Life 41 My home as it has always been 大晦日
大晦日の昼下がり。僕(語り手)と娘は前夜のゲームで徹夜したため、眠り込んでいました。彼女(奥様)はそんな二人を優しく見守り、僕は、彼女が僕の自由奔放な生き方に惹かれていることを改めて知ります。
穏やかな昼下がり
夕方になり、娘が起きてくると、僕たちはゲームの話で盛り上がります。僕の親友のゲームの腕前や、僕が昔からゲーム好きだったことに娘は驚き、僕の過去の持ち物だったゲームの話に花を咲かせます。彼女は、そんな僕たちの会話を微笑ましく見守ります。
大晦日の夕食
夜になり、3人でスーパーへ買い出しに出かけます。大晦日の慣例に倣うことに抵抗がある僕たちですが、結局去年のようにスーパーのお寿司とカップ麺のそばで夕食を済ませることに。彼女は、普段よりお酒を飲む量が増えていることを娘に心配され、僕に注意を促されます。僕は彼女の健康を気遣い、優しく注意します。
家族の絆と帰省
帰宅後、3人はお寿司とそばを囲み、穏やかな時間を過ごします。彼女は、僕たちと一緒に買い物に行くことが楽しかったと話し、僕たちもまた、日々の忙しさから解放され、家族で過ごす時間の尊さを改めて実感します。そして、翌日には僕の実家へ帰省することが決まり、娘は僕の妹家族に会うことを楽しみにするのでした。
大晦日という特別な日にもかかわらず、特別なことはせず、家族3人で過ごす時間を大切にする僕たち。それぞれの心配や思いやりが交錯する中で、3人の絆はより一層深まっていくのでした。
大晦日。
まあ、イベントらしいことは特にないし、まして昨日は親友と娘と3人で徹夜してゲームやってただけあって、さすがに昼でも起きてなかった。
奥様は何も言わず、僕らみたいなバカ二人を、静かに寝かせてくれている。特に大掃除するほど部屋がないし、せいぜいトイレと洗面台ぐらいだったらしい。お風呂は毎日掃除してるしね。
13:00
「ふああああああ。おはようございます。」
あくびと言うか、雄たけびというか。そういう類の声を上げながら朝のあいさつ。
「おはよう。まったく、あなたは年甲斐もなく、徹夜しちゃうんだから。」
「あいつと遊んでると、やっぱり20代のころを思い出すんだよね。無理しなくてもなんとなく起きていられるもんなんだよね。」
「まあ、あの人がいい人で良かったわ。あの娘も懐いてたし。やっぱり類は友を呼ぶというか。」
「あいつはいいやつ、人が良すぎるんだよね。そこまで知ってるやつがどれぐらいいるんだろうかな。まあ、勤続20年だし、会社にもたくさん慕ってくれる人間がいるんだろう。」
「あなたには帰属意識みたいなものがないものね。自由気ままに毎日生きてる感じ。だから、私も惹かれちゃってるんだよね。」
「心配されてるのかな?それとも、母性がそうさせてるとか?」
「不器用だけど生き方にウソがないでしょ。あなたの場合。昨日のあの人は、やっぱり多少なり社会に適応して、嘘はつける人間だと私は思う。それが優しい嘘であってもね。その違い。正直なのは、やっぱりあなたの魅力なのよ。」
「なんか...ありがとう。」
「ふふふ。オジサンなのに可愛くならないでほしいかな。まったく。」
僕も、別に娘を起こすつもりはなく、彼女と二人で、音量を絞りながら、なんとなく昔の映画を見てる。
こういう時、僕がチョイスする映画は大抵不評。まあ、オタクのみたい映画になっちゃうから、彼女の見たいものを見る。そのうち僕が寝落ちする。そんな感じで、もう夕方。
17:00
「...しもーし、生きてる?」
「う、うん。あ、おはよう。起きたんだね。」
「起きたのはオトーサン。まったく、起きてからまた寝ちゃうとか、どれだけ寝不足なの?」
「悪い。睡眠障害があると、不規則な時間に寝た時に、どうしても寝落ちしてしまう時があってね。」
「あら、おはよ。しばらく起きないと思ってた。いい寝顔だったかな。」
「...いつの間に寝てたの、僕?」
「少なくともHEROの1本目の途中から寝てたわよ。私はさっきまで2本目のほうを見てた。で、この娘が起きてきたと。」
