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Append Life 62 Report to my best friend. 親友への懺悔

僕には親友と呼べる人が4人ぐらいいるんだけど、一人を除き、ほぼ1年に1回ぐらいしか会わない。

その昔はみんなで旅行に行こうとか、バカをやってたんだけど、年齢を経るにつれて、それぞれの事情もあって、会わなくなったというのが正しいかも知れない。


そんな一人と、この前に久々会った。家が秋葉原付近にあるんで、別にいつでも会えるのだけど、たった5キロの距離で会わなかったりする。まあ、この距離だからあんまり会わないんだろう。

彼は、僕が一人暮らしを始めた頃にバイト先で会って、それから毎年のように


「しかし、久しぶりだと感じないな。いつも思うけどさ、お互いにあんまり変わらない感じになってきたよね。」

「いや、お前はなんとなく横に大きくなったと思う。とりあえず、その辺から話を聞かせてもらおうか。」


コイツは、大体長話の時には、秋葉原の高架下にあるやなか珈琲点に入る。スモーカーな彼が好む。まあ、外だしそんなに問題はない。


「とりあえず、久しぶりというか、年末ぶり?」

「そう言えば年末、そそくさと帰っていったけど、なんかあったん?」

「う~ん、まあ、ちょっと黙ってて悪かったんだけどさ、実は僕、結婚しまして...。」

「マジか。まさかって感じするけど。相手は?」

「連れ子付きの同級生。今年はもう42になるのか。いや、晩婚過ぎてどうなのって思うけど。」

「そんなことないだろ。別に結婚したことは事実だし。大体そういうことを匂わせず、いきなり結婚するとか、意外にやるじゃん。」

「隠すつもりもなかったんだけど、話してなかったなと思って。なんだかんだでもう20年以上つるんでるんだしさ。」

「懺悔みたいな感じだな。で、結婚式とかは?」

「特にやるつもりはないし、何なら結婚指輪とかも特に交換してない。」

「って、マジで籍だけ入れたとか、そういうこと。はあ~、お前もやるもんだね。」

「まあ、ラッキーだったかな。一生分の運を使い果たして、あとはどうしようかって考えてる。」

「連れ子がいるって言ってたけど、仲良くやれてるの?」

「ははは、う~ん、まあ、娘なんだけどさ。21歳。」

「ははーん、若い娘との付き合い方がわからないとか?」

「そういうわけじゃないんだよ。まあ、話してもいいだろ。実は連れ子と言ってるけど、結婚相手と遺伝子情報が99.9%以上一致している同一人物なんよ。」

「またまた、そんなことありえないだろう。」

「まあ、そういうよね。でも、この写真を見ると、本当かもって思うよ。」

そうやって、同一人物事件を起こした、大学の入学式の写真を見せた。

「...なんだこれ?双子?」

「双子だったらそれはそれでいいんだろうけど。戸籍上は別人だけど、二人は同じ人なんだよ。」

「ふむ、真面目に見分けがつかない。いや、というかこんな可愛い子が奥さんとか、何かやったん?」

「いいか、これから言うことは他言無用な。実は...」


「...というわけ。何年も隠してたけど、色々あったんだよ。」

「年末の集いで家に行くけど、そんな娘いなかったじゃん。」

「あん時は、いつもホテル取ってあげて、泊めてたの。次の日、寝ようと思ったら帰ってくる感じ。」

「そうなのか。しかし、お前が子育てかぁ。無事できて大学に通わせられたのは偉いよな。」

「あの娘が勝手に大学入学まで手続きしてたんだよ。奥様も知らなかったぐらいだったし。」

「肝が据わってる。なんか、お前の娘って感じじゃない。」

「僕も我が娘ではあるんだけど、知ってるのは17歳からなんだよ。僕はむしろ、周りに育ててもらったのかなって思ってるよ。」

「で、それはいいとして、もう一つ。このクローンみたいな奥さん。この人は何者?」

「彼女が正真正銘のこの世界の彼女で、僕の幼少期を知ってる人。まあ、ついでに言うと初恋の人ってやつ。」

「漫画か、お前の人生、なんかダイナミックに変な方向に行く時あるよな。」

「そう?自分じゃ必死だから良くわからん。でも、多分誰も体験したことないことをしているというのは理解できてる。」

「まったく、エヴァじゃないんだから、初期ロットとか、安定ロットとか、そういう感じじゃないんだろうな。」

「ちなみに娘も戸籍上は同級生ってことになってる。」

「...ますますわからん。」


「教えたのって、友人関係だと俺が初めてだったりする?兄者にはバレただろ。」

「さすがにね。なんやかんやで毎日チャットしてる仲だし、なんとなく知ってたらしい。」

「まあ、言わないほうがいい気もするんだよね。お前のパブリックイメージにおいて、家族ってのはありえないと思う。」

「僕もどうしていいか分からなくて、聞かれたら答えるぐらいに留めてる。それで、さっき見せた写真を見せたら、バカにされたって思われるだろ?」

「まあ、まったく同じ外見で、見た目では見分けがつかないほどなのに、親子っていうのが、色々な意味で衝撃だけどな。お前の奥さんは化け物か何か?」

「なんでも肌年齢が20代後半で、髪の手入れとかをしてると、娘とそんなに変わらないぐらい髪の毛につやが乗ってる。自分の奥様だけど、呪いでも掛けられて一生そのままだったりするんじゃないかと。」

