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しくじり転生 〜うまく転生出来ていないのに村まで追い出されどういうこと神様?〜  作者: Ruqu Shimosaka


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航海中の一日

 船に乗って一日経った後に気づく、そう言えばアビゲイルさんに会っていないと。俺よりドリーが会いたがったので、アビゲイルさんに会いに行くと、アビゲイルさんは青い顔で船室にいた。


「アビゲイルさん大丈夫ですか?」

「少し船酔いしているだけなので問題ありません。定期的に薬を服用しているのですが、効果が切れる時があるのです」


 アビゲイルさんは船酔いしやすい人だったのか。俺たちのために無理して付いて来てくれたようだ。


「酔い止めの薬は足りていますか? 俺も酔い止めを持っていますので分けますよ」

「いえ。薬は多めに準備して来ているので大丈夫です。アルバトロスに来てからは何回も乗っていますから」


 そういえばアビゲイルさんはトリス様が王都にいる頃からの側近なので、船に乗りなれていないのかもしれない。ドリーに乗せてもらって空を飛んでみるかと提案しようとすると、エマ師匠が診察したいという。


「船酔いの診察ですか? 魔法を使っても一瞬良くなる事はあっても、長時間の効果はありませんでしたよ?」

「エドから船酔いする原理を聞いたのです。魔法が完成していないので可能なら試させて欲しいのです」

「転生者の知識ですか。分かりました」

「魔法が成功しなかった場合は、ドリーと一緒に空を飛んで貰うと楽になるかもしれません」

「空を?」


 エマ師匠は、昨日俺が説明した話を簡単にアビゲイルさんに説明している。アビゲイルさんが納得したところで、エマ師匠とドリーが治療を始めた。エマ師匠は多少の手応えはあったようだが、アビゲイルさんの船酔いは多少良くなっただけで終わった。


「本当は自分で飛んだ方がいいんですけど、甲板でドリーと一緒に飛べば多少は良くなると思います」

「エド、分かりました。ドリー申し訳ないのだけどお願いできるかしら?」

「うん! 杖取ってくるね」


 ドリーとリオは船に大型の杖を持ち込んでいて、部屋を出て取りに向かったようだ。ドリーは杖を持ってすぐに戻って来たので、甲板に出てドリーに飛ぶ時の注意点を説明した。ドリーは試しに速度を調整しながら飛んでみると言うと、空を飛び始めた。


「飛ぶのは難しいけど、二人でも飛べるよ」


 ドリーがそう言うのでアビゲイルさんを乗せてドリーが飛び始めた。しばらく飛んでいるとドリーが降りてきた。


「随分と良くなりました。ドリー、ありがとうございます」

「また調子悪くなったら言ってね」

「はい」


 アビゲイルさんの顔色は良くなっている。飛んで良くなったか、もしくは飛んでいるうちに薬が効いて来たのかもしれない。

 エマ師匠がアビゲイルさんに調子が悪くなったら治療をするので言って欲しいと伝えている。アビゲイルさんがエマ師匠の提案を了承した。上手くいけば酔い止めの魔法は航海中に出来上がるかもしれない。


「エド、少し良いですか」

「レーヴェどうしたの?」

「船を進めるために魔法をお願いしたくて」

「風が弱くなって来たのか」

「はい。速度が落ちて来たので魔法を使うことにしました」


 レーヴェに頼まれたので、俺は魔法を使うのに操舵をしている船員の隣で魔法を使い始める。魔法の強さが分からないので、操舵している船員に強さを聞きながら魔法を調整していく。


「思ったより細かく魔力を使わないから楽かも。魔力の制御を訓練するには向いてなさそうだけど」

「制御が楽かもとは驚きです。この帆船は速度優先の船ですが、大きいので魔法で進める場合は魔力がかなり必要です」

「自分でも魔力量が凄い事になっているって自覚はあるし、急に魔力が増えたから制御が甘くなっているから直したいんだけどね」

「魔力が増えすぎたなんて、聞いた事がない悩みですね」


 俺も以前に魔力が若干増えた事を感じた事がある。なので普通は魔力が若干増える事を繰り返して、魔力量は増えていくのだろう。だが俺たちはイフリートという普通は出会えば死ぬような相手を倒したことで、魔力量が急激に増えたり、獣人化が急激に進んだ事で、制御が難しくなっている。


