Life 60 Let's go for a walk in the neighborhood and have fun! 近所へお出かけ
今日は、なんかすごく前に約束したまま、すっかり忘れてた谷中銀座商店街に、3人で行ってみることにした。
と言っても、僕らにとっては、そんなに新鮮なことはないんだよね。でも、娘が行ったことなかったんだ。
「意外なものよね。谷中銀座なんて、普通に行くじゃない。」
「そう?私は大学とバイト先とABABぐらいしか行かないから。」
ABAB好きなんだな。もうすぐ閉館しちゃうけど、OIOIのセリアにでも行くのかな。
「だとすると、君って池袋あたりは詳しいと思ったりするんだけど。」
「う~ん、池袋も、駅を出なければ分かるよ。池袋東武のユニクロとかは行くし。」
「この娘、なんかピンポイントで行ける場所が多いのよね。多分、秋葉原のヨドバシも行けるでしょ?」
「えっ、なんで知ってるの?」
「ほらね。なんか、地理に関してアンバランスかな。例えば不忍口とかわからないじゃない。」
「う~ん、そうなのかな。」
「ま、今日は、このまま日暮里駅まで行って、いつもの喫茶店でご飯でも食べようか。」
「あ、それならちょっと控える。」
何を控えるんだ?あ、買い食いかな?
「だけど、ほとんど買い食いするしかないかな。別にお土産と言ってもお煎餅ぐらいしかない気がする。」
「これが、いつもの買い出しだったら、揚げ物だけ買って帰ればいいんだけどね。」
とはいえ、いつもの通りで行くと、特に買うものなく終わってしまうんだよね。
「混んでるね。」
「そうだねぇ。」
黙々と歩いていく。でも、本当に寄る場所がないんだよな。
「あ、それじゃ、買い食いでいいか。」
ちょっと先にいちふじという惣菜屋がある。大量に買う時は便利なお店。
「なにか食べる?」
「あ、私はいい。この娘にコロッケとメンチを1つずつ買ってきて。」
「分かった。ちょっと日陰ででも待っててね。」
僕は列にならんだ。この店、結構並ぶんだよな。まあ、安いしね。
「えと、コロッケとメンチを1つずつ、それと鶏皮1本、唐揚げ100gで。」
まあ、大体これで500円でお釣りが返ってくるぐらい。でも、ある程度買わないと、なんか不機嫌そうなんだよなぁ。
「はい、おまたせ。」
娘にコロッケとメンチカツを渡した。
「本当に揚げ物ばっかりなんだね。」
「そうだよ。たまに茶色いモノしかない日あるのが分かった?」
「なるほどね。これなら確かに沢山買ってくるよね。」
まあ、あんまり店の前で食べるのもよくないので、ちと暑いがだんだん坂のほうへ。
「あんまり買い食いってのはよくないんだけど、この辺ならいいだろう。」
「食べていい?」
「ま、いいんじゃないか。僕も焼き鳥食べようかな。」
「で、この唐揚げはどうするのよ?」
「まあ、腐らないだろうから、夕飯にでも食べるよ。」
二人でもぐもぐ。奥様は暑くて麦茶を飲んでた。
「このあと、ご飯食べるのよね?」
「そうだけど。まあ、最悪デザートだけでもいいかなって思ってる。」
「あ、そういえば、あのかき氷屋さん、この辺だったわよね。」
「え、行くの?」
「食べたいかな。いいでしょ?」
「え~。並んでまで食べたいと思わないんだよなぁ。」
「あなたも、かき氷食べたいでしょ?」
「かき氷?なんか特別なやつ?」
「そう。特別よ。割とすごいやつ。」
「じゃあ、食べないと。オトーサン、行こう。」
数の暴力か。まあ、別にいいか。時期の割に暑いしね。
並んだ割に、入るのはスムーズだった。
「う~ん、いちごのやつがいい。」
「なんかマンゴーを押してるよね。私、これにする。」
「マンゴー杏仁?上に乗っかってるのかな?」
「じゃ、それ3つでいいんじゃない。」
なんだろな、店員さんがこなれてない感じなんだよな。ま、出てくればなんでもいいよ。
しばらく待ったが、とにかくビジュアルがすごいんだよな。
「いちごショートおまたせしました。」
これはなんだろうか?かき氷の上に生クリームと普通にいちごが乗ってるんだが。かき氷もなんかいちご氷だし。なんだこれ?
