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しくじり転生 〜うまく転生出来ていないのに村まで追い出されどういうこと神様?〜  作者: Ruqu Shimosaka


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女王の蜜

 幼虫を食べるかどうかについてはレオン様に聞いてみようと、馬車に乗って屋敷に戻る。

 屋敷に戻るとメイドさんによっていつもと違う場所へと案内され、レオン様を呼んでいるので待っていて欲しいと言われる。


「エド」

「ライノも来たんだ」

「女王を一度は確認したいと思ってな」


 ライノはベスとフレッドの尻尾に気づいて、獣人の部位が増えたかと二人に話しかけている。フレッドとベスが尻尾について何か使い方がないかとライノに聞くが、若干体勢が安定する程度で、そこまで使い道はないライノが言う。


「尻尾はどちらかと言うと、身体能力が上がった証拠と言えるだろう」

「イフリートの時と違ってそこまでの差は感じられませんわ」

「どちらかと言うとそれが普通だな。イフリートのような強力な魔獣は特殊と言える」


 ライノ、ベス、フレッドが話していると、レオン様が俺に近づいてきた。


「エド、ジャイアントアントの女王を出してくれるか」

「分かりました」


 レオン様に指定された場所にジャイアントアントの女王を出す。女王を出すと、集まっていた人から驚きの声が上がる。ジャイアントアントと大きさや見た目が全然違うので、驚いたのだろうと予想できる。


「エド、ジャイアントアントの女王は資料に書かれていた通りに、攻撃はしてこなかったのか?」

「攻撃はしてきませんでしたが、鳴きました」

「鳴く?」


 レオン様に金属を引っ掻いたような音がすると言うと、レオン様は嫌そうに顔を顰めた。ベス同様に女王の鳴き声に近い、金属を引っ掻いた音が苦手なようだ。


「それは出会いたくないな」

「ベスも苦手みたいですよ」

「そんなところが似たのか」


 そんな話をしている間にも女王の解体が進んでいく。解体を進めている人が、腹部分に蛇口のような物を差し込んで蛇口の先にタルを持ってきた。蛇口についている取っ手を捻ると腹の中にあった液体が出てきた。


「あんな風に取り出すんですか」

「他の方法では周囲が大変な事になるらしい」

「女王の腹を攻撃しなくて良かったです」


 タルが次から次に一杯になっていき、徐々に女王の腹が凹んでいく。

 それと同時に周囲にとても甘い匂いが充満し始めた。ダンジョン内で感じた匂いを更に甘くしたような匂いで、甘い匂いが苦手な人であれば気持ち悪くなりそうだ。


「ジャイアントアントの蜜は美味しいんですか?」

「美味しいようだが。煮込む前は少し酸っぱいと書かれていた」

「酸っぱい?」


 煮込むと酸味が飛ぶのは分かるが、何故酸っぱいのだろうか?

 レオン様も資料を読んだだけなので、よく分からないと、実際に蜜を舐めてみる事になった。

 蜜が一杯になったタルから蜜を取り分けて食べてみる。


「確かに少し酸っぱいですね。と言っても不快な酸っぱさではないので美味しいです」

「そうだな。思った以上に美味しいようだ」


 柑橘系の果物を入れたような酸っぱさで、このまま水か炭酸で割っても美味しいそうだ。水を作って蜜と割ってから飲むと、かなり美味しい。というかレモネードに近いのではないだろうか。


