Life 34 money comes and goes. お財布事情
僕たち3人は、娘の大学の学費の問題から、家計の分担について話し合うことになりました。
家計の分担
これまでは別々に管理していた家計を、一部見直すことになります。家賃は彼女(奥様)、光熱費と通信費は僕が担当し、食費は僕が一時的に立て替えることになりました。娘は、自分のバイト代だけでは学費が厳しくなったことを謝りますが、僕と彼女は「気にする必要はない」と優しく声をかけます。
趣味と貯金
貯金がない僕に対して、彼女は「趣味をいくつか諦めればいいのでは」と提案します。しかし、僕の趣味が、僕自身の精神安定剤であり、二人もその恩恵を受けていることを知っているため、無理にやめさせることはしませんでした。代わりに、スマホの頻繁な買い替えや、高額なフィギュアの購入は控えるように言われます。
家族のバランス
彼女は僕の収入が自分より低いことを気にしますが、僕は「稼げる人が稼いでいればいい」と気にしません。僕と彼女、そして娘は、互いの個性を尊重し、支え合いながら生活していることを再確認します。そして、僕の趣味を理解し、自由な活動を許してくれる彼女と娘に、心から感謝するのでした。
3人は、それぞれの経済状況を共有し、互いを思いやることで、さらに深い家族の絆を築いていくのでした。
久々に家族3人、こたつを囲んで会議である。
僕ら3人、同棲し結婚しても、3人の財布は別々だった。まあ、特に不満なくやってきたが、娘の大学の学費の問題が少し出てきたのだ。
概算で計算しているよりも、実は色々な諸経費がかかり、ほぼ全額を大学の学費に当てていた娘のバイト代だけでは、厳しいという話になったのだ。
で、あらためて、個人の財布のうち、分担を少し変えようという話になったのである。
「じゃあ、簡単にまとめると、家賃は私、光熱費と通信費はあなた、ここまでは特に問題ない?」
「とりあえず、そんなところでしょう。まあ、通信費は3人分払ってるから、ちょっと許してほしいかな。」
「それと、食費。これも私とあなたで賄っているけど、ここも変わりなくでいいかな。」
「ちゃんとした枠とか、食費用のカードとか作る?なんか、その辺が意外と難しいんだよね。」
食費は個人の財布からも出てるし、これまで夕食や休日は、僕か彼女の財布から出ていた。負担額を考えると、それほどでもないのだけど、火種になるのは避けたい。
「じゃあ、とりあえず予算を作って、食費の枠をきっちり決めましょう。まあ、それほど不自由することはないと思うけど、夕食と休日用の食費ということで。」
「んじゃ、食費は僕が持つようにしようか。大体料理作るにも、夕食買うにも、僕の担当だし、僕の財布から一時的に出して、レシートから最終的に精算ということで。」
「で、問題はこの娘の補助よねえ。」
縮こまったような感じでちょこんと座っている娘。いつもより元気がない。
「君が悪いわけじゃない。思ってたよりお金がかかってて、自分が稼いだお金だけでは足りなくなってきたって話だし、気にする必要はないよ。」
「二人共、本当にごめんなさい。私が少し見通し甘かったと思う。もちろんバイトは続けるけど、少し足りない分を一時的に出してほしいの。」
感じなくてもいい罪悪感を自ら背負い込んだような感じで謝ってくる娘。だけど、この家でこの娘を責める人は当然いない。
「まあ、分かってたことよね。大学生のアルバイトで所得制限なしに働くって手もあると思うけど、そうなると税金もかかるし、あまりいい事がないのは確かよね。」
「というわけで、君は今まで通り、大学を卒業するまで、103万まで稼いでくれれば、それで問題ないよ。」
「うん、分かった。なるべく金銭面で負担掛けるようなことはしないようにするから。」
「まあ、大学生活だし、あんまり惨めな思いをさせたくないから、付き合いとかでお金がないとかいう場合は、ちょっとだけなら出してあげるから。」
「それと、服に関してはちょっとオバさんっぽくなっちゃうかもしれないけど、私のも着ていいからね。あなたのセンスなら、そういうのでも着こなせるでしょ。」
「それは引き続き。今までもちょいちょい借りてたから、引き続き貸してもらうね。」
「さて、どうしようか。学費とか、そういう感じのまとまったお金が一番問題だよね。」
「それに関してだけど、あなたって確か貯金とかないもんね。むしろ借金があるんだっけ。」
「毎月支払ってるけど、これは二人で暮らしてた時にかかったお金だから、しょうがないと思ってる。僕の収入じゃ二人分はなかなか難しかったからね。」
「う~ん、じゃあ、やっぱり私がなんとかするしかないよね。こういう時のためのお金だからしょうがない。」
金額までは知らないけど、この娘が大学を卒業するぐらいのお金は貯金しているらしい。
まあ、こう言ってはなんだけど、この人は趣味という趣味がほぼない人で、家でニコニコしてるのが一番楽しいという変わり者だから、強いて、年に数回の旅行と、月イチの美容室、それとちょっとした交際費ぐらいしかかからないのだろう。
対する僕。う~ん、娘と暮らしてたときもそうだったけど、趣味にもお金を使うということで、財布を別々にしてもらっていた。だから、貯金はない。資産と呼べるか分からないが、レア物のフィギュアや高いPCなど、物品の価値はある。
「オトーサンが趣味をいくつか諦めればいいんだよね。例えばサブスクをいくつか減らすとか、頻繁にスマホを買い替えないとか。」
