トカゲ?
アンの緊張を解しつつ、何とかリオと会話ができるようになったところで、トリス様が話し始める。
「さてそれでは本日は解散としましょう。エドとドリーには毎日ルーシーの様子を見に来てもらう事になります。頼みますね」
「分かりました」「うん!」
「フレッドとアンはリオに会いに来るのに屋敷に好きに出入りして構いません」
「了解致した」「はい」
まだトリス様は忙しいようで、ベスを連れて屋敷に戻っていった。リオはドリーとまだ一緒に居たいようで馬車まで見送りしてくれた。フレッドとアンは別の馬車で来たので別々の馬車で帰ることになった。
魔法協会に帰ると俺たちはジョーの部屋に集まった。
「エド聞いていませんよ、王族と一緒にダンジョンに行くなんて」
「リオもそうだけど、ベスが王族なの俺も今日知ったよ」
「ベスも王族なんですか?」
「リングが名前に付くと王族らしい。今まで貴族は皆、リングが付くと思ってた」
「リングが付くと王族なんですか、それは私も知りませんでした」
フレッドにベスが王族だと知っていたのか聞いてみる。
「フレッドはベスが王族なの知ってたのか?」
「そうですな。知っておりましたな」
「そうなのか」
「むしろ拙者はエド殿が知らなかったのが驚きですな」
フレッドからすると常識すぎて、俺が知らないとは思わなかったようだ。
「ところでジョーも知ってたの?」
「当たり前じゃ」
どうやら皆、知っていたようだ。
「そうすると、エマ師匠も知っていたんだろか?」
「会う前はどうじゃろな? ベアトリス様が王族なのは知っていそうじゃが」
「ベスがそうだとは知らなかった可能性があるのか」
「じゃと思うぞ。ただ名乗られて気づいてはいそうじゃが」
リングが王族の名前だと気付かなかったのは、常識の差なのか。
「ベスが何者であろうと気にする必要はないと思うんじゃ」
「それはそうだね」
「リオはいずれ王都に帰らねばならんじゃろし、ドリーの友人として連れて行くと思えば良いんじゃ」
「それはそれで気が重いけど、分かった」
ドリーもそうだが、年齢的にダンジョンに行くのが適正ではない為戸惑いがある。
「それで、エドたちは今日はどうするつもりじゃ?」
「ダンジョンに行くような時間じゃないから、協会で何かしようかな?」
「それならリオの装備を作るから手伝うんじゃ」
「分かったよ」
「アン、すまんがリオの装備を優先したいんじゃが」
「私の装備は今使っているのがあるので問題ないです」
アンが同意してくれたことで、ジョーと共にリオの装備作りを手伝って行く。
それから三日ほどルーシー様の経過を見つつ毎日屋敷に通っている。ダンジョンに行く暇があまり無いので、ジョーの部屋でリオの装備を作っていると、エマ師匠が回復したようで顔を出しに来た。
「エド、ドリー」
「エマ師匠、体調は良いんですか?」
「ええ、回復しました。流石に今回は辛かったですがどうにかなりました」
「エマ師匠でも辛かったって相当ですね」
「エドは真似しないように」
「分かりました」
エマ師匠の看病は手伝おうと思っていたが、エマ師匠の知り合いが、子供と男の子では難しいでしょうと言って殆どやってくれた。
「エマししょー」
「ドリー心配をかけましたね」
ドリーがエマ師匠に甘えている。ドリーはエマ師匠が居なくて寂しかったようだ、エマ師匠が居ない間、アンがドリーとお風呂など一緒に入っててくれたので助かった。
「エド、時間があるのなら図書館に行きませんか?」
「時間はありますが、ジョー良いかな?」
「ああ。ワシも一緒について行くぞ」
「ジョーも?」
「面白そうじゃからな、フレッドとアンも行くぞ」
「面白い?」
よく分からないが、図書館に行くことが面白いことらしい。
「それでは行きましょう」
エマ師匠に連れられて協会を移動していく。エマ師匠についていくと、ジョーの部屋からそう離れていない場所に図書館はあったようだ。
「ここが図書館です」
「広いし、すごい蔵書ですね」
「そうですね。さて、メアリー様は何処でしょうか」
どうやらエマ師匠は、図書館でメアリー様という人を俺に合わせるつもりのようだ。図書館の中を歩いて探して居ると、エマ師匠は目的の人を見つけたようだ。
「メアリー様」
「エマ? もう体調は良いのかい?」
「はい。回復したのでエドとドリーを紹介にきました」
「ああ。そう言うことかい」
メアリー様と呼ばれた人は女性でライオンの獣人だった。俺は驚いている間に挨拶される。
「エド、ドリー、私はメアリー・フォン・メガロケロスさ。メアリーお婆ちゃんとでも呼んでおくれ」
「エドワードです、エドと呼んでください」
「ドリーはドロシーなの! メアリーお婆ちゃん?」
「ああ。メアリーお婆ちゃんだよ」
メアリー様はドリーを軽々と持ち上げて可愛がっている。お婆ちゃんと言うには年齢の割に力強い、獣人だからだろうか?
