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Append Life 51 A princess goes to meet her prince. もうひとりの私

戸籍が導いた運命の再会

オトーサンが実家に行くことになり、娘と二人きりになったおねえちゃん。その日は、おねえちゃんの携帯に親戚から電話がかかってきました。結婚の挨拶をしたいという内容で、オトーサンと娘の存在が親戚にバレてしまったようです。


娘は、ずっと疑問に思っていたことをおねえちゃんに尋ねました。それは、どうしておねえちゃんが自分たちのことを知ったのかということ。おねえちゃんは、重い口を開いて、これまでの経緯を話し始めました。


それは、おねえちゃんが39歳の初夏の出来事でした。親戚から、かつて住んでいた空き家に彼女の旧姓で書かれた選挙の投票権が届いたと連絡が入ります。不審に思ったおねえちゃんは、親戚を訪ね、2年前に役場から**「彼女の戸籍が復活した」**という連絡があったことを知ります。


戸籍を復籍させたのは、なんとオトーサンでした。そして、僕自身(娘)を「保護者」として引き取ったという衝撃の事実を聞かされます。おねえちゃんは、僕が初恋の相手であることを思い出し、喜びと同時に戸惑いを覚えます。なぜ今、僕がそんなことをしたのか。そして、なぜ僕が僕自身(娘)を育てているのか。


戸惑うおねえちゃんに、大学の友人は「飛び込むしかない」と背中を押してくれました。


不器用な彼と、素直な娘

おねえちゃんは、意を決して僕の家のインターホンを押しました。そこに現れたのは、昔と変わらない笑顔のオトーサンと、瓜二つな娘でした。娘の正体を理解したおねえちゃんは、戸惑いながらも、オトーサンに会いに来た目的を話します。


そして、オトーサンの「カッコ悪いプロポーズ」を受け、おねえちゃんは結婚を前提に付き合い始め、同時に娘の母親役を務めることを決意します。しかし、母親になる自信がなかったおねえちゃんは、娘に「おねえちゃんって呼んでほしい」と頼みました。娘は快く応じ、姉妹のような関係を築いていくことになりました。


変わらない愛、そして家族

おねえちゃんは、オトーサンと娘が築き上げてきた温かい生活を見て、安堵したといいます。そして、オトーサンが父親役に徹してくれたからこそ、娘が素直でいい子に育ったのだと感謝を口にしました。


おねえちゃんは、オトーサンと結婚を決めた理由を「自分の思いが優先だった」と本音を明かしました。25年ぶりに初恋の人と再会し、プロポーズまでされたことに加え、オトーサンと娘の楽しそうな生活が羨ましかったのだと話します。


