Append Life 65 Women's groups span generations. たまには女子会もいいでしょ?
「「「「カンパーイ」」」」
チン、とグラスが鳴る。
今日は、女子回って奴なのよ。私、40過ぎても、まだ女子で行けるらしい。
「先輩なら、多分50歳でも、女子って言えますよ。あ、そもそも、出番がなくなりつつあるんですけど?」
「だから、毎回毎回、出番って何の出番なのよ?」
「それを言ったら、おしめぇよってやつですよ。先輩。」
彼女は、私と長い時間、一緒に働いている、11年目の後輩。総務部復帰。まだまだ、結婚への道が遠いらしい。
「なんですか、それ。よくわからないですよ。」
この子は、人事に移動した、今年3年目の25歳。可愛くて、養子にしたかったが、諦めた。冗談よ。
「まあ、言いたいことはわかります。先輩はそういうのを超越する人ですもんね。」
そして、今年新卒で総務に入ってきた、22歳。しっかりしてて、得意技は塩対応だ。しかし、彼女にも何か見えているものがあるようね。
「超越?そんな、アニメみたいな力あるの?」
「いや、メタ的に面白いでしょってことですよ。そういうことじゃないんです。先輩。」
「なに、急に相談モードに入ってきてるのよ。まったく、緩急つければいいってことじゃないのよ。」
今回の女子回は、超深刻な、1番目の後輩の、結婚への道に関して、愚痴と解決方法を考える回という、少々めんどくさい回だ。
まあ、お酒が飲めるから、私も軽いノリで受けちゃったんだけどね。
「で、なんだっけ?その彼氏ってのは、どんだけアンタを待たせてるのって話よね。」
「切れ味鋭いですね。先輩はそういうところが、頼りになるところですよ。」
「でも、彼氏さんにも、何か事情があるんじゃないですか?」
「優しすぎですよ。いくらなんでも、私が知ってる限り、半年も反応がないって、外にいるんじゃないですか?」
「なんか、寄ってたかって、私の彼氏が結構言われてる気がするんですけど。」
「そりゃあ、ねぇ。この子が入ってくる前から聞いてた話だからね。」
「あ、49話ですか?アレって3月の話でしたっけ?」
49話?なんの話?
「それもメタ的な発言です。先輩の気にすることじゃないです。」
「ありがとう。でも、私の気にするところじゃないって?」
「それは本題じゃないんですよ。先輩は、あの人の悩みを聞いてあげてください。」
そういうものなのか。どうも、この二人は、なにか見えないところが見えてるんだろう。
「とはいえねぇ。同棲はしないけど、毎日電話で話し、休みには必ずデートしてる。アリバイ崩しは出来ないわよね。」
「最初から浮気前提なんですか?先輩って結構酷いですね。」
「そうは言われても、もう何年?イマイチ踏み切れない理由が、私にはわからないのよ。」
「彼氏さんの問題ですよね。先輩が待ってるだけじゃなくて、アプローチをかけてても、なおしてこないってことですもんね。」
「彼氏さんにも事情があると思うんですけど。あれ、私だけ擁護なんですか?」
「本当に可愛い子よね。そんな純真な心を持ってる子に、あんまりダメな男の話しを聞かせたくないわ。」
「先輩、それはさすがに私も傷つくんですけど。」
「でも、事実として、アンタをずーっと待たせてるわけでしょ。別に大恋愛ってわけでもないし、普通の会社員なら、別に2馬力でいいじゃないって思うけどね。」
「確かに、プライドが許さないって可能性はありますね。自分の稼ぎだけで、彼女も養おうって考え、男性はしがちですよね。」
「そういうところ、先輩の家はどうなってるんですか?」
「ウチは、基本的に娘ももう大きいんで、自由に稼いで、稼いだお金で趣味なりをしていいという話をしてる。彼ね、精神を病んでるから、日常生活には支障ないんだけど、たまに躁鬱によって感情の上下が激しいのよ。それを抑えるために薬を飲んでるぐらいだから。でもね、そういう病気を持ってるから、彼は自覚して優しいのよね。それに、すごく色々なことを考えてくれる。気の周り方が、独特なのよね。だから、ごめん。参考に出来ないと思う。」
「いいんですか?旦那さんの病気の話なんかしちゃって。」
「別に隠してないんだって。だけど、バレないから誰にも話さないだけで、バレたときに私も初めて知ったわよ。騙し通すつもりだったらしいから。」
「潜在的な病気ってのは、話しにくいものですよね。旦那さんも強い人なんだろうなぁ。」
「で、そこんところ行くと、先輩の彼氏はどうなのかって話です。いっそ、今から電話で聞いちゃいましょうか。」
Z世代は遠慮がないな。本人の目の前で、彼氏に確認しろなんて、言えないよ。
「いやいやいや、それを私からやるの?って話じゃない?飲み会の席で?後輩に迫られたから?プロポーズしてくださいって?」
「まあ、嫌なのは同意する。本人の覚悟みたいなものがあるからね。とは言え、優柔不断でにぶいと言っても、プロポーズのタイミングを図ってるとは思えないのよね。」
