やってるよ。...いや、また休みにやってもらえばいいや。」

「あーダメダメ、1日中ゴロゴロしてるのもダメよ。せっかくだから、何か美味しいものを食べに行きましょう。」

「ん、ケチ。でも、美味しいものを食べに行くのも好きだから、どっちでもいいや。」

「なかなかそっちに気分が向かないのね。まあ、それはそれでまた別の日に考えましょう。」



別日

「で、何を食べに行こうか?」

今日が木曜日。まあ、その気になれば、新幹線で三島にでも行けば、美味しい海産物も食べられる。

肉...う~ん、別にすたみな太郎でいいんじゃない?w

やっぱり、歳を取ると、魚がうまいと感じるものなのだろうか、もちろん、肉でもいいんだけど、あんまり高い肉って食べたことないからわからないんだよね。

なんとなくテレビを見てると、数年ぶりかな、沼津にある、魚河岸丸天のCMを見た。大体、tvkなんて、なんでかかってるんだろうか。

「これ、食べに行かない?」

「あ、やっぱそうなると思った。う~ん、僕も、CMだけで本物を食べに行ったこと、なかったんだよね。」

「じゃあ、せっかくだし、食べに行きましょう。どこにあるの?」

「沼津。確か、漁港に店があったと思った。散々迷って、別のところに入ったんだよ。」

「あら、あなた、行ったことあるの?」

「昔、ちょいとした観光で。あ、そういえば、近くに深海水族館ってのがあったな。」

「それじゃ、そこも寄ればいいんじゃない。と言っても、なんか深海魚って、気持ち悪い感じのが多いのかしらね。」

「一応HPあるけど、見てみる?」

「それは本番に取っておくわ。」

「んじゃ、土曜日にでも行ってみましょうか。う~ん。」

「どうしたの?なんか問題でもあるの?」

「いや、大した問題じゃないんだけどさ、三島駅なら新幹線で行けるんだけど、沼津駅ってそこから在来線で1駅なんだよね。」

「なら、新幹線で行けばいいんじゃないの?どうせ、こだまだからいくらでも自由席空いてるでしょ?」

「まあ、いいや。時間的に、在来線でもいいかなって思ったんだけど、それも色々面倒そうだし、ちょうどいいか。」

昔、東京駅からSuicaで沼津まで行って、Suicaから料金引かれずに、沼津で運賃を払った覚えがあるんだけど、みどりの窓口で取ればその辺は心配ないのかな。

「なんか、乗り換えとか、割と嫌がるタイプよね。」

「そう。特に沼津って、東海道線で各駅停車が東京から出てるから、そのグリーン車にでも乗って、のんびり行こうかなって思ったんだけどね。」

「あるなら、それでもいいわよ?」

「う~ん、残念ながら、朝に少ししかないみたい。5時台じゃね。夕方からは結構本数あるんだけどね。」

「日帰りなんだし、新幹線が楽でいいわよ。何しろ、車内でビールも飲めるし。」

「あ、じゃあ、僕は他人のフリをします。新幹線でお酒を飲む方はちょっと。」

「そういうこと言わないでよぉ。お酒は、現地でしか飲まないから。」

「現地では飲むのね。まあ、あの娘も許してくれるだろう。一応、連絡だけは取っておくからね。」

「は~い。せっかく美味しいもの食べるんだから、美味しいビールも飲まなきゃだもんね。」

「まあ、自制心を忘れずに。おぶって帰るとか出来ない距離だからね。」


と、グループLINEが来た。

[私も連れて行ってよ。お酒はビール1杯。守ってね。]

「だってさ。良かったね。」

「家に帰ってからは、もう一本いい?」

「それは体調次第で考えて。僕はあの娘ほど厳しくはないから、その辺は見逃すよ。」

「やったぁ。あなたのそういうところ、ホントに大好き。」

「何も出てこないよ?今日は1本空けたでしょ?」

「厳しいねぇ。でも、娘との約束だもんね。あなたに罪を擦り付けられないし。」

「あ、付けられると思ってた?」

「優しいから、黙っててくれるかなって思ったんだけどね。」

「まあ、確かに、ちょっとほろ酔いのあなたって、めちゃくちゃキレイに見える時あるけどね。寝る前とか。」

「なんで今日が週末じゃないのかしらね。明日だったら、そのままその気になったのにね。」

「じゃあ、その気になったら、沼津には行かないと思うけど、それでいい?」

「...我慢します。お酒一本と小旅行1回は天秤にかけられないです。」

「まったく。そういうところだけ、可愛くなるのがズルいんだよ。君は。」

「いや、ここは私もいい女って言われてるし、誘惑すれば、お酒の1本でも追加してもらえるかなって。」

「そしたら、裸で寝てたら、次の日は飲み放題なんですか?少量で、ちょっと酔ってるから、色っぽいの、忘れるなよ。」

「そうなの?じゃあ、やっぱりシラフでエッチするのはやめようかな。色っぽくないでしょ?」

「どうしてそうなるかな?あなたは、脱いだら、いや脱がなくても、今でも十分色っぽいですよ。」

「えへへへ。褒められちった。」

餌付けをするような感じだけど、頭を撫でてあげた。

「こんなに可愛くて、キレイで、凛々しくて、理想の奥様は、僕は他に知りませんよ。」

「それは私だからね。あなたの理想の人は、私だけだって、たまには思い出させないと。」

「毎日思ってるよ。自惚れていいよ。ま、誰に自惚れるの?って気がするけどね。」

「そうなのよねぇ。自惚れられるほど、私はオープンマインドではないのよね。」

「まあ、いいじゃない。明日を乗り切れば、明後日はちょっとした小旅行ということで。」

「そうね。なんか、ちょっと嬉しい。あなたは?」

「どうかなぁ。ま、現地で海鮮丼が食べられれば、多分不満はないと思うよ。」

「まったく、引きこもりの精神、なかなか抜けないんだから。引っ張ってでも、行きますからね。」



しかし、沼津とは、また因縁の地だなぁ。昔は、まだ聖地化してないころに行ったけど、いまはどうなってるだろうなぁ。

まあ、特に行く場所にはそれほど問題ないだろう。だからと言って、興味を持たれても、それはそれで面倒なんで避けたいけどね。


はぁ。アニオタって、こういう時、変な気苦労するよな。アイツは、どう回避してるんだろうか。




今日はこの辺で

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