商会の水車と建物
ある日、魔法の訓練と力の鍛錬が終わって部屋で休憩していると、セオさんがやってきた。
「水車の稼働が始まりました、なので見学に行きませんか?」
「セオさん、貧民街は治安が悪いと聞いたのに、行って良いんですか?」
「エマ様とエレン様のお陰で、水車の周りにお連れするのは問題ない位にはなりましたので」
「そう言えばちょっと前にセオさんが、エマ師匠とエレンさんに何かお願いしていましたね」
セオさんは少し前に、俺たち弟子組は連れて行けないお願いを、エマ師匠とエレンさんにしていた。
俺たちは内容は知らないが、エマ師匠とエレンさんはお願いを請け負って、俺とドリーが屋敷にいる時間に屋敷を出て、何かをしてきたようだった、あれは貧民街へ行っていたのか。
「はい、エマ様とエレン様のお陰で、貧民街での工場は順調に稼働しています」
「工場は順調なんですね。ただベスも連れて行くなら貧民街の治安はいいんですか?」
「エマ様とエレン様が一緒なら、エリザベス様を連れて行っても問題ないと、ベアトリス様から伺っております」
「そうなんですか」
セオさんは自信たっぷりに言うが、エマ師匠とエレンさんは何をしてきたんだろう。
二人の様子を伺うがにこやかに笑っているだけだ。
「と言うわけで、どうでしょうか?」
「それなら、俺は行こうと思います」
「では、エリザベス様とエド様たちは、魔法協会の馬車でお願い致します」
「ベスもですか?」
「はい」
ベスはまだ行くとは言っていないが、流石に辺境伯の馬車で行くのはまずいらしい。
セオさんがトリス様の許可があると言っているが、テレサさんにも一応確認しておく。
「テレサさんは、護衛的には問題ないんですか」
「今回のことはベアトリス様よりお話を伺っております、今回は兵士を冒険者風に変装させて付いていきます」
「また変装して行くんですね」
「はい、ベアトリス様は将来的には辺境伯の馬車で、エリザベス様として訪問できればと言っておられましたが、今は時期尚早だと考えられたようです」
以前に兵士を中に入れたら大変な事になると言っていたし、まだ早いのは分かる。
ベスを入れても問題ないと判断できるくらいに何かあったのだろう、何かやったエマ師匠とエレンさんは答えてくれそうにない。
俺たちの話を聞いていたベスも参加する気になったようで、テレサに行く事を伝える。
「お母様がそう言っておられるなら、私も参りますわ」
「エリザベス様、一つお願いが」
「なんですの、テレサ」
「冒険者として活動するときの、動きやすい服装でお願いしたいのです」
「多少の危険があるかもしれないのですね、分かりましたわ」
「エリザベス様まで脅威を辿り着かせる気はありませんが、用心をお願い致します」
「私も、お母様の許可がなければ行こうとは思いませんでしたから、覚悟はしておりますわ」
冒険者ギルドの依頼を受けてアルバトロスを色々回って思ったが、大きな港町なのに非常に治安が良かった。
なので、あえて貧民街と言う治安の悪い場所に自ら向かうのは、ベスも躊躇していたようだ。
「では、着替えて参りますわ」
そう言ってベスは部屋を出て行った、俺はライノに言われた選んだ冒険者が合っていないようなら変えると、言われた事を思い出して、セオさんに聞いてみる。
「以前ライノに会った時に、護衛と荷運びに選んだ冒険者が合っていないようなら、変えると言われたんだが問題なさそう?」
「今のところは問題ないですね、長期で契約するかは相手次第なところもありますが」
「今は短期で雇ってるの?」
「様子見もあるので今のところは短期で、今後順番に個々に聞き取りをして、長期にするか決める事になります」
「それもセオさんに、任せていいんですかね?」
「エドさんなら出来なくもないでしょうが、年齢的に見た目が年上の私の方が無難ですね」
「確かに子供との契約は舐められるか、相手は不安になりそうだ。ではすみませんが、セオさんお願いします」
「任されました、私がやる作業も減ってきたので、心配しないでください」
その後は、ライノの奥さんがシャンプーとトリートメントを気に入ったようだと話し、セオさんが今度追加で渡しておくと、会話しているとベスが戻ってくる。
戻ってきたベスと共に、俺たちは協会の馬車に乗って、貧民街の水車まで移動する。
貧民街に入ってから馬車の窓から外を眺めていると、貧民街の中で何故か開けている場所を発見する。無造作に建築された建物の中で、一部だけ結構大きな穴が空いたようになっており違和感がある。