「エド、それは美味しいのか?」

「美味しいです。炭酸で割っても美味しいかもしれません」

「試してみるか」


 レオン様は蜜を水で割った物と、炭酸で割った物を作って飲み始めた。

 レオン様は両方美味しそうに飲んだ後、炭酸で割った物をもう一度作って飲み始めた。


「これは美味しいな」

「気に入ったようで良かったです」

「これだけ蜜があればしばらくは楽しめそうだ」


 確かに一体のジャイアントアントから大量の蜜が取れている。今日二体目を狩った事を伝えていないと思い出して、レオン様に伝えた。


「女王をもう一体狩ったのか」

「はい。どうしますか?」

「タルが足りるか分からないので、一体目の解体が終わってから考えよう」


 一体の予定だったのでタルをそこまで用意していなかったようだ。もう一体女王はあるのだし、解体を見学している人たちにも蜜の味見をしてもらう事になった。


「炭酸で割った物が美味しいな」

「ライノは割った方が好きなのか」

「私より甘い物が好きな妻の方が好きそうだがな」

「確かに甘い物が好きな人には良いみたいだね」


 俺が見た先にはベスとアンが居て。美味しいと蜜を食べている。

 リオは炭酸水で割った物を飲んだ後に、ルーシー様に飲んでほしいと言ってドリーを誘って蜜を持って行った。


「女王は大量に居ると予想できるから、ライノにも分けられると思うよ」

「それは助かるが、そんなに大量にいるのか?」

「今日二体目を狩ったんだけど、一体目との距離を考えると思った以上に狭い範囲に数がいるみたいんだんだ」

「それはダンジョンを進むのがかなり大変そうだな」


 洞窟の距離は大体決まっており、次の階段まで直線で行ったとしても、十体近くの女王がいる可能性が今のところある。道は分岐しているため、それ以上の女王を倒さなければ階段まで辿り着けないだろう。


「そうなると一組くらいは冒険者が追いつきそうだな」

「酸素の使い方を覚えた冒険者が出てきたの?」

「完璧ではないが上手く使いこなし始めた者たちが居る」


 そうなると俺たちと同じ階層に来るのなら、窒素の魔道具が必要になってくる。ジョーに相談して早めに作った方が良さそうだが、簡単に作れる物ではないので間に合うだろうか。


「次の階層についての説明はしているんだよね?」

「ああ。階段付近は良いが奥には入るなと伝えている」

「それなら良いけど。無理して倒れたら大変な事になるから」


 雪山で活動できるような冒険者たちなので、そこまで心配する必要はないと思うが、ジャイアントアントを狩るのに人が増えてくれたほうが楽そうなので、雪山を越えてこれるなら歓迎する。


「そろそろ一体目の解体が終わりそうだな」

「普通の解体より時間がかかるね」

「蛇口の大きさがあるからな。あれ以上の蛇口ってなるとタルも巨大にしないとダメだろうな」

「なるほど」


 次のジャイアントアントの女王を出すかどうか解体をしていた人たちに尋ねると、タルはまだ余っているので出しても蜜を入れられるだろうと言うので、女王を取り出して解体をお願いする。

 女王の解体をお願いして思い出したが、幼虫と蛹はどうすれば良いだろうか。


「レオン様、幼虫と蛹はどうすれば良いですか?」

「それもあったな。調べた後に解体してしまうか」

「分かりました」


 なんとなく女王から少し遠くに幼虫と蛹を出すと、皆が集まってきて資料との違いを話し始めた。解体は任せて見ていると、フレッドが近づいてきた。


「エド殿、食用になるのか聞いて見ましたかな?」

「フレッドはそんなに幼虫を食べて見たいの?」

「何故か一人だった時を思い出して食べてみたくなっていますな」

「それは良い事なのか……?」


 食べられる物なのかをライノに聞いてみると、幼虫と蛹は珍味だとライノに言われる。珍味とは、別に美味しいわけじゃないのでは?

 食べれる事はできるようなので、フレッドに伝える。


「それでは食べて見たいですな」

「流石に焼いて食べるよね?」

「生でも行けなくはないと思いますが、怖いので焼いて食べたいですな」

「分けてもらってこの場で焼いてもらおうか」


 幼虫と蛹の解体をした物を貰い、調理器具を持ってきて俺が調理を始めると、フレッド以外は皆遠目で傍観するようになった。

 厨房に任せるのがいたたまれなかったのだが、皆の反応を見るに正解だったようだ。


「匂いは思ったより良いですな」

「そうだね。若干甘い匂いと胡桃みたいな匂いがするね」

「思った以上に期待できそうですぞ」


 言葉には出さないが、期待してるのはフレッドだけだと思うな。焼き上がった幼虫と蛹をフレッドに差し出すと、美味しそうに食べ始めた。まず幼虫を食べたフレッドはお菓子に近いという。


「甘くて更に胡桃のような味がするので、美味しいですが食事ではないですな」

「そうなんだ」


 次に蛹を食べると、エビのような味がすると言う。アリって甲殻類とは違った気がするのだが、不思議な話だ。

 フレッドが普通に食べているので、皆が少しずつ貰っていき、足りないようなので追加で幼虫と蛹を調理した。フレッドが満足するまで食べた後に感想を言い始めた。


「拙者の好みは蛹でしたな」

「協会とか屋敷で調理してもらうときは、事前に何か言うんだよ」

「皆の遠巻きに見ている感じからして、そのほうが良さそうですな」


 フレッドも皆が引いていたのは気づいてはいたようだ。幼虫と蛹を焼いている時に、ルーシー様も来られて幼虫と蛹を食べたいと言うので、渡すと幼虫が好みだと言った後に、女王の蜜が欲しいと言われたので、タルを一つ渡した。

