表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/102

Life 26.5 Adventures into my little past. 私が昔に戻ってみたら

お姉ちゃんと私(娘)は、20年間お姉ちゃんが通っている美容院に行くことになりました。お父さんは、女性二人で楽しんでくるようにと、家で留守番をすることに。私は、お父さんが意外と東京の地理に詳しくないことや、お姉さんも同じように彼に任せきりなことに気づきます。


「私の恋人が好きな髪型」

美容院の「店長さん」

代々木公園駅から歩いて5分の場所にある美容院に到着すると、お姉ちゃんは「店長さん」という女性美容師さんと親しげに話していました。店長さんは、私を見て「昔のアンタを思い出す」と言い、私とお姉ちゃんがそっくりなことに驚きます。店長さんに「もっと派手な髪型にしたら?」と提案されますが、私は「私の恋人が好きな髪型なので」と、お姉ちゃんと同じミディアムボブをオーダーします。


小さなイメチェン

店長さんは、私の髪を「肩につかない程度に、丸く」カットしてくれました。私は、高校時代を思い出すような少し短めの髪型に満足します。お姉ちゃんは、変わらない自分の髪型について「結婚したから、一生この髪型でいく」と話します。店長さんは、そんなお姉ちゃんを「馬鹿正直」だとからかいつつも、二人の仲の良さに微笑んでいました。


お父さんの反応

家に帰ると、お父さんは一瞬、私の髪型の変化に気づきませんでした。しかし、私が「私の恋人が好きな髪型」だと伝えると、「君を何年見てると思ってるの?」と、少し短くなった髪型に気づいてくれました。お姉ちゃんは、「この娘の感想は?思わずときめいちゃった?」とお父さんに尋ねます。お父さんは「あの時の君を完全に思い出したよ」と照れながら答え、私はその反応に満足するのでした。

今日は、この前予約していた通り、おねえちゃんの専属の美容師さんのところに行って、毛先を揃えてもらうことになった。

せっかくだからオトーサンも誘ったんだけど、

「せっかくだから、女性二人で楽しんでおいでよ。僕は、プライムビデオで、アニメイッキ見するから。」

相変わらず、おねえちゃんがいるというのに、横着なところは治らない。まあ、おねえちゃんもそれを知ってるから誘わなかったのかな。大人だな。


「しかし、未だに東京の地理がよくわからないって、案外東京初心者?」

「おねえちゃんほどいろいろ行ったことないもん。渋谷とか、新宿とか、池袋とか。」

「う~ん、あの人と一緒に行ったんでしょ。まあ、そんなに説明しないものね。」

「説明しない?オトーサンが?」

「そう。彼って、案外何でも知ってる風で、割と知らないことが多いの。知らないというより、興味がないのかもね。」

「言えてるかも。あれだけ髪の毛も肌も、爪まで綺麗なのに、そんなことどうでもいいって思ってるもんね。」

「まあ、でも彼がついてきたら、お姉さんに罵倒されそうな感じだし、ちょうど良かったのかもしれない。」

代々木公園駅から歩いて5分ぐらい。ここが、おねえちゃんがもう20年通っているという美容院。

カットサロンとか言うんだって。私も初めてくるから、なんかワクワクする。

カランカランと扉を開ける。

「いらっしゃいませ。ご予約の方ですね。」

「店長さんをお願いします。」

スタッフさんが、店長さんを呼びに行った。ちょうどお昼ご飯を食べてたらしい。

「ごめんね~。ちょっと時間空いたから、ご飯食べてたの。」

「なら食べたあとでいいですよ。今日は2倍時間がかかるだろうし。」

「それじゃあ、お言葉に甘えて。ご予約のお客様にお茶をお出ししておいて。」

「了解です。」

意外とシートは少ないけど、十分な広さ。そしてあのお姉さん。いやあ、一国一城の主って感じがする。

オトーサンにはそんな雰囲気ないんだよなあ。でも、それがオトーサンの魅力かも。


「姉妹なんですか?おふたりともそっくりで。」

「姉妹だって。あはは。ちょっと嬉しい。」

おねえちゃんはスタッフさんとも仲がいいみたい。なんか積もる話をしているようだった。


「おまたせしましたっと。で、今日は二人分って聞いてるけど、連れ子も髪の毛カットでいいのかな。」

私はとっさに顔を上げてみた。いつもの半分、ちょっと違った反応が半分。

「...なんか昔のアンタを思い出す。いや、アンタはもっと世捨て人みたいな風貌だったっけ。」

「あの頃のわたしと違って、この娘は前向きに生きてるんですよ。だからかな。」

「って言っても、どうせ二人揃って同じ感じにしたいんだろ。もう20年も付き合ってるんだから、さすがに分かってる。」

「お願いします。」

「で、娘ちゃん。あれ、娘ちゃんでいいんだよね。」

「はい、おねえちゃんって呼んでますけど、あちらが私の母親です。」

「あなたもあなたで、こんな地味な感じにしないで、もっと派手な髪型にしたほうが、見栄えするんじゃない。例えばベリーショートとか似合うよ。」

「いや、私もミディアムボブでお願いします。できればおねえちゃんと同じ感じで。」

「?何か事情でもある?それとも?」

「えーと、私の恋人が、その髪型が好きなんです。だから、それでお願いします。」

ごめんオトーサン、ダシに使っちゃった。でもオトーサンもこの髪型好きだったよね。

「いいの?娘ちゃん、あんなこと言ってるよ。」

「ああ、いいんですよ。恋人がその髪型好きなの、私も知ってるし。」


女性の美容室の場合、イメチェンしたい人はともかくとして、おねえちゃんみたいに社会で完璧を演じてる人にとって、毛先を揃えて、ほぼ同じ状態を保つようにしているらしい。