「魔力が増えたのは嬉しいんだけど、魔道具や魔法薬を作るのがかなり難しくなってしまったよ」

「細かい制御が苦手になったんですか」

「そうなんだ。元々魔力が多いから苦手ではあったんだけど、以前の感覚で魔力を出すと量が全然違うんだ」


 レーヴェも魔力が多いので、俺と同じように魔力を細かく制御するのは苦手のようで、俺の話を分かると言ってくれる。


「こればっかりは回数をこなすしかないですからね」

「そうなんだよ。魔法を覚えた時のように繰り返すしかなさそうだ。俺は魔法だから大雑把にも使えるけど、ベスは身体能力だから苦労しているな」

「姉の身体能力も驚きましたが、耳が変わったのには驚きました」

「俺たちも驚いたよ」


 ベスは獣人化が進み聴力が変わったので、違和感があり悩んでいたようだとレーヴェが教えてくれた。なのでベスはレーヴェに耳について尋ねたようだ。だがレーヴェには元々ライオンの耳があるので、何の違和感もないので答えようがなかったと話してくれた。


「そもそも耳を変えられるって意味が分からないですね」

「耳が耳になるの、あれか。見てても不思議だよね」

「耳がどう違うのかは分かりましたけど、助言しようにも難しかったです」

「元々あるものだしね」


 レーヴェと雑談をしながらも魔法は使ったままで船は進み続ける。操舵している船員に帆への風の当て方などを指摘され、魔法を変えていく。魔法は複雑ではないので喋りながら魔法を使っている。


「エド、まだ魔力があるんですか?」

「まだ余裕だね」

「姉から船を進める魔法は、エド、ドリー、リオの三人で魔法はどうにかなるかもと言われていましたが、本当にどうにかなってしまいそうですね」

「三人で一日中やれって言われたら無理だけど、結構余裕だよ」


 自分で余裕と言っていて思い出すが、アルバトロスからターブ村へ川を登ったときは、すぐに魔力が無くなっていた気もする。川を登るのと海では条件が違うので、違いはあるだろうが、魔力の制御が甘い状態で前回以上に余裕なのだから、魔力量が凄い量増えていると改めて実感する。


「時期的に凪が一日続くことはそこまで無いですし、時間になれば今日もまた風が出始めますよ」

「レーヴェは風が出るのが分かるのか」

「空を見れば分かったりしますね。後は感覚的な物もありますよ。風ではないですが、獣人だからか雨が降るかどうかはよく分かります」

「獣人だとそういう事まで分かるのか」


 獣人の勘も使えるが、風を読めるわけでは無いので、風を読むのは船員に聞いたりしてできるようになってきたと説明してくれた。雲の種類や進む方向で、天候や風は変わってきたりすると、今の天気の読み方を教えてくれた。

 レーヴェと話していると魔力が無くなってきた。


「レーヴェ、そろそろ魔力がなくなりそうだから、ドリーかリオに交代した方がいいかも」

「分かりました」


 アビゲイルさんの事もあってドリーが魔法を使うのは最後にして、リオが先に魔法を使う事になったようだ。リオが魔法を使い始めた。


「エドの言う通り意外と楽ですね」

「レーヴェにはそれは変だと言われてしまったけどね」

「魔力が増えすぎましたから仕方ありません」


 リオにビタミンの話をレーヴェにしたかと聞かれて、そういえばしていないとリオに話した。


「なるほど、それが足りないと病気になるんだ」

「薬草をそのまま齧るらしいから、抽出した物の方がいいと思うんだよね」

「薬草をそのままか。それは嫌だな」


 リオが嫌そうにしていると、操舵をしていた船員が食べた事があると話してくれた。若い頃に座礁したことがあって、食料を制限したら壊血病になって、最終的に薬草を食べて生き残ったらしい。二度と薬草を食べたくはないと言う。


「エドにビタミンを抽出した物を開発してもらいたいな。聞いた限りは薬草を齧りたくはない」

「船にいる間は作業したら船酔いしそうだから、船を降りてからかな」

「ツヴィ王国はどうなるか分からないし、アルバトロスに帰ってからで良いよ。アルバトロスに帰ったら協会に依頼を出すよ」

「分かった。もしツヴィ王国で暇だったら試してみるよ。船の上も暇だからやりたいんだけどね」


 船酔いで思い出したが、酔い止めの魔法を作っていることも話すとレーヴェに喜ばれる。


「それは嬉しいな」

「レーヴェは船酔いしないんじゃ?」

「私は船酔いはしないね。船は魔法使いを募集するんだけど、魔法使いが船酔いするって船員を辞めてしまう人もいるんだ」

「なるほど。魔法使いで船酔いしたら魔法も使えるか分からないし、それは辞めそうだね」


 魔法使い以外の船員たちは大半が子供の頃から船乗りなので、船酔いより陸酔いが酷い人はいるとレーヴェが苦笑しながら話してくれた。酔い止めなのだから陸酔いだろうと馬車で酔うのでも治せるはずだ。


