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Life 36 Even the illumination is a part of her. 君は本当に僕の奥様?

娘が友人とカラオケに出かけ、家の中が二人きりの静かな時間になった日、僕は彼女(奥様)をイルミネーションデートに誘います。


イルミネーションデート

彼女は白いニットのコートとベレー帽を合わせた、若々しくも可愛らしい姿で現れます。二人で手をつなぎ、山手線で有楽町へ。丸の内から東京駅までのイルミネーションの道を歩きながら、彼女は「冬のイルミネーションは物悲しさを照らしてくれる」とロマンチックな言葉を口にします。僕は、そんな彼女の言葉に共感し、二人の会話はさらに弾みます。


東京駅と特別な感情

ライトアップされた重厚な東京駅を見て、僕は「旅を感じる」と感動します。彼女もまた、東京駅の普遍的な美しさに共感します。イルミネーションの光に照らされた彼女の可愛らしさに、僕は「誰にも見せたくない」と思うほどの特別な感情を抱きます。


娘との再会

デートの後、二人は娘に内緒で帰宅します。しかし、帰宅した娘は、僕と彼女の顔を見て「デートでも行ってたね?」と見抜きます。僕は慌ててごまかしますが、娘は「なんか空気が穏やかで和やかだったから」と二人の幸せな雰囲気を察していました。


このデートを通じて、僕と彼女は、家族としてだけでなく、恋人同士としても深く愛し合っていることを再確認します。そして、僕たちの幸せな空気が、娘をも笑顔にする、温かい家庭を築いているのでした。

