収納の魔道具作りとダンジョンでの狩り
俺とドリーは貴族の勉強をした後に、魔法協会に戻ってジョーに会いにいく事にする。
「ベスがジョーにお礼を言いに会いたがってたよ」
「うむ、会いに行かんとな」
「ジョーの予定次第だけど、ダンジョンの帰りにベスを連れてくるよ」
「いや、具体的な予定はまだ決めれんが、近々会いに行こうとは思っておるんじゃ」
ベスを連れてこようとしたが、ジョーは自分が出向くと言う、近々と言っているし待つ事にする。
今日は収納の魔道具について聞いてみる。
「分かった。それとジョー、今日は質問があるんだけど」
「ワシに答えられる事なら聞くぞ」
「収納の魔道具についてなんだけど」
そう言って俺はダンジョンで使う、収納の魔道具を取り出す。
「おお、収納の魔道具を使うようになったのか」
「使うようになったけど、この魔道具って何なの?」
「何なのか、難しい質問だ」
「ジョーでも難しいんだ」
「そうじゃな、最初に作られたのが相当古くて誰が作ったのかも分かっておらん」
「そうなんだ」
「錬金流派ができる前から有るとも言われている」
「そんなに古いんだ」
思った以上に古くて驚く。錬金流派が一単位を決めたと教わったが、それも一単位の元になる魔法薬は忘れられている。それより更に古いとは。
「そもそもそれは、魔道具と言って良いのかも分からん」
「そうなの?」
「作る時に魔法を必要としないんじゃ、作った後に魔力は必要だが」
「え?」
「エドとドリーも一度作ってみるか、材料は協会にたんまりとあるぞ」
俺とドリーはやるとは言っていないがジョーはやる気のようで、材料を用意し始める。
「材料はダンジョンの鍾乳石に、何処にでもある薬草3種じゃ」
「この薬草は何処にでもみるやつだね。ダンジョンでも放置されてた」
「そうじゃ、それを鍾乳石以外は同じ分量で混ぜて型に流し込むだけじゃ」
「本当に簡単だね」
「じゃろ。ワシもこんなの作るの嫌でのう」
ジョーがやる気なのは、俺たちに面倒な作業をやらせたかったからのようだ。
「鍾乳石は砕いてあるし、混ぜるだけじゃ。やってみるんじゃ」
「分かった」
鍾乳石に対して十分の一の薬草を入れて混ぜるだけと言われ、混ぜた物の比率的に混ざったところで何も起きなさそうだが、混ぜていると液体に近い物へと変わっていく。液体になったら型に流し込む。
「以上で固まれば完成じゃ」
「凄い簡単だね」
「簡単で、しかも量が適当でも割と成功するという。とんでも無い代物じゃ」
量が適当でも完成するって、どうなっているんだろうか? というかこれ魔法使いが作る必要はないのでは?
「ていうかこれ魔法使いが作る必要ないんじゃ?」
「その通りで大体は外の業者に作らせておるの」
「だったら何でジョーは材料を?」
「通常の大きさであれば頼んだりするんじゃが、特注で大きい場合は作っておるんじゃ」
「特注で大きいのって、何でそんなのが?」
「収納の魔道具は大きさで入る量が決まっとるんじゃ」
「あんまりにも大きいと入らないってこと?」
「その通りじゃ、大きいのも作ってみるぞ」
何故か話の流れで大きい収納の魔道具も作る事になって、ジョーに材料を渡されて作っていく。
「エドとドリーは薬師をやっとるから、腕がいいようじゃ」
「これ混ぜるだけだから誰でもできるよね」
「はっはは」
ジョーに笑って誤魔化された、収納の魔道具をよっぽど作りたくないようだ。そう言えば薬草が中に入るかも聞きたかったことを思い出す。
「そう言えば収納の魔道具って、ダンジョンの薬草も収納できるの?」
「薬草も収納できるぞ。生きている動物と、生きている魔獣以外は入ると思っておけばいい」
「生きている生物以外は入るのか」
「例外として宝箱は解除していない場合は入らないな」
「宝箱って、運が良いと見つかるってやつ?」
「それじゃ」
「解除してないと入らないって不思議だね」
「収納の魔道具自体が謎が多いからの。宝箱が理由なのか魔道具が理由なのかさっぱりじゃ」
随分とダンジョンにも都合の良い魔道具のようだ。ジョーは作った魔道具が固まると半分俺にくれた。
ジョーに今日のダンジョンで獲ってきたものは何かと聞かれ、薬草と捌いて羽根だけになった鳥の魔獣を取り出す。
「今日は色々採ってきたな。鳥の羽根まであるのか、中身はどうした」
「鳥は魔獣だったんだけど食べてきた」
「魔獣食べてきたのか。ハッハハ」
「あれ? 魔獣って食べれるよね?」
「食べれるぞ。食べると美味しいしなハッハハ」
鳥の魔獣を食べても問題ないか聞くと、ジョーは笑いながら食べれると答えてくれる。食べても問題ないのなら何で笑っているのだろうか?