「その点、先輩はどうだったんですか?」
「う~ん、プロポーズってさ、私、結婚する前と結婚するあとに2回されてるんだよね。」
「やっぱりかっこよかったりするんですか?」
「1回目がね、まあ、私が彼に会いに言って、約束を覚えているかどうか聞いたとき。半ば強引に言わせたと言ってもいいのかもね。ファミレスで、あんまりかっこよくないプロポーズだった。でも、その時は、その言葉が聞きたかったわけじゃなかったのよ。」
「単に会いたかったから?それとも約束を覚えていたか知りたかった?」
「その両方かな。私も、心の準備がまったくないままだったから、お互いに恥ずかしい感じになっちゃったのかな。最終的に娘が取りなしてくれたのよ。」
「やっぱり同一人物だから、その辺は分かり合うところがあるんですかね?」
「最初はそうかもって思ってたけど、今はまったく思わなくなってるかな。あの娘のほうが、女性として魅力的だもの。」
「先輩が魅力的っていう女性ってどんな感じなんですか?」
「あ、最近髪の毛伸ばしてるのよ。見てみる。」
スマホに取ってあった、彼女の写真。しかし、本当に伸ばしてみたら似合うものよね。
「これって、若い頃の先輩...じゃないですよね。いつも思いますけど、同一人物とは言え、こんなに同じものなんですか?」
「私に言われてもね。まあ、あの娘はあの娘で少し工夫はしてるらしいけど、私は私だしね。」
「で、そんな先輩、2度めのプロポーズはどうだったんですか?しっかりとおぼえてますよ。」
「はぐらかしたと思ったんだけどなぁ。2度めは、二人で泣いちゃったのよ。」
「それって、嬉し泣き?」
「色々な感情が混ざってどうしようもなく泣いた感じがする。私が今を生きてるとするならば、彼は過去から未来へ生きて、そして朽ちていくという考え方だったのよ。」
「あ、56話の前半です。この回も泣けますよね。」
何の話かわからないけど、まあ、スルーしよう。
「面白い考え方ですね。先輩の旦那様は、案外私と思考が似ている気がします。」
「え、そんな若い時から、人生の最後をイメージしてるってこと?」
「私は幼いときに父親を亡くしているんです。父親は多分、しあわせの絶頂で亡くなったと思うんですけど、私は不慮の事故とは言え、その死に方も幸せだと思ったんです。幸せは未来永劫続くものではない。でも、人間って、幸せの絶頂ってあるじゃないですか。自分がこんなに幸せでいいのか?って思うことです。そのときに亡くなるというのも、幸せだったんじゃないかと思うんです。あくまで、私の一存ですよ。」
「すごくわかりやすい説明だったわ。そうだったのね。でも、その後の人生は幸せだった?」
「私には、まだ幸せの絶頂に登ったことがないですね。今の、母との生活も、ごく普通ですし、大学だって卒業させてくれた。その積み重ねが、幸せになっていく道筋になるのかなと私は思っています。というわけで、先輩の旦那様は、これから朽ちていくにしろ、ずっと幸せがあると言いたかったんでしょうね。」
侮れんなZ世代。こんな解釈ができるなんて、やっぱりイノベーターは違う。
「でも、それって幸せが見えにくい感じがするかも、です。」
「箱入り娘の幸せって、どんな感じなのかしらね?」
「先輩、悪絡みですよ。でも、私も聞きたいかな。」
「私は、今は幸せなのかなって思ってるんです。先輩たちに囲まれて、家族にも囲まれて、どこへ言っても私は孤独ではないんです。幸い、一人暮らしへの憧れもなかったので、私は常に誰かと一緒の生活をおくれている。そして、もし、こんな私でも結婚相手が見つかれば、その人とも一緒に生活できる。私の周りには人がいっぱいいて、みんなが色々考えながら生きてる。これを幸せと感じるんです。悔しいですけど、女の幸せはこれからですけどね。」
「あんまり運命論を信じすぎるなというけど、私は運命で人生が変わってしまった人間だから、その考え方も共感できる。幸せの輪というものが広がるって考え方よね。」
「でも、そんなこと言ったら、私は幸せの輪に入ってないですよ。」
「アンタは入らなくても生きていけるじゃない。別に適当に生きていいだけの人物だし。」
「それは、ほぼ毎回出てる先輩の意見であって、私達にとっては適当に生きてられないんです。せめて、ちょっとは爪痕を残しておかないと。」
「まあ、そうですね。モブだから仕方ないとは思いますけど、サブキャラの掘り下げが番外編の本懐みたいなものですからね。単なる女子会じゃ、やっぱり意味が薄いですよね。」
「う~ん、ま、諸事情あるとは思うけど、一番はアンタの彼氏が原因なのよね。」
「お、ようやく本題ですね。」
「とは言えねぇ。好きでもない女と...う~んと、何年付き合ってるんだっけか。」
「3年です。まだ20代だったんですよ。私。」