「どうやって食えばいいんだろう。」
「好きにかぶりつくのがいいんじゃない。」
そんなことを言ってると、
「マンゴー三昧おまたせしました。」
マンゴーソースにマンゴーの乗った、マンゴー味のかき氷なんだろうか。マンゴー色してる。
奥様、僕と同じような顔をしてるんじゃないかな。唖然としてる。
「ごめん、どうやって食べればいいかな?」
「好きにかぶりつくといいよ。」
それしか答えが出てこない、派手なビジュアルの両親に比べると、
「マンゴー杏仁、おまたせしました。」
「あれ、なんか、私のが一番地味?」
パッと見た感じ、かき氷にマンゴーが乗ってて、マンゴーソースをかけるような感じなんだが。
娘はとりあえずソースをかけて、一口。
「あ、これ、かき氷が杏仁豆腐だよ。すごい。」
ああ、なるほど。それで杏仁だったのか。そっちのほうが美味しそうだな。
そう思いながら、きっと胃もたれするんだろうなあって生クリームをなめている。大人なんだけどな。
しばらく食べていたが、最後はもうジュースみたいな感じでズルズルと吸う。でも、完食。
「案外行けるもんだ。」
「うん、どうしたらいいかって思ったけど、なんとかなるかな。」
「これ美味しかったよ。また来ようかな。」
ま、でも、娘の食べたマンゴー杏仁が1,700円することを知り、やっぱりガリガリ君でいいと思ったらしい。
ちなみにここの支払いは、食べたいと言った主犯が払ってくれた。
「割と満足しちゃったな。」
「そうね。かき氷って意外と胃に入ると形になるのね。」
そして、一人だけゴキゲンな娘。結局、この娘が食べたかき氷が正解だったかなと思ってしまった。
「で、どうする?もちろん、喫茶店に行くんでしょ?」
「どうする?」
「どうしようか?」
どうにもねぇ。僕らはご飯を食べられるような状況じゃないしなぁ。
「じゃ、お茶しに行こうか。君はまた好きなの食べなよ。」
坂を登り、日暮里駅の構内を抜け、いつもの喫茶店。
「今日はどうしようかなぁ。」
元気な娘。やっぱり、若いうちは食べないとダメだよね。
「あ、私、アイスコーヒー。」
「んじゃ、僕もクリームソーダ飲もうかな。あと、ちょっとつまみが欲しいから、ポテトでも頼むか。で、君は?」
「ひれかつ定食とオレンジジュース。」
「あなた、ここでも食べるのね。まあ、若いうちは食べたほうがいいわね。」
「えへへへ。なんかね。」
「で、どうだった。昼間の谷中銀座。」
「なんか、観光地みたいだったね。もう1回行けば十分って思ったよ。」
「そうよねぇ。あそこは、日常でまだ動いている商店街だからかな。」
「平日の夕方もあんな感じだしね。僕は割と好きだったりするけど、休みに行くとね。」
「夕方に行くから雰囲気があるのかもね。でも、あなたはバイトだもんね。」
「残念。でも、雰囲気味わえたから、楽しかったよ。」
「良かった。君が楽しければ、それで良かったんだよ。」
「私達は休みが混んでるのを知ってるもんね。だけど、約束だったもんね。」
「ありがとう。ふたりとも楽しかったよ。」
二人で安堵の表情をしたんだと思う。
「え、なんか、そんなに面倒なことを頼んだ?」
「いやいや、大人になるとさ、やっぱり面倒事は避けたくなるものなんだよ。」
「え、面倒事だった?」
「まあ、あんまりいいたくないけど、観光地に休みに行くってのは、やっぱり面倒事かな。」
「そうなんだ。いや、二人が何となく行きたくなさそうな空気出してたからさ。」
「バレてたか。ごめんね。」
「でも、ちゃんと連れて行ってくれたじゃない。それで十分だよ。」
そのタイミングで、飲み物を持ってきてくれた。絶対に空気を読んでたよな。でも、心遣いには感謝したい。
「クリームソーダ、上手く食べられる?」
「さすがに42だよ。僕。」
「ふふふ、あなたの表情が出てくる時、本当に少年の顔よね。」
