ベスの感謝とお願い
魔法協会に帰ると、シャンプーとトリートメントに精油を加えて、量を調整して作っていく。
ドリーと共に作業するとすぐに終わり量をメモした後に、ベスとトリス様が数ヶ月使える程度の量を量産していく。
「終わった、お疲れドリー」
「にーちゃも」
何とか一日で終わらせて、俺はもう少しで終わりそうなベスのポンチョを縫っていき、何とか縫い終わらせる。
「できた」
「にーちゃ、すごい」
出来上がった事をドリーと喜び合った。急いで作り上げたがベスに渡すためなので、しっかりとした作りにはなっている。
次の日、昨日作った、ポンチョ、シャンプー、トリートメントを持って馬車に乗っていく、
屋敷に着くと出迎えてくれたメイドさんに、ポンチョ、シャンプー、トリートメントはどうすればいいか聞くと。
「エドワード様、全て一度預かっても宜しいでしょうか、シャンプーとトリートメントに関しては、鍛錬の後に試して頂こうと思いますがどうでしょうか」
「それでお願いします」
「はい、ポンチョに関しては鍛錬後に、いつものように部屋に通すようにと言われていますので、その時にお渡しするのが良いかと思います」
「確かに、訓練の前に渡すと汚れそうだし」
「はい、流石にエリザベスお嬢様も気にするかと」
「では、それでお願いします」
「かしこまりました」
俺はメイドさんの案に了承して、メイドさんに全て預ける。
今日の魔法の訓練はベスが昨日魔法を成功させたので、全力で魔法を使うのと、魔法の消し方を色々試すことになった。
「今日もいつも通り全力で魔法を使いますが、消し方を色々試してみてください」
「「「はい」」」
魔法を使う順番はいつも通りで、まず俺は光の魔法を拡散させて消す魔法を使う、するとベスは綺麗だと喜んでくれた。
「綺麗ですわ、エド」
「光の魔法を拡散させてるんだ、最初に魔法を消す魔法、というのが思いつかなくて思いついたのがこれなんだ」
「私も、魔法を消す魔法など思いつきませんでしたから、力でねじ伏せましたわ」
昨日の圧縮されたように消えた魔法はやはり力技だったのか。魔法って力技でどうにかなるんだなと驚きだ。
「ベスは凄いな、思いつかなかったよ」
「私にかかれば魔法だって力でどうにかなるんですの」
エマ師匠が苦笑しながら、ベスに力以外でどうにかするようにいう。
「ベス、今日は力ではなく違う方法で消してみてください」
「分かりましたわ」
ベスは少し考えた後に、魔法を発動させ消し始める。
今回は普通に消し始めて魔力だけが残り、制御を手放そうとするが難しそうだ。
ベスは少し苦戦した後、気合いを込めると制御が外れたようで魔力が拡散していく、やはり最後は力技なんだなと思っていると、ベスが喜んでいる。
「できましたわ」
「いいでしょう」
エマ師匠もエレンさんも諦め気味なのか、理由があるのか分からないが、特に何も言わないで、最後のドリーに魔法を発動するようにいう。
ドリーは魔法を使って、普通に消した、それをみたベスは納得した様子で。
「何となく分かりましたわ」
何か掴んだらしい、次回は上手くいくことを祈ろう。
その後は鍛錬で、今日もまたテレサさんに限界まで鍛えられていく、何とか耐え切るといつも通りに解散して、風呂に入って部屋に案内される。
そう言えば、シャンプーとトリートメントの事を鍛錬後に言おうと思っていたが、息も絶え絶えでベスに説明する余裕もなかった。
メイドさんに渡しておいたので、多分だが使っているだろう。
皆が揃ったところで、俺はベスにポンチョを渡そうと声をかける。
「ベス、頼まれていたポンチョができたよ」
「もうできたんですの?」
「俺とドリーもそうだけど、簡単な作りにしてあるから」
ベスはメイドさんからポンチョを受け取ると、広げて見た後に着ると丁度良さそうだ。
普通の服と違うので、丈の長さが心配だったが問題なさそうだ。
「良かった、丁度良さそうだ」
「ええ、エドありがとう」
「どういたしまして」
ベスはその後、メイドさん達にも褒められ嬉しそうだ。
ドリーが嬉しそうにベスの隣に並ぶ。
「ベス、おそろーい」
「ドリー、そうですわね、三人一緒ですわね」