その場所から少し行ったところに水車が有って、皆で馬車から降り揃ったところで、セオさんが説明してくれる。
「此処が今使っている水車です、今は一基ですが、二基目も準備中です」
「二基目は遠いんですか?」
「割と近いです、川の上流に有って、この水車から一番近い水車で、此処からも見えていますね」
川沿いに水車は並んでおり、上流を見てみると等間隔に水車が並んでいて、二基目の水車との距離は確かに近いことがわかる。
「中は作業している人も居ますが、入ろうと思えば皆で入れますが、水車小屋の中が一杯になってしまうので、今回は順番に入って見てきて貰ってから、再度外で説明します」
「分かりました」
セオさんの言う通りに、順番に中に入って作業を確認していく。
中に入ると水車によって、凄い量のシャンプーとトリートメントがかき混ぜられており、俺とドリーが一日で作る量以上を、一回で作ってしまっているようだ、見終わると次の人に変わって、俺は外に出て皆が見終わるのを待つ。
「どうでしたでしょうか」
「思った以上に効率が良さそうですね」
「そうですね、一度に作れる量を手探りで確認していますが、出来上がった物に関しては、辺境伯の屋敷へと順次納品しております」
「水車は水が流れていれば動きますが、他の量を測ったりする作り手や、荷運びする人は足りているんですか」
「量を測る人に関してですが交代も必要なので、バーバラの弟子を何名か雇う事になりました」
「確かに、それは必要ですね」
「そのうちの一人が今作業しているので、離れても問題ないようなら紹介をします」
先ほど中で作業を確認した時に、バーバラさんが居なかったのは、そう言うことかと納得する。
俺が納得していると、セオさんは水車小屋の中に入って行き、俺やベスと同年代の女の子を連れてくる。
「彼女の名前はアンで、バーバラのお弟子さんです」
「アンです、一生懸命働くのでよろしくお願いします」
「私はベスですわ。バーバラから色々聞いていると思いますが、深刻に考えなくて問題ありませんわ」
アンは非常に緊張した様子だ、その様子を見たのか、場所が貧民街だからか、ベスは本名を名乗らないつもりのようだ。
ベスに続いて皆がアンに自己紹介した後に、俺はアンに質問する。
「アン、答えられたらで良いんだけど、今不自由してることはない?」
「セオドアさんが準備してくださったので、今のところは問題ありません」
「薬屋からの護衛とかも問題はない?」
「薬屋の常連の冒険者を護衛にして頂いているので、安心して行き来できています」
「それなら良かった、何かあったら言ってください」
「はい」
アンは作業があるからと、水車小屋に戻って行った、俺はセオさんに順調そうだと声をかける。
「セオさん、思った以上に順調そうですね」
「はい、色々な協力があって、かなり早期に軌道に乗せられました」
「必要な素材も問題ありませんか?」
「協会からも協力があって、今のところは十分な素材が手に入っています」
「それは良かった」
エマ師匠とエレンさんが、俺たちで検証した、魔法使いの育成を早める論文を出す時に、合わせて協会に素材の事を、お願いをしておいてくれたらしく、後からその話をエマ師匠から聞いてお礼を言った。
見る場所は以上らしい、セオさんが質問がないか聞いてくる。
「見る場所と説明する場所がそうないのでもう終わりますが、質問などありますか?」
関係ないけど、貧民街で開けた場所があったのが気になる。
「関係ないんですが、水車まで通ってくる途中に開けた場所がありませんでしたか、あれはなんです?」
「あれは偶然空いた場所です。商会ができた経緯もありますので、今後は商会で炊き出しなどを、あの場所でやろうかと思っています」
「商会で炊き出しですか、確かにやっても良いかもしれませんね」
「炊き出しの話をバーバラさんにした所、バーバラさんもやる気のようなので、今後準備をして行きたいと思っています」
「分かりました」
「決まり次第また報告します」
「お願いします」
確かにエリザベス商会ができた経緯も考えると、貧民街で炊き出しなどをするのは良いだろう。
バーバラさんだけでは炊き出しはできないので、人を雇う事にはなると思うが、貧民街で雇っても良いと思うし、取り敢えずセオさん任せだ。
俺が納得していると、セオさんが移動すると言う。