「少年の顔?」
「あなたにはわからないか。この人、表情が出る時がたまにあると、少年の顔になるのよ。」
「そうなんだ。私から見たら、いつもの顔に見えるよ。」
「あなたはそれが普通に見てた顔だからそう思うのよね。その分が、私より上手なのよね。」
「うわて?そうなのかな?」
「あなたと私で、この人との差ってなんだと思う?」
「いや、おねえちゃんのほうが明らかに上でしょ。」
「残念。あなたのほうが、この人と暮らしている年月が長いのよ。その時間の分、あなたには、この人の仕草が自然に見えるんだろうなって。」
「ふ~ん。深いこと言ってるけど、私はオトーサンが普通に見えるよ。」
「それが、あなたと私の違いかな。あ、あとは、あなたとこの人が仲良しだから、わからないのかもね。」
「そっちのほうがいいかも。」
そういうものなのかな。ま、別にいいや。
それから、くるくると浮かんでるアイスをうまいことすくいながら食べる。メロンソーダとバニラアイスのセットは、やっぱり合うよね。
「上手に食べられるじゃない。大きくなったね。」
「そう?いやいや、おじさん。クリームソーダで苦戦しません。」
「いやあ、旦那として自慢出来るかな。あなたがクリームソーダを上手に食べられるって。」
「それを自慢したところでどうするのよ?」
「別に。仲良しエピソードかな。」
「じゃあ、どっかで使いなさいよ。せっかくしたためたんだし。」
と、目の前を見ると、ちょうどガツガツとヒレカツを食べてる娘。お腹減ってたのかな。
「あれ、普通にお腹減ってた?」
「うん。だって、大して何も食べてないよ?」
「若いうちは食べられるものを食べておく。案外、考えないでいいのよね。」
「でも二人が知らないだけで、早く大学から帰ってきたりしたら、走ったりしてるよ。」
「あ、そうなんだ。どうりで体が引き締まってるわけだ。」
「普段、バイトでも動くし、移動もカロリー使うからね。」
「まあ、それを気にすると、もっとわからない人がいますけど...。」
「え、私?う~ん、バレないけど、朝、実は走ったりしてるわよ。3日に1回、10キロぐらい。」
「そうなの?僕がトイレに起きたりすると、別にいるじゃない。」
「多分、たまたまなんだけど、そういうときに遭遇しなかったんじゃないかな。私も記憶にない。」
「いや、それだって、なんかおかしい気がするけど。」
「う~ん、大体4時に起きるわよね。で、10キロを1時間ぐらいかけて走ってきて、5時にシャワーを浴びて、5時半にはまたベッドに入ると。」
「二度寝?」
「そう。それで7時半にはだいたい起きる。あなたと同じぐらいに着替えてる時あるでしょ?そういう時は朝走ってる時。」
「ということは、案外休日は走ってるってこと?」
「幸せそうに寝てる二人を見ながら出発して、幸せそうに寝てる二人とまた寝るの。まあ、さすがにエッチした時とかはしないけどね。」
「ようやく理解できた。あなたの体も引き締まってるもんね。」
「そう。私もなんだかんだで、体型維持には苦労してるのよ。これで食べる量も落ち着いてきたじゃない。だから、調整はしやすいのかな。」
「僕らは夕飯そんなに量食べないしね。」
「まあ、それを聞くと、いつもお昼をほぼ食べてないあなたが、なおさらどうやって生きてるのか謎だけどね。」
「食べてないわけじゃないよ。パンぐらいは食べてる。でも1個で十分。」
「よく持つわよね。」
「基本、カロリーは使いませんから。頭脳労働なんで、糖分のほうが必要かな。」
「でも、普通、それで痩せない?」
「間食するからだと思う。あと、夜寝る前になにか食べないと眠れないし。」
「帳尻合わせはしっかりしてるのか。」
そんな会話を聞いてる娘が、なんとなく疑問に思ったらしい。
「ところでさ、意図的に運動しないと痩せないようになるのって、何歳ぐらいから?」