私もミディアムボブが好きでこうしてるけど、少し変化があってもいいのかな。

「あ、じゃあ、肩につかない程度に、丸くしてもらえますか?」

「どういうの?ちょっと教えて。」

店長さんが髪型の見本誌みたいなのを見せてくれた。あ、この髪型がそんなに変わらないけど、ちょっと短いかな。

「こういうのにして欲しいです。ちょっとだけ短くしてみたいです。」

「承知致しました。それじゃあ、整えていくから、ちょっとだけ待っててね。」


店長さんはチャッチャと髪を揃えていく。案外バッサリ行くところもあって、内心大丈夫かなあと心配しながらじっとしてた。


30分後。

「同じように、フロントから後ろまで肩につかない程度。長さが変わらないけど、伸びてくるとちょっと髪型が崩れちゃうから、そのときはまた整えてあげる。」

ちょっと違う私。思えば、もう数年トレードマークみたいにしてたけど、ちょっとおねえちゃんと変化を付けてもいいよね。

「うん、これでいいです。バッチリです。ありがとうございます。」

「気に入った?」

「はい、これで恋人が気づいてくれるか、試してみちゃいますね。」

「若いっていいねえ。恋人君も、きっと気に入ってくれると思うよ。あとは自信を持てば、大丈夫。」

「はい、ありがとうございます。」



それからおねえちゃんが、店長さんにカット、というか、本当に単に毛先を揃えるだけしか頼んでないみたい。

パーソナルイメージってものなんだろうか。おねえちゃんのイメージを形作る上で、そういう精密な部分が、実は大切なのかもしれない。


「アンタさあ、もう40になるんだっけ。いつまでも若いままってわけに行かないと思うけど、いつまで続けるつもり?」

「この髪型ですか。そうだなあ。結婚しちゃったから、一生続けるつもり。」

「そこまで旦那さん、こだわってほしいの?違う髪型も似合うと思うから、試してみればいいのに。」

「駄目なんです。私はもう死ぬまでこの髪型って決めてます。」

「それがアンタのアイデンティティってやつね。ま、しょっちゅう来てくれるから、うちにとっては上客だし。」

「ふふ、ありがとうございます。」


二人で結構な額のカット料金を払ったけど、今日はおねえちゃんが出してくれた。

「次も予約、お待ちしていますよ。娘ちゃんも、気に入ったらまた予約してね。」

「はい、また髪型で迷ったら、相談させてください。お願いします。」

「素直ないい子だね。」

「なんですか?私も素直。知ってるじゃないですか。」

「アンタのは素直っていうんじゃないんだよ。馬鹿正直。」

「そうやって、すぐからかうんだから。もう大丈夫ですから、そんなに心配させないように生きてますから。」

「だね。旦那さんと仲良くやりなさいよ。さすがに今の歳だと、致命傷になるからなw」

「ありがとうございました。またお越しください。」

そうやって、店長さんと、スタッフの方々がお見送りをしてくれた。やっぱり、1000円カットとは違うなあ。ちょっとお金貯めて、またこよう。



「なんか、知ってるんだけど、妙に懐かしい気がする。若いあなたには、そっちのほうが似合うね。」

「おねえちゃんも覚えてるでしょ。高校時代はこれぐらいの長さで止めてたこと。」

「そうそう。それで、肩についたら、ローのツインテールにしたりね。」

「今まで髪型変えようとも思わなかったんだけど、これぐらいにしたら、オトーサンがちょっと驚いてくれるかもしれないかなって。」

「気づくかな?基本的な感じが変わらないから、案外スルーされるかもよ。」

「その時はおねえちゃんが慰めてよね。」

「もちろん。私が悲しいときは、私が励まして上げなきゃね。」




「ただいまぁ。」

「ん、おかえりなさい。」

変化には気づいてないみたい。やっぱりそんな感じなのかな。

「ただいま。お昼どうしたの?」

「え、レトルトカレー食べた。」

「ここんところ毎日カレー食べて。少しは別のものでも買ってくればいいじゃない。」

「だって、出前は注文するなって...あ、髪型変わってるじゃん。」

「あ、オトーサン、気づいた?すごい、ほんのちょっとだけなのにね。」

「君を何年見てると思ってるの?そこまで短くしたら、さすがに気づくよ。」

内心ホッとした。さすがに気づかれなかったらどうしようかとドキドキしてたけど。


「なんかさ、色々恥ずかしいこと思い出しちゃったな。」

「この髪型、やっぱりオトーサンも特別?」

「特別だよ。まさにその顔、その雰囲気...は変わっちゃったけど、僕が最初に好きだった君。」

「男の人ってノスタルジーに生きてるわよねえ。私もそんなに変わらないんだけど。」

「あなたの髪型は、もうあなたのオリジナルだよ。今まで二人共意図的に揃えてたんだとずっと思ってたからさ。」

私の肩に手を乗せて、オトーサンの前に出してきたおねえちゃん。

「で、この娘の感想は?思わずときめいちゃった?また好きになっちゃった?」

「うん、あんまり想い出で生きてたくないけど、あの時の君。完全に思い出したよ。僕も、あの頃は若かったなあって。」

「しばらくこの髪型で生活します。いいんだぞオトーサン。あの時の想いをぶつけてくれて。」

「その時は...うーん、やっぱり三人で仲良くしようか。」

「あー、誤魔化したでしょ。そんなに恥ずかしい?」

「そうじゃなくてさ。その、なんかさ、照れくさい。」

「なんか、日頃のお返しが出来たかな。オトーサンは、もう少し素直なほうが可愛いのにね。」



私の小さな冒険ってほどでもないけど、恋人はちゃんと恥ずかしがってくれたので、よしとしようかな。



今日も聞いてもらって、ありがとうございます。また今度ね。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