串焼きの露店
セオさんと話をしているとお昼になって、セオさんが何か用意するかと聞いてくる。どうしようかと考えていると、オークの骨で取った汁を辺境伯の屋敷で下ろすのを忘れている事に気づく。
「ベス、オークの骨で作った汁を持ってきたけど、屋敷で下ろすのを忘れていたよ」
「丁度いいので食べてみたいですわ」
「セオさん、エリザベス商会って調理場ありますか?」
「ありますよ。できれば料理を私も食べてみたいですね」
「結構な量があるので食べても問題ないかと」
調理場を借りて味を調整して、協会の料理人が気を利かせて麺も用意してくれたので、麺を茹でて豚骨ラーメンを作り出して皆に配る。ベスが早速食べると、美味しいと言ってくれる。
「美味しいですわ」
「思った以上に美味しくできて良かったよ」
「お父様とお母様にも食べさせたいですわ」
「汁はまだ残ってるから屋敷に置いていくよ。協会で追加も作っているから必要だったら持って行ってもいいし」
「伝えておきますわ。ところで料理名は決めたんですの?」
「豚骨ラーメンってしたけど、別に変えていいよ」
「ラーメンは分かりませんが、オークも大きく捉えれば豚ですし、良いと思いますわ」
黙々と食べていたセオさんが唸りながら声をかけてくる。
「エドさん、これは美味しいですね。売りに出しませんか?」
「セオさん、忙しくて人が居ないんじゃ?」
「実は料理は人が増えていまして、炊き出しで雇った方が店を出したりしていますし」
「店ですか?」
「え? あ! また伝え忘れています。申し訳ない。エドさんが考えた薬草の串焼きを販売しているのです」
「売っているのは良いんですが、セオさん商会の人は足りていますか? 足りてないようなら俺もエリザベス商会で働きますよ?」
「人は増やしているので安心してください。エドさんが旅に出ている間の事を伝え忘れていました。申し訳ない」
貧民街の雇用対策として薬草の串焼きを露店で売ったり、店をエリザベス商会で用意して売りに出していると説明してくれた。露店での売れ行きも良く、料理ができる人をエリザベス商会は結構な人数雇っているらしい。店が現状は串焼きと簡単な料理しか無いので、そこで豚骨ラーメンを出せないかとセオさんは言う。
「オークの骨ってそんなに手に入らないと思いますよ。普通の豚の骨でやれば良いですけど、手に入りますか?」
「オークでなくても良いのなら手に入ると思います」
「なら作れると思いますが、匂いがすごい事になると思うので、料理する場所が問題ですね」
「匂いですか。貧民街なら問題にならないとは思いますが、考えておきます」
作り方をセオさんに教えながら分量を書いて渡す。準備ができたら一度作り方を直接教えると伝える。魔道具の鍋が必要なら、作り方を聞いて作ってくるとセオさんに言った。
「エドさん、一度薬草の串焼きを売っているところを見に行きますか?」
「今日はリオがいるので難しそうですが」
「エリザベス商会の近くでも露店を出しているので、ダンジョンに行くよりは安全だと思いますよ。馬車の中から見てもいいですし」
「エリザベス商会の近くって、こんな高そうな店が並ぶ場所で露店をして売れるんですか?」
「美味しいのと、露店が珍しいのもあって売れていますね」
セオさんに案内されて馬車で露店を見に行くと、エリザベス商会の目の前と言っていいほど近い場所で串焼きを売っていた。結構売れているようで、人が並んでいる。
セオさんが買ってきてくれて皆で食べると、薬草の種類を変えたのか美味しくなった気がする。
「俺が作っていた時より美味しくなりましたね」
「バーバラも参加して味を研究したようです。露店を四店と店を二店出していますが、何処も売り上げは良いようです」
「そんなに店を出してよく売れますね」
「店毎は遠いですし、仕込みをするのに店舗を用意しただけだったんですが、店舗も結構売れていますね」
露店の前に馬車を停めているのは邪魔になるので、俺たちはエリザベス商会に戻る。
露店や店舗で雇えそうな人はまだ居るのだが、串焼きばかり売っても売り上げが落ちるだろうと、何かないかと考えていたところ。俺が豚骨ラーメンを持ってきたので丁度良かったと話してくれる。
セオさんはそれからエリザベス商会の利益と、そこから俺とドリーに入る金額を教えてくれた。アンのお金についてもセオさんに相談したかった事を思い出す。