「う~ん、僕は、30ぐらいからかな。一度、過激なダイエットをして、68キロまで痩せた時があったんだけどさ。」
「決められたメニューしか食べなかったら、なんか自然と痩せていったって話?」
「へぇ。それ、一番理想じゃん。なんでいまやらないの?」
「結構辛いのと、いい加減、100日もそばをずっと食べるのって飽きてくるんだよ。」
「でも、理屈の上では、例えば松屋で毎日同じモノを食べて、間食をほぼしないとか、ダイエットコーラを飲むとかで、再現は可能よね。」
「その頃は、色々動いてたからね。今は動くこともないし。昼休みももっぱら昼寝だよ。」
「おねえちゃんは?」
「私が意識し始めたのは、やっぱり27の時かな。失恋事件の時。ちょうど、会社でも下っ端じゃなくなってきた頃だから、そこから、気晴らしに走ると面白くなってきたのよね。」
「ランナーズハイ?」
「なのかしら。なにか忘れるにはと思って、色々やり始めた中の一つが、ランニングだったのよね。」
「僕はちょこザップにでも行ってるのかと思ってたけど、そういうわけじゃないのね。」
「あ~、ジムはちょっと私には合わなかった。あれ、負荷がかかりすぎて辛いのよ。」
「あくまで鍛えてるわけではないからなのか。」
「そう。でも、体型維持をするには、やっぱり全身運動がいいらしいってのを見てね。で、続けてるのよ。」
「ふ~ん。おねえちゃん、私も朝、一緒に走ってもいい?」
「出来るかしら。そもそも起きられるの?あなたってそもそもに朝が弱いじゃない。」
「朝型の生活になってみようかな?そうすれば、オトーサンに起こされて、ご飯おねだりしなくて良さそう。」
「二度寝するんだから、結局一緒。それか、二度寝出来ずに僕を起こすのが関の山だよ。」
「まあ、言ってみたんだから、一度やってみたらいいんじゃない。もっとも、私達、寝るのが0時よ。4時で起きられる?」
「うん。頑張って起きてみる。でも、10キロを1時間で走れるかなぁ。」
確かに、10キロを1時間って、案外ペースが速い。1キロ6分。ペースがつかめない可能性もあり得るし、途中で諦めても、帰りがある。
「そう考えると、あなたって、ちょっとしたアスリート並の運動してるってことだよね。」
「40すぎると衰えも感じてくるのよ。でも、このペースを落としたら、もっと衰えそうな気がして、そこは意地で守り通してる。」
「そう。うん、君じゃ無理だよ。半分の距離で頑張ってみたら?」
とりあえず娘にはそれぐらいで十分と勧めてみる。
「そうだね。まあ、倒れない程度に頑張ってみるね。」
「いつも仲良しでいらっしゃる。若いのに、ご苦労もあったでしょう。」
珍しく会計で、いつもの紳士が語りかけてきた。
「ええ、まあ、うちはちょっと特殊な家庭なものですから。」
「羨ましく思いますよ。また、お立ち寄りください。お待ちしております。」
「ありがとうございます。また、ぜひ。」
紳士、よく人を見てるんだな。給仕というのは、ああいう人を言うのかもしれない。
確かに年齢を重ねないと、分からないことだっていっぱいあるもんね。
「さてと、どうやって帰ろうか。」
「電車でいいじゃん。ざっと15分。帰ったら、ゲームやろ。」
「まあ、谷中銀座をまた横断したくないしね。と言っても、日暮里の風俗街を抜けていくのもね。」
「あ、じゃあ、だんだん坂を降りて、すぐ右に行く道があるから、そこを通れば、西日暮里のウエルシアの近くに出るよ。ファミマの交差点のところ。」
「さすが、オトーサン、そういうところは抜け目ないよね。」
「なんとなく行ってみたらたどり着いたってだけだよ。別に、リサーチしてるわけじゃないよ。」
「地元民よね。もう長いから、この辺の地図イメージみたいなものはありそうよね。」
「そんなことないよ。案外、この辺から田端一丁目までは、道が入り組んでて、近道がないんだよね。」
