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魔法の訓練と薬師組合で買い物

 ケネスおじさんを見送った後にドリーは泣き出して、俺、エマ師匠、ライノさんで慰めて何とか泣き止むと。


「ライノさん、ありがとうございます」

「私の事はライノで良い、ケネスの代わりにはならんだろが、何かあれば頼ってくるといい」

「呼び捨ては流石に悪いですし、頼るのはギルドの仕事が忙しいのでは」

「冒険者ギルドは大体が呼び捨てだから気にするな、仕事はこれでもギルドではそこそこ偉いからな、時間は作れる」


 迷うが、逆に失礼かと思いライノと呼ぶ事にする、頼るのはドリーの事があるし、街にまだ頼れる人がエマ師匠くらいしか居ないので、甘えさせてもらう事にする。


「ではドリーの事もあるので、お言葉に甘えさせて頂きます」

「そうしておけ、昨日は偶然受付に居たが、普段は受付には居ないので、受付に居る誰かに私を呼んでもらってくれ」

「分かりました」


 昨日ライノが受付に居たのは、俺たちにとっては運が良かったようだ。

 ライノがエマ師匠に近寄って話しかけている。


「失礼エマ様、冒険者ギルドのライノです、尋ねたい事があるのですが」

「ライノ久しぶりです、尋ねたいことは私とエドとドリーの関係ですね、二人の師匠をしています」

「そうですか、それは安心しました、魔法協会内では問題ないとは思いますが、二人に何かあれば連絡していただければ私も動きますので」

「分かりました、代わりにギルドの方で、二人に何かあったら私まで連絡を」

「分かりました」


 ライノとエマ師匠は知り合いだったようだが、エマ師匠の方が立場が上のような対応をしている、エマ師匠は治癒の魔法使いだからギルド員がよく世話になるのだろうか?


「それでは私はギルドに戻るので、依頼を受けにくるでも、遊びに来るでも良いので、またギルドに来るんだぞ」

「はい」「うん」


 ライノさんはそう言うと去っていった、ライノさんを見送った後、エマ師匠が戻ろうと声をかけてくる。


「では私たちは、部屋に一度戻りますか」

「「はい」」


  部屋に戻ってきたところで、エマ師匠が尋ねてくる。


「魔法の訓練はどうしますか、今日は休んでおきますか?」


 エマ師匠はケネスおじさんが居なくなった俺たちを、心配してくれて居るようだ、俺がドリーはどちらが良いだろうかと迷っていると、ドリーが返事をする。


「ドリーは、りっぱな魔法使いになる、だからやるっ」

「そうですか、分かりました」


 ドリーはケネスおじさんとの約束を実現させるために頑張るようだ、なら俺も頑張るべきだろう。


「エマ師匠、俺も魔法の訓練します」

「分かりました、では訓練場に行きましょう」


 訓練場に着くと、早速魔法の訓練をする事になる。


「エド、昨日は私が魔法を消すのが遅れたせいで危ない目に遭いましたが、今日は遅れたりしないので、安心して魔法を発動してください」

「分かりました」

「昨日と同じく、魔力は全力で水の玉を思い浮かべてください」

「はい」


 昨日と同じように神との記憶が戻るのか、それとも違う状態になるのかと怖くはあったが、怖がって魔法を使えなくなったらダメだと、杖を構えて魔法を発動させようとする。


「行きます!」


 水の玉を思い浮かべながら杖に向かって魔力を動かすと、昨日中々動かなかった魔力が今日は簡単に動いていき、杖の先から魔力が出た瞬間に巨大な水の玉となる。

 その瞬間何か錯覚したかのような感覚に襲われ、それが何なのか考えようとするが、考える暇もなく魔力の扱いが格段に難しくなってしまう。

 歯を食いしばって耐えようとするが、制御できなくなって行き、水の玉がどんどん歪な形になって、もうどうしようもない、暴走してしまうっと思った、次の瞬間には水の玉は消えていた。


