side ベアトリス
side ベアトリス
レオンを真似て強くなろうとしたベスに、貴族の知識を覚えさせるのには苦労させられ、しかも魔法を覚えようとしなくなってしまったのには本当に困りました。原因は私の失敗もあるので仕方がないと諦めていたのです。
ですがエドとドリーに出会って、良い方向へとベスは変わりました。私自身も、エドとドリーに出会えたことは良かった。エドとドリーは育った環境を考えなくても優秀な上に素直で良い子です。それ故にエドとドリーの将来を潰すような存在は消しておかねばならないでしょう。
「アビゲイル、ターブ村の村長は発見できましたか?」
「ベアトリス様、兵士たちやステュアートとセオドアが探しておりますが、まだ発見できていないようです」
男爵からの手紙でターブ村の村長はメガロケロス地方に逃亡したと言った時は、国を出るためにメガロケロス地方に入ったと思っていました。
ですが、男爵の手紙を渡してきたウォルターがターブ村を出る前に、村長とエドとドリーの母親が一緒に行動していることに違和感を感じて、その場に残っていたエドとドリーの父親に話を聞いたところ、父親は『村長がエドとドリーの本当の父親だ』と言い始めたのに驚き、私に村長がメガロケロスへと逃げた理由を報告してきました。ウォルターは私とエドとドリーが知り合いだとは思っていなかったようですが、弟子予定だったエドとドリーを守るため私に伝えてきました。
ウォルターの話は本当のところは分からないですが、村長が本当の父親であれば魔法使いを村から出した理由の説明がつきます。村長は子供も居たようですし、自身の保身の為にエドとドリーを外に出したのでしょう。
「ベアトリス様、どうやらセオドアがターブ村の村長を発見したようです」
「捕まえられたのですか?」
「セオドアの商人仲間の馬車にアルバトロスまで乗ってきたようで、事情を聞いたセオドアと兵士が向かったとの事です」
「既にアルバトロスに入ったようですね。エドとドリーの出発が間に合って良かったです」
エドとドリーを村長と会わせないため一時的にアルバトロスから外に出す予定でしたが、どのような理由を付けて出すか迷っていましが、ドリーの友達だというドラゴンの元に調査のためと理由を作って行かせました。ドリーの友達がドラゴンだというのも衝撃ですが……
海ではなく川を船で登るので天候が荒れてもすぐに避難できますし、護衛の数もかなりの人数を準備したので問題はないと思いたいです。
「ベアトリス様、ターブ村の村長を捕まえ牢屋に入れたと報告が来ました」
「分かりました。牢屋に向かいます」
屋敷にルーシーが滞在しているため、屋敷内にある牢屋は使えません。事前に屋敷の外にある牢屋を使うように指示をしていました。私とアビゲイルは指示していた牢屋へと向かいます。
牢屋に着くと、セオドアとステュアートが私を待っていました。
「セオドア、協力助かりました」
「いえ、エドさんとドリーさんには私も大変お世話になっていますので」
「エドとドリーはセオドアに世話をされていると思っていそうです」
「ドリーさんは分かりませんが、エドさんなら話している限りは商会の運営くらいできそうなんですがね」
セオドアの言う通り、エドならやろうと思えば商会の運営を出来たのではと、何回かエドと会って会話をすることで思うようになりました。
エドにはベスの相手をしていて欲しく、商会の運営まで任せたらベスの相手は無理だったかもしれないので、セオドアに任せたのは正解だったでしょう。
エドは知識がありすぎるので、時折現れる転生者かと思い警戒していました。ですが転生者としての特性である双子であることや、無謀な事をして失敗することがないので、転生者ではないと思うようになりました。
「それでターブ村の村長は何処に?」
「兵士と相談して、他の牢屋に話が聞こえない隔離した牢屋となっている部屋へと収容しました」
セオドアとステュアートに案内されターブ村の村長がいる牢屋へと向かう。
「あなたがターブ村の村長ですね」
「誰だ。私が何者だろうと関係ないだろ、ここを出すんだ」
「男爵があなたを追っていますし、私もアルバトロスに来た目的を聞かない限りは牢屋を出すことは不可能です」
「なら、エドワードとドロシーを呼べ、私の子供だ」
「エドワード? ドロシー? 誰ですかそれは」
「魔法使いで、アルバトロスの魔法協会に居るはずだ」
ターブ村の村長から話を聞き出すために、私はエドとドリーについて知らないふりをしました。うまく行ったようでターブ村の村長は色々と喋り出します。
