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Append Life EX1 A number of future possibilities 未来はひとつじゃない?

「...えてる?」

う~ん、なんだろう。私に話しかけてくる声が聞こえる。

「聞こえてるよね?」

「は、はい、聞こえてますけど?」

白い空間の中。多分、夢の中だと思う。でも、こんな夢、今まで見たことないかも。

「よかった、聞こえてた。」

う~ん、誰の声なんだろ。姿も見えないし、どこから声が聞こえてくるのか、分からない。

「誰なんですか?」

「僕だよ。分からないかな?」

真面目に分からない。誰なんだろう。

「ごめんなさい。思いつかないんです。」

「そうか。まあ、それでもいいか。」

「え、そんな感じでいいの?」

「僕は、君たちをずっと見てたんだ。毎日、楽しそうだね。」

「あ、はい。楽しいですよ?」

「君にはその生活が一番良かったね。僕も、嬉しいよ。」

う~ん、私に関係する人なのかな。でも、声はオトーサンに似てるけど、ちょっと違う。

「君には、色々な可能性があったんだ。でも、君がその生活を選んだから、今の生活がある。


「君がタイムトラベルして行き着いた先がこの世界で良かったと思ってる。だけど、君には本当に別の生活が待っていたかも知れない。」

「う~ん、イマイチ、言ってることが分からないんだよなあ。」

「それじゃあ、いいかい。君の夢の中で起きた出来事だから、気にしないで欲しいんだけど...」


私の目線に、三人の喪服の女性が立っていた。

「誰だか分かる?」

「え、多分、おねえちゃんと、私と、あの歳を取った人は?」

「歳をとった人が、君の言うおねえちゃん、今のおねえちゃんっぽいのが君、そして、今の君っぽいのが、おねえちゃんの子供だよ。」

「えええええ、おねえちゃん、子供を授かってたの?」

「落ち着こうね。これは、君のいうおねえちゃんが、もっと早く君と、君のいうオトーサンに会いに来たときに起こったこと。この可能性は、もうありえなくなってる。」

「これって、私がいくつのときなんですか?」

「君が40歳、ちなみにおねえちゃんは60歳、娘は20歳。ただ、このときには、すでに君のいうオトーサンは亡くなっているんだ。」

「そんなの...ないよね。」

「安心していい、オトーサンは、今も元気に生きているだろう。だから、これは別の未来だって。ちなみにそのオトーサンは、君が20歳のとき、おねえちゃんが子供を身ごもった時に亡くなっている。」

「じゃあ、これはなんのシーン?」

「お墓参り。君たちは律儀に喪服を来て行ってたんだ。彼は、そんなに堅苦しいことは好きじゃなかったのにね。」

「あれ、なんで死んだオトーサンのことがわかるの?」

「それは分かるよ。僕自身であって、僕自身じゃない人だから。」

「???」

「いい忘れてたかな。君たちの理論で、平行世界上に存在する僕は無数に存在するんだ。そして君も無数に存在している。でも、神様は君に贈り物を贈ってくれた。」

「あ、ということは、本当に私は平行世界の人間で、オトーサンとおねえちゃんが本来いる世界ってこと?」

「う~ん、それとも違ってきてるんだよね。これが、君の人生となってしまったことを、本当は謝らなければいけないんだけど、君のいる世界、そこは紛れもなく現実なんだよね。」

「ということは、私はもうこの世界の人なの?」

「そういうこと。だから、良かったって言ってる。本当に良かった。」


そして、目の前には、私の使っていたiPhoneが出てきた。

「これも、君がたどるはずだった可能性の一つ。通話は出来ないけど、メッセージは飛ばせる。」

「夢の中なんですよね?メッセージってどうやって打てばいいの?」

「念じてみて。ディスプレイに文字が出てくるはずだよ。」

私はなんとなく、[甘いもの買ってきて]と念じてみた。

「面白いね。」

「いや、なんか難しい話ばかりで、甘いものが食べたくなって。」

「夢なのに甘いものか。起きたら、うんと甘えるといいよ。」

「あ、メッセージが返ってきた。」

そこには、[元気そうで安心した。そっちは楽しい?]と表示された。

「ネタバラシをしようか。君は、またタイムトラベルで違う時代に飛ばされる。だけど、タイムトラベルで飛ばされたのは、必然的に20年前のあのとき。」

「あれ、でも、iPhoneなんてあの時代にはないよ。」

「そう。電池が切れれば、オーパーツ化する。でも電池が切れるまでは、現代のオトーサンとこうやって会話ができるようにしておいたんだ。」

「これが、オトーサンと私をつなぐ、最後の連絡手段なんだね。」

「そう。だけど、君が経験したことを20年前に実践することで、君の時代となる。最愛の人とは会えなくなるけど、その時代の僕を探し出せばいいんだ。でも、この可能性も、すでにない。」

「今からでも起こる可能性がありそうだけど、どうして?」

「それは、さっきも言った通り、この世界が君を受け入れたからだよ。君のいる世界、そこは紛れもなく現実。」


「あなたって、本当に誰なんですか?」

「だから、僕自身であって、僕自身じゃない人。神様ではないけど、神様に近しい存在ではある。だから、君の夢に出て、会話している。最も、そんな楽しい時間は、そろそろ終わりらしい。」

「え、終わり?」

「ごめん。君との会話の最後に、こういうことはしたくなかった。けど、君にこのコトを覚えていられると、ちょっとまずいんだ。」

「なんでですか?別に、誰にも話すこともしないと思いますよ。」

「そういう決まりなんだよ。その決まりに、僕も逆らえない。神様に近しいと言ったのは、そういう事なんだよ。君と会えて楽しかった。じゃ、ピーマン達、ちょっと悪夢を見せてあげてね。」


そして、白い空間に立っていた私に、四方八方からピーマンが襲いかかってくる。


「またいつか、会えますように。」


ピーマンで見えなくなってしまった。


「うわああああああああ。」

「え、どうした?」

「大丈夫?落ち着いて。」


悪夢だった。私はピーマンに溺れてしまっていた。そんな変な夢をみるんだろうか。


二人が寄ってきてくれた。

「いきなり大きい声を出すから、びっくりした。でも、落ち着いてるようだね。」

「まさか、あなたまで発作持ちになるとは思ってないけど、なにかつらいことあった?」

私は、正直に言おうか迷っている。でも、下らない夢の話だし、そういう未来が来ないことも知ってた。

「ううん、ちょっとした悪夢の類かな。ごめん。びっくりさせちゃって。」


「そうだ、場所を変わろう。」

そう言って、オトーサンは私とベッドの位置を変わってくれた。私は二人に挟まれるようになった。

「今日だけ。本当なら、可愛い娘が真ん中と相場が決まってるんだけど。」

「あなたもそういうところは分かってるのね。今日は子供でいいの。真ん中で、甘えながら寝てもいいよ。」

「ありがとう。」

うん、安心できる。二人に挟まれるのって、こんなに心強かったんだな。知っていれば、たまにはして欲しくなるな。

そうか、甘えるといいって、こういうことだったんだ。なにも、オトーサンに限った話じゃない。おねえちゃんにも甘えていいんだよね。


あれ、誰に言われたんだっけ?なんか、ピーマンの前に、誰かと会話してた気がする。



私は、今もここで生きて、元気で暮らしています。悪魔に背いても、私はこの世界で生きていきます。

って、ただの夢にしては、なんだよなあ。どうしてあんな夢を見たんだろう。




今日も読んでくれてありがとうございます。また今度ね。

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