メガロケロスでライオンの獣人と言えばレオン様だが、と言うことはメアリー様は?
「あの、メアリー様はもしかしてレオン様の?」
「レオンは私の息子だね。二人の事はトリスから色々聞いてるよ」
驚いた事にレオン様のお母様だったようだ、しかし何故協会の図書館に?
「あの、メアリー様はなんで協会の図書館に居るんです?」
「それは私が図書館長であり、アルバトロスの協会長だからだよ」
「「え!」」
俺とドリーが驚き、ジョーは楽しそうに笑っている。
「ジョーあんたは楽しみに来ただけかい」
「実はそうなんじゃ」
「全く」
メアリー様はジョーに呆れて居るようだ。その間にエマ師匠がメアリー様のことを教えてくれる。
「エドとドリーをメアリー様に紹介しなかったのは、可愛がりそうだから一人前になるまでは連れてくるなと言われてました」
「エマ! そんな事まで言わなくて良いんだよ」
メアリー様が慌てて居るのがエマ師匠は面白かったのか、笑いながら話を続けてくれる。
「もう少し前にエドとドリーをメアリー様に紹介する予定だったのですが、忙しくなってしまいましたからね」
「流石にルシル様が命に関わる病気だとね。私も協会長として動くしかなかったから。エマたちには無理して貰ったし」
「いえ、当然の事をしたまでです」
ジョーと俺たちは知らなかったが、協会は大変な事になっていらしいので申し訳なくなる。
「すいません、知らずに居て」
「いや、私もエドとドリーが薬を作れるとは思わなかったから、頭数に入れてなかったのさ。どちらかと言えば予定外はジョーだね」
「ワシかい、悪かったが仕方ないじゃろ」
「普段はもう少しましだろに、今回の大騒動に限って部屋に篭りおってからに」
「仕方あるまい、珍しい鉱石が大量に手に入ったんじゃぞ」
「珍しい?」
前回ジョーは協会長に怒られたと言ったが、詳しい事情は説明していなかったようだ。
「エドの新しい仲間のアンが、ダンジョンの上にある鉱石を取ってきてくれたんじゃ」
「ダンジョンの上にあると言うと、冒険者も取りたがらない鉱石かい」
「アン、メアリーにアンの特技を話しても問題ないじゃろか」
「隠して居ることでもないので、問題ありません」
ジョーはアンが許可を出したことでメアリー様に説明し始めた。
「アンはヤモリの獣人でヤモリのように壁を登れるらしいんじゃ」
「壁を登れるとは珍しいね。私も昔なら無理やり手足で登れなくもなかったが」
「メアリーは流石じゃな…」
メアリー様の身体能力は凄かったようだ、アンが今回の薬作りでも重要だった事を話す。
「アンが居なければ今回の薬も作れませんでした、壁の上にある宝箱を取ってくれたのはアンですから」
「そうなのかい、それは助かったね。アンありがとう助かったよ」
「いえ、メアリー様。私が居なくても誰かが取れたと思います」
「一番取るのに適して居るのがアンだったんだろ?」
俺はメアリー様に同意する。
「そうですね。俺たちで登れはしたかもしれませんが、宝箱の鍵を開けられたとは思いません」
「ルシル様の命を救ったのはアンなんだよ」
「そう言って頂きありがとう御座います、メアリー様」
「アン、そう畏まらなくて良いさ。私は先代辺境伯の妻だが、結婚する前は貴族と言っても下から数えた方が早い方だったからね。私は家を継ぐ予定もなかったし冒険者にでもなろうと思っていたからね」
メアリー様は先代の辺境伯と結婚しなければ、冒険者になろうと思っていたとは予想外だ。だが何処となく性格がベスと似ている?