「セオさん、アンがお金を置いておく場所が怖いと言うのですが、セオさんは何か良い方法思いつきませんか?」
「そうですね…アン、バーバラの薬屋は銀行へ登録していますか?」
「していないと思います」
セオさんは、少し悩んだ様子の後にエリザベス商会に所属するかと聞き始めた。
「セオさん、アンを商会に入れてどうするんですか?」
「ドリーさんの薬屋がありますから、薬師として所属してエリザベス商会を銀行代わりに使うのはどうかと思いまして。エリザベス商会が潰れたら不味いですが、そうそう潰れることはありませんから。預かっている金額は帳簿を作らないと不味いですが、エドさん、ドリーさんの分も作っていますし、アン一人ならそこまで大変でもないかと」
確かに俺とドリーはセオさんにお金の管理をほぼ任せているが、商会は俺、ドリー、ベスの物と言っても良いので心配はないが、アンがどう考えるかだ。
「家に置いておくよりは安全そうなのですが、帳簿を付けてもらうのは大変ではないですか?」
「毎日細かく下ろされたら大変ですが、そんな事はしないですよね?」
「そうですね。どちらかと言うと預ける方が多いかと」
「それも商会の売り上げからアンの元に渡っている物なので、書類上移すだけになるので、むしろ手間は減るかもしれませんね」
「ならお願いしたいのですが良いですか?」
「もちろん。アンは身元もしっかり調べてありますし、元々働いていたというか、まだ辞めた状態にはなっていないので、改めてお金の管理や、部署の移動などの書類を作るので確認して貰います」
アンはセオさんが作った契約を確認すると問題ないと契約を結んだ。
その後はセオさんから、最近の炊き出しや、エリザベス商会の様子を聞いたりして過ごした。セオさんに雑談でダンジョンは荒野まで進んだと話した。
「もうエドさんたちはそこまで進みましたか。そうするとダンジョンに泊まる事になりそうですね」
「そうなんです。にしてもセオさんて、ダンジョンに詳しいですよね」
「私は騎士の子供ですが、魔力がなかったのでダンジョンに行くことも考えていたんですよ」
「魔法が使えるようにダンジョンに行こうとしていたんですか?」
「そうです。武術というか運動が向いていないので諦めましたが」
テレサさんは魔法を使えて騎士になったのかと思ったが、元々騎士の家系だったのか。
「テレサさんが家を継いでいるのですか?」
「いえ、姉は自力で騎士になって、独立しています」
「そうだったんですか」
「はい。姉が独立して一人なので、家から何人か手伝うために付いて来ているのです。私も一応そのうちの一人なんですが、姉が優秀で手伝うことがなく、好き勝手していたのですよ」
「確かにテレサさんは優秀そうですよね」
俺はオークの倒し方が何かないかとセオさんにも聞くと、やはり普通は避けて通るらしい。セオさんにダンジョンの話を聞いた後は帰る事にする。
ベスとリオを屋敷に送った後は協会へ戻る。ジョーに矢の事を尋ねると、用意できたと矢をくれた。合金を作っている会合にも行けると言うので、ジョーに紹介してもらい俺も参加した。俺も意見を言うと、面白そうだと少量ではあるが俺の意見通りの物を試してくれることになった。
「エド、それとオークの骨じゃが、一応使えたぞ」
「一応って効果が落ちてたとか?」
「落ちたというか、若干効果が変わった気がするんじゃ。詳しくはまた調べるんじゃ」
今回はオークの骨以外にも臭い消しで薬草やら野菜を入れたから変わってしまったのかもしれない。ジョーにその事を伝えると、薬草などをなしで試してみても良いが、料理として美味しいから別に良いんじゃないかと言われてしまう。ジョーが良いなら良いのだが、少量で試してみたらと言っておいた。
次の日、ベスとリオのダンジョンで泊まる事は流石にまだ出ていないだろうと、アンを先に迎えに行ってから屋敷へと向かう。
「ベス、今日はどうする?」
「ダンジョンへ行きますわ」
「ダンジョンって、矢は手に入ったけど、まだ泊まるのは許可が出てないんじゃ?」
「出ましたわ」
「え?」
「私も、リオも許可が出ましたわ」
驚いた事に即日で泊まる許可が出たようだ。
「こうなることは分かっていたようで、許可はすぐに出ましたわ。ただ無茶はしないようにと言われましたわ」
「無茶をする気はないけど、簡単に許可が出るんだね」
「私も驚きましたわ」
「ベス、流石に今日ダンジョンに行くと思ってなかったから、準備してこなかったよ」
