ウィリアム王太子殿下
今日はアルバトロスの海へとやってきた。
レオン様とレーヴェがウィリアム王太子殿下を案内するのに、俺も一緒に来て説明するようにと言われている。レオン様とレーヴェは顔が赤い毛のライオン。二人が揃うと、かっこいいのだよな。
ベスとドリーも一緒に行くといって、結局皆がついてきている。それと、義兄であるピートも呼ばれているようだ。
何故海かというと、ジャングルを抜けるために作った推進器を見せるためらしい。最近作ったばかりなので、レオン様はまだ王都に報告もしていないのだと言っていた。
王太子殿下が来たついでに、見ていってもらう予定とのことだ。
「新しい推進器ですか。楽しみですね」
王太子殿下は楽しそうに笑顔だ。兄弟ということもあってウィリアム王太子殿下はトリス様に似ている。整った顔立ちで、白金のような金髪。碧眼の青い目がとても凛々しい。
リオも成長すれば王太子殿下のような姿になるのだろうか。
誰が船を運転するのかと思ったら、すでに港には何隻かのウォータジェットを搭載した船が海の上を走り回っている。
「あの船はなんです?」
「ウィリアム、あの船が新しい推進器を搭載した船だ」
「レオン、本当か?」
今まで帆船を使っていたのを考えると、王太子殿下が船に対し疑問を抱くのもわからなくもない。しかも、今までは海流と自然の風で進む以外は、帆に魔法で風を当てて進む程度。
それでも風がないでいる時は魔法があるので、効率が随分と違ったのだろう。結果、魔法で推進器を作るまでには至らなかったのだろう。
「今は小型の船でしか試していないが、将来的には大型船に取り付けられないか研究中だと聞いている」
「新しい推進器だとは言っていましたが、早くなりすぎでしょう」
王太子殿下が驚きの表情をした後、レオン様を呆れた様子で見ている。
王太子殿下の驚きようもわかる。正直、ダンジョンを踏破するために、技術の段階をかなり飛ばしてしまった気がする。魔法を基礎としているので、そもそも蒸気機関に至ることはないかもしれない。
なので、技術を飛ばしたとは言い切れないかもしれないが、技術の進歩としては歪な印象は受ける。
「根本の技術は転生者のエドが考えたものだ」
「別の知識から技術を達成したのですか」
「エドは特殊ですから」
「報告は受けていますが、本当に特殊ですね」
今更だが、レオン様と王太子殿下は随分と仲が良さそうだ。
レオン様にとって王太子殿下は義兄にあたるので、仲がいいのも当然か?
「エド、技術について説明を」
「はい」
魔道具が取り付けられた船を前に説明を始める。
構造はそこまで難しくはないので、魔道具によって水を吸って吐き出すだけだと説明する。風を送り出す魔道具を改良して、威力を上げているだけだ。今後はもっと速度を上げようと、ジョーたちが頑張っているらしい。
「構造自体は簡単ですね」
「小舟なら簡単に取り付けられますが、船体が大きくなるほど作業が大変になると予想されます。それと速度は小型の船ほど速度は出ないかと」
「それでも取り付けたいですね。リング王国の海運が大きく変化します」
ダンジョンの管理者だし、政治的な話はお任せだ。
船を下ろして、レーヴェが王太子殿下の前で操縦してみせた。慣れた様子で操縦していることから、船はレーヴェのものなのだろう。とてもいい笑顔で船を操っている。
戻ってきたレーヴェが王太子殿下を乗せて、港の中を走り回る。飛ぶための装備を持ってくるように言われていたが、海に落ちた時に救助するためだったのか。
「これは、楽しい!」
王太子殿下は想像以上に楽しんでいるようで、真面目な表情と口調がなくなっている。とても楽しんでいるのがわかる。
そういえば、王太子殿下はベスやレーヴェの叔父でもあるんだよな。なんとなく楽しんでいる姿が似ている。
「レーヴェ、ありがとうございました」
船に乗っていた先ほどまでとは違い、真面目な表情に戻った王太子殿下がレーヴェにお礼を言っている。
レーヴェが頭を下げて、王太子殿下に返答している。