「ありそうなもんだけどね。まあ、腹ごなしにはちょうどいいんじゃない?」
そうして帰り始める。ま、30分も歩けば、家には着く。
日傘を差し始める奥様。
「今年、初めてだね。」
「日焼けは本当に勘弁して欲しいわ。日焼け対策もまだそこまでしてないし。」
「やっぱり肌のことを考えたら、日傘とか差したほうがいいの?」
「う~ん、若い時は考えなくてもいいのよね。でも肌が弱かったり、色白だったりを守るというのと、ファッションの一部で日傘って使えるからね。」
「君が日傘ねぇ。いやいや、似合わないな。もっと傘とかなくて、ウロチョロしてるのがちょうどいい。」
「あー、そうやって、また子供扱いしてるでしょ?」
「違うよ。君はまだそうやって落ち着く歳じゃないんだよ。もっと活発に動き回ってくれるほうが、君らしい。」
「そうね。あなたは、私が楽しめなかった分、若いうちに夏を楽しむ方がいいわよ。さすがに年齢が上がると、ちょっと厳しくなってくるものも多いから。」
「そうなんだね。ふたりとも、夏を楽しんだほうじゃないんだ。」
「僕は河原でバーベキューをやったら、怒られた思い出ある。」
「私は夏になると、黒い服しか着てなかったから。黒い日傘もしてたし。」
「なんか、思い出なのか分からない。」
「それぐらいしかないってことよ。だから、あなたには夏を楽しんで欲しいかなって。」
「しかし、全身黒のあなたも見てみたいね。きっとお人形みたいで可愛いんだろうな。」
「やめてよ。そのイメージは払拭したつもりなんだから。絶対に見せないもんね。」
「じゃあ、この娘が頼んだら?」
「う~ん、利用されてる気もするけど、お人形みたいなおねえちゃんも見てみたいかな。」
「あー、もう。家の中だけだからね。なんで、そういうところで息ピッタリなのよ。あなた達は。」
家に帰って、その頃着てたという黒服を着てもらったけど、別段お人形という感じのない、黒服の似合う女性という感想になってしまった。僕らはゴスロリっぽいのを想像してたので、案外街で見かけるよと言った感じの感想だったんだよね。
僕らはそれで良かったんだけど、当の本人がそれに激怒。裸より辱められたと、ベッドルームから出てこなくなってしまった。そんなに恥ずかしいことじゃないし、今でも十分に合う格好なのにね。何か、あの人の中にも思いがあるんだろう。でも、お腹が空いたと言って、夕飯時には出てきた。仕方ないので、今日はお酒を1本出してあげた。
「別に、何がそんなにイヤだったの?」
「分からないけど、あの格好、ものすごく恥ずかしいのよ。毎日あんな格好で大学に通ってたと思うと、本当に恥ずかしい。」
「でも、上下で黒をしっかり揃えて着ていけるって、すごく大人だと思うんだよね。おねえちゃんも、センスいいんだと思うよ。」
「僕もそう思う。普通はどっちか黒なら、片方は白とかに逃げがちだもんね。」
「オトーサンの場合は、年中ジーパンにキャラTだから、逃げてるとかじゃないんだよ。そういうフォーマットなの。」
「フォーマットならいいじゃんか。それに出かける時ぐらい、ポロシャツになるんだからいいじゃんか。」
「そういうことじゃないし。もう、おねえちゃんも何か言ってよ。」
「そうね。でも、私の旦那様は、そういう人だから、言って聞く人じゃないしね。もう諦めよう。」
「じゃあ、ゴジラとかガンダムとかPSのTシャツはいいけど、美少女Tシャツはやめようね。約束。」
「...部屋着ならいい?」
「まあ、その辺が妥協点じゃない。でも、寝てるときに目に入るのか。う~ん。」
「じゃ、部屋着ならね。でもあんまり変なの着るなよ。」
こうして、僕のキャラTの権利は...あれ、なんでそうなるんだろ。
「で、あなたの黒服は?僕と一緒の時には着てくれる?」
「なんでそうなるのよ。着ないわよ。」
今日はこの辺で