俺も一緒に並べられて皆に鑑賞される、地球であれば写真を撮るところだろうが、この世界で見かけたことはないので無いのだろう。
そんな事をしていると、トリス様からの使いが来て部屋にくるようにと言われて、慌てて皆で移動する。
中に入るとトリス様がすでに居て、ドリーが駆け寄って抱きつく。
「よく来ました、ドリー」
「うん、お母さん!」
ドリーの行動に俺は固まっていると、ベスが前に出て。
「お母様お呼びになったようですが、どのような用事ですの」
「それは、ベス…」
ドリーを抱きしめていたトリス様はベスを見て居なかったらしく、顔を上げてベスに返事をすると言葉が一瞬止まって、ベスに確認するように話しかける。
「ベス、その服はどうしたのです」
「あ、忘れて居ました服をエドに作ってもらったのですの。先ほどまで試着して居たのですが、そのまま着てしまいましたわ」
「ベスが服を作ってもらったのですか?」
「はい、私が頼んで作ってもらいましたの」
ベスの返答にトリス様は固まって、復活すると非常に驚いている。
「ベスが頼んだのですか!」
「はい、そうですわ」
「奇跡ですわ」
「え?」
トリス様の言いように流石のベスも驚いた様子で、聞き返している。
「お母様、奇跡とは流石に言い過ぎではありませんの?」
「ベスあなたが防具以外で服を注文した記憶はありますか」
「…?」
「私に任せると言って、注文したことはありませんよ」
「そうでしたか?」
「そうなのです」
「でも、先日注文いたしましたわ」
「何ですって!」
トリス様の驚きようで、ベスがどれだけ服に無頓着だったのかよく分かる。
そら、メイドさんも俺にどうにかできないかと、お願いしてくるわけだ。
実は結構大変な依頼だったっぽいことに、今更ながら知った。
トリス様は、ベスを問い詰めるように確認していく。
「昨日のエドとドリーの服がそうですわ」
「エドとドリーの服ですか、昨日の服は良かった気がします、ベスあなたの分は作ったのですか」
「似合っておりましたね、私の分も注文しましたが、急ぎでは無いので製作中だと思いますの」
「ベスの分も頼んだんですね?」
「はい」
「確認したいので、図案などは持って居ますか」
「お針子が持っているかしら?」
トリス様がメイドさんにあるのなら持ってくるようにと言う、トリス様は再びベスのポンチョを確認する。
「装飾はありませんが、悪くはありませんね」
「ドリーも、おそろい!」
「そう言えば、ドリーとエドも着ていますね」
「にーちゃが、作ってくれたの」
「そうですか、エドは器用ですね」
「後、にーちゃがそうしょく付けたのも、考えてくれたの」
ドリーの言葉を聞いたトリス様が、俺に確認してくる。
「あらそうなの?」
「はい、俺では作るのが難しいのでお願いしました」
「そう、それも確認したいわね」
そう言うとメイドの一人が下がって部屋を出ていく、お針子さんの元へ行ったのだろう。
トリス様にポンチョが防寒着でもあり、布的に不安もあるが雨具であると説明していると、メイドさんが戻ってきて、お針子さんを連れてきた。
「こちらが先日ご注文された服の図案になります」
「ありがとう」
トリス様がお針子さんから図案を受け取ると、眺めていく。
「これは全部ベスが頼んだのですか?」
トリス様に言われて俺、ドリー、ベスで注文したものを分けていく、それを見たトリス様は感想を言う。
「ベスは妥協点ですが、ドリーは今までのことを考えると良いですね、エドは服屋になれそうですね」
「いえ、流石にそこまでは」
トリス様は俺を褒めすぎだと慌てて訂正する。そもそも地球の知識から出した服なので後ろめたさがある。
トリス様はそんなこと気にすることなく、お針子に注文する。
「これと、これを、私のサイズでも作っておいて」
「はい」
何とトリス様まで注文することになってしまった。
驚いていると、トリス様はベスに声をかける。
「ベス、興味がないのは分かりますが、今後も服の注文はするように」
「確かに興味がありませんわ」
「ベスが頼む必要はないので、エドが居れば間違いはないでしょう」
「エドと一緒で問題ないのなら、注文しますわ」
何故か俺は、ベスの衣装選びに付き合わされることが決定したようだ、これも騎士の仕事なのか?