「レオン、船を持って帰りたい。可能か?」
「研究用に何隻か用意しておきます」
「頼む」
浮かれた様子で王太子殿下は喜んでいる。自分で乗るために欲しかったのだろうな。
「ウィリアム。ツヴィ王国というか、メイオラニアと共同開発をしているのでよろしく頼む」
「ツヴィ王国であれば問題ありませんが、随分と共同で開発するのが早いですね」
「エドはメイオラニア伯爵の養子だ」
「納得しました。問題ありません」
俺もしょっちゅう忘れるのだが、フィル師匠の養子なのだよな。
王太子殿下がピートと話し合って、どのように技術を取り扱うか確認している。魔道具自体の作りが簡単なこともあって、模倣しようと思えばできると思う。どのように動かしているかも想像できると思うしな。
「ウィリアム、では次に行こう」
「次?」
「報告しているものもあるが、手紙が届いていないものもあるだろう」
「どれだけあるのだ?」
「ふむ。いくつだろうな?」
必要に迫られて作ったものが多く、正直何を作ったのか記憶が怪しい。聞かれても答えられる気がしない。
海が近いからと、真珠の養殖を見学して、更に他の貝も養殖できないかと実験していると伝え。魔法協会に行って、酸素、窒素、酸素濃度を測る道具。かなり前に作ったものでは、シャンプー、トリートメント、コンパウンドボウ、ステンレス、ルーシー様を救った魔法薬など説明してく。
正直何か伝え忘れていそうだ。
「一部は伝え聞いていたが、本当に多いな」
「必要に迫られて作ったので、いつの間にかいろいろ作ってました」
レーヴェが忘れていると、食事関係で発明したものを上げていってくれた。
食事も発明になるのか。
作った食事はレーヴェが好みのものが多く、いつの間にか気に入られていたのだよな。
「お父様、お母様はエドの作った飲み物が好きですよ」
「本当か?」
ルーシー様が炭酸飲料が好きだと伝えると、作り方は教わっているかと聞いてきた。リオが炭酸水ならすでにルーシー様が作れると王太子殿下に話している。
ルーシー様が炭酸飲料を好きなのは知っていたが、そこまで好きだったとは。
意外というか、そうでもないというか……。
ルーシー様が好まれているものといえば、服もそうだ。
「食事も入るなら、服もそうです」
作った服やルーシー様に送った服について話すと、王太子殿下から王都でも流行っている服だと教わる。
「今思い返すと、アルバトロス周辺の貴族たちが着ていることが多かったな」
この世界の服は基本がオーダーメイド。エリザベス商会では吊るしで服を売っているが、貴族は基本吊るしの服を買わないからな。以前にセオさんがそれでも売れているとは言っていたが、王都まで輸出しているかまでは聞いていない。
王都で売る場合はセオさん任せになりそうだ。
服は売れれば売れるほど、模倣される可能性が高くなるだろうしな。
「転生者がものを作り始めるとこのようになるのか」
「ウィリアム、エドは特殊だ」
「そうだったな」
確かに俺は管理者のショッツのしくじりによって、特殊な転生をしている。
転生者はダンジョンを攻略する人が選ばれている。同時にこの世界では、それが常識となっている。
俺みたいにものを作ってまで攻略の手助けにする人は滅多にいないらしい。なので管理者たちは俺が作ったものを欲しがるわけだ。
「レオン、流石に終わりか?」
「後はドラゴンとメガロケロスだな」
王太子殿下が固まる。
「ドラゴンとメガロケロスといえば、婚約の発表でいたな……」
ガーちゃんたちはどちらかというと、俺ではなくドリーの領域だと思うんだけどな……。
そもそも王太子殿下にガーちゃんたちを会わせていいのだろうか?
久しぶりの更新です。
もう1話あるので明日もアップします。
新作『かけらの渇望 〜疎まれた転生者は安住の地を求める〜』の連載を7月15日より開始しました。
良ければ読んで頂けると嬉しいです。
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