「まあ、そりゃそうなんだけど、僕の精神安定剤代わりみたいなところが趣味にあるからね。これを我慢するっていうのは、なかなか難しかったりするんだよね。」
「知ってる。私達もオトーサンの趣味のおかげで、映画見たり、ドラマみたり出来るから、ひとえに悪いモノでもないんだよね。」
「強いて言えば、フィギュアとかプラモデルは、個人的には我慢してほしいかな。割と高い買い物よねアレ。」
「そうだなあ。昔は1万出せば普通に買えてたんだけど、今や3万を超えるようなのまで出てきてるからなあ。出来がいいのは認めるけど、さすがにそれは買わない。」
フィギュアは材料費もそうだけど、何より個数が大量生産出来る時代じゃない。完全受注生産になってるから、欲しいときだけは買うようにしてる。
「あと、オトーサンの持ってるヘッドホンとかイヤホンとか、アレは売りに出せないの?」
「個人的には考えてない。けど、これがいい音するって言うのは、二人も知ってるし、ある程度使ってるから、そこは許してほしいんだよね。」
「実用的な趣味というか、あなたの音響機器は、普通の人が納得するレベルでいいものだから、なかなか手放しにくいのは分かるかな。私達も使ってる以上は、共有財産ということで。」
多分、この人達は分からないかも知れないが、ある程度のレベルのイヤホンやヘッドホン、音楽プレーヤーに、TVにつけている音響機器(5.1チャンネル)など、実は音響資材はお金がかかっている。
「それから、個人的には咎めないようにしてるけど、確かにこの娘が言うように、スマホの買い替えも頻繁にしてたり、やすかったからって買ってくること多いよね。」
「収集癖みたいなものだと思って頂けるとありがたいんだけど、やっぱり納得行かない?」
「行くならここに上げてないかな。でも、これも私達が恩恵を受ける部分はあるから、なんとも言えないのよねえ。」
「そうだよね。オトーサンが使ってたiPhone12とか、普通にくれたりするしね。おねえちゃんもスマホもらって使ってるじゃん。」
「私もiPhoneもらってるしねえ。他のスマホは知らないけど、まあ、あなたのお財布でなんとかなるうちは、それでいいかな。」
「そう言えば、あんまり落ち込まないでよ。月収だけど、やっぱり私のほうがもらってるみたい。」
「まあ、勤続20年の人と、勤続2年の人じゃ、差がないほうがおかしいよね。」
「その代わり、家事全般をやってもらっちゃってる感じだけど。ごめんなさい、そこは許してほしいの。」
「気にしなくていいよ。君がお金を稼いでるなら、家の事は稼いでない人がやるのは当然だろ。僕も、趣味を容認してもらってる以上、それぐらいはいくらでもやるよ。」
「ちょっと意外かな。あなたの事を信じてないわけじゃないけど、なんかその辺のプライドは高そうなイメージがあって。」
「稼げる人が稼いでいればそれでいいことぐらい知ってるし、出来ることは出来る人がやる。で、変わりに要求は飲んでもらう。一応、等価交換ぐらいにはなるでしょ。」
「オトーサンはバランサーみたいなものでしょ。私達二人で暮らしてたら、もっと意見も合わなかったと思うし。三人で一緒にいるから、日々平穏に生活できてると思うよ。」
いくらなんでも高い評価であるが、同一人物が二人で暮らすという前提の場合、やはり当人同士で衝突はおきるだろう。でも今までケンカしてるところは見たことがないから、僕もいくらか効果があるのだろう。
「じゃあ、そういうわけで、分担を若干変えましたけど、とりあえず今まで通り、個人のお財布ということでいいかな。」
「家主がいいと言うなら、僕は従います。今まで通り、趣味も好きなだけやりますけど、許してほしいです。」
「おねえちゃんが言うなら、私もそれでいいです。私も、負担をかけないように頑張るね。」
「君の場合は、まず学業だから。僕が言うのも変だけど、大学を卒業することだけを考えて、色々やるんだよ。」
「やっぱり、ちゃんとオトーサンしてる。親の言う事だもんね。もちろん、学業頑張ります。」
「あなたにも、ずっと迷惑をかけっぱなしだけど、許してもらえるとありがたいです。」
「あなたのことは知ってるもの。まあ、度を超えたらちょっと考えるけど、あなたも出来る範囲で、色々やっていいよ。」
「本当に止めない?」
「止めたら、私が好きなあなたじゃなくなっちゃうかな。それぐらい、あなたの人格形成に趣味の要素は必要なのよ。大丈夫。自分の資産だけでやりくりできれば、それで文句は言わない。」
「理解のある人で助かった。止められてたら、本気で自殺とかしちゃうかもしれないしね。」
「あなたが心を病んでいたときを知らないけど、あなたが元気でいられるなら、すべて許すしかないでしょ。まったく、困った人よね。」
「でも、そんな困った人に、文句も言わずに一緒にいてくれて、ありがとう。それだけで幸せ。」
「こちらこそ。もうあなたが私の生きがいみたいなものだから、ありがとう。私も幸せです。」
と、娘が定位置に寄りかかってきた。存在を忘れるなと言わんばかりだ。
「オトーサンを好きなのは何もおねえちゃんだけじゃないんだぞ。私も幸せに生活出来てます。今までも、これからも、ありがとうございます。」
「うん、君はもう少し手がかかるかもしれないけど、素直ないい娘だから。ちょっと苦労を掛けるけど、これからもよろしくね。」
しかし、光熱費に通信費、それとサブスクをひっくるめて、家賃より高くなってることは言わないでおこう。
まあ、住まいは気にしなくていいし、二人とも神様のように僕を許してくれてるから、これ以上幸せなことはないね。趣味人としても、家庭としても、最高かな。
今日はこの辺で。