表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
41/102

Append Life EX3 And the parting is sudden 君にはまだ早い

「...えてる?」

う~ん、なんだろう。私に話しかけてくる声が聞こえる。

「聞こえてるよね?」

「は、はい、聞こえてますけど?」

白い空間の中。多分、夢の中だと思う。こんな夢、前にも見た気がする。

「よかった、聞こえてた。」

う~ん、相変わらず、聞き覚えのある声なんだけど、誰だかわからない。

「誰なんですか?」

「僕だよ。分からないかな?」


「...あれ、これ何回かやり取りしてる気がする。」


「あ、分かった。こっちの世界のオトーサンでしょ?」

「バレちゃったか。でも、君は知ってるもんね。」


「というわけで、何しに出てきたの?」

「そうだなぁ。僕も一人で観測しているのはつまらないから、話相手になってもらおうと思って。」

「そんなぼんやりとしたことで呼んでほしくないんですけど。」

「でも、夢から覚めると、少しいいことがあるでしょ?僕との雑談も、無駄じゃないってことだよ。」

「そういうものなんですかね。ま、いいや。」


「やっぱり、一人は寂しいんだ。」

「僕の役割は、ただ観測をするだけで、そこに介入するようなことは出来ないんだ。だから、話相手が欲しくなるんだよ。悪趣味だけど、人間の行き方を観測するだけだから、それを誰かと分かち合うことができればいいなと思ったりしてる。だから、君の出番なんだよ。」

「う~ん、そう言われると、時間という枠がこの世界にはないもんね。」

「だけど、無数に存在はしている。そして、この世界自体が、様々に分岐された世界を集約して、観測出来る世界。でも、介入は出来ない。だから、難しいんだ。」

「見てるだけだもんね。自分の仕事がそれじゃ、やっぱり面白くはないんだろうね。」

「多分これが最後になると思う。やっぱり、僕には色々な世界線の観測をしなければいけない。たまたま、君がこの世界線にいたことで、僕も話し相手を見つけた。だから、色々な世界線を君に見せることが出来た。でも、僕は、あらゆる世界線の観測者だから、別の世界線に行かなくてはいけない。そこに、君のような存在がいれば、ありがたいんだけど。」

「私が生きてる世界線だけでも、人は無数にいる。それをただ見続ける。つらい仕事かも。」

「介入すること自体が禁忌だし、僕が使えるのは、その人に別の世界線の自分を見せることぐらいしか出来ない。」


「ねぇ、それって、自分のこの先を見ることって出来るの?」

「残念だけど、そこまで器用なことは出来ない。だから、君がどうなっていくかは、僕にもわからない。ただ、君は僕と接触出来たように、世界線の超越者になれる要素はあるんだ。でも、生きている人間には、その立場に来ることは出来ない。」

「え、じゃあ、今私と話してるあなたは、死んでるってこと?」

「う~ん、簡単に言ってしまうと、僕らには肉体はない。精神体として存在する。夢の中でしか会話出来ない。そして、歳を取ることもなく、消えることも出来ない。世界線の観測者は万能ではないけど、だからといって、役割が明確に決まっているわけでもない。だから、明確な役割は、無数に広がる世界線を見続けることしかないんだ。」

「つらいなぁ。介入出来ないで、悪い方向に行くこともあるってことでしょ?それも傍観しなきゃいけないのか。」

「そう、観測者だからね。」


「で、なんで最後なの?」

「いや、これもしょうもない理由だけどさ。君に別の世界線の君を見せたことがあったけど、それがバレちゃってね。本来は、君は観測者じゃないから、見ちゃいけない世界なんだよね。それが見られるのが夢の中だけど、僕が意識的に見せてしまったからね。もちろん、君の記憶には残ってないと思うんだけど、そんな甘いものじゃないらしいよ。」

「え、じゃあ、今後はハッキリとした夢みたいなものは見られなくなるってこと?」

「それは個人によって異なる。無論、君みたいに、自力で別の世界線の夢を見ることが出来る人もいる。だから、君の夢の中で、違う世界線の自分を体験することは、出来なくはないと思う。ただ、意図的に見せることは、もう出来ないかな。」