「いや、悪い悪い。魔獣は売れば高いし、魔道具の材料になるんじゃ」
「魔法使いじゃない時に狩った時は、そのまま食べてたから知らなかった」
「魔法使いが居なければ普通の動物と同じじゃからな」
「食べて問題ないなら良かったよ」
「むしろ魔獣は食べると美味しいので、次に魔獣を食べるときは呼んでくれ」
「協会のご飯食べてれば暮らしていけるし、ジョーには色々教わってるから今度持ってくるよ」
「おお、楽しみにしとるぞ」
「と言うか、今日の獲物に魔獣まだあったな」
獲物を入れたのと、何も入れてないのは分けてあるので入れてある魔道具を出す。だが、何が入っているか分からない。
「ジョー、中に入ってる物の見分け方って?」
「収納の魔道具の一番の欠点じゃ。分からん」
「ジョーも分からないの?」
「ワシも取り出してみるまで分からんな」
まさか取り出して見ないと中身が分からないという。袋の中で分けるか、何か印をつけないと今後は使いにくそうだ。
「ちなみに取り出すための魔道具はワシの部屋にもあるが、試してみるか?」
「一番大きな獲物がヤギだったんだけど…」
「それはワシも出されたら困ってしまうんじゃ」
「だよね」
諦めて明日ギルドの解体場に持っていくしかないようだ。
「明日解体場に持って行くよ」
「それがいいぞ」
「というか、取り出す魔道具をジョーは持ってるんだ」
「一部の品物は直接冒険者と取引しとるからの、あると便利じゃ」
「作るのも収納の魔道具と同じように簡単なの?」
「そうじゃな、作ってみるか?」
「作ってみようかな」
俺が同意すると、ジョーが材料を用意してくれたので作る。収納の魔道具と同じように非常に簡単だったが結構大きい。
「ダンジョンに持っていくにはちょっと大きいね」
「そうじゃな。魔道具が小さいと獲物がはみ出るからな、小型の物も作れはするが、必要になってから考えたらどうだ」
「そうするよ」
どうやら魔道具の上に載せると、中に入ったものが出てくる仕様になっているらしく、台座部分を大きくしているようだ。とりあえずは必要な分は別で持つようにすれば良いだろう。
「取り出す方法と言えば、収納の魔道具を折ると出てくることもあるぞ」
「出てくることって、出てこないこともあるの?」
「出てこない事もある、出てこないと二度と取り出せん。魔道具毎ゴミじゃ」
「本当に緊急時にしか使わなさそうだね」
「そうじゃな。そもそも収納の魔道具は、材料の割に硬いから中々壊せないんじゃ」
「壊さないといけない状態になる前に、小さい取り出す魔道具作るよ」
「そうしておけ」
その後はジョーに教わりながら、採ってきた薬草で魔法薬を作り。鳥の魔獣の羽根を魔道具の矢に加工して行った。
次の日もダンジョンに行く事にしていたので、ベスを迎えに行く。ベスと合流すると、屋敷に上がる事なくダンジョンへと向かう。
ダンジョンへと向かうまでの道中、ベスにジョーから聞いたことを話した。
俺はベスに獲物の管理方法と収納の魔道具の扱いを話しておく。
「ダンジョン後に食べる獲物は手持ちで。収納の魔道具に入れた獲物は、帰りにギルドの解体場に寄ろう」
「分かりましたわ」
ダンジョンに入ると魔獣と戦いたいので、昨日と同じような場所まで進んでいく。
鳥の魔獣が出てきたので、魔法を複雑にして倒す。今回は魔法を奪われるような抵抗もなくあっさりと倒せた。
「昨日と全然違うな」
「魔法を奪われそうになったのはエドだけでしたわね。そんなに違いますの?」
「制御が上手くできなくなる。昨日の感覚だと相手の魔力が多いか、魔法が完全に当たっていれば奪われてたかも」
「それは危険ですわ」