「そりゃ、確かに大きな山を登りきっちゃったあとよね。私はあまりにも例外として、若い衆は20代に幸せになって欲しいものね。」
「で、ここ半年はずーっとプロポーズを待ってるわけよね。」
「プロポーズって言うと変ですけど、結婚する準備みたいなものはしてますよ。子供も欲しいですし。」
「すごく少女チックですよね。先輩のそういうところ。」
「可愛いと思いますけど、なんかふわふわしてません?」
「そう、ふわふわしてる。まさに的を得た言葉。アンタがいくら準備していても、相手は地に足がついてない感じがする。だから、プロポーズできる自信がないんじゃないかな。」
「ああいうのって、普通自信満々にするものなんですか?」
「どうなんだろうね。多分よ。多分だけど、やっぱりうちの旦那がそうなんだけど、頻繁に自分にふさわしい男か?って聞いてくるのよ。」
「で、先輩はどう答えてるんですか?」
「あったりまえじゃない。頼りないけど、ちゃんと私の伴侶ですって答えてるわよ。」
「この性格で、そんな可愛いこと言うんですね。先輩、ちゃんと女の子なんですね。」
「責任の所存に関しては個々にあるけど、ウチは娘が割と考えてるから、どうしても甘え役になりがちなのよね。」
「父親役に旦那役ですか。なかなかスリリングな生活してますよね。」
「まあ、そんな感じだから、男だからと言って、「俺に付いてこい」的なプロポーズをしてくれるような人は少ないんじゃない。」
「先輩の男性像って、石原軍団ぐらいで止まってません?なんかそのイメージがありますよ。」
「おかしいな、ドラマのGTOってそんな感じで反町隆史がプロポーズした気がするけど。」
「で、話を戻しますけど、先輩の彼氏がどうやったら先輩にプロポーズしてもらえるか。これって、無理な感じしません?」
「え、そんなことないよぅ。ね、先輩。色々アプローチしてるんですよね。」
「あ、もしかして、恋人ごっこがまだ楽しいってパターンはないかしら。アンタってその辺、愛嬌があるし、こう、なんというか可愛がってあげたいってオーラがあるのよね。」
「お、なるほど。」
「う~ん、どうなんですかね。別にデートして、そのまま彼の部屋で休日を過ごすって、なんかもう普通になってしまってるというか。」
「ある意味同棲できるような環境はあるんだよなぁ。やっぱり平日の電話はダミーな気がしない?」
「どうしたらそういう考えになるんですか?」
「カンよ。だって、毎日話してるって言っても、数分なときだってあるわけでしょ?」
「まあ、それはお互いの気遣いというか。」
「本来、取り留めのないような話しって1時間ぐらいするものなのよ。うちは3人でちゃんとお風呂に入ったあとに、寝るまでいろんな話をしてるのよ。」
「もっとサバサバしてるのかと思ってました。あったかい家庭ですね。」
「ウチでこんな感じだから、あなた達の付き合いが長くても、そんなにツーカーで通るような関係性ではないと思うのよね。」
「説得力がありますよね。確かに、結婚している先輩が家族の触れ合いを重要視してるとなると、」
「アンタのとこ、なあなあになってないか?ってことよ。確かに週末だけ出会う恋人同士はいくらでもいる。でも、居心地が良くなってしまってはいけないのよ。若干隙を見せるなり、適当にドジっ子演じるなり、少しは新鮮味を出したほうがいいってことよね。アレ、でも、それじゃあ私ってどうなんだろう?」
「先輩の活躍は本編を読んでいる読者の方なら分かってますし、十分隙も見せてるから大丈夫ですよ。」
本編?本編ってなんだろう?やっぱり、この子、侮れないな。
「ま、でもそういうことなんでしょうね。彼に、私がプロポーズしてみますよ。そっちのほうが幸せに生活できる確率高そうですもん。してくれないなら、やっぱり私が決めるしかないでしょ。」
「でも、プロポーズを受けたかったんじゃないですか?」
「う~ん、今の話を聞いてて、ちょっと怖くなったのかな。私じゃなくて、別の女に彼が取られるぐらいなら、私から言ったほうがいいかなって。」
「いいんじゃない。そうしなさいよ。アンタにはアンタの良さがあるんだから、見せつけてやりなさい。」
「良かったですね、先輩。きっと成功しますよ。応援してますよ。」
「そうですね。私達は応援しか出来ないですけど、いい方向に進むように願ってますよ。
で、結果だったんだけど、無事、プロポーズは成功したみたい。
なんでも、やっぱり自分で支えてあげたいという気持ちが強かったらしくて、その点で食い違いが若干あったそう。
とは言え、関係が変わることはなくて、徐々に恋人から夫婦になって行くようになりたいのだそうだ。とりあえず、同棲して、お互いの悪いところも見てみるようだ。
命短し恋せよ乙女か。あなたには、私はいつまで乙女に見えるのかな。やっぱり、一生そう思われちゃいそうかな。
ウチの娘を含めて、みんなまだ若い。時には恋愛に狂ってしまうこともいいよね。
今日はこんな感じだった。