ガーちゃんとの出会い
十一歳の俺は五歳のドリーを連れて森に入る。
ターブ村から近い森は危険だが採取できる果実や薬草が豊富にある。
その分危険も多い。
ターブ村の周囲にある草原以上に森に入ると緊張する。
奥を見通すことができない森は、どこから動物や魔物が飛び出してくるか分からない。
「ドリー、何かあったらすぐに教えて」
「うん」
草原だけでは食べ物が足りなくなる時期がどうしても出てくる。
そうするとターブ村の皆が草原で食糧を探し始める。
森に入ればすぐに手に入るのだが、ターブ村の大人ですら猟師のケネスおじさん以外は普段入ろうとしない。
俺とドリーは草原で取り合いに参加するよりは、森の中に入って採取を選ぶ。
当然森は危険だが、ケネスおじさんから森の歩き方と、猟師としての技術を教わっている。
俺とドリーは二人で力を合わせて危険を回避して森を移動する。
「森の入り口付近は食べ荒らされてる……。もう少しだけ奥に行こうか」
「うん」
ここまで食べ荒らされているのは珍しい。
痕跡は草原から来ているので、草原の食料が少なくて森の入り口まで入って食べ荒らしたのだろうか。
今年は作物の出来があまり良くないと言っていたが、草原もそうだったのか。
森の奥に進んでいくと緊張感が増していく。
それでも採取できる果実や薬草が増えていった。
ある程度採取できたところで、帰ろうかとドリーと話していると、森の奥が開けているのか光が差し込んでいるのが見えた。
森で多くの光が差し込んでいる場所は珍しい。
興味が出てくるが行くか迷っていると、ドリーが行ってみたいと言う。
少しだけ様子を見てみようと進むことにした。
「これは凄いな」
「わー!」
近づくと森は大きく開けており、その中で休んでいる生き物が居た。
生き物は、地球の生物だとアンキロサウルスとか、トリケラトプスに近い見た目をしている。
この世界に恐竜がいると思えないので、巨大なトカゲといったところだろうか?
森でこれだけ群れて生きているのだし、強いのだろう。
敵対していると思われる前にターブ村に戻った方が良さそうだ。
ドリーに声をかけようとしたら、気づいたら巨大なトカゲの近くに行っていた。
「わー! すごい!」
俺も見惚れていたから気づかなかった。
慌ててドリーを連れ戻そうとする。
ドリーはその間に巨大なトカゲに触っている。
叫んで止めたいが叫んだほうが危険だ。
慎重にドリーの近くに行く。
「ドリーはドリーっていうの」
「ガー」
「ガーちゃんね!」
トカゲの名前が決まった。
ガーちゃんになったか。
いや、そうじゃない。
トカゲが口を開いた時に牙が見えた。
ドリーが近くにいるのに襲わないので草食かと思ったが、そうでもないようだ。
俺がドリーの近くにたどり着いた。
トカゲは遠目でも大きく見えたが、近くで見ると本当に大きい。
全長は十メートル近いのではないだろうか。
高さも三メートルはあるように見える。
「ドリー、危ないよ」
「ガーちゃんはだいじょうぶ!」
「大丈夫って……」
ガーちゃんと名付けられたトカゲを見ると、地面に生えている苔を食べ始めた。
肉食かと思ったが草食だったのか。
巨体なので完全に安心はできないが、ガーちゃんの近くに居ても食べられることは無さそうだ。
ドリーが一緒にガーちゃんを触ろうというので、様子を確認しながら触ってみる。
鱗に覆われたガーちゃんは思ったより暖かかった。
トカゲって変温動物だから冷たいと思っていた。
日光で体温が上がっているのだろうか?