「エドよくやりました、二回目で短時間でも制御できたのは、かなり凄いですよ」

「ありがとうございます」


 俺は全力で走った後のような荒い息遣いで、何とかエマ師匠にお礼を言う。


「エド、無理をしないで少し休んでいなさい」

「はい」


 息を整えようとしながら、今魔法を使った時のことを思い出す、魔力が魔法になった時確かに何か既視感のような錯覚に陥った、あれは何だったんだろうか、エマ師匠の魔法を見た時とは違う感覚だった。


「エド、大丈夫ですか」

「え?あ、はい」

「本当に大丈夫ですか?」

「大丈夫です、魔法の感覚を思い出していました」

「そうですか、魔力がないので魔法は使えないと思いますが、無理はしないように」

「はい」


 エマ師匠に言われて気づくが、魔力がほぼ空になっている、昨日は初めてだったので感じる余裕も無かったのか、感じられなかったのか分からないが、魔力が無くなると言うことはこういう状態なんだなと理解する。


「それでは、ドリーもやってみましょう」

「はい!」


 エマ師匠に元気よく返事をしたドリーが魔力を動かしているのが、俺にも感覚的に分かる。

 そして杖から凄い量の魔力が出て、水の玉となった瞬間に、俺は先ほどの錯覚の理由を理解する。

 神に会った記憶の中で神が発していた存在感は魔力で、時折会話をしながら自分に魔法を使っていたのだと。

 それと同時に“神ぽいもの”と神自身が言っていたことを思い出し、魔法使いに近い何かだったのかも知れないと予想する。

 思い出される魔力量の凄さから、もし神が魔法使いだったら知らない魔法使いは居ない程に有名かも知れない、と思えるほどの魔力量だった。

 そんな事をドリーの水の玉を見ながら考えていると、徐々に落ちて行き地面に近づきそうになったところで、水の玉が消える。


「ドリーも二回目で短時間でも制御できるとは、凄いですよ」

「うん、でもドリーもっとうまくできると思ったの」

「魔法を発動できるようになるまで一ヶ月は掛かりますから、二人は順調ですよ」

「うーん」


 エマ師匠の説明にドリーは納得が行っていないようだ、俺もそうだが感覚的な問題なので言葉にするのが非常に難しい。


「さてエドもドリーも魔力が無くなったようなので、今日の訓練は終了です、質問などあれば聞きますが、ありますか」


 エマ師匠が質問を受け付けてくれるようなので、感覚的な部分について聞いてみる事にする。


「エマ師匠、魔法を発動する時に感覚的にやっているんですが、何か効率的な方法はありますか」

「それについては自分でやりやすい方法を模索する方が、最初に魔法を安定させるには効率がいいんです、二人は魔力を自力で動かしましたが、動かない場合は魔力以外で、動かし方を見たり触ったりして、感覚的に掴んでいきます」

「そういえば最初に魔力をどう動かすのか分からなくて、何となく頑張ってみたら動きました」

「最初はそれで良いです、魔力や魔法は感覚がもう一つ増えたと思って使うのが基本ですが、感覚の感じ方が人それぞれで違うので、統一化しようとすると魔法を発動できなくなる人が一定数出てくるらしいのです」

「それで、あまり説明をしないのですか」

「最初はそうですね、魔法が安定してきたらまた変わってきますが」

「分かりました」


 最初は全力で魔法を使えと言った意味が少し分かった気がする、全力でやらなければ魔力は動かないし、魔法もきちんと発動しないのだろう。


「質問はそれだけでしょうか」

「はい」

「では、部屋に戻りましょう」


 部屋に戻ると今日はどうするか迷ってしまう、俺は服を縫っていれば良いがドリーは服を縫うのがあまり好きではない、ケネスおじさんが居なくなった現状だと、ドリーにも寂しさを紛らわせるためにも何かさせたい。