僕とオトーサン、そしておねえちゃんは、3人でいるのは「必然」だったのではないかと結論付け、これからも支え合いながら、幸せな日々を過ごしていくことを誓うのでした。

おねえちゃんと二人。今日はオトーサンが、実家で用事があるんだって。

「オトーサンいないと、なんか座る場所もイマイチ定まらないんだよね。」

とりあえずオトーサンの座ってる座椅子に座った。

「あら、なんかサマになってるじゃない。」

「そう?私も座椅子を買おうかな。」

「でも、あの人に寄り掛かれなくなるよ。」

「あ、そうか。じゃあ、やっぱりいいや。」


プルルルル

おねえちゃんのスマホが鳴った。

「あ、お久しぶりです。ええ、...はい、...え?それ本当ですか?わかりました。あ、じゃあ新しい住所を伝えるんで、送ってもらえますか?」

誰か知り合いなのかな。でもおねえちゃんが敬語?そんな相手知らないなあ。

「ええ、お手数ですけど、よろしくお願いします。...そのうち、ご挨拶には伺います。はい、失礼します。」

ご挨拶?なんのご挨拶だろう。う~ん。

「誰から電話掛かってきたの?」

「親戚よ。ほら、私の身寄りで、戸籍上の私の親に当たる人。」

「う~ん、私の親戚でもあるんだよね。イマイチ、その人が思い当たらない。」

「いや、本当にあなたは知らないんじゃないかな。私も、親戚が一同に会するまで分からなかった親戚の方だったし。」

「挨拶って結婚の?」

「そう。私は隠してたんだけど、色々あってバレちゃったみたいね。まあ、あの人は人当たりもいいし、その点は心配してないんだけど。」

「...こんどはオトーサンの連れ子になるのか。まあ、こればっかりはしょうがないもんね。」

「話が分かるわ。ごめんなさいね。」


と、そういえば、長い間、疑問に思っていた事があった。

「そう言えば、別の親戚に挨拶に行った時、私のことを教えてもらったって話があったじゃん。」

「そんなこと、話したんだっけ。」

「とぼけても無駄だぞ。オトーサンと再会した時、私はちゃんと聞いたぞ。」

「...あんまり思い出したくない話なんだけど、まあ、結果的にあなた達と出会えた話だから、懺悔するわ。」



私が39歳の初夏。それは、親戚に来た、ある選挙の投票権だった。

「え、私の昔の名字の選挙権?そんなことあるんですか?」

「私も知らなかったんだけど、あなたの戸籍、どうも、最近になって復活したらしいのよ。」

なにかのイタズラかと思ったんだけど、よく分からない話だった。とりあえず私は、その親戚を訪ねた。それは、私のいなくなった家族と一緒に住んでいた家を管理していた人だった。

「イタズラじゃないんですよね。その投票券。」

「俺のところにも来たし、母ちゃんのところにも来た。この辺じゃ選挙するから、投票券が来るんだけど、それが、あの空き家に入ってたんだよ。」

確かに、私の旧姓でかかれた、私の名前だった。

「そう言えば、別の親戚にさ、2年前に妙な連絡があったの、知ってるかい?」

「妙な連絡?」

「そう、役場からだったんだけどさ、アンタの戸籍がどうので、今生活している場所とか、保護者がいるとか、なんかそういう話らしいよ。」

「それは知らなかったです。誰に会いに行けば、その話、詳しく聞けそうですか?」

そうして、私は、疑心暗鬼になりながらも、その戸籍の話を役所から受けたという親戚に会いに行った。


「あら、珍しい子が来たね。元気だったかい?」

その人は、本当のお父さんの兄に当たる人。いわば、他の親戚に比べると、近しい親族ということになる。

「その、役所から来た妙な連絡の話、教えてもらえませんか?」

「いいよ。弟があなたにしてくれたプレゼントかもしれないと思ってね。」

そして、何者かが、戸籍を復籍させたこと、ある人に引き取られたこと、そしてその場所が東京だったことを知った。


この人の名前に記憶があった。最初は完全に忘れていたけど、幸い、押入れに入れておいた中学の卒業アルバムを引っ張り出して確認することが出来た。

「え、この人って、あの時の。」

はっきりと思い出した。彼は中学時代に私に告白してきてくれた人の一人。だけど、その中で私が初めて好きになった人。

自分でもこういうのに弱いなあと思いながら、運命の人というのは、こういうところで現れるものなのだと、感謝もした。


ただ、会いに行くとなると、確信が持てなかった。なぜ、今、私の戸籍を戻したのか。そして、その人の保護者が、なぜ彼だったのか。

不安しかない。何より、私がなぜもう一人、私を名乗っているのか、それがものすごく不安だった。

彼には会ってみたい。でも、その私が何を考えているのか分からない。どうすればいいか悩んだ。


きっかけをくれたのは、やっぱり彼だった。そう、大学の同級生の友人。快く相談に乗ってくれる。

「そう。そんなことがあったんだ。いや、会社の愚痴だと思ってたからさ、ちょっと意外で。」

「私はどうしたらいいと思う?彼には会ってみたいけど、それじゃあ目的が違うかなと思うんだよね。」

「でも、君がそんなに興味があるなら、やっぱり飛び込むしかないよ。それに、運命の王子様候補だったんでしょ、その彼。ひょっとしたら、僕が見てた君の隣にいた存在って、その人なのかもね。運命としか思えないもん。」

「ありがとう。そうよね。当事者が不安がってもしょうがないもんね。」


そして、あなたの家の住所に向かってみた。あの人にも、私自身にも、会ってみよう。そして、話をしよう。そこから考えればいい。


彼の家のインターホンを押した。


ピンポーンとベルが鳴る。

「はーい、どちら様...?え?」

目の前には、あの頃と同じ、いや、完全に丸くなってしまっていたが、間違いなく私の初恋の彼がいた。

「えーと、ごめんなさい。何かのイタズラ?」

「いや、イタズラでもなく、私です。もしかして、忘れてました?」

意地悪かもしれないけど、きっとあの約束を覚えててくれると信じて言ってみた。

そして、ちょうどこの娘が現れた。あれ、私だ。この娘が、今の私?