「なんだ、そんなに変わりないじゃん。君も良く寝た?」
「寝た寝た。限界まで起きてると、限界まで寝ることも出来るんだね。」
なんか、ほのぼのした意見だ。いい大人になったというのに、まだまだ子供みたいなことを言うんだね。
「よっこいしょっと。」
とりあえず横向きから縦向きに直る。
「ねぇ、オトーサンの親友さんがゲーム上手くて、ちょっと尊敬しちゃったよ。」
「ああ、要領がいいし、そもそもの経験値が違いすぎるよ。僕の5倍ぐらい。君だと、そうだなあ、10倍ぐらい?」
「何者なの?あの人。」
「ん、秋葉原近辺に住んでる、ただの独身貴族だよ。メジャーなゲーム機は全部持ってるようなやつだよ。」
「もしかしてPS5も?Switchも?」
「そりゃ当然持ってるだろう。加えて、20年近く前にfpsで一緒に遊んでたのも彼だよ。」
「オトーサンにならゲーム勝てそうだけど、あの人には絶対勝てない気がしたもんね。ときメモも詳しいし。あ、でも、オトーサンもときメモ相当詳しかったんだね。」
「僕の持ち物だったのを忘れてたか?中学生の君に回ってきたPS1は、僕の持ち物だからね。」
「はいはい、話はそれぐらいにしようね。さて、今晩はどうする?」
彼女が僕らの話に割って入ってきた。まあ、時間も時間だしね。
「どうするか、あんまり考えてないなあ。あ、初詣とかは実家に帰ってから行くんで、スルーね。」
「お蕎麦食べる?でも今からスーパーに行って、茹で蕎麦なんてあるかな。」
「蕎麦食べたいなら富士そばとか行けばいいんじゃない。わざわざ乾麺茹でたりとか、ちょっと今の僕じゃ失敗するかも知れないし。」
「風情もへったくれもない人だなあ。でも、特別なことをする必要もないかな。」
折れたのか、それとも元々そう考えてたのかわからないけど、とりあえず寝起きで蕎麦を茹でるのは勘弁だったから、助かった。
「どうしようか。」
「あなたの言った通り、富士そば食べて、なんとなくテレビでも見てる?」
「さすがにどん兵衛とかだと、なんかアレじゃない。年越しにとは言うけど。」
「夜食って感じよね。決して、夕飯に出てくるものじゃない。」
「別に蕎麦食べなくてもいいんじゃない。毎年食べてたわけじゃないでしょ?」
「そうなんだよなあ。別に食べてたわけじゃないんだよなあ。」
「出たな。新人類の返答。まったく、あなた達ってのは、なんとなく慣例に従うとか、そういうことはないわけ?」
「「ない」」
「去年って何食べたんだっけ?」
「アレだよ、なんかすげえ数乗っかってるファミリー向けの寿司。30貫ぐらい乗ってたよねアレ。」
「そうそう、それとどん兵衛だったよね。あれ、結局蕎麦食べてるね。」
「忘れてた。くくりがカップ麺だから、蕎麦って認識が薄かった。」
二人で笑ってると、なんとなく殺気みたいなものを感じた。
「で、今年はどうするの?私は別にどん兵衛でもいいのよ。あなた達はどうするの?」
「オトーサン、怒らせちゃったじゃんおねえちゃんのこと。なんとかしてよ。」
「僕?まあ、それじゃあ、とりあえずスーパーにでも行ってから考えればいいんじゃないかな。」
「...まあ、及第点ね。たまには三人でスーパー行って、何か食べるものを買ってきましょうか。」
「賛成します。家でゴロゴロしてても食べ物は出てこないもんね。」
「それじゃ、行きますか。」
ガチャ
「う~~~、寒い。」
「若いねぇ。君はそんなカッコで寒くないって思ってたの?」
「本当。スーパーだって寒いんだから、少しぐらい厚着したっていいぐらいだよ。」
「しようがない。コート取ってくるから待ってて。」
「はいはい、どうぞ。」
ガチャ
...外で待つ僕と彼女。
「あなたも薄着じゃない?寒くないの?」
「うん、案外トレーニングウェア素材ってのは、案外風を通さなかったり、裏側にボアがついてたりね。」
ナイキのトレーニングウェアに、裏起毛の付いてるデニムパンツ。普段とそんなに変わらないカッコだったりする。
「あなたこそ、そんなに薄手のコートでいいの?」
「案外暖かいのよ。これで動く分、十分暖かくなるかな。」
