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Life 25.9 My wife is the company's idol 君は完璧な会社のアイドル

彼女(主人公)が働く会社の備品係には、愛想が良く可愛らしい女性社員が配属される慣習があり、彼女たちは周りの男性社員からよく絡まれます。彼女は、そうした後輩たちを守る「防衛課長」のような存在として、厳しい対応をしながらも仕事をこなしていました。


塩対応と優しい日常

会社の「塩対応」

彼女は、毎日のように絡んでくる男性社員たちに毅然とした態度で接し、後輩社員を守っていました。ボールペンの在庫を頻繁に要求する営業課長にも、厳しくルールを伝えます。彼女は「会社は甘いけど、私達のチェックは細かい」と言い放ち、その態度は後輩たちから「かっこいい」と尊敬されていました。ランチタイムには、同僚たちと会社の愚痴や近況報告で盛り上がり、婚約したことや、夫の連れ子と仲良く暮らしていることを話します。


家庭の「甘え」

仕事で疲れて帰宅した彼女を、夫(彼)は優しく迎えます。玄関で「褒めてください」と甘える彼女に、彼は素直にねぎらいの言葉をかけます。娘も加わり、3人で温かい家庭の時間を過ごします。彼女は、会社での疲れを家庭で甘えることで癒やし、この幸せな毎日が続くことを願っているのでした。

「おはようございます先輩。毎朝、しっかり起きてますもんね。」

彼女が私の席の隣の後輩。彼女が入ってきて、もう10年近いかしら。


「しっかし、先輩は今日も完璧ですね。婚約したから、もう少しボロが出ると思ってましたよ。」

「あんまり年上をからかわないほうがいいわよ。私が愛想よく仕事してたら、私の仕事じゃないことまで受けなきゃ行けなくなるから、その予防よ。」

「ふう~ん、さすが、長年わが社のアイドルとして君臨してた人のセリフですね。」

「周りだけでしょ。別に、私達が相手をしないと進まない仕事なんて、目の前の作業ぐらいなものよ。」

「そういうところ、かっこいいですよねぇ。しつこい男性は撃退し、絡んでくる後輩社員を守り、ほんと、先輩なしじゃ総務部は回ってませんよ。」

「そう?あなたの愛想よさも、会社の中では評判いいじゃない。持ちつ持たれつってところよ。」

「もしかして褒めてくれてます?嬉しい。朝から先輩にそんなこと言われたら、今日も頑張っちゃおうかな。」


これも、彼女との信頼の上で成り立ってる、軽い冗談の言い合い。

私はそう思ってるけど、彼女はどう思ってるのだろう。まあ、付き合いもながければ、こうなるかな。



中規模の会社なのに、この会社はかなり特殊で、備品係という、備品管理と配布を行うだけの部署がある。総務から独立した組織。

備品係はどういうわけか可愛かったり、愛嬌のあったり、容姿などがそれなりに整っている女子社員が配属されることが多い。

結果、暇な時間を持て余す管理職が寄り付いてきたり、係の子を狙ってる営業がいちいち絡んできたり、その辺を防ぎつつ、円滑にことを運ぶようにするのがお仕事だったりする。

備品係で役職があるとすれば、私は防衛課長みたいなものなのだろう。


「あ、ごめん。もしかしてボールペンの在庫、切らしてた?」

「先輩、その辺は大丈夫です。この前、何十本も持ってる営業課長から戻してもらいましたから。そんなに毎日ボールペンなくなるわけないだろ。パソコンで入力する時代だぞ。」