 ルーシー様はタルを自分で持つと、部屋へ戻っていった。


「リオ、ルーシー様って蜜が気に入ったの?」

「はい。お母様が美味しいと言った後に欲しがったので、ジャイアントアントの女王はこれからも狩れるので、持って行って問題ないと伝えました」

「好きなだけ持って行って良いんだけど、渡してから思ったけどタルで持って行って大丈夫かな?」

「大丈夫だと思いますよ」


 かなりの甘さだし、そう簡単に腐るような物ではないかな? リオに蜜が腐ったら捨てるようにルーシー様に伝えてもらうように頼んだ。

 食べる量については魔法使いだから問題ないと思いたい。


「正直、女王二体分の蜜でも、自分たちだけでは持て余しそうなんだよな」

「そうですね。素材の研究分以外は配ってしまいますか?」

「ここまで美味しいと素材に使うのもな。よっぽど性能が良いなら使うけど」

「料理にどう使えるか試して貰いますか?」

「そのほうが良さそうだ」


 一般に流通させるには量が少ないが、少人数で消費するのは難しいという中途半端な量だ。

 魔道具や魔法薬の素材としても一応試してみるつもりではあるが、リオの提案に乗って、協会や屋敷の厨房で料理に使えないか試してもらう事にする。


「お母様も料理として出てきたほうが喜びそうです」

「ルーシー様以外で蜜を食べた皆が美味しいと言っていたし、今日解体を手伝って貰った人には持って帰って貰うか。解体場に解体をお願いしている量が最近多いから、何かお礼をしたい」

「それが良いと思います」


 リオと話した事をレオン様に伝えると、蜜の使い道については自由にすると良いと言われた。レオン様の許可が出たので、少量を皆に配ることにした。


「ギルドや協会の人間に渡しておけば勝手に研究もしてくれるだろう」

「協会で研究する分は俺が出しますけどね?」

「それも伝えておくといい」


 蜜を皆に分けると解体のために集まって人たちは喜んでいる。

 蜜を分け終わった時には二体目の解体も終わっており、今日の解体は終わることになった。次回からは解体場で解体できると言われたので、帰りに解体場に寄るのを忘れないようにしないと。

 帰っていく人たちとは別にライノが俺に近づいてきた。


「エド、すまないが次の階層について分かっていることを聞いておきたい」

「レオン様から話が行っているとは思うけど、確かに俺からも話をしておいたほうが良さそうだ」


 ライノと次の階層で起こった事や、ジャイアントアントの習性を伝えた。

 ジャイアントアントの女王が居なくなった後の変化はレオン様にも伝えていないので、レオン様の元に行って、ライノとレオン様の二人同時に報告をした。


「ジャイアントアントの女王が居なくなれば、ジャイアントアントの数は目に見えるほど減るか」

「はい。なので順番に女王を倒して行く事になります」

「どの程度の距離で女王が居るかは分かっているのか?」


 俺は製作途中の地図を出して、女王がいた位置についてレオン様とライノに説明をする。ダンジョンについてはライノの方が詳しいため、ライノが直線で女王が居る数を予想した。


「直線で十体と言ったところか」

「俺も直線で十体と予想をしていますが、まだ女王を倒したのが二体なので予想は外れるかもしれません」

「そうだな。それに地図がないので、どちらにせよ直線では辿り着けないだろう。女王を十体以上を狩る事になるな」


 俺から伝える事が話し終わったところで、ライノから地図を写させて欲しいと言われたので、屋敷の中で書き写してもらう事にする。ライノが地図を書き写している間に、レオン様に幼虫と蛹について尋ねる。


「レオン様、幼虫と蛹は屋敷に運び込みますか?」

「正直見た目が苦手だが味は美味しいと思う。料理人に研究をして貰おう」

「それでは一部運び込むようにお願いしておきます」


 地図を写し終わったライノに、一応幼虫と蛹は要るかと尋ねると、蜜だけ良いと言われる。

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