Life 46.5 Excellent negotiating skills? 会話の通り道
僕は、発作で入院した日から一日が経ち、彼女と二人きりの時間を過ごしていました。退屈しのぎに始まった会話は、僕の思考法へと発展していきます。
僕の思考と会話術
僕は、会話においては相手の話の「要点」と「キーワード」を瞬時に見抜き、そこから最適な答えを導き出す思考法について語ります。これは無意識に行われており、僕が普段から冷静で的確な答えを返せる理由だと説明します。彼女は、僕のその能力が「得体の知れない魅力」であると感じながらも、普段の僕からは想像できない論理的な思考に驚きます。
感情と本音
僕は、うつ病によって感情表現が乏しくなっているものの、娘と痴話げんかをしたり、本当に大切なことを話す時には、素直な感情が表に出ると言います。そして、25年前に告白して泣いた、不器用な僕こそが本質であり、彼女たちには正直にストレートな言葉を使いたいと伝えます。
感謝と愛
彼女は、僕の得体の知れない部分も含めて愛していると語り、決して見放さないと約束してくれます。僕もまた、彼女と娘が側にいてくれることで不安が和らぎ、心が安定することに感謝を伝えます。
僕たちは、お互いの複雑な内面を理解しようと努め、深く愛し合っていることを再認識するのでした。
入院した日から、1日経った日。僕と彼女で、こんなことも話していた。
裏話的なことも知りたいでしょ?
「たまに、あの娘と痴話げんかみたいなことをしてるじゃない。」
「ま、それは、親子だしね。意見の相違は当然あるだろうし。」
「ああいう時に、妙に子供っぽくなるじゃない。それが、本当のあなたなのかも知れない。普段と違って、感情が乗ってる。」
「...そうかもね。今更だけど、そんなこと思わなかったなぁ。僕があの娘と痴話げんかしてる時は、感情が出てるんだな。」
「自覚がないのね。痴話げんかしてるのに、ニコニコしてるじゃない。」
「...そうなんだ。まあ、喋ってる僕は分かるわけないからね。」
「変にスイッチが入って精神年齢が低くなるのよね。だから、若い時の表情が出てくるんじゃない。」
「あなたって普段はポーカーフェイスよね。喜んでるようにも見えないし、辛そうにも見えない。」
「なんか損してるのかな。でも、表情が作りにくくなってるのも、感情の起伏が乏しいことに近いよね。」
「でも、不思議とあなたが欲しい言葉をくれる時、その時は多分感情が出ている時なのかもね。確かに、あなたの魅力って、そのポーカーフェイスから、一番言って欲しい事を言ってくれることも一つよね。」
「褒めてる?」
「私にはそう思うの。ひょうひょうとしてるけど、考えはしっかりしてるし、まあ、態度は優柔不断なところがあるけど、一番言って欲しい事を言ってくれる。」
「うん、そうなんだね。自分のことだから、うなずくしか出来ないよ。」
「でも、その反動なのかももしれないけど、感情が表に出る時は、すごく強く出てくる。嬉し泣きしたり、悲痛な顔をしたり、そういうところはストレートよね。すごく人間らしくなる。」
「感情の抑え方がわからないのかもしれない。表情で気持ちがバレてるのかもね。別にそれで有利になることはないけどね。」
「すごく不思議だったの。この人はどこまで思考しているのか、もしかして考えてなくても、そういうことが言えてしまうのか。あなたの魅力であって、一番わからないところ。」
「う~ん、どうなんだろうね。あんまり話したことないけどさ、僕の中で、人の話っていうのは、要点とキーワードをもとに思考すれば、最適解に近いものが出てくるって思うんだ。」
「なんか、あなたらしい回答が出てきたわね。続けて。」
「説得ってあるじゃんか。あんまりいい事じゃないと思ってるのね。なぜなら、ダラダラ長話したところで、会心するような話が出来ますか?ってことなの。一番言って欲しいことを言うって言うのは、説得において、最適解になる。だけど、それを引き出すには、会話が必要。だから説得には時間がかかるというわけ。あれ、何の話だっけ?」
「人の話に対する返答の話。」
「あ、そうそう。人と会話してると、ここは重要で、ここはあまり気にしてないってところが必ずある。それを重要な部分だけ確認する。まあ、聞き返すってことか。で、それとともに、キーワードを必ずその話の中で言っているわけ。そこから思考すれば、大体目的の言葉にたどり着くというわけ。」
「それを瞬時で判断出来るの?普通ならその思考にたどり着かないわよ。」