「まあ、言うて実物と会ってみないことにはわからないけど、俄然興味は湧いた。今年の年末は、お前んちでまた徹夜でときメモやるぞ。」

「あ、それはいいかもね。娘がやたらゲームやっててさ、PS4とか買ってきたんよ。楽しく遊んでるし、ときメモは全員ネット見ながら攻略したらしいからな。」

「素質あるな。お前の娘とはいい酒が飲めそうだ。」

「あんまり強くないよ。うちの娘はw」

「しかし、昔からスマホは最新モデル、イヤーピースに3000円を突っ込むような、マニアというか、求道者みたいなやつに奥さんなあ。面白いもんだな。」

「家族3人分の光熱費と通信費は僕が払ってるから、趣味は続けられるようにしてるよ。今XPERIAを買い替えないのは、単に好みじゃないし、高いからだよ。」


「お前は?なんかないの?」

「ないなぁ。相変わらず、自転車でツーリングに行くぐらいか。あとは、相変わらずアニメとジャズ三昧。防音室が欲しいかな。」

「ちょいちょい30万ぐらいのでっかいテレビ買うじゃん。ああいうのが今は出来ないから、正直趣味人としては羨ましい。」

「まあ、ワンルームに近いような部屋で、60インチTVとか買っても、結局そんなに意味がなかったりするから。左から右まで画面だったりするし。」

「相変わらず、ロレックスとか物色してるの?」

「あれは人生で1回か2回ぐらい買うようなもんだよ。1本買った以上は、壊れても直して使うわ。」


「お前だってそこそこ高いイヤホンとか、オーディオがあるじゃん。まさか処分された?」

「いや、あれは娘に取られた。ワイヤレスイヤホンとかは買っても共有財産とか言って、二人が勝手に使ってる。まあ、数あるからどうでもいいんだけどさ。」

「価値分かるの?10万のイヤホンに接続してる6万のDAPなんて、正直普通の人じゃ聞き分けられないだろう。」

「意外だったけど、うちの娘はその辺、なんか直感的に分かるらしいよ。音響は味付けだと思ってるけど、彼女の好みの音ってのが、その高いイヤホンらしい。他の20万ぐらいするイヤホンだと、なんか違うらしいよ。」

「...お前がサラッと20万ぐらいのイヤホンを持ってたことにドン引きだわ。こだわりが強すぎる。パソコンといい、スマホといい。」

「褒め言葉として受け取っておくよ。まあ、そのパブリックイメージが壊れるわけだよな。結婚を公表しちゃうと。」

「俺ら独身貴族を既婚者は羨ましく思うらしいからな。家族揃ってなんか変なところがぶっ壊れてるよ。お前の家庭。」

「相変わらずテレビにAVアンプ付けて、5.1チャンネルでTVの音を出してたりするのが許されるからな。寛大というか、知らないことを知りたい好奇心みたいなのが二人共強いんだろう。」


「まあ、ともあれ楽しそうでなによりだわ。ほら、ここ何年かお前は割と不運な感じしてたからさ。原因を聞いたらある程度納得できたよ。」

「不運。不運か。まあ、あながち、不運だとも言えるよね。うちの娘が、奥様の若い時のままいるわけだから、やっぱり色恋沙汰は出来なかったからさ。親として徹してたのは、割と辛いよ。」

「自分が好きだった子が自分の娘になるって状況にまずならないし、娘だからさすがに手も出せないしなぁ。生き地獄みたいなものか。」

「奥様が出来たからと言っても、部屋が狭いし、年齢もアレなんで、そんなに夜の営みみたいなのもないからな。でも、独り言を言ってる生活よりは、返事が返ってくる生活のほうが、生きてる気がするよ。」

「変わるもんだな。あれだけ結婚はしないだろうなって言ってたやつが、理想の形で結婚して、しかもラブコメみたいな世界なのがおかしい。」

「二人が僕を理解してくれて、しかも利用してるから、僕もある程度趣味人でいられる。それが一番嬉しいかな。」

「どっかにいるもんかね。趣味を理解してくれそうな奥さん。」

「結婚って言えば聞こえはいいけど、ウチは財布も別で三人の共同生活みたいなもんだから、想像してるような結婚生活はしてないよ。そういう生活より、結婚生活ってのはもっとイチャイチャするんだろ?」

「どうなんだろうね。まあ、やっぱり結婚したら、イチャイチャしたいってのは分かる。」

「ウチはそういうのがないからね。割と事務的だし、いいとこ寝床が三人同じベッドなぐらいかな。」

「それが一番羨ましい。石油王みたいな感じだな。」

「男としては耐え忍ぶ生活よ。まあ、でも昔より欲求不満になるようなことはないから、そこは僕が歳なのかなって思うよ。」



「年末、お前んちでときメモだからな。忘れんなよ。」

「おう。俺も友人呼ぶのは初めてだから、二人を説得しておくわ。」



...言ってしまった。まあ、隠しててもしょうがないし、年末までに話をしておかないとな。多分二人共問題ないとは思うけど...う~ん。



今日はこの辺で。

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