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Life 27 Determination and readiness for marriage. 決心と、覚悟と、

彼女と僕は婚姻届を提出することになりました。しかし、僕は娘の気持ちを考えると踏み切れず、三人で話し合うことにします。


3人の話し合い

僕は、娘に「彼女と正式に婚姻関係になろうと思うけど、それでいいか」と尋ねます。娘は「お父さんには私の恋人になってほしい」という本音を打ち明けますが、彼女(おねえちゃん)の気持ちを尊重して結婚を許します。彼女は、娘が僕を愛していることを知った上で、結婚を決めた理由を「世間体を整えるため」だと説明します。僕たちは、婚姻届を提出しても、家族としての関係は変わらないことを確認します。


決心と涙

娘は「私、一人にならない?」と不安を口にしますが、彼女は「こんな可愛いあなた、出ていくと言われてもついていっちゃうくらい愛してる」と優しく抱きしめます。娘は「二人で私を愛してくれるなら、結婚を許してあげる」と、少し生意気な口調で言いますが、その優しさに僕も彼女も笑顔になります。


婚姻届の提出

僕たちは、娘の気持ちを尊重し、養子縁組はせず、婚姻届を僕の本籍地である栃木に提出することにしました。三連休を利用して実家へ帰り、ささやかなお祝いをします。そして、僕たちは三人で、これからも互いを愛し、支え合いながら生きていくことを誓うのでした。

婚姻届。

彼女と僕をつなぐであろう、約束の証を、この国に提出することで、法的に僕らは夫婦ということになる。

「別に事実婚でもいいような気がするんですけど、やっぱり出さなきゃダメ?」

「不安?それなら私は一生、あなただけと決めたから。そんなに奥様のことを信用出来ません?」


不安も心配も特にしていない、むしろ、僕の気持ちが冷めるんじゃないかと思う方を心配している。

「いや、どうしても、あの娘のことを考えると、僕の気持ちがね。決心がつかないというか。」

「そういうところよね。あなたが優しすぎて、決断出来ない時は、常に私達のことを考えてる。」

「もうあの娘は分かってると思うんだけど、それでも一度話しておかないと、僕の気持ちが収まらないんだよね。」

「まあ、そうかも知れないわ。やっぱりあの娘もあなたを愛してるものね。一度あの娘の意見も聞いておくべきよね。」



娘と三人で、珍しく真面目な話し合いである。今までこんなに真面目だったことあったかな...あ、彼女が会いに来た時以来かな。

「というわけで、彼女と正式に婚姻関係になろうと思ってるんだけど、一応、君はそれでいいのかなと思って。」

「うーん、私の気持ちとしては、オトーサンとおねえちゃんが結婚するのは当たり前だと思ってる。でもね、私も娘という立場だけど、オトーサンのことはずーっと好きだし、これからも変わらないと思うんだよね。」

「うん、そう言うと思ってたし、だから今、ためらってるんだよ。」

「無茶を言えば、オトーサンには私の恋人になって欲しい。でも、それじゃあ、おねえちゃんの気持ちを知ってるから、やっぱり難しいと思ってしまう。」

「...言いづらいことありそうね。私は怒らないから、言ってみて。」

珍しく、彼女にしては娘を諭すような話し方をしている。

「じゃあ、オトーサンに聞くけど、おねえちゃんと私、どっちのほうを愛してる?」

「...難しい話だね。比べるということ自体したくないけど、それでも僕は、君より彼女のほうが好きかな。」

「ははは、やっぱりそうだよね。聞くだけ野暮って感じだもんね。でも、それでも、オトーサンを一番愛してるのは、私だと思ってる。」

「それがあなたの本音なのよね。私も知ってる。この人とほんの少しだけ長く暮らしていたという事実もあるし、あなたはこの人のことを、本当に恋人として見ているものね。」

優しい微笑みを崩さないまま、彼女は答えた。僕もそのことを知っているから、これだけ悩んでるんだ。

「その気持ちはずっと知ってた。だけど僕が誤魔化してた。本当なら、君の想いに答えなきゃいけないはずなのにね。」

「そうだよ。オトーサンをずっと父親だって思って生きようと頭では分かってる。でも、気持ちがそう思えないの。もう今さらだけど、初めてもオトーサンだったし、今でもオトーサンに愛してもらうけど、それが一番嬉しい。」

ただ、娘の目はどこか贖罪というか、悪いことを白状しているような感じだった。

「僕にずっと甘い言葉をかけても、好きを行動で示しても、そうなることは分かってたのも、僕は知ってる。君の気持ちだけは、やっぱり真剣に答えなきゃいけないと思ってるんだ。」