「じゃあ、私が意識して見ることは?」

「その要素はあるんだけどね。君にはその力があるけど、さすがに意識して見るってことは難しいんじゃないかな。」

「そっか。せっかく、色々な私が見られたりしたのにね。」

「でも、君には未来がある。だから、悲観することはないよ。そして、君にはまだ肉体がある。現世で楽しい時間を過ごせる。まだこっちの世界に来るには、早いってことだよ。」

「じゃあ、あなたは?どこかの世界線で死んじゃったってことなの?」

「それもわからない。気づけばここにいて、なんにも聞かなくても、その役割を果たすだけになってたから。よく分かってないんだ。自分自身のこともね。」


「じゃあ、最後にいいことを教えてあげるよ。」

「私に関するいいこと?」

「そうだね。君のいる世界線では、君はもうタイムスリップをすることはない。今の時代を生きていけることが決まってる。」

「今まで通りの生活が、ずっと続くってこと?」

「そういうこと。これで、少しは安心したでしょ?君の潜在意識の中には、まだタイムスリップするんじゃないかと心配する恐怖があった。それを意識しなくていいから、随分楽になれると思うよ。」

「うん、分かった。教えてくれて、ありがとね。」

「あとは、本当に君次第。君の世界線は、更に無数に分岐していく。どこに行くのかはまだ決まっていない。僕も、ここから、僭越ながら観測させてもらうよ。」

「なんか、上から目線なのが、ちょっと気になるけど。でも、そういう役割なんだもんね。しょうがないよね。」

「君と遭遇出来たことが、僕にとっての幸せだった。次に目を覚ますときには、多分覚えてないと思うけど、君の人生だから。」

「ごめんなさい。私、なんにもしてあげられなかった。最後だと思うと、心惜しくなるもんだね。」

「君が悲観することはないよ。それに、君と遭遇出来たことが、幸せだったって言ったでしょ。それだけで、僕は十分だよ。」


「それじゃあ、残念だけど、ここでの記憶は消させてもらうよ。」


そして、白い空間に立っていた私に、四方八方からピーマンが襲いかかってくる。


「記憶を消されても、私、覚えてるから。君は、一人じゃないから。」

「ありがとう。僕も覚えてるよ。君に、幸せな日々が訪れるように、祈ってるよ。」


ピーマンで見えなくなってしまった。


「うわああああああああ。」

「え、どうした?」

「大丈夫?落ち着いて。」


悪夢だった。私はピーマンに溺れてしまっていた。そんな変な夢をみるんだろうか。

あれ、なんか、私、泣いてる?

「どうしたの?怖い夢でも見たの?」

「ううん、違う。悲しい夢だった気がする。」

オトーサンが私を抱き寄せてくれる。

「きっと、どうにもならないことを知ったんだね。だから、泣いてしまったんだろう。」

そして、頭を撫でてくれる。それだけで、落ち着く。

「驚き方に焦ったけど、そういう夢を見ることもあるものね。きっと、悲しい夢を見てたんでしょ。」

おねえちゃんもそばに寄ってきてくれた。

「それじゃ、僕らの娘なんだから、いつものように二人で包んであげようか。」

「そうね。悲しい夢を引きずらないように、真ん中に来なさいね。」

「ごめん。でも、ありがとう。ふたりとも大好き。」

そうして、二人に挟まれるように、ベッドでの並びが変わる。

「幸せって、こういうことを言うのかな?」

「どうしたの?そんなに悲しい夢だったの?」

「良く覚えてないけど、もう会えないみたい。あれ、誰と会えないんだろう?」

「夢なんだから、そこまで詳しく考える必要はないわよ。落ち着いて、ね。」



「君は、君たちは、三人で様々な困難も、幸せも、乗り越えていけるよ。僕はそれを知ってるから。さ、じゃあ、お役目に戻ろうか。」

「あなたは優しすぎ。せっかくだから、私の存在も教えてあげればよかったのに。」

「それは、まだまだ先の話だよ。だって、忘れるとはいえ、彼女と対になる存在がいるとは言えないでしょ?大目玉食うのは、できれば避けたいよ。」

「そうかもね。でも、私も話しておけばよかったかな。ちょっと心残り。」

「いや、君が出てくるとさ、色々大変になるから、会わなくて正解だったよ。しかし、本当に観測者になれたんだから、期待を裏切らないよね。君は。」

「えへへへ。そういうつながりなんだよ。君と、私。」


「「みんなが、日々幸せであるように。」」




今日も読んでくれてありがとうございます。また今度ね。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