「まったく、面倒ねえ。適当にあしらって、毎日ボールペン持っていかれるとか、割に合わない。」

備品のチェック。これはこれで好きなのだが、この会社、本当に経費だと思って色々なものを注文しちゃうからなあ。そこは目を光らせないと。

「あ、付箋もなんか在庫ないですね。これも適当に発注しておきます?」

「お願い。もう面倒だから、ダースじゃなくて、その上の価格帯になる数注文しちゃっていいわ。」

「思い切りますね。先輩のそういうところ、本当に気持ちがいいですね。」

「茶化すな。どうせ、付箋も消耗品。なんにも思わない人が使ってるんだから、単価を安くしないと、割に合わない。

「先輩って、結構割に合わないって使いますよね。何かありました?」

「だって、本当のこと言ってるだけよ。月末に備品棚卸ししてみたら、明らかに一ヶ月じゃ使い切れないぐらい備品がなくなってるんだから。」

「確かに。その上で、私たちは愛想よく、皆さんにお渡しする役目もありますしね。」

「まあ、仕事に支障をきたすような事にならないようにするのが、私達の役目ですけど。さすがにずさんすぎるのよ。それでも経費で出ちゃうぐらいなんだから、やるせないわ。」

「もうちょっと、真人間が多ければいいんですけどね。トップ連中がその辺に甘々ですからね。なんのために営業させて、利益が少ないって怒ってるのかわからなくなってますからね。」

「はぁ、本当に、会社の荷物になっている人のリストでも作って、人事とかけあおうかしら。備品は有限なんだから、使った分ぐらい、給料から天引すればいいのに。」

「先輩はそれを20年近くやってきてるんですもんね。そりゃ、愚痴りたくもなりますよ。」

「そうね。ちょっとイライラしてたから言ってるだけ。あなたは、あんまりこういう事言ったらダメよ。私もいつ目を付けられるか。」

「先輩はちょっと違う意味で、人気者ですからね。色恋沙汰で懲戒処分なんてイヤですもんね。」

「婚約した相手に、それはちょっと傷つく。まあ、相手の意思もあることだから、私が否定したところで、ってことかなあ。


「ごめん、またボールペン切らしちゃってさ、一本用意出来る?」

「いいですけど、今週で4本目。本当に書いてるんですか?本当は使い切ったものを持ってくるのがルールですよ。」

「じゃあ、無くしたってことで。お願い。」

「会社の経費ですから、よく考えて、無くしてください。会社は甘いですけど、私達のチェックは細かいですから。はい、帳簿に記入してください。」

帳簿に書いて貰う。こんな事は、普通運用システムか何かで、申請出来るようにすれば、この人の顔を見なくて済むのに。年間でボールペンが5000本も流失してるんだから、そういうところに経費を掛けてほしい。