「属性を数種類混ぜて魔法を使っていこう」
「ええ、分かりましたわ」
魔獣が出る周辺で狩っていたが、物足りなさを感じ始めた。なのでダンジョンを少し先に進んでみる事にする。
ダンジョンを進んでいくと、驚いたことに草原が広がっている。
「「「え?」」」
「ここはダンジョンだよな」
「ダンジョン?」
「ダンジョンの筈ですわ」
俺たちが唖然としているとベスが思い出したように声を発する。
「そう言えば、ダンジョンには色々な環境があると聞きましたわ」
「そう言えば俺も聞いた気が、これもダンジョンなのか」
「恐らくそうですわ。聞くのと見るのは違いますわ」
「広いな」
「広いですわ」
「ひろーい」
あまりの広さに俺たちは戸惑う。とりあえず周囲を探索してみる事にする。
「広すぎて迷子になりそうだな」
「そうですわね」
俺とドリーが猟師のような生活をしていた時を思い出し、歩いた道を覚えたり、誰かが歩いた道を探して歩いていくと、何となくだがわかってくる。
どうやら動物の足跡もあるようで、良さそうな足跡を選んで追ってみる。
「いた」
「シカの魔獣ですか…」
何故かベスはシカを見ると迷った様子だ。
「ベスはシカを倒すの反対なのか?」
「メガロケロスの由来をエドは聞いていませんの?」
「聞いてない」
「巨大なシカですわ」
「シカだったんだ、知らなかった」
「メガロケロスは森の奥に住んでいて、実際に見たことある人は少ないと思いますわ」
「そうなのか。それで、あのシカは見逃す?」
「小型ですし、ダンジョンですから問題ないですわ」
ベスは狩る気になったようで槍を取り出した。
「ベス、行くよ」
「いつでも良いですわ」
俺とドリーがまず弓を射る、矢がシカに刺さりこちらに気づかれ近づいてくる。だが矢が刺さっていることでシカの動きが鈍い、そこにベスが槍を突き刺し素早く抜く、少し浅かったのかシカはまだ元気に動き回っている。
「俺とドリーが弓と魔法で牽制するから、ベスは隙を見てもう一度槍で」
「分かりましたわ」
俺とドリーの矢と魔法で牽制すると、鬱陶しかったのかこちらを狙おうとした。ベスはその瞬間を逃さず槍で素早く突き刺し抜く、良いところに刺さったのか動きが明らかに悪くなる。とは言えシカはすぐ倒れ込まず、シカの体力がなくなるように牽制し続けると倒れる。
「やはり大きいと頑丈ですわ」
「小型のシカとは言え、シカくらい大きいと中々倒せないね」
「魔獣なのもあるかもしれませんが、最初の突きは刺さりが甘かったですわ」
ベスやドリーと反省をしつつ、シカの魔獣を収納の魔道具にしまって次に向かう。
今度はやたら大きい足跡を見つけた、獲物を追うか迷い相談する。
「やたら大きい足跡があったんだけど、足跡を追うか迷うんだが」
「どう言う足跡ですの?」
「蹄だから多分草食獣ではあるけど、何かまでは分からない」
「一度確認して無理そうなら撤退はダメですの?」
「確かに。これだけ大きい足跡だから遠目でも確認できそうだ」
とりあえず足跡を追ってみる事にして進んでいくと、草を食むウシが見える。
「ウシか」
「大きいですわ」
「でも魔獣じゃなさそう」
「ですわね」
魔獣ではないので、魔法で最悪押し切れるだろうと戦うことにする。
現状は魔法より弓の方が遠くに飛ぶ、距離があるので普通の矢では威力は期待できない、威力を上げるのに魔道具の矢を使って遠距離から攻撃する事にする。
「射るよ」
「魔法を準備したわ、いつでも問題ありませんわ」
「うん!」
ベスとドリーの返事を聞いて俺は弓を射る。魔道具の矢は当たりウシがこちらに走ってくる。俺は弓を射ちつつ魔法を撃つ、だが致命傷には程遠いようでウシは気にせず走ってくる。