「そう言えばアンともう一人に向けて名乗っていなかったね、メアリー・フォン・メガロケロスさ」
「アンです。メアリー様よろしくお願いします」
「拙者、フレデリックと申す。フレッドと呼んで欲しいですな」
「アンにフレッド、エドとドリーをよろしく頼むよ」
「はい、ただ拙者の方が世話になっている事が多いですな」
「フレッドの事情は聞いているよ。フレッドはツヴィ王国から来たばかりだから仕方ないさ」
「そう言っていただけると助かりますな」
メアリー様は苔を誰が持っていたのか聞いてくる。
「そう言えばジョーから聞いたが、誰かが苔を持っていたんだって?」
「それは俺とドリーです」
「よく苔なんて持ってたね、少なくともアルバトロス周辺には生えていないだろ?」
「それは…あのメアリー様は俺の出自は?」
「知ってるよ。そうかい、そこから持ってきたのか」
「そうです。ドリーの友達から貰ってきました」
「ドリーの友達?」
ジョーが思い出したように声をかけてくる。
「そうじゃ! それをメアリーに聞くんじゃ!」
「ジョー急にどうしたんだい?」
「ドリーの友達がトカゲらしいんじゃが、魔獣ぽいんじゃ」
「魔獣のトカゲ?」
「そうじゃ」
メアリー様は悩んだ後に何冊かの本を持ってきてくれる。
「トカゲの魔獣なんて、メガロケロス周辺であんまり聞いた事がないが、この本の中に居るかい?」
メアリー様が持ってきた本を開くと、魔獣の特徴や絵が書かれており分かりやすい。俺とドリーはトカゲを探していくが見つからない。
「居ないです」
「居ない? するとトカゲじゃ無いかもしれないね」
そう言うと再びメアリー様は本を持ってきてくれる。俺とドリーは探していくとドリーが見つける。
「いた!」
「どれどれ、これは…」
「メアリーどうしたんじゃ? こりゃ…」
ドリーが見つけた友達の姿にメアリー様とジョーは固まる。後ろで見ていたエマ師匠が不審に思ったのか声をかけ始めた。
「どうしたのですか、メアリー様、ジョー?」
「エマ見てみるんじゃ」
「これは…ドラゴン?」
「「え!」」
「ガーちゃんドラゴンだったの!」
「「「ガーちゃん…」」」
ドリーの友達はドラゴンだったらしい。俺とドリーがドラゴンだった事に驚き。エマ師匠、メアリー様、ジョーが、ドリーが友達に付けた名前に驚いている。
「まさかトリス様の言うとおりドラゴンだったとは。でもエマ師匠、ドリーの友達に翼とか無いですよ?」
「ドラゴンも色々な種類がいますから、翼がない種類もいます」
「知りませんでした」
「エドとドリーの出自を考えると知らなくても不思議ではありません。ただ本に雑食性と書いてありますが二人はよく無事でしたね」
「確かにガーちゃんは雑食性でしたが、主食は苔なので俺とドリーが襲われるような事はなかったですね」
ドリーとガーちゃんが友達になる前は近づかないようにしていたが、ドリーがガーちゃんと友達になってからは、群れの中に入っても襲われそうになった事はない。
「苔がドラゴンの主食とは、それは採取するのが難しいはずですね」
「俺とドリーも分けて貰わないと採取しようとは思いませんでした」
「本当に今回は運が良いようですね」
ガーちゃんはドリーに苔を渡していたので、オジジに言われて俺とドリーはもらった苔を貯めていたのだ。貴重な物だとは分かっていたが、必要になるとは思いもしなかった。
「ドラゴンとは驚きじゃな」
「ジョーの言う通り驚きだね」
ジョーとメアリー様が驚きから回復したようだ。
「しかし、そうなると記録にしておかねばならんじゃろ?」
「そうだね。記録にはするが、今後苔を採取しに行く奴は居なくなるんじゃないかい?」
「採取できる場所は分かっても、その可能性が高いじゃろな」
「困ったもんだね」
ドラゴンだと知っていたら採取しにはいかないだろう。なんと言っても群れだし。
「そうですね。群れですし」
「「「群れ!」」」
「あれ? 言ってませんでしたか?」
「採取とか絶対無理じゃな」
「そうだね」「そうですね」
「メアリー、むしろ絶対行くなと書いておくべきじゃな」
「ジョー、そうするよ」
そんなに怖い相手じゃないんだけどな、ガーちゃん。
「レオンと旦那にも伝えとかないとね」
メアリー様の旦那様と言えば先代の辺境伯だが見た事がない事に気づく。
「メアリー様、先代の辺境伯ってどうしてるんですか?」
「言ってなかったね、旦那は王都で大臣をしてるよ。私にも付いてきてって言われたけど嫌だって言って、私は協会長さ」
「なるほど、それで見た事がないんですか」
メアリー様の断られた先代の辺境伯が、ちょっと可哀想だなと思ったり。
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