俺はアホなこと考えていると、トリス様にお願いされる。
「エド、申し訳ないのだけれど、ベスに付き合ってくださいな」
「分かりました」
トリス様は服のことはこれで終わりなのかお針子を下がらせると、テレサさんを呼んで話し始める。
「商会の運営を任せるテレサの兄弟ですが承諾しました、私とは話をしたのでエドとドリーは、後で会って話してみてください」
「分かりました」
「テレサも同席するように言ってあります」
「はい」
テレサさんに後でお礼を言わないとダメだなと考えていると、トリス様は二人の人物を紹介してくれる。
「エドに勉強を教える元執事のステュアートと、ドリーの令嬢教育をする私のメイドのアビゲイルです」
「エドワード様よろしくお願い致します、ステュアートと申します」
「ステュアート様よろしくお願いします、エドワードと言います、エドと呼んでください」
「ドロシー様よろしくお願い致します、アビゲイルと申します」
「アビゲイル、ドリーはドロシーっていうの」
ドリーらしい自己紹介に問題ないだろうかと思ったが、気にする様子はないので安心する。
「二人共、今日は顔合わせだけで、商会のこともありますから、徐々に勉強の時間は増やしていきたいと考えております」
「分かりました、トリス様」
「ドリーの教育も、私の辺境伯に嫁いでくる前からのメイドで、私が信頼している者なので心配ありません」
「はい」
「うん!」
「エドとドリーを呼んだ用事は以上ですが、エドとドリーは何か用事はありますか?」
聞かれて思い出すが、シャンプーとトリートメントを渡すなら今かと思って持ってきてもらう。
「昨日の精油から作った、シャンプーとトリートメントを持ってきました」
「もう作ったのですか?」
「量を調整しながら混ぜるだけですし、適量を見極めるのはドリーが得意なので」
「あら、そうなのドリー」
「うん!」
ベスは思い出したように、使ったことを報告してくる
「先ほど、シャンプーとトリートメントを使ったと話そうと思っていたのですが、途中で呼ばれたので忘れていましたわ」
「そう言えば俺も鍛錬の後に伝えようとして伝えられなかったんだ、使い心地はどうだった?」
「気に入りましたわ、昨日言われた通り少し香りが変わりましたが、むしろ良くなった気がしますわ」
「それなら良かった、次からはベス用はその調合で作っていくよ」
「お願いしますわ」
ベス用の調合はこれで終わりだ、トリス様はこれから使うことになるので、今度聞くことになるだろう。
「私も使ったら感想を言いますね、ドリー」
「うん!」
話は以上となったので、この場は解散することになり、今日はベスもトリス様に呼び止められることが無かったので、俺たちは揃って部屋に戻る。
部屋に戻ると、ベスから改めて俺に服を作る時のことをお願いされる。
「エド、服を作る時ですが、よろしくお願いしますわ」
「わかった、呼んでくれれば来るよ」
「事前に伝えるようにしますわ」
トリス様には妥協点と言われていたが、ベスは選ぶ服自体は悪くないと思うのだが、興味があまり無いのだろう。俺がいる事で選ぶ気になるのなら手伝おう。
そんなことを考えていると、ドリーも一緒に選ぶと言い始める。
「ベス、ドリーもいっしょ」
「あら、ドリーも一緒に作る服を選んでくれるのですか?」
「うん!」
「ドリーも一緒に来てくださいませ、歓迎しますわ」
「うん!」
地球の知識がなければ、ドリーの方が趣味が良い物を選んでくる気はしているので、ドリーが参加するのは俺は大歓迎だ。
「それじゃ、俺が呼ばれたらドリーも一緒に行こうな」
「うん!」
ドリーで思い出したが、トリス様との関係はあれで良いのだろうか?
娘のベスに聞いておきたいがドリーが気にしそうなので、曖昧な言い方で質問してみる。
「ベス、ところで質問なんだが、トリス様との関係なんだが、あれで問題ないのかな」
「お母様の暴走ですか…お母様は貴族としての立場が強い方なので、エドとドリーが問題なければ、今のままで問題ありませんわ」
「ベスは良いのか?」
「私としてはお母様のお小言が減りそうですし、ドリーのような妹ができるのは歓迎ですわ」
「それなら良いんだが、俺は若干恥ずかしさはあるんだが」
「エドは兄弟というには少し違和感がありますので、私としても今のままがいいですわ」
「良いのかな?」
「お母様の我儘みたいなものですもの、問題ありませんわ」
「分かった」
ベスは満足そうに頷いた後に、予定を確認してくる。
「テレサの兄弟にこの後会うことになりますが、私も顔合わせには参加しますわ」
「ベスも?」
「ええ、私のお願いから事が大きくなってしまったのですから、完全に無関係でいるのは嫌ですわ」
「そうか、でも助かるよ。どう言う人かも分からないし」
「お母様が先に面談していますし、テレサの兄弟だから問題ありませんわ」
「それでも頼りにしてるよ、ベス」
「分かりましたわ」
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