そこで、ようやく彼も思い出したみたい。

「もしかして、僕の同級生の、君?」

ニコッと微笑む私。そう、私と同級生だった、彼が目の前にいる。

そして、もう一人の私とも言うべきなのか、私自身がいる。あれ、でも見た目が20歳ぐらい?理解が出来ない。出来ないけど、取り合えす、目的を話す。

「私を引き取って育ててるって聞いたから、会いに来ました。もちろん、私にも会いたいです。」

「なに、お客さん?...え、私?なんで私がいるの?」

「あなたがもう一人の私かぁ。随分ハレンチな恰好してるけど、本当に私なのね。」

「あ、ごめんなさい。人様の前に出るような恰好じゃなかったです。」

ハレンチという言葉を言ってしまった。でも、私にしては、なんとなく見慣れた恰好だった。独身の私も、部屋では似たような恰好だったから。いや、私のほうが、スウェットな分まだマシだったか。

「それはともかくとして、ちょっとお話しましょうか。色々情報交換もしたいところですし。」

「とりあえず、えーと、まあ、ここではちょっと話しづらいので、ちょっと駅前にあるファミレスでも行きましょうか。」


こうして、私は彼からのカッコ悪い、二度目のプロポーズを受け、結婚を前提にお付き合いを始め、同時にこの娘の母親役をすることにした。

彼は、大事な時だけ不器用。ま、それは私も変わらないと思うけどね。


「なんて呼べばいい?やっぱりオトーサンに合わせて、オカーサンがいい?」

でも、母親である自信がなかった私はとっさに、

「おねえちゃんって呼んでほしいかな。私、あなたをまだ何も知らないから、知り合いのおねえちゃんぐらいで許して欲しいかな。」

しっくり来たのか、この娘も素直に受け入れてくれた。

「おねえちゃん。」

「何?」

「おねえちゃんって呼んでみたかったの。私達、姉妹もいなかったし、姉妹みたいになれたら嬉しい。」

「私、もうすぐ40歳だけど、姉妹みたいに思ってくれる?」

「もちろんだよ。だって、どう見ても私だもん。周りの人はもしかしたら双子ぐらいに思ってるかもよ。」


素直ないい娘だった。私は彼に育てられたこの娘を見て、本当の意味で安堵した。

この人、そしてこの娘。あなたたちなら、私もきっと受け入れてくれる。その思いは、今の幸せな生活で十分感じることが出来た。



「色々葛藤があったんだね。」

「次の恋に臆病だったのと、どうしてももう一人の私に疑心暗鬼だったのよ。」

「オトーサンを迎えに来たみたいなことをいつも言うけど、やっぱりおねえちゃんも約束は忘れてたんだよね。」

「そうねぇ。だって、自分が好きだった男の人だったら、他の人のものになってたりしてもおかしくないし。それもそうだけど、あなたの正体が分からなかったのも不安だったのかな。」

「もしも、っていう言葉を私が使うとなんか変なんだけどさ、私がオトーサンと籍を入れてたりしてたら?」

「どうしたんだろうね。でも、多分、あなたとは関係を続けてたと思う。あの人も、私に預けてくれただろうしね。もちろん、あなたとあの人の子供がいたらどうしようとかも一応考えたのよ。」

「でも、オトーサンの取った行動が正解だから、今の生活があるんだもんね。」

「本当にそうね。あの人が父親役に徹してくれた。だから、あなたも素直ないい娘になってくれた。もちろんあなたも苦労したと思う。でも、それだけで満足。だから、あの人と結婚しようと思ったのよ。」

「それは、私の母親役として?」

「その時は、自分の思いが優先だったわよ。さすがに、25年ぶりに初恋の人と会えた上に、プロポーズまでされたらね。それに、前にも言ったかもしれないけど、羨ましかったの。あなた達の楽しそうな生活。」


おねえちゃんの珍しい本音。オトーサンが結婚前提で付き合い出し、あっという間に婚約、そして同居までしちゃったんだから、その気持ちは本物だったんだね。

だから、オトーサンの恋人でなく、伴侶となったんだと思う。最近のほうが、ずっと恋人らしい。でも、そういう始まり方もあるよね。

私の大好きで、恋敵なおねえちゃん。家族として暮らしてる今、私は一番嬉しい。ずっと続いて欲しいし、ずっと続くように、もっと努力しよう。





今日はこんなところかな。

聞いてもらって、ありがとうございます。また今度ね。

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