「凄いな」
「うん」
ガーちゃんは、大きいのに生きているというのが感じられる。
しばらくガーちゃんを触っていると、ドリーが眠そうにしてきた。
「ドリー、森を出て寝るか?」
「うー、もうちょっと居たい」
ドリーがこんな事を言うのは初めてだ。
可能なら願いを叶えてあげたいが、森の中は危険すぎる。
ドリーを説得しようとしていると、ガーちゃんが足を折りたたんだ。
「ガー」
「もしかして背中に乗れっていうのか?」
「ガー」
ガーちゃんはどの程度か分からないが、言葉を理解しているように思える。
ガーちゃんの背中に乗るか迷ったが、ドリーが乗ってみたいと言うので乗ってみることにした。
背中に乗ると俺とドリーなら余裕で横になれるほどの大きさがある。
ガーちゃんが森に近い場所から、群れの中に入っていく。
日当たりがいい場所に着くと一度鳴く。
俺はここで寝ると良いと言われたと理解した。
ドリーを横にして寝るように言う。
すぐにドリーは寝息を立てて寝始めた。
「ガーちゃん、ありがとう。俺とドリーは親から無視されてるんだ。ドリーは家が怖いみたいで家では俺にずっとしがみついてる」
「ガー」
「家では俺がドリーを抱えて寝ているけど、熟睡できないみたいなんだ」
「ガー」
何故か俺はガーちゃんに人生相談をしている。
ガーちゃんは俺の話に相槌を打つように鳴いてくれた。
心配ばかりかけないように、ケネスおじさんやオジジとの交流もガーちゃんに説明する。
かなりガーちゃんに話を聞いてもらった。
時間が結構経ったのにドリーはまだ寝ている。
ドリーはガーちゃんの背中で熟睡できているようだ。
「ガーちゃん、またドリーを寝かせにきても良いかな?」
「ガー」
ガーちゃんは良いよと言ってくれた気がする。
またドリーを連れてガーちゃんに会いにこよう。
ガーちゃんに話しかけながら、周囲を見回すと他のトカゲたちはこちらを気にすることなく、地面に生えている苔を食べている。
苔は美味しいのだろうか?
ガーちゃんに苔は美味しいのかと聞くと「ガー」と鳴いただけだった。
否定的ではなかったし、多分美味しいのだろう。
「にーちゃ」
「ドリー起きたか」
「うん」
ドリーが起きたので、ガーちゃんにお礼を言ってターブ村へ帰ることにする。
ガーちゃんから降ろしてもらって、帰ろうとすると苔を口で摘んで渡された。
美味しいかと聞いたから渡されたのだろうか?
お礼を言って苔をもらっていくことにする。
しかしトカゲが群れていた場所に小動物はいたが、肉食獣はいなかった。実はガーちゃんたち強いのかもしれない。
ターブ村に帰ってオジジに苔について尋ねにいく。
流石に食べることはできないと思うが、何か使い道があるかもしれない。
森で大きなトカゲに会ったと伝えると不思議そうにしている。
「トカゲ?」
「大きかった。それとお土産に苔をもらった」
「苔?」
俺がオジジに苔を見せると、オジジの顔が一瞬引き攣った気がした。
オジジは少し間を空けて、薬に使えるから今度薬に使う場合の使い方を教えてくれると言う。
家に持って帰っても置く場所がないので、オジジに苔を預かってもらった。
オジジがケネスおじさんに苔について話しておいてくれることになった。
オジジの家で料理をさせてもらってドリーと一緒に夕食を食べる。
毎日ではないが、俺とドリーはガーちゃんに会いにいく事が増えた。
ガーちゃんに会いにいく途中で、大きな鹿が角を木に引っ掛けている状態に遭遇したりもした。
鹿は哀愁漂う表情だった。
蹴られれば確実に命を落とすのだが、表情豊かな鹿に同情してしまう。
太い木を切るような道具がないので、木に絡まった角を外すのは苦労したが、外せると鹿はとても喜んで跳ね回っている。
「また木に絡まるぞ?」
鹿は俺の方を見て、唖然とした表情をして飛び跳ねるのをやめた。
鹿のなのに表情が豊かすぎる。
というか大きさの割に、落ち着きがなさすぎる。
お礼なのかガーちゃんが住んでいる場所まで一緒に居てくれた。
鹿はガーちゃんに挨拶して去っていった。
ガーちゃんより会う回数は少ないが、鹿とも定期的に会って背中に乗せてもらえるようになった。
俺とドリーの食料探しはガーちゃんと鹿のおかげで簡単になった。
しくじり転生をどのように投稿するべきか迷っていたのですが、このしくじり転生は残し、新しく改稿版として投稿します
リンクを表示されるように設定しておくので、読んでもらえると嬉しいです。
しくじり転生 〜うまく転生できてないのに、村まで追い出されるってどう言うこと神様?〜 [改稿版]




