その92+0.9 Episode 定例会
「本当にごめんなさい。私がはしたないばかりに、あなた達に疑念を抱かせてしまった。許されないことだって分かってるけど。」
「いや、それは僕のせいだから。あなたのせいじゃないよ。それに、寂しかったんだよね。本当は、僕のそばにいたかったのも、分かってるよ。」
「それにしても、だよね。さすがに引いたよ。ホテルにまで、大人のおもちゃを注文するとか、そんなに我慢出来なかった?」
のっけから、こんな調子の定例会だ。画面越しの奥様は、ただただ謝罪を続けるけど、満足させず、かえって不安にさせてしまった僕のせいでもある。だから、僕は責めることも、怒ることも出来ない。でも、僕の彼女は、それが許せなかったみたいだ。
「全部話す。もう、私は、快感なしで生活することが出来ない体になってるの。多分、収まることにはなると思うけど、今がまさに発情期というやつよね。こうやって、君の顔を見てるだけで、股間を湿らせちゃってるの。ずっと、こんな感じになってるの。さっき、後輩が額に手を当てて、熱があるかどうかを見てくれたけど、触れられただけで、感じてしまった。もう、恥ずかしくて死にそうだった。」
「快感ってことは、ずっとイってる感じなの?触られるたびに?」
「そんな感じ。簡単に言えば、座ったりするだけで、感じてしまう。そして、気づけば君のことを考えてる。仕事してるのに、君とのことばかり浮かんできて、妄想しながら仕事してる。だから、なかなかトイレにもいけない。トイレに入れば、触れてしまいそうで、そんなことをしたら、私は会社にいられなくなっちゃうと思って。」
「そんな境遇になったことがないから分からないけど、おねえちゃん、本当に大丈夫?明日は会社を休んで、こっちに戻ってくれば?」
「ダメよ。仕事を放りだして、好きな人とエッチに明け暮れてましたって、言えるわけないじゃない。」
「いやいや、言うわけないでしょ?立派な体調不良だよ、それ。それに、下着は大丈夫なの?」
「生理じゃないけど、ナプキンを付けてごまかしてる。匂いとかでバレないか、すごく心配してる。誰か気づいててもおかしくないと思う。」
「あれ、ということは、あなたは、今シラフなのに、そんなに真っ赤になってるってこと?」
「ごめんなさい。はしたない妻です。本当なら、君の上に乗って、君に後ろから突かれて、そして抱き合ったままで、ずっと気持ちいいことをしていたい。そんな妄想だけを、ここ3日ぐらい思い描いてる。私、もう妻でもなんでもない、ただの変態よね。」
「その変態を好きなのが、僕なんだけどなぁ。ま、僕も変態らしいから、ちょうどいいじゃない。」
「そんなに優しくしないで欲しい。優しい目を向けないで欲しい。みだらなだけの女に、君の愛情や気持ちを受ける資格はないわ。」
「そうは言うけどねぇ、おねえちゃん。実は、私達も、今日、お風呂でしちゃったんだよ。昨日までは一緒に入ってただけだけど、今日は、我慢できなくなっちゃった。」
「裏切り者。惚れさせろとは言ったけど、私抜きで、自分たちだけ気持ちいいことしちゃ、私がもっと惨めになるじゃない。」
「そんなこと思ってないし、あなたがそんなことになってるとも思ってなかったから、やっぱり心配しちゃうよ。昨日は、連絡も取れなかったし。」
「昨日はやけ酒を、会社の同僚と飲んでいたのよ。で、ホテルに帰って、荷物を受け取って、部屋で中を開けて、我慢できなくて、その場で服を脱いで、そのままバスルームで、ずっと気持ちよくなってたの。でも、何度イっても、満足出来ないの。そのうち、連絡する時間を過ぎてた。さすがに体力の限界を感じて、脱ぎ捨てた服を畳んで、ベッドで横になりながら、疲れてるのに、また敏感なところを一人で触ってた。そして、そのまま寝ちゃった。今日、ホテルを追い出されてないだけマシ。きっと、シーツも布団も汚してるわ。」
「深刻だね。う~ん、男の人ってそういうことはあるの?」
「僕もムラムラする時はあるけど、ほら、男性は明確に気持ちよくなる行動があるから、それさえ済んでしまえば、ある程度は収まるんだよ。よく、3人でしてるときに、二人目を満足させられないのかなって思うときもあるしね。こっちはこっちで、悩みはあるんだよ。」
「で、おねえちゃん。おもちゃを使った感想は?」
