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しくじり転生 〜うまく転生出来ていないのに村まで追い出されどういうこと神様?〜  作者: Ruqu Shimosaka


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メイオラニア辺境伯

 俺たちは魔法を使いこなせるように練習しつつ、風が弱い時に船を魔法で進めたり、アビゲイルさんの船酔いを治しながら船旅を進める。

 アルバトロスを出て、二週間が経った頃に、港が見えてきたとレーヴェが声をかけてきた。


「予定より随分と早いですがメイオラニアの港に着きました」

「あれがメイオラニア。確かメイオラニアが街の名前だったね」

「そうです。普通ならアルバトロスからメイオラニアまで二十日以上かかるんですが、必要な時に魔法を使い続けられたので到着が早かったようです」

「そこまで早くなったのなら良かったよ」


 元々魔力が多かったので、そこまで魔力の多くなって便利になったと実感できていなかったが、初めて魔力が多くなった事で良かったと実感できた。

 遠くに見える港を眺めていると、エマ師匠が声をかけてきた。


「エド、あれがメイオラニアですか」

「そうみたいです。エマ師匠大丈夫ですか?」

「ええ。複雑な気分ですが、問題ありません」


 エマ師匠が心配だが、そんなことは関係なしに船は港に着く。急な訪問になるので、港を管理している役人が乗船してきた。役人に船長のレーヴェが自己紹介してから事情を説明すると、役人は慌てた様子で船を降りていった。