「思った以上に頑丈だ。足を狙う」
ウシの走る速度が速いので俺は足を狙って速度を落とそうとする、すると魔法が上手い事あたり足が折れる。牛の走る速度が落ちた、そこにドリーが魔力を多めにした氷の矢を頭に打ち込むとウシが倒れる。
「ドリー、やったな」
「ドリー、凄いですわ」
「にーちゃのおかげ!」
牛が起き上がらないか注意しながら近づく、完全に死んでいるようだ。正面はかなりの量の魔法を受けたため状態は酷いが、それ以外は意外と綺麗に残っている。
そんなウシを俺が確認しているとベスが驚いた様子で。
「あら、このウシ食べたことありますわ。珍しいからと言って、丸ごと見せて貰ったことありますわ」
「ベスが食べたことあるって事は美味しいの?」
「美味しかったですわ。戦って、このウシは中々獲れないと聞いていた理由が分かりましたわ」
「確かに正面からだと魔法使いでもなければ厳しいかも。今回も先に罠を準備しとくべきだったかな、ウシの足が思ったより速くて焦ったよ」
「足が速いのは感じました。ですが罠は思いつきませんでしたわ」
「次回は罠も準備しておくよ」
「お願いしますわ」
ウシから矢を抜いて回収すると、ウシを収納の魔道具にしまう。
「俺も少し食べたいけど、ベスのお土産にする?」
「良いんですの?」
「トリス様に色々して貰ってるし、ドリーもいいか?」
「ドリーは、お母さんに食べてもらいたい!」
「では、お母様にお出しするように言っておきますわ」
ギルドの解体場ですぐに解体できるかは分からないが、聞いてみれば良いだろう。
また探索に戻ると複数の足跡を発見する。
「これはオオカミかも…」
「オオカミは不味いんですの?」
「集団なんだ。三人だと厳しいかも」
「集団ですか。確かにこの人数だと危険ですわ」
「足跡があると言うことは、オオカミが近くにいるかもしれない。一旦戻ろう」
「分かりましたわ」
ベスも同意してくれたので、一度来た道を戻って違う獲物を探していく。数匹の獲物を倒した後に、ダンジョンから出る事にする。
ダンジョンから出るとテレサさんが出迎えてくれる。
「エリザベス様、ダンジョンはどうでしたか」
「テレサ、今日はウシを狩りましたわ」
「ウシですか?」
「以前お父様に屋敷で見せられた、ウシなのですわ」
「あれをですか」
「エドがウシはお母様へのお土産にと言ってくれましたわ」
「それならば急ぎ解体してもらいましょう」
今日は恒例になりつつあった獲った獲物を食べる事はしないで、ギルドの解体場に急ぐ事になった。
12話、力こそパワーを改稿しました。
エレンをベスの教師三人目から二人目に変更。
最初に魔法を教えた人物が、性格に問題のがあり自尊心の強い人物で問題を起こして、ベスが強情になって魔法を覚えなくなったと変更。
ベスが魔法を覚えていなくても許されていたというか、放置されていたのは、あのまま体を鍛えて行けばリング王国で使われるのとは別の魔法を覚えたからです。
リング王国と他国では魔法の使い方が異なります、体を鍛える方法で魔法の使い方を覚えるとリング王国の魔法が使えなくなる可能性が高いです。
そうなるとベスの立場上、他国に嫁ぐ可能性が高くなります。
トリス様はベス自体の能力は高いので他国に嫁いだとしても貴族としては心配していませんが、他国に嫁ぐとなれば会う機会がほぼなくなるので母親として心配してはいました。
1話2話も改稿してはあるのですが、改稿作業が思った以上に時間がかかるので時間がある時にのんびりやります。
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