ウォルターが聞き出した事は本当のようで、村長がエドとドリーの父親であると自ら認めています。ターブ村の村長はエドとドリーが自分を助けてくれると言ったり、自分は冤罪だと言ったりするが、男爵に事情を説明しないで逃げているので、村の責任者としては問題がありすぎます。
「男爵に説明をしないで何故逃げたのですか?」
「村を広げた時点で村長として終わりなんだ。代々村を同じ大きさで維持するのが村長としての役割で、それさえこなしていれば村長で居られるし、森から魔獣がいなくなれば男爵の家臣となる事も約束されていた」
「それを失敗したから逃げ出したのですか」
「そうだ。男爵はターブ村にかなりの資金を注ぎ込んでいるし、村から出た村人の支援もしていた、廃村となれば男爵の損失は計り知れない。村長を辞めるだけなら良いが殺される可能性があった」
「それで子供を頼りにアルバトロスへ来たのですか」
「その通りだ」
ターブ村の村長の言い分は、村のためと言うよりは自分のための行動です。もし村のために優秀だと分かった時点でエドとドリーを自分の子供だと認めて、エドとドリーが村のために行動していれば、二人の優秀さなら村が発展していた可能性があります。それをしなかった時点で村長として終わっています。
これ以上話をしても何も聞き出せなさそうだと、エドとドリーを探しておきますとターブ村の村長に伝え、牢屋を出ます。セオドアとステュアートを連れて屋敷へと移動します。
「ベアトリス様、ターブ村の村長はどうされるのですか?」
「罪状を積み上げて消えてもらう予定ですが、男爵への連絡も必要なのでアルバトロス内での罪状を考えないとダメですね」
ステュアートが罪状などにも詳しいので、条件に合いそうなものを考えていきますが、アルバトロスでターブ村の村長を処刑するに足る罪状は難しいです。貴族であるからこそ法を守らなければなりません。
そう考えると、男爵が詐欺師とエドの兄を処刑したのは違和感があります。男爵は優秀かと言われると微妙ですが、真面目な男で法を無視するような人物では無かったはずです。
男爵が処刑した理由が何かあるはずだと調べていると、ターブ村へと向かった騎士の一部が帰って来ました。ドラゴンとメガロケロスが移住先を探して、アルバトロスへ向かっていると報告してきました。緊急だとまだ病気から回復しきっていない、ルーシーにも話をして住めそうな森を確保していきます。
ルーシーの病状を伝えるのに催しを開くと準備をしていたので、その場でアルバトロスに間諜が入り込んでいた事や、ドラゴンとメガロケロスが移動していると、周囲の貴族に協力を願っていたことで、何とかドラゴンとメガロケロスが住めそうな森の選定が終わります。
「ルーシー、何とかドラゴンとメガロケロスが到着する前に選定が終わりました」
「トリス、終わって良かったです。アルバトロスから見える位置にドラゴンが居たら混乱が起きます」
「そうですね。ルーシー、回復しきっていないのに手伝わせて申し訳ないです」
「緊急事態ですし、実は多少動きたかったので助かりました」
リング王国の魔法使いの回復の仕方だと、ツヴィ王国の魔法使いにはゆっくりしすぎているのかも知れない。ルーシーは周囲の者に動きすぎだと最近よく注意されている。
ドラゴンとメガロケロスが到着したと報告が来て見にいくと、ドラゴンとメガロケロスの数はある程度報告されていましたが、ドラゴンの大きさもあり数の多さに驚きます。
レオンがメガロケロスに興奮して使い物にならないので、私がエドにドラゴンについて話を聞くと、男爵が詐欺師とエドの兄を処刑した理由が分かりました。違法な植物だと聞いていましたが、物が悪すぎます。駆除が終わらないと最悪周囲に人が住めなくなるので、処刑されて当然です。
男爵は手紙にこの事を書き忘れたのでしょう。男爵は真面目なのですが、どこか抜けていますから。周囲が補助していますが、ターブ村の事で男爵の周囲も大変なことになっていいるのでしょう。
エドとドリーに休息を与え。牢屋に居るターブ村の村長に植物について知っていたかと尋ねます。種子のことを知っていて、しかも詐欺師に周囲に撒くだけだから畑を広げるわけではないので、魔獣は襲ってこないと言われて、許可を出したと言い訳を始めました。罪状を積み上げる必要もなくなり、その日のうちにターブ村の村長は処刑されました。男爵へは手紙に村長が今回の事件に関わっていた事と、処刑したことを書きました。
処刑が終わるとベスを部屋に呼び出します。
「ベス、話があります」
「お母様、何ですの?」
ベスにターブ村の村長のことや、エドとドリーの関係などを話していくと、ベスは怒り出した。
「酷すぎますわ!」