「ありがとう。このことは...」

「無論黙ってますよ。だけど、私達で抑えられてるうちですから。経費チェックが厳しくなったら、考えて行動してくださいね。


「ふぅ。」

「さっすが先輩。言うべきところはしっかり言う。」

「当たり前よ。単純に週4本ってことは、年間200本無くしてるのよ。ボールペンだってただじゃないってこと。」

「ま、それもありますけど、完全に先輩目当てですもんね。」

「...こんな事務的な会話で、喜ぶものなのかしら。なんなら、私よりあなたのほうが声がかけやすいでしょうに。」

「先輩だからいいんです。私が愛想よく振る舞うより、先輩の塩対応のほうが、人気なんですよ。」

「まあ、それであなたの仕事が効率よくなればいいんですけど、管理台帳の整理をデータ化するのは、もう終わってる?」

「それはそれで、また別の話です。先輩みたいにキビキビ出来るように努力はしてるんですけどね。」



ランチタイム。だいたい総務の女子でふらっと近隣のカフェにでも行く。

軽食しかないので、男性客は少なく、本当にカフェに来ている人しか来ない。だから、私達には居心地がいい。

毎日、誰だ彼だという話ばかりの愚痴。それと、お互いの近況報告が話題だ。

「でも、先輩が婚約したってことは、家庭にでも入るつもりなんですか?」

「そんなわけないじゃない。旦那に言うと怒られそうだけど、なんだかんだで私のほうが稼ぎがいいし。」

「旦那さんにそんな感じでマウント取るんですね。意外だなあ。」

「マウントを取るつもりじゃない。彼にはそれ以上のことをしてもらってるだけ。それで円満ならいいでしょ。」

「いやいや、旦那さんもそこは気にすると思いますよ。」

「そう、だからうちは生活費を個人で持ち寄って、余ったお金は個々で管理するようにしてる。」

「鬼ですね。でも、子供がいないんだから、そういう生活でもありなのか。」

「子供?いるわよ。旦那の連れ子。」

「ええ、サラッと言ってますけど、本当ですか?」

「特に問題なく、彼女とも仲良くやってる。彼女がいると、生活に張り合いが出来る。やっぱり、娘が出来るって、嬉しいものよ。」

「やっぱり先輩。かっこいいですよねぇ。」


「そういうあなたも、彼氏はちゃんとしてるって聞いてるけど。」

「あー、なんか雲行きが怪しいんですよね。あの人とは。」

「何かあった?」

「いや、痴情のもつれというか、彼も頑張ってるんでしょうけど、取り繕うばかりなんですよね。」

「それは大変ね。私で分かることがあったら、アドバイスするけど、残念ながら込み入った色恋沙汰はあんまり経験ないしね。」

「そこが先輩の魅力じゃないですか。どうやったら、こんなに可愛らしい女性が、あんなに凛々しくビシッと悪事を追求出来るようになるのか。」

「う~ん、そこは、やっぱり経験でしょ。最初は私だって愛想よく振る舞うように気を付けてたけど、その頃の先輩たちが守ってくれてたから。」

「それで、今は用心棒なわけですか。」

「なかなか会社から厄介な人間だけは抜けないものなのよ。営業部の、よく来る彼とかもそうでしょ。」

「あの人は後輩ちゃん狙いみたいですからね。先輩がうまく立ち回ってくれてるおかげで、後輩ちゃんも安心して仕事してますよ。」

「そういう歳になったから、私の役回りになっているだけよ。この役目、私の次は、きっとあなたになるわよ。」

「...覚悟しておきます。」

「さ、午後も頑張りましょう。今日も定時進行でお願いね。」

「了解です。頑張っていきますよ。」


結局、その日は総務の仕事より、塩対応をやっていたせいか、定時進行は出来なかった。

悪いと思うが、残業代は出るんだ。そこで許してほしいかな。



彼に頼んでしまうと、多分彼がすべてを背負ってくれる。でも、私が負担になって、迷惑をかけるようにはしたくない。

それに家のこと...出来ないもんねえ。いざ、寿退社して、専業主婦にでもなったとして、私が出来る家事って、本当に掃除だけになりそうよね。

まあ、私もいるし、私も私には投資してあげないといけないし、そのためには、塩対応でも何でもしましょうかね。




「ただいま~。」

「おかえりなさい。今日も頑張ったね。」

「頑張りました。褒めてください。」

玄関で彼にお願いしてしまった。でも、彼は、

「はいはい、今日も頑張りました。お疲れ様。」

素直にねぎらってくれる。何より、ああ見えても頼りがいもあるし、私をちゃんと知ってくれてる。

あなただけじゃないの。私も、この毎日が、幸せに続くと願っています。

「あ、またおねえちゃんばっかり。」

「君は今日、3限までしかなかったでしょ。おまけにバイトも休みで、家に帰ってきたら昼寝してたじゃない。」

「うん、まあ、それはそれで。というか、おねえちゃんに言わないでほしかったなあ。」

「いいから、そろそろ乾燥が終わっただろ。洗濯物を畳んで。」

「わかりました。気持ちを込めて、畳ませて頂きます。」

「手伝おうか?」

「あ、おねえちゃんは、着替えて来なよ。オトーサンも、もうご飯作って待ってたよ。」

「わかりました。それじゃあ、着替えてきます。」


会社の疲れは、家庭で甘えてカバーする。そんな素敵な毎日。二人共、ありがとう。大好き。



今日はこんな感じかな。

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