Append Life 59 Not a single wasted moment. 趣味をこじらせ
今日は、娘に取られたノートPCのSSDが壊れたっぽいので、データ復旧と新しいSSDの入れ替えをしている。
これだからSSD1本のPCってのは不安があるんだよなあ。とはいえ、データのバックアップをマメに取れとも言えないしねえ。
「なんかオトーサンって、同じようなパソコンを何台も持ってるよね?それって何か意味があるの?」
う~ん、意味かあ。意味ねえ。
「趣味って言ったら理解してくれる?」
「趣味ねぇ。コレクションが趣味ってこと?なんか、使えるかわからないような古いのもあるけど。」
「なんだろなあ。昔、欲しくてしょうがなかったPCを1000円とかで買ってきて、色々メンテナンスしてたらこんな感じになったかな。」
「ふ~ん、ビンテージモノって言ったら、聞こえがいい?」
「近いけど、これは機械だから、ビンテージになればなるほど、動かなくなる。まあ、しょうがないけどね。」
まあ、他人には説明がし辛い。なぜなら、趣味がPC改造と聞いて、単なる自作PCだろって思う人もいるかも知れないが、僕の場合は海外通販からパーツを取り寄せて、ノートPCを別物にするとかをやっているわけで。
「あら、コレクションが趣味って、立派な事じゃない。別に財政を圧迫しない限りは、やっていてもいいと思うんだけどね。」
僕の奥様はこういうところに理解がある。二人でいて、僕が一人でPCいじりをしてても、黙って見ていてくれる。特に面白いことをやっているわけじゃないのにね。
「そう言えば、聞きたかったんだけど、僕がPCをいじってるところ見て、面白い?」
「野暮だなあ。旦那様の趣味を見るのも、私の癒やしよ。たまにスマホを開けたりしてるのも、普通の生活じゃ見られないしね。あなたが純粋に面白いのかな。」
「なんか、トゲのある言い方だなあ。でも、趣味ってのは、あんまり共有出来ることがなかったりするからね。」
「ほら、私達が高校生の時代にまた出会っていれば、こういうのも面白いとは思わなかったと思うの。やっぱり、25年って年月が、それを埋めようと必死なのかもね。」
「確かにそうかも。僕は他の人の生き方に口を出したり、好奇心を持ったりすることが極端に薄いから、あなた達には好きにしてて欲しいと思ってるけど。」
「そういうとこだぞ。私達も、たまには干渉して欲しいことだってあるかな。すべてとは言わないけど、たまにはね。」
「う~ん。」
「どうした?壊した?」
「そういうわけじゃないんだけどさ。なんかいつも借りてるノートPCより、こっちの小さいののほうが、動作が遅い気がするんだけど。」
「当たり前だよ。君がいつも使ってるのが1としたら、その小さいのは0.7ぐらいかな。ちょっと動作が遅いのはしょうがない。」
「で、そのノートPCの修理っていつ終わるの?我慢はするけど、それにしても、画面も小さいし、なんかつらい。」
「まあ、今日はそれで我慢してくれ。新しいSSDにデータ移行するのに、ちょっと時間がかかる。」
「そう言えば、全部同じThinkPadってブランドだね。好きなの?」
「ここ10年ぐらいはThinkPadしか使ってないよ。それぐらいThinkPadが好き。」
「見た目、ほとんど同じよね。薄かったり、サイズが大きかったりするけど、基本的なスタイルは変わらない。」
「それがいいんだよ。とはいえ、何回か細かいマイナーチェンジはされてるんだよ。でも、それを受け入れて使い続けるのも、悪くないかなって。」
「なんか、古女房みたいな言い方。例えば、私が髪型をショートにしてきたり、テンションが変に高かったりしても、それは受け入れてくれるの?」
「う~ん、受け入れるのベクトルが若干違うけど、あなたが髪型を変えても、テンション高く絡んできても、僕は好きだよ。まあ、今のあなたが、僕には一番だけどね。」
「変なテクニックを身に着けてるね。そういうところがニクい。」
「でも、オトーサンが使ってるのは、そのでっかいノートPCだけだね。何か違うの?」
「簡単に言って、性能が他の2台とは桁違い。軽く2倍は違う。液晶も4Kだし、おおよそのことは1台でやれちゃうのがいい。」
「貸して?」
「ヤダ。これはある意味僕自身より僕を具現化したPCだから。やってることが同じであっても、こっちでやる方が効率が上がる。」