「私も初めてだったけど、やっぱり実際に入ってくるって、すごく気持ちがいいのよね。自分の指じゃ、もう満足出来ないかもしれない。自分から腰を打ち付けることもしたし、動かして、気持ちいい場所を探し当てたりした。って、素直に答えてる場合じゃないよね。」
「僕が心配なのは、それであなたの体もそうだけど、あなたの心だったり、精神的なことだったり、そっちのほうがずっと心配。」
「ごめんなさい。家に戻って、収まらないようであれば、もう私は収まるまで、ずっと一人で、ホテルに住むわ。」
「原因が僕なら、僕から離れたほうが、逆にあなたに苦労をかけない?」
「そう思ってくれるのは嬉しいけど、君を見てるだけで、股間を湿らせるような、はしたない女よ。しかも、体型は小娘のような体だし。」
「体型はともかくとして、あなたにそんなに思われてるなら、僕は嬉しいよ。その体の火照りを、まずはどうにかしないといけないと思うから、帰っておいでよ。」
「ありがとう。そういう優しい言葉、なんか、私が惨めに思えてきちゃう。」
「そういう意図はないんだけど、とにかく心配だよ。僕も、君が好きだから、一緒に向き合わないといけないと思ってる。」
「よかった。君って呼んでくれた。それに、粗治療もうまく行ったのよね。」
「うん、不安は尽きないけど、不安を抑えてくれる人と、寄り添って不安を共有出来る人が、僕にはいる。だから、少しずつだけど、僕は立ち直れる。」
「うらやましい?私、今、彼の恋人だよ。ほらほら、見てよ。」
やめとけばいいのに、僕らの恋人つなぎをカメラに映す彼女。やっぱりこの娘も、対抗心はあるのね。
「自分で仕向けて、そうなることも予想できてたのに、いざ現実を見せられると、やっぱり凹むわね。やだぁ、なんか、疼いて来ちゃう。」
「う~ん、どうしてこうなったんだろうね。僕をまた意識し始めて、それでも最初は落ち着いてたよね。」
「あのときは、君に寄り添うことで、頭が一杯だった。でも、同時に自分の限界も知ってしまった。だから、自分で気持ちの整理も兼ねて、その娘にあなたを預けたのよね。ところが、ホテルに着いたら、急に君のことで頭が一杯になったの。それからよね。私、恋愛脳だから、本当に我慢しながら、仕事をしていることに、大きなストレスがかかってしまっていた。その反動で、私を恥晒しの痴女になってしまった。多分君と顔を合わせたとき、どんどんはしたない女に成り下がっていくと思う。毎日抱いてとおねだりする。その娘のいる前で、平気でエッチなことも出来ちゃうと思う。私が恥をかくのはいい。二人に、そんな迷惑をかけられない。」
「でもさ、今のおねえちゃんって、すごく自然なことをしてる気もするんだよね。だって、彼のことを思った結果、自分をなぐさめてるんでしょ?それって、普通にムラムラしてるより、ずっと素直な感情に流されてるだけのような気がする。相手を思いながら、自分を慰めるって、別に悪いことでもないと思う。」
「ああ、もう彼とか呼んじゃってるのね。私の入る隙間もなさそうだし、このまま、私は痴態を晒しながら、あなた達と生活していくのよ?」
「いや、それはないよ。今までこの娘が密着してたように、君も密着すればいいじゃない。三人で、色々話して、お互いを好きだと認識しなおして、三人で気持ちよくなって、それだけで、君の気持ちは、だいぶ落ち着くんじゃないかって思うよ。僕も、確信があるわけじゃないけど、君が心配していることって、そういうことじゃなくて、もっと別にあるでしょ?」
「...正直に告白します。私は、君を好きな気持ちを、ずっと持ち続けて行きたい。三人で暮らしてて、この気持ちを維持出来るか、途中で冷めてしまったらどうしようか、そんな不安ばかりを考えてます。多分、不安に思っているから、快感に溺れているんです。」
「だって。どうする、オトーサン。」