 そんな事を考えていると、エマ師匠から今日はどうするのかと聞かれる。


「エド、今日はどうするのですか」

「俺は服を縫おうと思っているのですが、ドリーは縫い物があまり好きでは無いので、何か無いかと考えていました」


 エマ師匠は俺の答えに納得する、ドリーに質問し始める。


「ドリーは普段何をしていたのですか?」

「ドリーは、わな作ったり、お肉きったり」

「それは今するのは少し難しいですね、他にはありませんか」

「んー、後はやくそうつまんで、お薬つくってた」


 薬を作るで思い出す、アルバトロスへの旅をしたので、ターブ村に重いものは置いてきてしまった、薬師組合に薬草は売っていたので、必要な物はまた作り直したほうが良いかもしれない。


「そうだ、ドリー薬を作ろうか、薬師組合で薬草とか必要そうなもの探してみよう」

「あ、ならドリーはシャンプーとトリートメント作りたい!」

「分かった」


 女の子らしいことを言うなと思いながら、俺がシャンプーとトリートメントを作り出したのは、ターブ村には固形石鹸しかなく、ドリーと一緒に過ごすようになってから、地球の知識から俺が必要な物を代用品だが買い揃え、シャンプーとトリートメントは作り出した。

 ドリーはそれを気に入っておりよく使っていたが、重いために置いてきてしまった。

 ちなみに俺とドリーは親から放置されていたが、地球の知識から定期的に体を洗いたい俺と、俺に付き合わされていたドリーは、ターブ村でも見た目も衛生的にも綺麗な方だった。

 ドリーはすっかりシャンプーとトリートメントを作る気でいるようで、エマ師匠にも分けてあげると言い始める。


「エマししょーにも、できたらあげるね」

「あらドリー、それなら材料代は私が出しましょう」


 ドリーは判断できなかったのか俺を見ている、迷うが現状お金が稼げていないのでエマ師匠に頼る事にする。


「エマ師匠お願いします、必要な薬があれば作りますので」

「それは助かりますね、足りていない物をお願いします」

「分かりました」


 俺とドリーが作れる薬で、エマ師匠が欲しい薬をすり合わせて、必要そうな素材を考えていくと、エマ師匠が驚いた様子で。


「エドとドリーはそんなに薬が作れるのですか」

「確実に成功するものと、数回しか作ったことがない物とかありますが、教わった物は大半が作れます」

「教わった薬師は、随分と腕の良い方だったのですね」

「他と比べたことがないので分かりませんが、教わってない薬の作り方なども載っている秘伝書を貰ってるので、教わったオジジの薬師の腕はかなり上です」

「それはアルバトロスでも中々居ない水準の薬師ですね、二人とも一人前の薬師と名乗れる種類を作れるようですし」

「そうなんですか、知りませんでした。比べる対象がいなかったので」


 オジジより腕がかなり落ちるので、今まで薬師としては最低限しか覚えられていないのだと思っていたが違ったようだ、オジジが俺とドリーを一人前だと言っていたのは、免状を渡すための嘘だと思っていたが、エマ師匠の言う通りなら本当のことだったようだ。