「よく言ってるもんね。会社のPCを、自前のPCに変えたいって。まあ、言わんとすることは分からないでもないんだけどね。」
「PCの分野に関しては、効率の悪いことは極力排除したいと思ってるんだよね。で、結論としてはハイエンドのPCを社内で配れってよく言うんだけどさ。」
「企業は予算の都合とかもあるもんね。そこはしょうがないところか。」
「ってことは、そのノートPC、実は結構高い?」
「高いよ。ThinkPad X1 Extremeってやつ。4年分割で月5,000円ぐらい払ってる。そこに、メモリを最大容量の64GBにするのに2万、2TBのSSDが2枚で大体3万。でも、日頃のストレスを考えたら、全然安いよ。」
「30万するのか...おねえちゃん、私、聞かなきゃよかったって思っちゃった。」
「同意。あなたって、そういうところが少年のままよね。妥協できるところは妥協しなきゃ。」
「だから趣味なんだよ。妥協したくないから、こういうノートPCにカスタマイズして使ってる。」
「じゃあ、今修理してるのは?」
「これはThinkPad X1 Carbonか。メルカリで3万ぐらいかな。なんとなく安かったから買っちゃった感じ。軽くていいでしょ?」
「確かに。オトーサンから奪い取って大学に持っていってるけど、これはそんなに高くないんだね。」
「前の持ち主が綺麗に使ってくれてたんだよね。そこには感謝しなきゃね。」
「で、この遅いやつは?」
「ThinkPad X270ね。大体7000円ぐらいかな。ヤフオクで本体を落札して、SSDに入れ替えただけ。」
「随分安いのね。問題ないのかしら?」
「寿命っていう点であれば、多少は関係してくるだろうけどね。でも今のPCは10年経っても十分使えるぐらいに進化が遅くなったからね。」
「本当に、変わらないね。」
「僕に言ってる?」
「あなたはきっと人と違うことがしたくて、生まれてきた人間なんだよね。昔の地図事件といい、昼寝といい、涙の告白といい、私の考えを平気で超えてくるもん。」
「そう?僕は知ってることを活かして、手を抜くときは何もしない。それだけで十分。家庭の大黒柱としては良くないだろうけど、仕事だってしたくないからね。」
「知ってる。もう少しあなたの立ち回り方が上手ければ、実は色々お金を回すことも出来たんじゃないかって思う。でも、不器用だし、あなたがそれを望まないのよね。」
「だから趣味なんだよ。僕は、僕の見られる範囲でしか責任を取ることが出来ない。けど、その範囲が幸せなら、それだけで嬉しいじゃない?」
「でも、一応まがいなりに父親も努めた。そして今も父親役をやってる。それで幸せなんだよね。」
「あの娘が毎日元気に大学に通って、アルバイトしてくれるだけで、僕は役目を果たしたと思ってるけど、あの娘はそう思ってないらしいから、もう少し、幸せなままでいようかなって。」
「いいんじゃないかな。あなたの生き方は、あなた自身のもの。でも、私達ももう乗ってしまったけどね。」
やっぱり彼女の笑顔は、いつ見ても気持ちがいい。屈託なく笑ってくれる。それだけで、僕は幸せ。
「お、元通りとまでは行かないけど、とりあえずWindowsが起動した。」
「必要なソフトは入れといたし、最低限取れるだけのバックアップも戻しておいた。レポートとか消えてたらごめんね。」
「いやあ、こういう時にオトーサンは本当に頼りになるよ。ありがとう。」
「とはいえ、それも僕のPCだからね。半ば奪い取られてるけど、そのうち返してね。」
「大学にいる間はずっと私のPC。なにか起きたら、オトーサンに任せる。」
「そう...使われないよりは、ずっといいね。正式に、君に預けるよ。治せる範囲で使うんだよ。」
「壊すの前提なんだ。大丈夫だよ。ちゃんとスリーブに入れて持ち運ぶし、大事に使う。初めての私のPCだもん。」
「...そういえばそうか。なんで、PCを渡さなかったんだっけか?」
「え、そこを今更掘り返すの?それはオトーサンしかわからないよ。」
ま、とりあえずSSDも交換したし、しばらくは使えると思うんだよね。若い女の娘にThinkPadってのは似合わないかもしれないけど、気に入って使ってくれてるのは、やっぱり嬉しいかな。
今日はこの辺で。