チェックのロングスカートに同じくグレーのロングコート。近所に行くぐらいだから、こんなもんでいいんだろ。しかし、若く見えるよなあ。
ダダダダダッ、ガチャ
「おまたせ~。」
「あれ、コートじゃなくてアウターだけ変えてきたんだ。マフラーも。」
「若いって感じの色ねえ。まあ、若いうちにしか着られないから、いいんじゃない。」
ベージュのマフラーに淡いピンクのアウター。膝上ぐらいまでの黒いスカート、紺色の多分タイツなのかな。そして可愛い飾りの付いてる白いブーツ。
「...う~ん、なんか、若い。まあ、いいんだけどさ。」
「もっと褒めてくれていいんだぞ。」
「別の機会にね。」
「つれないなあ。こんなに可愛いのに?」
「自分で言ってたら世話ないわ。毎日可愛いんだから、それで十分でしょ。」
「スルッと黙らせる一言を言っちゃうのね。あなたって、本当にどこでそんな方法を思いつくのか。」
「え、なんか変なこと言った?」
「毎日可愛いって。まったく自覚なく言ってるの?」
「うん、なんかおかしい?」
「あなたさぁ。そういうところだぞ。その気にさせちゃうんだから。」
スーパーまでの道。三人で並んで歩く。マナー良くないけど、大晦日だし、許して欲しいかな。
「やっぱり天ぷらの盛り合わせばっかりだね。」
スーパーのお惣菜売り場。時期が時期だけに、やっぱり蕎麦には天ぷらなんだろう。
「だけど、蕎麦があるかどうか分からんよ。まあ、ちょいと見ておこうか。」
...ない。乾麺もなければ、茹で麺もない。あ、どん兵衛もない。緑のたぬきならある。
「蕎麦、食べる?」
「買っておく分にはいいんじゃない。買っておこうかな。」
そうやってカゴに緑のたぬきを3つ入れる奥様。
「どうしようか。これに天ぷら入れるの、なんかもったいないよね。」
「ないんじゃしょうがないかな。仕方ないし、記念日でもないけど、お寿司でも買っていきましょうか。」
「なんか、僕らってお寿司に逃げやすいよね。」
「なに?美味しいし、なんか特別感あっていいじゃない。パックだし、捨てるのも楽だしね。」
まあ、作るって発想がこの時点でないからね。そんなところでいいだろう。
で、お惣菜コーナーに戻ると、娘がもう確保していた。
「これでしょ。30貫入りのお寿司。」
「あ、ああ。寿司って言ってないけど。」
「二人の好みぐらい、いい加減分かるよ。それに、去年もこれだったじゃん。」
「いいんじゃない。これでいいかな。」
「いいの?30貫って微妙な数じゃない?」
「そのための緑のたぬきでしょ。家族揃ってこういう夕飯ってのもどうかとは思うけど、大晦日だし思いっきり手抜きしてもいいでしょ。」
「あなた、今日はもう何も作る気ないのね。ま、ケトルと箸だけあればいいしね。」
「そ、君でも準備出来る。いや、君が何か作ってくれるなら食べるけど。」
「お酒のアテ、買っていい?作る気はないけど、やっぱりお酒のアテは欲しいのよ。」
「で、お酒はあるんですか?」
「ちょっと足りないから、買ってもいい?」
「明日は実家に帰るけど、それに影響がないなら買ってください。」
「やったぁ。あなた、大好き。」
「テンションの上がり様がすごいね。でも、今日は我慢させたもんね。」
「そういうとこ、あなたの好きなところ。まったく。」
「...盛り上がってるね。私もなんかおかず買っていい?」
「ああ、いいよ。おかずって、そんなに何か食べたいものあるの?」
「砂肝の唐揚げ?これが食べてみたい。」
「なぜ、そんなものが売ってるんだろうか。年末だからなのかな。うん、いいよ。お酒のアテにもなるしね。」
「...。」
「どうしたの?なんか言いたいことありそうだけど。」
「おねえちゃん、最近ちょっとお酒飲み過ぎじゃない。大丈夫なのかな?」
「僕にはわからないからなんとも言えない。でも、さすがにあの人も節制は出来るんじゃない。」
「いや、おねえちゃん、お酒それほど強くないじゃん。だから、心配だよ。」
「わかった。こういう時は僕の役目なんだろ。ピシャリとは言えないかもしれないけど、ちょっと注意ぐらいはするよ。」