「それじゃ、行ってくるね。」

「行ってらっしゃい。気を付けてね。」

ガチャン


娘は今日は夕方から友人とカラオケらしい。わざわざカラオケって言って行くあたり、若いよなあ。


「ちょっと静かになったかな。」

「う~~~、こたつから出ると案外寒いね。」

「当たり前だよ。もう12月だもんね。」


「ねえ、せっかくだから、僕らもちょっと出かけてみる?」

「珍しいね。寒いんじゃなかったの?」

「うん、ま、寒い時期じゃないと見られないようなものがあるじゃない。」

「あ、もしかしてイルミネーション?」

「アレって、なんで寒い時期に多いのかなって思うけど、なんか今時期じゃない?」

「うん、いくいく。買い物ついでに見られるところないかな。」


ちょっと検索してみたら、東京駅の丸の内口あたりから、有楽町駅あたりまでイルミネーションラッピングされているらしい。


「じゃあ、ちょっと準備するね。待ってて。」

ちょっとゴソゴソし始めた。


「おまたせ~。」

白いニットのコートに、合わせたような白い小さめのベレー帽。濃いブラウンのマニッシュパンツ。

「どうかな。似合う?」

「いや、若いよなあ。それにどこで買ったのその帽子?」

「へへん。あなたもあの娘に帽子あげてるから、私も帽子買ってみたんだよ。」

「コントラストが合う。いやあ、可愛い。なんで僕の奥様になったかなあ。」

「ふふふ、そういうところ、言われると嬉しいかな。あなたっぽい反応でよかった。」


「はて、有楽町あたりって、なんかあったっけ?」

「もう、そこは、グランスタがやってる時間に帰ってくればいいの。どうせなら有楽町から東京駅のほうに行くほうがいいでしょ。」

「最悪は、何か食べて帰ればいいし?」

「夕飯の心配をしなくていいって思うと、結構時間あるんじゃない?」

「どうだろ。もう17時過ぎだからねえ。ゆっくり歩くぐらいは出来るんじゃない。」


「ん?」

彼女が左手を差し出してきた。

「うん。」

僕は彼女の左手を握った。もちろん、こういうときは恋人繋ぎだ。


田端から有楽町って、実際に10キロないようなところ。山手線であっという間だ。


「丸の内か。あんまり来たことなかったなあ。」

「来てみた感想...え、これ入り口からキラキラしてるよ。すごいじゃん。」

そのイルミネーションは、確かに僕も見たことないほど、ずっと先まで続いている。下手すれば昼間より明るい感じ。

「うわぁ。キレイ。こういうところ歩くと、やっぱりテンション上がっちゃうかな。」

「やっぱり、こういう非日常的な感じが、君は好きだよね。」

「大好き。だって、こんなにしっかりと防寒してるのに、街がこんなにキラキラしてるって、なんか不思議な感じがしない?」

「不思議といえばそうだけど、もっとも夏でもイルミネーションしてるところあるしね。やっぱり、冬のほうが特別な感じする?」

「するかな。夏のイルミネーションって、花火みたいなものだけど、冬のイルミネーションって、やっぱり物悲しさを照らしてくれるものだと思うのよ。」

「そっか。物悲しさねえ。これはこれで、風情を感じるのかもね。」

「なんか、ちょっと恥ずかしいような、年甲斐もないようなことを言っちゃうけど、いい?」

「可愛い言葉でも思いついた?」

「冬のイルミネーションって、みんなが物悲しくならないために、付けてるってちょっと思っちゃった。」

「うん、結構あり得るかもね。夜でも明るくしておけば、寂しくならないっておまじないなのかもね。」

「...。」

「...あれ?どうしたの?」

「君の反応が嬉しかったの。また、乙女チックだなあって言われると思ってたから。」

「妙に納得したんだよ。やっぱり自分でもセンチになる時期だからさ。なんか、そう思うと、冬のイルミネーションもキレイだけじゃないのかもねって。」


意外に東京駅まで距離がある。あれ、直線距離で600mそこそこだったはずだけど、丸の内ってのは案外広いもんだな。

なんやかんやで時間も19時半。まあ、ちょうどいい時間ではある。


「お、やっと見えたね東京駅。」

「街路樹がカラフルな感じに照らされてる。これはこれで、また栄える感じ。」

「東京駅ってのも、やっぱりどういう照らされ方しても、シンボリックになる建物だなあ。」

「お、やっぱり旅好きは、東京駅に感じるものがある?」

「個人的には上野駅の地平ホームが旅を感じるけど、まあそれはいいとして、東京駅がそこにある安心感みたいなものがあるじゃない。」

「別に日本の中心ってわけでもないけど、どこへ行くにも、戻ってくるにも、東京駅が一つの目安になりやすいよね。私も旅に出るから分かるよ。」

「そう考えると、東京駅みたいに変わらない普遍性を持っているのも、駅には重要な要素なのかもしれない。」

「新宿駅とか、渋谷駅とか、いっつも工事してるけど、東京駅は、私達が生まれた時から東京駅って形だったんだもんね。」

「あんまりこういう事を思うことはないんだけど、僕、結構感動してる。」

「え、なに、何がそんなに気に入ったの?」

「東京駅を夜見ることってあんまりないからさ。照らされてると、重厚感あるのに、暖かそうな感じがしてさ。」

「本物の火じゃないから暖かいってことはないんだろうけど、暖かみが出てるってのは同感。明かり一つでこんなにイメージが変わるものなんだなって思った。」


「さ、もう少しあるから、何を話しながら行こうか。」

「とりあえず、今夜は何をどこで食べるかでも。」

「君は本当に食べ物の話をする時、楽しそうに話すから、食べたくなるよね。」

「でしょ。何を食べようか。」


「ごめん、ちょっと恥ずかしいこと言うね。」

「あらたまって、どうしたの?」

「今日のそのカッコ。あまりに可愛過ぎて、誰にも見せたくないなあって思った。イルミネーションに照らされて、本当に可愛いって思った。歩いて、喋って、一つ一つが全て可愛い。」

「...なんか恥ずかしいかな。感想が子供みたいだけど、君の素直な感想って感じがして、嬉しい。」

「今日は絶対あの娘が帰る前に帰ろうね。こんなに可愛い君を娘に見られたくない。」

「それ、なんの感情なのよ。まったく。」



それからは、なぜかグランスタで牛タンを食べて、そのまま娘にバレずに帰宅。



「案外、帰ってきてなかったね。オールなのかな。若者は体力あるよな。」

「まあ、じきに戻ってくるでしょ。あの娘が帰ってこないわけないもの。」


「それにしても、誰にも見せたくないって言われちった。やっぱりいくつになっても、そういう言葉には弱いかな。」

「全体的に、今日のこの数時間は、僕と君だけの秘密にしておきたい。それぐらい、君が可愛かった。」

「何がそんなにあなたに刺さったのかしらね。いまいち私にはわからないんだよね。」

「ただ、可愛かったんだよ。なぜかわからないけど、普段の何倍も可愛く見えたし、本当に見せたくなかったんだよ。」

「多分、それが冬のイルミネーションのせいなのかもね。でも、今も可愛いでしょ。」

「あなたはいつ見ても可愛いよ。なんで僕の奥様なのかわからないぐらい。」

「ほらほら、そういうところ。でも、イルミネーション越しの私は、もっと可愛かったのかあ。なんか、その現実に嫉妬する。」

「あと、あのカッコは、できるだけ3人でいる時にしてほしくないなあ。」

「ん~。分かった。あなたと恋人ごっこするときだけ、あの組み合わせはしないね。」


ガチャ

「ただいま~。」

「おかえりなさい。あれ、ちょっと声枯れてる?」

「んー、さすがに6時間はちょっとやりすぎたかなって思った。最後とか、曲を探すのが大変だったもん。」

「あるある。なんとなくおしゃべりに入っちゃったりね。」


「オトーサン、ただいま~。」

「おかえり。楽しかったみたいだね。」

「カラオケしてると思うけど、やっぱり男子の友達いたほうが、色々曲の幅が広がっていいなあって思った。」

「ははは、そういうもの?」

「3人でカラオケ行くと、とりあえず曲は入れて、なんとか歌い切るじゃん。そういう感じだよ。」

「まあ、そうか。そうかもね。」


「ところで...その緩みきった顔。二人でデートでも行ってたね?」

「デートというか、その、外食かな。ちょっと東京駅まで。」

「え、僕そんなに緩んだ顔してた?なんか、怖いんですけど。」

「分かるよ。オトーサンと暮らして私もそこそこ長いよ。」

「そう、なんか、それはそれで複雑な心境だけど。」

「おねえちゃんもそう。なんかニヤニヤしてるの。今までないぐらいニヤついて怖いよ。」

「ふふ~ん。私もたまにはニヤニヤしちゃうようなことがあったんだな。たまにだから、許して、ね。」

「別に許すとかそういう話してないから。なんか空気が穏やかで和やかだったから。あ、これは何かあったなって。」

「ご飯は?」

「食べてきたよ。それじゃ、一番風呂いただきまーす。」



「だって。」

「僕らも見せないようで、しっかり隙があるってことだね。」

「こればっかりはしょうがないかな。私、本当に嬉しかったしね。」



父親役は出来ても、恋人役になると不器用になる旦那、母親役が出来ても、何気ない一言でウブになってしまう奥様。このアンバランスさ、いつかは解消したいけど、多分無理だろうなあ。




今日はこの辺で。

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