「これですぐにメイオラニア辺境伯に会う事ができるでしょう」


 待っていると、レーヴェの言う通りに役人がすぐ戻ってきた。馬車を用意したと言うので、俺たちは馬車に乗って移動する。

 メイオラニア辺境伯の邸宅だという屋敷に案内されて、部屋に通される。


「よく来た。私がフィリップ・フォン・メイオラニアだ」

「レーヴェ・フォン・リング・メガロケロスです。事前の連絡もなしに、急な訪問になった事をお許しください」

「ダンジョンの緊急事態だと聞いた、気にする事はない。それでダンジョンで何が起きた?」

「それについては私ではなく、姉のエリザベスと、王太子子息のレナード殿下に説明を任せます」

「レーヴェ殿下以外にも二人の殿下が、これは挨拶が遅れ失礼しました。他にも随行の人に挨拶を……」


 フィリップ様は喋っている途中で止まった。俺がフィリップ様の視線の先を見るとエマ師匠を見ている。


「エマ」

「フィル。久しぶりですね」

「ああ…何の連絡もせずに済まない。私を恨んでいるだろうな。言い訳になってしまうが、メイオラニアの問題が収まったら謝罪に行こうと思っていた」

「恨んではいません。ですが事情は知りたかったです」

「連絡をしようとはしていたのだが出来なかった。私が結婚を望んだ相手が誰か分かってしまったら、命を狙われる危険があった」

「私の命が?」


 ベスがフィリップ様とエマ師匠の会話を止める。


「フィリップ辺境伯閣下、エリザベス・フォン・リング・メガロケロスですわ。それは私たちが聞いて良い話なんですの?」

「エリザベス殿下。挨拶もせずに失礼しました。聞かれても問題はありませんが、話を遮ってしまいましたね」

「話すことは長そうですから、私の話を先にしてしまいますわ」

「はい。エマ、すまないが後で説明するので許して欲しい」

「構いません。私の事よりダンジョンの方が緊急ですから」


 ベスはリオを紹介した。ベスは、フィリップ様にアルバトロスのダンジョンで魔獣が一体だが溢れたことを話した。


「ダンジョンで魔獣が溢れたとは…どのような魔獣が現れたのですか?」

「イフリートですわ」

「イフリート! よく倒せましたね。ダンジョンの外まで出てきてしまったのですか?」

「いえ。私たちがダンジョンで出会って何とか倒せましたわ」

「殿下が?」

「そうですわ」


 ベスはリオ、俺、ドリーとアルバトロスに残った二人でイフリートを倒した事を説明すると、フィリップ様はとても驚いた様子だ。


「魔力があり得ないほど多いとは思っていましたが、イフリートを倒したからですか」

「そうですわ。私も獣人化が進みましたわ」


 ベスはライオンの耳を人間の耳に変えて見せている。


「獣人の変化ですか。ダンジョンで獣人化が進まなければできないと聞きますね。獣人化が進んだら戻すことが少ないというので、見るのは初めてですね」

「詳しいですわね。これで私がダンジョンに行っていると証明できましたわ」

「ダンジョンに行っている事を疑ってはおりませんでしたが、イフリートを本当に倒されたとは」

「イフリートに関しては運が良かっただけですわ」


 ベスがイフリートの戦い方を伝えた後に、俺が転生者であることを説明する。


「転生者ですか。それならばイフリートを倒せたのも納得ができます。その魔力の多さも凄いですしね」

「元々の魔力は私と同じでしたわ。イフリートを倒した後に増えましたわ」

「それでもかなり多いですね」


 俺の話だがベスにフィリップ様との会話は任せる。ダンジョンが溢れた話が終わったところで、改めて自己紹介をすれば良いだろう。


「魔力量の増加、獣人化が進んだことで、ダンジョンから魔獣が溢れたことを証明できていると思いますわ」

「はい。エリザベス殿下が急ぎで来られた時点でよほどの事ですから、ダンジョンから魔獣が溢れているのは信じております」

「ところで、ツヴィ王国でダンジョンから魔獣が溢れたと聞いてはおりませんの?」

「メイオラニアのダンジョンで魔獣が溢れたと報告は受けていませんし、近隣の都市からも連絡は来てはいません。これから周辺の都市や王都に向けて連絡をして、確認をします」

「陸路でもツヴィ王国に向けて連絡は行っておりますが、フィリップ様からも連絡をしていただけると情報が早く伝わりますわ」

「アルバトロス経由の陸路だと時間がかかりますからね。分かりました。今から連絡をするように伝えます」


 フィリップ様はそういうと、何通も手紙を書いて近くに控えていた家臣に手渡している。手紙を受け取った家臣は事情を聞いていたので、すぐに部屋の外に出ていった。


「近隣の都市と、重要な都市に手紙を書いたので、ダンジョンが溢れた事はすぐに伝わります」

「同盟国として情報を伝えられて安心しましたわ」

「ツヴィ王国のメイオラニア辺境伯として感謝致します」

「フィリップ様。同盟国として当然の事ですわ」


 メイオラニアに来た一番の目的は達成できたようだ。後はエマ師匠が魔法を教え終われば帰るだけだが、エマ師匠とフィリップ様の事もあるし流石にすぐには帰れないだろう。


「ところで、エリザベス殿下はこれから王都に向かう予定でしょうか?」

「いえ、管理者になるためダンジョンに行く予定ですわ。なのでアルバトロスに戻る予定ですが、船の準備もあるのでレーヴェが出航できると判断するまでは、メイオラニアに停泊させて頂きたいですわ」

「船はお好きなだけ停泊していただき構いません。しかし、エリザベス殿下が管理者に。イフリートを倒せているのだから冒険者として優秀なのは分かりますが、レナード殿下とエリザベス殿下が管理者を目指すのですか」


 ベスはフィリップ様に同意した後に、元々管理者を目指していたと伝える。


「そうですか。ツヴィ王国の王族も管理者を目指しているので、今代は別々にダンジョンの踏破を目指す事になるかもしれませね」

「ツヴィ王国の王族も管理者を目指しているんですの?」

「はい。レナード殿下は知っているかもしれませんが、今代の王族は転生者なのです」


 ベスもツヴィ王国の王族が転生者である事は知らなかったのか驚いた様子だ。


「王族が転生者とは初めて聞きましたわ。リオは知っていたの?」

「はい。僕と年齢が近くダンジョンに行く候補だった王族が、双子で転生者であるとは聞いています」

「リオの年齢であれば相手が決まってなくても違和感がありませんでしたが、そういった理由もあったんですの」


 しかし、転生者がツヴィ王国の王族に生まれるとは凄いな。王族に生まれたから魔法の暴走はしないで生き残れたのかもしれない。


「リング王国には、ツヴィ王国の候補者が決まるのを待っていたので、謝罪を入れている状態でした。レナード殿下の年齢なら一度は顔合わせはするのですが、それも出来ていませんでしたから」

「候補が転生者だったのなら仕方ありませんわ。ツヴィ王国の王族は管理者になれそうですの?」

「ダンジョンを進んでいるとは聞いていますが、どこまで進んでいるかまでは分かりません。王都にも手紙を書きましたので、王子がダンジョンを踏破して管理者を目指す事になるかと」