「そうなのかな。僕もよく分からないけど、出来るようになってたというのが正解かな。実は話をしていても、人の話を聞いてるモードの時は、相手の話は半分ぐらい捨ててる。まあ、あとはズルい方法だけど、敢えてこっちから選択肢を挙げて、正解のほうへ深度を上げていくという方法もある。時間稼ぎもあるんだけど、相手が2つのことを話した場合、どちらかはそれほど重要じゃないし、重要なら、そういう時はまとめて両方とも話してくれるんだよ。」
「...何を言ってるのかさっぱり分からない。」
「そうだよね。僕も言ってて、おかしなことを言ってると思ってる。けど、無意識にやってる。だから、あなたにも、あの娘にも、ある程度的を得た答えが出来てると思うんだよね。」
「反射的に言えてしまうのか、考えてるのか、あなたの思考は読み取りにくい部分がある。でも、今の話を聞く限り、それを無意識に思考してるってことだから、両方とも合ってるってことになるわよね。」
「実はね。」
「あなたの得体の知れない凄さの一つね。それって役に立つことってあるの?」
「会話のラリーで脱線していく話とかあるじゃん。あれも脱線する方向が明確ならいいんだけど、ほぼ100%会話に飲み込まれて行くんだよ。そういう時の修正とかね。色々面白いんだよ。生きた会話ってのは。」
「唐突に変な話をし始める時あるけど、それも全体的な修正をしているってこと?」
「それは、アプローチ方法を変えるための手段かな。ゴールとして挙げなきゃいけないワードは必ず会話の中にあって、その会話はただ流れていくだけじゃないんだよ。実は、話しているほうも、目的を見失うことがある。聞いているほうからすれば、それを修正しなきゃいけない。その手段の一つとして、話題そのものを変えることもある。わかりやすいかどうかは分からないけど、100通りのプロセスがあっても、答えは1つ。多くても2つぐらい。それが合っていれば、大成功と。」
「どう反応していいのか分からないわ。」
「こう説明してるけど、あなた達と話してる時にはそういうことはあまり考えてない。何より、言葉を生かしたまま会話することのほうが重要だからね。」
「相手による。まあ、そうよね。私達と話してる時まで同じことを考えてたら、それこそ恐ろしいよ。」
「でも、一番言わなきゃいけない言葉は、多分そのプロセスを無意識に行って出てくると思う。何より、話してる本人がこんなことを言ってるのかと思うことすらあるからね。」
「ねえ、あなたは誰なの?本当に、私に告白してきて、泣いた君なの?」
「そう。不器用だった僕は、勢い任せの告白をして、君に一度は振られ、泣いた。でも、そこから25年の歳月を経て、自分でも理解できない人との話し方を独自に会得したというわけ。でも、あなたがグッと来る言葉は、すごくシンプルで不器用でしょ。それが僕の本音なんだよ。不器用だから、最適解になってしまう。そういう事なんだよ。」
「...う~ん、そう聞いてしまうと、不器用に見せた、なんか違う意味がまた出てきそう。」
「そう構えるようなことじゃないよ。少なくとも、あなた達には正直にストレートな言葉を使う。僕の本音を伝えたいんだからね。
「で、今は何を考えてるの?」
「退屈のしのぎ方、もしくは腕を攣らずに伸びをしつつける方法。」
「聞いた私がバカだったわ。でも、あなたはそれぐらいのほうが、うちではいいのかもね。」
「あ、真面目な話してる?僕もバカじゃないけど、今考えてることはくだらないことだから、しょうがないよ。」
「ま、なんでもいいけど、もうあんな思いはごめんだわ。あなた、本当に大丈夫?」
「大丈夫。多分、また発作は起こると思う。けど、あなた達になら、安心して任せられる。」
「大丈夫じゃない。気を失ったりとかは、本当にやめてよね。」
「まあ、その辺は、僕も制御出来ないんだ。なった時は、また任せるよ。」
「あらためて、僕は、確かに感情表現が苦手というか、特に何も思わないで答えてしまうことがある。それでいいのかとは思う時もあるけど、それで苛つかせることもあるのかも知れない。でも、僕はそういう人間。それでも、見放さないで、側にいてくれる?」
「何を言ってるのよ。あなたの得体の知れないところに私は魅力を感じるの。見放すわけないでしょ。感情表現が戻らないなら、出来るように戻してあげるわよ。」
「まあ、それは僕の問題だから。今は、あなたが側にいてくれて、僕を見放さないことに、感謝。」
「...そういう言葉を、もっと嬉しく言うんだぞ。まったく。」
結局、何の話だったか分からない。でも、そんな話でも、僕の奥様は聞いてくれる。まあ、全部スルーだと思うけど。
寄り添ってくれてる、そして話を聞いてくれてる。これだけで、僕の不安は随分と和らいでるし、安定する。落ち込まなくて済むし、何より暖かい。照れくさいけど、大好きです。
今日はこの辺で