「じゃあ、私から一言。いいかな?」

彼女が遮るように、言葉を選びながら、話を始めた。

「私達の関係は、婚姻関係になっても多分変わらない。気持ちとしてあなたが一歩引いてしまうんじゃないかとも思ってる。それが一番イヤなことなの。」

「それって、おねえちゃんもオトーサンを取られちゃうことがあるってことなんだよ?いいわけないじゃん。」

「女としてはそう思うけど、家族としては違うのよね。この人と、あなたがイチャイチャしてるのを見てると、微笑ましい気持ちになってきて、私も嬉しいの。」

「でも、それって立場的には、浮気を容認しているようなものじゃないの?あなたはそれでいいの?」

僕もちょっとこの発言には驚いた。でも、今までの三人生活、それと変わらないのもまた事実だったりする。

「浮気とはちょっと違うかな。この娘が、あなたを求めて来ている以上、あなたはそれを受け入れてあげることも、恋人として、してあげなきゃいけないことだと思ってるの。」

「でも、そうなるとあなたと婚姻関係を結ぶことに意味はある?」

「本音を言えば、あなたと同じで、決心かな。どんなことがあっても、例えばこの娘が、あなたを寝取ってしまうということも十分にありえる話。」

「そんなこと、しないよぉ。」

ちょっと泣き出しそうな声になりながら、娘が話す。

そこを彼女が寄り添い、頭を撫でている。

「知ってる。あなたは私だもの。そんなこと出来るわけない。これが答え。ちょっと私がズルかったかもね。ごめんなさい。」

「私達は、二人でオトーサンを愛していって、愛してもらうことが出来る?」

「私は、この人がそういうことが出来ると思ってるし、今までもそうして来たじゃない。でも、今まではそれが危うい関係だったということ。」

「危うい、かぁ。」

「そう。たとえ事実婚であったとしても、赤の他人が三人で暮らしていれば、当然トラブルが起こるだろうし、隠してても世間は私達に気づくと思う。そこに一線を引くための、婚姻関係かなって思ってるの。」

「立場を明確にしつつ、三人でしか分からない関係で生きるってこと?」

「世間体を整えるという意味かな。あなただって、他の人から見て、婚姻関係にない女性二人と暮らしてるってわかれば、やっぱり風当たりは強くなる。それは私も同じ。」

「じゃあ、私は、外では娘だけど、家では恋人でもいいってこと?」

「さっきもいった通り、その辺の気持ちは複雑。私も、それでいいと思わないし、この人は私の旦那様だと思うもの。でも、それは外での話。別に私達同士でも、愛し合ったりすることだって問題ないかなって思ってるもの。」

「..,じゃあ、おねえちゃんに慰めてもらおうかな。なんか緊張しちゃうな。」

「ふふふ、冗談よ。でも、それぐらいこの人のこと、私達は好きでしょ。もう、そうなっちゃったら、どうにも出来ないもの。」

「私、一人にならない?」

彼女の袖をつかんで必死に懇願しているような目をしている娘。

それを落ち着かせるように、また頭を撫で始める。

「当たり前でしょ。こんな可愛いあなた。出ていくと言われても、ついていっちゃうぐらい愛してる。私はそれくらい、あなたのことも好き。あなたは?」

「うん、おねえちゃんも好き。オトーサンも好き。二人共大好きだもん。」


「じゃあ、二人が婚姻届を出すことは、仕方ないから許してあげる。」

「あのさぁ、どこから目線なのかも分からないし、なにより君のキャラじゃないでしょ、その喋り方。」

「一度言ってみたかったんだ。いつもデレデレしてるから、こういう時こそツンを入れなきゃって。」

「...はぁ。なんか、真面目に悩んでたことが馬鹿らしく思えてきたよ。」

僕はこたつにうつ伏せ、首だけ娘の方に向けた。

「いつもありがとう。いっぱい考えてくれてるんだよね。大好き、オトーサン。」

「こっちこそ、素直に理解してくれて、ありがとう。君のこと、やっぱり好きだよ。」

それを微笑ましそうに見ている彼女。

「いいわよねえ。なんか甘酸っぱい。あ、私にもそれやってほしいなあ。」

「本当に台無しにするよね。あなたって、やっぱり分からない人。」

「そういうとこだぞ。オバさんだけど、私だって乙女心のまま生きてきたんだから、大人扱いしてもらうのが、嫌な時あるんだぞ。」

そういうことなら、背筋を伸ばして、真面目に彼女に言ってみよう。

「やっぱり、婚姻届を出しましょう。僕は二人に幸せになって欲しいけど、あなたをもっと幸せにしてあげたい。毎日大好きです。」

彼女の顔がみるみる赤くなっていく。耐性はないらしい。娘以上にないんだよな。本当に可愛いひと。



で、それから。

僕の本籍地であり、現在の住所は栃木にあるので、婚姻届は栃木に出すことになった。

三連休を利用して、また栃木の実家に帰り、提出後にはちょっとしたお祝いをした。


敢えて、娘は養子縁組などを行わなかった。それをすることで、双方とも本当に親子になってしまうのが怖かったから。それでいいだろうと思っている。

「ヒトリダケナンテエラベナイヨー」

「え、今更そんなこと?知ってるけど。」

「オトーサン、真面目に思ってないでしょ?そういうの、言葉に出したらダメなやつ。」

やっぱり、三人で生きていこう。三人揃って幸せに生きていけるように努力しよう。頑張る必要はない。あくまで努力。それだけでも、十分幸せになるはず。



今日はこの辺で。

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