「突き放すようなことを言うけど、君の気持ちが維持できるかどうか、それは僕にも関わってくるし、少なからず、この娘にも影響があるかもしれない。だけど、隠す必要はないでしょ?家族の前に、僕らは妙な三角関係のまま、ここまで来てしまった。僕も、今回離れて暮らして、この娘が本当に大切な存在だって分かったし、同時に、あなたが寄り添ってくれない不安や寂しさを感じた。それに、この娘が君を思う気持ちも教えてもらった。僕らは、君がいて、初めて家族で、大切な恋人同士になれるって思う。僕にだけ、虫の良い話だと思うけどね。もちろん、二人は不満だと思う。でも優劣も付けられなければ、僕らはもう共依存した生活を続けて来てしまっている。だから、それを飲み込んで、僕らのところへ帰ってきて欲しいんだ。君が求めるなら、僕も限界まで頑張る。僕がダメになっても、もう一人の君が、きっと応えてくれる。そう思わない?」
「え、私に何を求めてくるの?私じゃ、おねえちゃんを満足させられないよ?」
「話を合わせようよ。せっかくうまく話せたと思ったのに。」
「そんなこと言われてもさぁ。その、恥ずかしいじゃん。オトーサンに知られるの?」
「ふふ、あはははは、ごめんなさい。なんだか、おかしくなってきちゃった。私、なんで、こんなに素敵な同居人を忘れてたんだろう。」
「あれ、おねえちゃん?どうしたの?」
「ごめんごめん。私、二人のことが好きでしょうがなかったんだなって。そして、二人も、私のことが大好きなんだなって。そう思ったら、私、ずっと一人相撲してた気がして。」
「君が出ていったとき、僕は本当に淋しくて、情けなくて、不安だった。1週間でこれだから、君のいない生活は、もう考えられないよ。色々なことを期待されちゃうと困るけど、それでも、僕に寄り添って欲しい。その代わり、君も、僕に助けを求めて欲しい。それぐらいはカッコつけさせてよ。」
「よかった。怯えてた時にはどうしたらいいか分からなかったけど、元に戻ってくれそうで、すごく嬉しい。ますます好きになっちゃう。」
「そういうカッコいいセリフ、私にはなかったような気がするんだけど?」
「だって、君のほうがカッコいいもん。なかなか、私のすべてが僕って、言えるセリフじゃないよ?」
「やっぱり、私達は同じ人間なのね。私も、私のすべてが、君だけよ。だけど、嫌よね、おばさんなのに、小娘なんて。」
「そんなことを気にするわけないし、僕はそういうところもひっくるめて、君が好きなんだよ。二人のすべて、君という二人の女性が、僕にとってすべて。嫌かな?」
「本当に救われる。あなたの想いって、おじさんのくせに、すごくピュアで、素直。そう思うと、やっぱり明日帰ろうかしら。」
「あ、惚れ直しちゃった?ごめんね、明日は、私が独り占めするの。最後の1日なんだから、楽しいこと、いっぱいするの。ね?」
「それって抜け駆け...、私が大人になる番よね。じゃあ、彼のこと、あなたに任せた。頼むぞ、私。」
「任せてよ。私。その代わり、私の虜になっちゃったら、素直に祝福するんだよ。」
「言うだけ。出来ないことを知ってるもの。それに、私達の虜。もう、君は、私達なしで生きられないようにしちゃったから、一生ついて回るよ。」
「僕からも、ありがとう。情けなくて、弱くて、困らせてばかりだけど、もう少し頑張ってみるよ。だから、一緒に生活しよう。明後日が楽しみ。」
「それじゃ、そろそろ終わりにしようか。僕らはもう寝る。あなたも、自分を大切にしてね。でも、我慢も良くないし、別に怒ってないから、快感に溺れて、できるだけストレスは発散してね。あと2日、頑張ろう。」
「ありがとう。はしたないけど、私はちょっとストレスを発散してから寝るね。」
「ねぇ、おねえちゃん、一つお願いしていい?」
「ん?出来ることなら、聞いてあげるけど。」
「その、おねえちゃんが買ったおもちゃ。私にも一回貸して欲しい。違うサイズのものって、どういう感じなのか知りたくて。」
「ふふふ、可愛いこと言うわね。帰ったら、自由に使ってみたらいいんじゃない。私も、色々気づくことがあったわよ。すごく恥ずかしいけど、買ってよかったかも。」
「まあ、買わないほうが火種にはならなかったけどね。でも、興味がある。やっぱり、私もはしたない娘だね。」
「同じ私だもの。はしたなく、彼におねだりしながら、楽しんで生活しましょう。あなたのこと、一緒になりたいぐらい、大好きだからね。」
「私も、おねえちゃんのこと、大好きだよ。おやすみなさい。」
「僕は、これで良かったのかな?」
「いやいや、さんざん大きなこと言ってたよ。これでダメなわけないよ。」
「君は優しいから、そう言ってくれるのも知ってる。それに、君だけのものじゃないって宣言したようなもんだよ?」