 フィリップ様はメイオラニアから最低限しか動くことが出来なかったので、王都の情報は詳しく知らないと言う。


「メイオラニアから動けなかったとはどう言うことですの?」

「私の母が理由なのです。この話はエマにも関係してくるのです」

「アルバトロスを出る前に少し話を聞きましたが、メイオラニアから動けなくなるほどだったんですの?」

「父が亡くなってから母の暴走は止まることがなくなってしまいました」


 ベスとリオはまだしも俺たちは部屋を出た方が良いかとベスに相談すると、フィリップ様が母の話はツヴィ王国では有名な話なので、調べればすぐに分かるので皆聞いてくれて良いと言ってくれる。


「母はツヴィ王国の貴族ではなく他国から来た貴族でした」

「その言い方ですとリング王国でもないと言うことですの?」

「はい。リング王国出身でも、ツヴィ王国出身でもない貴族がツヴィ王国に嫁入りして、ツヴィ王国に馴染めなかったようなのです。馴染めなかった理由は色々とあるのですが、一番最初に問題になったのが、血統を重視する貴族感が抜けず、ツヴィ王国の魔法を重視する考えは理解できなかったようです」


 俺も貴族は血統を重視するのだと思っていたが、説明されてリング王国は血統を重視していないのは理解できた。だがフィリップ様の母親は理解できなかったのか。


「ツヴィ王国で血統重視の行動を繰り返し、周囲を困らせていました。父も直すようにとは言っていたのですが、直すのは無理だったようです」

「他国からの嫁入りは大変だと聞きますが、かなり苦労したようですね」


 フィリップ様は苦い顔をしながら、母が死んでもまだ苦労は続いていると言う。フィリップ様はベスに許可を取って、エマ師匠との結婚が出来なかった事情を説明し始めた。


「エマ、命が狙われる理由の前の話をさせて欲しい。エマとの結婚は父は賛成してくれた。ですが、母はエマとの結婚を反対して強行手段に出たんだ」

「強行手段ですか?」

「相手を選んで話を進めてしまったんだ。こちらから話を持って行っているのに、こちらから断れば失礼すぎる。父も私も困ってしまったよ。結局父は辺境伯として結婚するようにと命令してきたよ。私は父の命令で結婚する事になったが、父に謝られたよ」


 前辺境伯は命令だと言ってフィリップ様に結婚させたが、前辺境伯はエマ師匠との結婚は反対していなかったのだから、フィリップ様の心情を配慮して命令したのだろう。


「私は結婚する理由をエマに伝える予定だった。だが母の行動を見ていた家臣の一人が私に止めるように警告してきたのだ。エマの命が危なくなるので手紙を書くのを止めるようにと」

「私の命がですか?」

「母はエマの命を狙っていたようなのだ。エマの暗殺を企てていたが、母はリング王国に詳しくないのでエマまでは辿り着けなかったようだ。そこに私が手紙を出せば居場所が分かってしまう。そう家臣は警告してくれたのだ。」


 それでフィリップ様は手紙を出すのを諦めたとエマ師匠に説明した。エマ師匠は命を狙われたことは無いと思うと言うので、フィリップ様の配慮は成功していたようだ。

 フィリップ様は結婚してからもかなり大変だったと言う、結婚相手は結婚してすぐに亡くなってしまい、続けて前辺境伯の父親まで亡くなってしまったと話してくれる。


「父が亡くなって、私は急ぎ辺境伯になり、辺境伯として統治を始めた。元々父に統治方法は教わっていたが、一人で統治をするとなると慣れていないのもあって、苦労しながら統治をしていた。苦労しながらも上手く統治出来ていると思っていたが、母の暴走が裏で進んでいたんだ」


 フィリップ様が辺境伯になった時には、フィリップ様の母がツヴィ王国に貴族に馴染めていないのは有名になっており、ツヴィ王国の貴族には相手にされないので、他国の商人や他国の貴族と交流するようになっていたと、フィリップ様が説明してくれた。


「母の相手が普通の商人や貴族であれば良かった、問題がある相手ばかりで気づいた時にはメイオラニアの内部に入り込まれていた。徐々にメイオラニアの治安が悪くなって行って私は初めて気づいたんだ。私は慌てたよ」


 排除しようにも母の関係者なので、完全に排除できなかったとフィリップ様は言う。母が死んでからもメイオラニアの治安は回復しきれておらず、フィリップ様はメイオラニアから長期間出かけることができないと話してくれた。

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― 新着の感想 ―
[一言] なんで幽閉するなりせんかったんやろ? 迷惑母ちゃんの出身国が影響力持ってるとか?
[一言] 現伯爵も前伯爵も甘いというかなんというか… 家や領地を荒らしてる犯罪者、遅くともエマ師匠殺そうとしてるって時点できっちり対応しとけばよかったのに 幽閉とか毒杯とか…
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