「...お願いだよ。なんかやっぱり、心配になっちゃうから。」
頭を撫でながら、
「心配してくれるんだよな。親なのに、心配掛けてごめんなさい。」
「それ、オトーサンが言う事じゃないよ。それに、おねえちゃんに注意してからね。」
あ、しまった。公共の場でなでなでしてしまった。でも、娘も別に気にしてないのかな。
僕と娘が両手で袋を持つぐらいのボリューム。
娘の右手には揺らさないように寿司、左手にはお惣菜。
重い飲み物とか、なんか無駄に買ったお菓子なんかは僕が持った。まあ、そのぐらいはね。
鼻歌を歌いながら楽しそうに歩いてる彼女。
「なんかいいことあったの?」
「え、うん。最近三人で買い物行ったりすることなかったじゃない。ちょっと楽しかった。」
「そうだねぇ。みんな忙しかったし、なかなか夜の定例会だけじゃ埋まらないこともあるかもね。この前は調子が悪い中、喫茶店に連れ出しちゃったし。」
「あの時はご迷惑をおかけいたしました。」
「別にいいよ。珍しかったし、弱ったあなたも可愛かったですよ。」
「...そういうこと、言わなくていいの。まったく。」
「でもね、一つだけ心配。あの時、ビールと弱いけどお酒を開けてたでしょ。ああいう飲み方はしちゃダメ。僕らはもう若くないんだから。」
「うん、なるべく量は飲まないようにするから。もちろん、強いお酒も控えようかな。」
「それがいいね。普段荒れているのは知ってるから、なかなか言い出しづらいけど、あなたの健康があって、楽しい家庭だからね。」
「...気をつけます。」
「だってさ。こんなところでいい?」
「さっすがオトーサン。話術だね。説得とか、交渉とかに向いてるよね。」
「そう?まあ、話すことが嫌いじゃないからね。」
「あ、あなた達、グルだったのね。なんか、してやられた感じがする。」
「でも、お酒の飲み過ぎは、この娘が気づいてくれた事だから、この娘にも感謝してあげてね。」
「...親の背中を見て育つか。ごめんなさい。悪い見本だったかな。」
「おねえちゃんの気が済めばとは思うけど、やっぱりここんところのおねえちゃん、ちょっとしんどそうだったから。」
「ごめん。僕も気づいてあげられなかった。この娘だから分かることが、僕らの中にもあるんだね。」
「私はいい見本?」
「私なんでしょ?なら、いい見本に決まってるじゃん。」
「心配掛けちゃって、本当にごめんなさい。あなたにも謝らなきゃね。」
「まったくだよ。おねえちゃんが潰れちゃったら、ウチは崩壊しちゃうんだから、本当にしっかりしてね。」
「しっかりしてって娘に言われちゃった。どうしよう。」
「素直にしっかりするもんだろ。どうもこうもないよ。あなたなしじゃまた堕落した生活になっちゃうからさ。」
「そういう理由?まったく、この親子は。」
大晦日だから何か変わったことをするわけでもないけど、久々に三人で買い物は楽しかった。僕もその気持ちは分かる。
とりあえず、このあと寿司だのお惣菜だのを平らげ、奥様は甘いお酒を1本飲むぐらいで止めた。
で、別に食べる必要もなかったんだけど、なんとなく緑のたぬきを三人で食べ、どこかから聞こえる除夜の鐘。その頃には三人ともいい感じに眠くなってきてしまった。
とりあえず、明日は栃木の実家に帰ることになってるけど、僕らは妹家族との関係で、別の場所で泊まることになってる。
「どうしようか。何日までいる?」
「3日まででいいんじゃない。二泊三日。ホテルもそれしか取ってない気がするよ。しかし、とうとう実家に泊まれない事態が起こるとはなあ。」
「私、オトーサンの妹さんの子供に会うの初めて。」
「まだ3歳だから、色々苦労をかけるかも知れないけど、子供のやることだから許してあげてね。」
「そう言えば、旦那さんがイギリス人なんでしょ?国際結婚?」
「まあ、そういうことになるけど、旦那さんはもうこっちの人だよ。君も、英語でコミュニケーション取ってみれば。ちなみに妹もほぼネイティブだよ。」
「なんか、色々教えてもらえるかな。そうだと嬉しいなあ。」
今日はこの辺で、続きはまた明日。