「エドとドリーには伝えていません、ベスの判断で伝えても構いませんが、話した後で良いので私にも報告をしてください」
「分かりましたわ」
これでエドとドリーが叙爵するのに邪魔な者はほぼ居なくなりました。母親は生きていますが陸路で無理な旅をした結果、体調を崩しているようです。なので今後、アルバトロスまで来るのは不可能でしょう。
「それでベス、エドとドリーの叙爵ですがどう思いますか?」
「エドとドリーもまだダンジョンに行きたいと思いますわ」
「叙爵すれば貴族の当主になりますから、ダンジョンに行くのは止めるべきでしょうね」
「なので今は叙爵はしない方がいいですわ」
しかしそうなると、ベスはエドが結婚相手にと願っていて、私やレオンもベスの相手がエドであることは承諾しているのですが、エドが叙爵をしないとベスも王女なので婚約すら無理です。そうなるとベスの結婚が遠くなりそうです。
「そうなるとベスの結婚が遠くなりますが良いのですか?」
「私もまだダンジョンを楽しみたいですし、エドに手を出すような女性が現れたら私が相手をしますわ」
「ベス、怪我をさせるんじゃありませんよ」
「分かっていますわ」
ベスが納得しているなら良いのですが、エドを狙う女性が現れた場合に、ベスは物理的に殴りに行きそうで怖くて仕方がありません。エドの叙爵が無理となると、ドリーだけでもうちの養子にすべきでしょうか。
「ベス、ドリーを養子にするのはどうです」
「お母様、それなんですがドリーとリオは元々仲が良かったですが、旅をしたことでさらに仲が良くなりましたわ」
「リオとドリーが? エドとベスでも、ベス側に問題が有っても結婚は難しいのに、リオとドリーでは、リオに問題らしい問題はないので、さらに難しそうですよ?」
「私に問題があるのは自覚しておりますが、リオの話のついでに私の事を言わなくても良いですわ。ドリーとリオについては、お母様の養子となればリオとドリーは従兄弟になるので二人に血縁はありませんが、さらに結婚が難しくなりますわ」
「そうですね。残念ですがドリーの養子は様子見にしましょう」
エドを養子にしたらベスと結婚できないので、ドリーを養子にしようとレオンと話していましたが、残念ですが今は諦めるしかなさそうです。
「お母様、そんなに残念そうにしていないで、ドリーの相手をしてあげて欲しいですわ。ドリーはリオと会話をしたことで、随分と喋り方が上手くなりましたわ」
「そうなのですか?」
「アビゲイルに教わって徐々に成長していましたが、リオと話したことで一気に成長しましたわ」
「後でドリーと話してみようと思います」
ドリーの成長は嬉しいですが、叙爵もできないとなると報酬をどうするか困ります。フレッドも本当にドラゴン族でしたから、ツヴィ王国との関係を考えると叙爵するわけには行きません。
「ベス、エドたちが欲しそうな物はありますか?」
「欲しそうな物ですの?」
「報酬が貯まり続けていて叙爵できないとなると、今後も溜まり続けていきます」
「エドやドリーはエリザベス商会から大量のお金が入っていますし、確かに渡すものに困りますわ」
ベスと話し合いますが思いつかないので、装備の代金などをこちらで払っておくことにします。
「ところでお母様、お疲れの様子ですが大丈夫ですの?」
「一ヶ月ドラゴンとメガロケロスと旅をしたベスほどではありません」
「私はドラゴンとメガロケロスが配慮してくれたのか結構楽でしたわ。なので何か手伝いますわ」
「いえ、休んでいて問題ありません。周囲の貴族にルーシーの病状を説明するついでに手伝いを頼みました」
「それなら良いですが、必要なら手伝うので言って欲しいですわ」
「必要なら言うのでダンジョンに行っても良いですし、好きに休んでいて構いません」
周囲の貴族に説明するため催しを開いてルーシーの病状を伝えるときに、エドが考えた服を着ました。着た服はエリザベス商会で既に売っているとベスに伝えます。
ベスに休息を命じて、私は違法な植物が何処から詐欺師の手に渡ったかを、周囲の貴族と探し出そうとします。もし種子に間諜が関わっていたとしたら、まだ種子が何処かにあった場合は大変な問題となってしまいます。
しくじり転生では初めてのサイドを変えてのお話です。エドとドリーは守られているってお話です。
進行が遅くなるのでサイドを変えないようにしていたのですが、村長の話についてはエドとドリーを出さない予定だったのでサイドを変えての話になりました。
書くか迷って、やっぱ書こうって1話急遽増やした形なので、ベアトリスぽい一人称になってるかが心配です…
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