「エドとドリーなら、私が欲しい薬は全て作れますね」

「素材がないと作れないので、組合に売っていればですが」

「そうですね、では薬師組合に行きましょう」


 エマ師匠は一緒に行くつもりのようで、俺とドリーを連れて協会を出ると薬師組合へと向かう。

 薬師組合に着くと、受付の人に売っている薬草などを聞こうとすると、グレゴリーさんが出て来てエマ師匠に声をかけてくる。


「これはエマ様、本日はどのような御用でしょうか」

「今日は弟子の付き添いよ」

「お弟子様ですか?」

「この二人よ」


 グレゴリーさんは俺とドリーが、エマ師匠と一緒に来た事に気付いた様子で、声をかけてくる。


「これはエドワード様、ドロシー様、お二人はエマ様のお弟子だったのですね」

「「はい」」

「エマ様が師匠とは将来有望ですね、それで付き添いとのことですが、本日はどのような御用でしょうか」

「必要な薬の大半を置いて来てしまったので、作り直しとエマ師匠が欲しい薬の素材が有るか知りたいんです」


 グレゴリーさんは薬師組合に入る時に対応してくれた人なので、ターブ村から出て来たことを知っているので、必要な物があると言うことを理解してくれると思う。


「なるほど、それなら倉庫を案内しながら、必要な物を取り揃えましょう」

「案内までして貰うと時間がかかりそうですが、良いんですか?」

「決まりではありませんが、薬師組合員になられた方には、組合内にどのような素材があるかなどを、案内して回っております」

「前回来た時に、時間がある時に案内すると、言ってくれたのはそれなんですか」

「その通りです」


 グレゴリーさんはエマ師匠も一緒にどうぞと言って、エマ師匠も一緒に薬師組合を回る事になった。

 案内されると想像以上の種類と量の素材が保管されており、驚いているとグレゴリーさんが組合にある素材の感想を聞いてくる。


「どうですか、薬師組合にある素材は」

「種類が豊富で凄いです、それに初めてみる素材もあります」

「説明できる物もありますので、聞いてみてください」

「聞いて良いんですか?」

「魔法で錬金して生成される物もありますので、一般流通しない一部は説明しております」

「なるほど」


 グレゴリーさんに素材で分からなかった物を尋ねていくと、一部アルバトロスで取れる特殊な物や、国外から輸入されてくる物もあったが、殆どが魔法で作られる物だった。

 シャンプーやトリートメントは代用品でなんとか作り出していたが、組合の素材があれば完成度が上がりそうだ。

 必要な素材や道具を買い揃えると結構な額になってしまったが、エマ師匠は気にする事なく払ってしまった。


「エマ師匠ありがとうございます、色々買い揃えたら高くなってしまいました、すいません」

「何時も薬を買う時に払ってる金額より、安いから気にしなくていいわ」

「え?」


 何故治癒の魔法使いであるエマ師匠が、薬師の薬をそんな高額になる程、買っているのだろうかと疑問に思うと、エマ師匠とグレゴリーさんが説明してくれる。


「魔法が必要ないと判断した場合や、魔力が足りない可能性がある場合は、他の魔法使いを待つために延命に使ったりしますから」

「治癒の魔法使いの方々は、薬師組合でよく薬を買いにこられます、下手な薬師より薬の販売数は多いかと」

「患者にも割高になるから、薬師から直接買ったほうが安いと教えているのだけれど、治癒の魔法使いを頼るような人たちだから、気にもしないで買っていくのよ」


 魔法使いだからと何でも魔法で治していたら、魔力が足りなくなってしまうし、大量に怪我人が出たら、トリアージをしないとダメなのだろうと納得する。

 薬師の薬で治せるような怪我や病気を治すのに、治療費の高そうな治癒の魔法使いに頼むのだから、多少の値段差は気にしないのかもしれないが、それと同時にエマ師匠が、薬師から買った薬をさらに売っている事に気づく。


「というか、エマ師匠は薬を売っているんですね」

「買った薬を販売する事は、あまり褒められたことではないけれど、禁止はされてないの、だから私は魔力を無駄遣いしないために、薬師から買った薬を持ち歩いているの」

「そうなんですか」


 エマ師匠の話をグレゴリーさんが、補足してくれる。


「薬師組合も薬を購入して売却を考えている方には、売るかどうかは組合内で規則がございます、エマ様のような魔法使い、もしくは商人で薬師の居ない村を回るものなどに、薬の効能を説明して売ることが多くなっています」

「なるほど、どちらも必要だと判断できると、俺も理解できます」


 グレゴリーさんは買った材料などが多いため、協会に運び込んでおきますと、薬師組合の運搬部門に頼んでくれ、更に料金はサービスしてくれた。

 俺たちは改めてグレゴリーさんに、薬師組合を案内してくれた事も含めてお礼を言って、薬師組合を出た。

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[良い点] ドリーの一途なとこが可愛い。 [気になる点] 1話前までは会話中の句読点に違和感はなかったけど、今話から句点のところが読点になってると思う。ちょっと読み辛いです。
[良い点] りっぱな魔法使いになる、だからやるっ [一言] 小さな所作の積み上げでキャラが色付いていくわけですが ドリーちゃんいいですね お兄ちゃんもおにいちゃんでウルっとなる
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