「酔い止めの魔法だから、原理は同じだし陸酔いも治せるかも。それと馬車で酔うのとかも直せるとは思う」

「陸酔いを治せるって言ったら、喜ぶ船員は少しは居るかも。でもそれ以上に馬車での酔い止めになる方が喜ばれそうだ」

「馬車は揺れるからな。俺が乗っているのは協会の馬車だから安定してるし、アルバトロスの中は石畳だからそう揺れないけど、それでも揺れるし」

「魔道具の馬車でも酷い道を通ると揺れが凄いから酔う人は多いんだ」


 酔い止めの魔法は、ドリーとエマ師匠が航海中に完成させられる気はすると、レーヴェに伝える。


「アルバトロスは港町だから、船に憧れるけど一度乗って船酔いで諦める人も居るから、船酔いが無くなれば船に乗れる人も増えるだろし嬉しいな」

「レーヴェは本当に船が好きなんだね」

「そうですね。辺境伯にならなくて良いのなら、色々なところに船旅をしたかったかな。辺境伯を継ぐのが嫌ってわけじゃ無いだけどね。メガロケロス辺境伯は船での移動が多いし、船長でいられるのも辺境伯の子供だからですし」


 レーヴェは船長でいる実力は十分にあるように感じるのだが、レーヴェはそう思っていないようだ。操舵をしている船員からも、船長をするだけの実力はあるとレーヴェは声をかけられている。レーヴェは船員に実力があると言われたからか、嬉しそうにしている。


「船長のレーヴェはツヴィ王国に着いたら船で待機が多いの?」

「メイオラニア辺境伯に挨拶はするし、姉が大変そうなら手伝いに陸が多いとは思うけど、船が多いかな。船員も陸に交代であげる事になるかな」

「メイオラニア辺境伯についてはエマ師匠との関係があるのが不安かな。アビゲイルさんが居るから対処できるとは思うけど」

「聞いているけど、大変そうだよね。ややこしい事にならないと良いんだけど」


 レーヴェの年齢で気にする事では無い気もするが、辺境伯の息子としてそうも言ってられないのだろう。メガロケロス辺境伯とメイオラニア辺境伯は代々仲が良いと聞いたし、次のメガロケロス辺境伯はレーヴェだから、今後の関係もあって問題にならないように気が抜けなさそうだと、レーヴェからメイオラニア辺境伯について詳しく聞いた。

 メイオラニア辺境伯についての会話に、魔法を使っているリオも混じって話していると、リオの魔力もなくなったようだ。


「レーヴェ、次はドリーですね」

「リオ、そうだね。呼んでくるよ」


 レーヴェに連れらてドリーが来て、俺と同じように魔法を使い始めた。

 ドリーも安定して魔法を使い始めると、レーヴェが感心している。


「ここまで船が進むとは凄いですね。思ったより早くメイオラニア辺境伯の港に着きそうです」

「それは嬉しいかな。ダンジョンも心配だし」

「確かにダンジョンを踏破する必要がありますから、早く用事を済ませたいな」

「早く用事が終わるかは分からないけどね」


 アルバトロスに帰るまでに冒険者で誰でも良いので踏破すれば、ダンジョンの管理が安定するので余裕ができる。俺たち以上にダンジョンを進んでいる冒険者はいるので、そのダンジョンの奥まで進んでいる人がどこまで進めるかだ。

 ダンジョンが溢れたら地上は大変な事になるのだし、その前にどうにかしたい。


「ダンジョンが溢れたら地上が…あれ?」

「どうしました?」

「いや、海はどうなるのかなって」

「海も溢れますが、海に元々いる魔獣は強いですから、そこまで問題にはならないと思いますよ」

「海にも魔獣はいるのか」

「はい。ドラゴンから鯨まで居ます。海中に特殊なダンジョンがあるようですが、溢れたとしても大半は食べられてしまうようです」


 元々いた魔獣が強いのでよっぽど強い魔獣が現れない限りは問題がないようだ。

 というか海中にダンジョンがあるのか。レーヴェに聞いてみると、ダンジョン全体が水中になっており、陸上で生活するような生物には入ることは無理だという。一部の特殊な獣人と、海中の魔獣しかダンジョンに行く事ができないと説明してくれた。

指摘頂いたのですが、魔法格闘術が魔法戦闘術に間違えていたようです。

造語なのでどっちにしても良い気がしますが、格闘術の方が意味的には合ってるんので直しました(格闘術書いてたのは最初だけで、戦闘術の方が大幅に多かった)。


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