「でも、君は、私達のものでしょ?だったら、別に心配することはないよ。オトーサンでも、君でも、私は、あなたのことが、大好きです。」
「...。」
「あれ、言い損?」
「君が、僕のことを、あなたって呼んだのが意外だったんだ。あんまりこういうこと言うとアレだけど、外見が顔以外、変わってて、助かったよ。」
「そっか。おねえちゃんと私、それほど区別するのが難しいぐらい、君の中では一緒になってるの?」
「髪型を変えたあたりから、僕はようやく二人が別々の人間だと思ったぐらい、昔はそっくりだった。あの人が来たとき、本当に訳が分からなかったしね。」
「どう、同じ私だけど、二人の私から愛される感想は?」
「2倍重たい。けど、僕はその分、2倍愛されてる。これでも不安で、怯えちゃうあたり、やっぱり弱いよ。」
「不安を消すのは難しけど、幸せにしか思えないような生活、一緒に過ごしていこうね。」
「そうだね。ところで、君は、ちゃんと発散できた?」
「心配しなくて大丈夫。今日も優しくて、気持ちよかった。明日はもっと気持ちよくなろうね。」
「...寝る間際に言われてもね。でも、僕も少し安心した。君の魅力なのか、母性なのか、キッカケをくれたのは、やっぱり君だったね。」
「君だけを見てるからね。これからも、君だけをずっと見ていたい。まずは、明日も一緒にいることかな。」
「小さな目標、毎日叶えていけるといいね。それじゃ、寝ようか。」
そういえば、恋愛脳と良く言うけど、私はあまり意味を理解していなかった。どういう状態を、恋愛脳と呼ぶのだろう?
「え~と、恋愛中心に物事を考えてしまう脳のこと?やだ、やっぱり今の私じゃない。」
なんで私は、こんなことを調べているのだろう。私は彼が好き、それで他のことが手につかないってことでいいような気がする。
「その割に、恋愛脳を持つ特徴のような人には入っていないわね。それほど深刻ではないのかも。」
そして読み進めていくうちに、メリットにこんなことが書かれていた。私は戦慄を覚えた。
「魅力的な外見をキープ出来る?え、意図してキープしてるわけじゃない私は、知らず知らずのうちに、恋愛脳のメリットを享受してたってこと?」
デメリットにも当てはまる項目がある。
「恋人に依存しやすいか。確かに、私はもう二人に共依存してるもんね。」
恋愛脳って作れるのね。もしかして、当てはまることがあるかしら?
「日頃から素直な気持ちを表現する...、え、もしかして、今の敏感な私って、彼への素直な気持ちを表現してるからってこと?」
逆にそうでなければ、私は困ってしまう。通話を切っても、私は疼いたままだ。ガウンから胸が透けてたかな。思いっきり乳首が立ってたけど、気づかれてなかったかな。
「やだぁ。ガウンにシミが付いてる。ああ言ってもらったし、はしたないことも前向きに捉えよう。我慢しない、これが、彼への素直な気持ち。」
私は、一度シャワーを浴びているのにも関わらず、またガウンを脱ぎ、バスルームに向かった。おもちゃも、もちろん持った。
「ハァ、ハァ、ハァ~。」
シャワーの音でかき消されてると信じたいぐらい、私は一人乱れていた。全身性感帯なのは、あんなに大事な話をしたあとも変わってない。むしろ、背徳感が亡くなって、リラックスしたまま、何回も絶頂に達している。怖いぐらいに、自分の性欲に溺れている。こんな状態で、君の顔を見て、すぐに服を脱ぎだして、迫ったりとかしないように、肝に銘じて置かないと、今度こそ二人に呆れられちゃうかもしれない。
「ああ、でも、もう一回だけ、私は、気持ちよくなりたいの。」
すぐに再開してしまう。いやらしい女とあの娘を言うけど、私のほうが、よっぽどいやらしい。そして卑しい。はしたない。
本当に、私の体が18歳のままだとすれば、それからトレーニングを続けてきてる私は、無尽蔵に体力があるのかもしれない。だから、昨日だって、寝るまでずっと乱れ続けた。
大人としては貧しい体かもしれない。あの娘のような体だったら、私はもっと気持ちよくなれるのだろうか。でも、彼が好きだと言ってくれるこの体、今だけ、私は自分の性欲のためだけに使おうと思った。今だけじゃないわね。これからも、ずっと性欲に素直に生きていこう。彼のための体、私のための体、どちらにしろ、やっぱり私は、性欲まみれだ。
つづく