「どうしますの?」
今日ダンジョンに泊まると思っていなかったので、明日にするか迷ったが様子見も兼ねて泊まってみる事にする。
「試しに行ってみようか。失敗しても問題ない位置で泊まれば良いのだし」
「分かりましたわ」
ベスとリオはメイドさんにダンジョンに泊まってくる予定だと伝えた。
俺たちは協会に宿泊用の魔道具を取りに帰る。魔道具の使い方はジョーから貰った時に聞いたし、簡単だったので使う事はできるはずだ。
俺も誰かにダンジョンに泊まることを伝えたいと人を探すと、協会に居たエマ師匠に今日ダンジョンに泊まってくると伝えると驚かれたが、気をつけるようにと言われて送り出された。馬車に魔道具を乗せたら出発する。
「アンはダンジョンに泊まる事は伝えてないよね?」
「許可はもらいましたが、今日泊まるとは思っていませんでしたから伝えていません」
「なら伝えに行こう」
バーバラさんの薬屋へと向かう。アンは家に居た人にダンジョンに泊まると伝えたようだ。
ダンジョンへ向かう途中で携帯食を買う。ダンジョンの魔獣などを食べれば必要はないと思うが、どうなるか分からないので一応準備をした。
ダンジョンに着くといつもより荷物が多いので、各自で持てるように分配して準備を進める。
「荷物が増えたし、初めてダンジョンに泊まるから、少しでも無理そうだったら途中で引き返そう」
「分かりましたわ」
馬車の御者にダンジョンに泊まるつもりだと言うと、明日も同じ場所で待っていてくれる事になった。
ダンジョンに入ると荷物は増えたが、皆の移動速度はそう変わらないで移動していく。意外と余裕そうだと進んでいく。
「アン、今日は鉱石や薬草の採取は、ゴブリンやオークを誘き寄せる以外は無しにしようか」
「そうですね。先に荒野を通り抜ける事を優先しましょう」
ゴブリンは矢と魔力の消費をなるべく減らしながら進んでいく。倒すのに皆慣れてきたのか、消費を抑えながら効率的に倒していく。問題のオークの階層までたどり着いた。
「ここからどれだけ矢の消費を抑えられるかだね」
「あまり遅くなってもダンジョンに長期間泊まる事になるので、どの程度の消費を抑えるかが問題です」
「難しいな。前回よりは少ないと嬉しいけど、オーク次第なところもあるから様子見をしつつ、必要だと思ったら前回と同じように使っても良いかも」
「分かりました。可能な限り減らすようには努力してみます」
ダンジョンに泊まるので魔力の回復は普段と同じように回復するとは思えないので、魔力の消費も可能な限りは抑えておきたい。そうすると弓が頼りになるのだが、オーク相手だと矢の消費が多すぎる。
オークを倒し始めると、やはりオークは硬く頑丈ですぐには倒せない。魔法格闘術を使っていれば殴られても多少痛い程度なので、魔力の消費を抑えるのにも良い魔法格闘術を俺、ベス、フレッドが使ってオークの前に出て抑え込み弱らせて倒していく。
進みが遅いので一気に倒したくなるが、消費を抑えてオークを倒していくと荒野手前でナーガに出会って倒し、荒野まで辿り着いた。
「ダンジョンに入った時間が遅かったのもあるけど、時間がかかったな」
「オークは面倒ですわ」
「確かに」
「ですが豚骨ラーメンをお父様、お母様、弟も気に入っていましたわ。弟が特に気に入っていたので、オークの骨を注文する人は増えそうですわ」
豚骨ラーメンは脂が多いので、年齢的にベスの弟のレーヴェが好きなのは納得する。今は上に乗せる具材などがないので、今度何か作るべきだろうか。
「エド殿、オークが出る洞窟か、この荒野の入り口で今日は泊まりませぬか?」
「確かに奥に行ったらどうなっているか分からないし、此処で泊まってみようか」
「では魔道具を広げますな」
各自持っていた魔道具を広げて、泊まれるように準備をする。旅に行っている間に作って貰った服に、温度調整の機能も付いているので準備と言っても、する事は多くはない。
補足
セオドアが報告を忘れたのは、ベアトリスからの命令で村長の居場所を調べたり、村長について調べていため、本業のエリザベス商会の業務が後回しになっていたからです。
エドのために暗躍してたから忙しかったと言う感じで、エドには事情を言えないですが、ベスは事情を知った上で黙っています。
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