「では、これから移動します」
「屋敷に戻るんですか?」
「いえ、商会の建物が仮で決まりましたので、エリザベス様、エドさん、ドリーさんが、一度見て頂き問題なければ、その建物で決定しようと思っています」
「商会の建物が見つかったんですか」
「実は最初は建てるかとも考えていたのですが、シャンプーとトリートメントの生産が思ったより早く始まったので、既存の建物から選ぶ事になり、ベアトリス様の意見を元に私が探しておりました」
セオさんは水車の手配をしながら、商会の建物までも探していてくれたらしい、セオさんに場所を聞いて、皆が馬車に乗ると商会の建物の候補地へと向かう。
「此処がエリザベス商会の候補地です、中にどうぞ」
そう言ってセオさんが、ドアの鍵を開けて中に案内してくれるが、かなり広くシャンプーとトリートメントを置くだけでは、空間が余るのは確実だ。
「あのセオさん、広すぎではないですか?」
「正直に言うとそうなのですが、辺境伯の娘であるエリザベス様のエリザベス商会なので、小さいのは問題ありますというか…」
セオさんもやはり大きすぎるとは思っているようで、言葉を濁されたが、説明された理由で理解はした。
「確かにベスの名前を冠した商会が、小さいのは問題ですね」
「はい、なので辺境伯の管理している空いている物件から、良さそうな物を選んでおります」
「辺境伯の屋敷に近くて良い場所なのに、空いてるのは何故かと思ったら、辺境伯の物なんですか」
貧民街から離れているが、辺境伯の屋敷からはすぐそこで非常に立地がよく、空いているのが不思議な物件だったが、辺境伯の持ち物なら理解できる。
「元々は辺境伯が持っている建物を壊して、店に作り直す予定でしたがシャンプーとトリートメントが出来上がったことで、ベアトリス様が知り合いに勧めたいとのことで、急遽ですが店として使えるこの物件を選びました」
「トリス様もう知り合いに勧めるんですか、生産間に合います?」
「なので、二基目の水車も準備中なのです」
「なるほど」
トリス様の考えがあるのだろうが、随分と早い展開に俺は驚く。
「それで、以前言っていた男性用なども作っていただけると嬉しいのですが」
「分かりました、ドリーと色々作ってみます」
「お願いします」
水車ができたことで、俺はシャンプーとトリートメント作りから解放されたと思ったが、そうではないようだ。
だが混ぜ続けるよりは良いかと思って、了承する。
「それで、商会の建物ですがどうでしょうか」
「俺は問題ないけど、ベスはどう?」
正直、俺には大きすぎると思うくらいで、特別注文するところはなく、ベスが良いと言えば問題ないと思っている。
「私も問題はありませんが、空間が開くのはどうにかしたいですわ」
「確かに」
ベスの意見に同意して、俺はセオさんをみると。
「ならば、エドさんに頑張ってもらうしかありませんね」
まさかの、俺に返ってきた。
「セオさん、そうは言っても急には思いつきませんよ」
「そうですよね」
セオさんが諦めた時、ベスが思いついたようで話しかけてくる。
「ならば、エドが考えた服どうですの?」
「服って、俺が作ったのはポンチョくらいじゃ」
「ポンチョもですが、他の物もエドが考えてた物を、仕立て屋が作ってるだけですわ」
地球の知識から出してきた物だし、自分の考えた物と言われると違和感があって、気が進まないでいるとセオさんが、トリス様に相談してみようと提案してくる。
「それならば服と屋敷について、ベアトリス様に一度ご相談されてはどうでしょうか」
「確かに、お母様もエドの考えた服は気に入ってましたから。エド、一度相談してみるべきですわ」
「二人がそう言うなら、相談してみるよ」
言いくるめられた気もするが、服に興味のないベスが気に入ってくれてるのだし良いのかな?
トリス様に相談することが決まったので、一度戻ってトリス様の予定が空いているか確認する事になり、馬車に乗って屋敷へと移動する。
句読点はまだ直したい所がありますが、句読点だけの修正は終わります。
次のスマホ用の調整する時に、文章全体を確認して修正してきます。
一度句読点の修正中に、話数を間違ってアップロードしてしまい直ぐに直しましたが、間違ってる時に読んだ方居ましたら申し訳ないです。
誤字報告助かっています、ありがとうございます。
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