休みは操船の練習
解体が終わった後に資料を読んでいると、解体で集まった人は解散となった。レオン様から部屋に戻ると俺たちも移動する。
部屋に戻ると小腹が空いたと食事を食べ始めるとピートに驚かれた。
「エドはまだ食べるのか」
「ダンジョンに行った次の日は大体こんな感じかな」
「魔力量も凄いが食事量も凄いな」
ピートはここまで食べないようで、俺たちの食べている量に驚いている。ツヴィ王国の魔法使いはフレッド基準だったので、実際はフレッドが食べ過ぎなだけだったようだ。
「ところでピートさっきもお礼を言ったけど、ジャイアントアントの事助かったよ」
「アルバトロスにも資料があったようなので、すぐに分かっただろう」
「大きさが違うって言い切ったから資料が一つだと正解が分からないからさ」
実際アルバトロスにあった資料も大きさは違ったようで、分からないままだと混乱していただろう。ジャイアントアントが大きい理由は分からないが、ツヴィ王国で倒すのより大変だと想定できる。
「ところでエドたちはすぐにダンジョンに向かうのか?」
「いや、何日か休む予定。何日にするかは皆と相談するけど」
「そうか」
ピートにメイオラニアに帰る時期を尋ねると、まだ決まっていないと言う。
「海路の事を考えると冬の方が都合がいいので、そこまで急いではいない。結婚式が遅くなってしまうが、夏の時期はメイオラニアに向かうには海路が良くないのだ」
「海路の問題なのか」
「嵐が発生しやすい、逃げることは可能なのだがな」
沈没することはないと思うが、時期をずらした方がいいと仕事もあることだし、まだ出発する予定はないという。
「その間にエドたちが管理者になれば結婚と同時に吉報を運べる」
「俺とドリーが管理者になってもお祝いになるの?」
「管理者については秘密にしている事なので、貴族として祝う事になるな。王家にも報告する事になる」
分かっていたが、大事なんだな管理者になるのは。ピートと会話をしながらも食事をしていると、解体した時に作った資料を読んでいたレオン様が話しかけてきた。
「エド、無理にとは言わないが幼虫や蛹も死んだ状態で持って帰ってきてくれないか」
「幼虫と蛹ですか。次の階層で魔獣が増えているか確認するためですか?」
「そうだ。安全を確保できない場合や、回収できない場合は諦めてくれていい」
「分かりました」
大量に魔獣がいる場合は、最悪他の冒険者が来るまで先に進めないかもしれない。先に進めない可能性を皆に話すと、ベスが魔法でダンジョンを壊してでも数を減らすべきだという。
「ダンジョン壊すってどうやって?」
「ガーちゃんから教わった魔法を無作為に打てばいいですわ。どうせ次の階層には人はいませんわ」
俺たちの魔力があれば確かに魔法を使い続ければ徐々に減ってはいきそうだが、実際のところはどうなんだろうか。
「数を減らす目的なら良いのかな?」
「地図が全くないのですから、しっかりとダンジョン内を探索する必要がありますわ」
「ジャイアントアントが掘った穴を使って移動する気はないから、しっかりと探索する必要があるのか」
「下が見えている状態なら落ちても良さそうですが、先があるか分からない状態で穴を使う気はしませんわ」
ベスの意見に俺も同意するが、下が見えるようにジャイアントアントが穴を掘ると思えないので、ジャイアントアントが掘った穴を移動することはないだろう。
「まずは地図作りになりそうだな」
「ダンジョンの攻略に時間がかかるのは仕方ありませんわ」
「そうだね」
ベスや皆とどれだけ休みを入れるかと相談すると、いつも通りに二日休みを入れて様子を見たいという。丸一日寝ていたので一日増えているが、俺もそのくらいで良いと思うので同意する。
「それじゃ俺はその間にジョーに今回のことを話しておくよ」
「私も武器についてジョーと話したいので一緒に行きますわ」
「武器?」
「次は槍の方が倒しやすいと思いますが、重さが欲しいのですわ」
ジャイアントアントの関節を狙うのは大変なので、重さで倒したいとベスは言う。ジャイアントアントは硬いが矢が刺さらないほどではないので、打撃次第では倒せそうだ。
「飛んでいる魔獣に関しても剣では戦うのが難しいですわ」
「当たれば弓の方が良さそうだ」
「当たればそうですわね。アンでもトンボには当てるのが難しそうでしたから、私では当てられる自信がありませんわ」
武器に関してはジョーに相談する事にして、二日休みにすることが決定した。レオン様は俺たちにしっかりと休むようにと言って部屋を出ていった。トリス様やピートも仕事の続きがあると部屋を出ていった。
「今日はゆっくり休むか」
「ですわね。寝すぎて変な気分ですわ」
「同意する。今日の夜は寝れるかな」
「確かに寝れるか不安ですわ」
皆も寝れるか不安だという。体を休めて夕食をしっかり食べて布団の中に入ると、意識が途切れる。
寝れるか不安だと言う話をしたのに、しっかりと熟睡してしまったようだ。今日はジョーに会いにいって、色々と相談しに行こう。朝食をしっかり食べて協会へと皆で向かう。
「ジョー、雪山の踏破できたよ」
「おお。解体の手伝いはやはりエドたちじゃったか」
「そういえばジョーは解体に来てなかったね」
「魔道具の改良をしておったぞ。素材だけ後で教わればいいと思っておったんじゃ」
雪山の話は後回しにして解体をして得られた資料をジョーに渡し、解体で分かったことをジョーに伝える。俺たちの取り分になっている素材は協会にあると思うので、ジョーに好きに使っていいと伝える。それからベスが武器についてジョーに相談する。
「重さ、というより打撃力が必要ですの」
「遠心力を使った方が良さそうだが、使い勝手が難しくなるとは思うぞ」
「幸いながらジャイアントアントは動きがそう早くはないので、多少隙があっても攻撃されることは無さそうですわ」
ジョーに次の階層に出る魔獣を説明すると、ジョーは虫の魔獣が揃っているのかと言う。
「しかも繁殖しているんじゃないかって予想できたから、次は本当に大変そうなんだ」
「ダンジョン内で魔獣が繁殖しておるのか?」
「予想だけど、可能性は高いかな」
ジョーから殺虫剤のような物を作れないかと言われるが、ジャイアントアントのような大きさを殺す殺虫剤だと、人間にも有害になってしまう気がすると伝えると、納得された。
「諦めるしかないようじゃな」
「普通に進むよ」
「注意するんじゃぞ」
ジョーがベスの武器を改造しておくと言うので任せる事にする。俺はなんとか空気中の酸素の濃度が測れるようにならないかと、魔道具を作っていく。
「簡単にはできないか」
「何を作っておるんじゃ?」
「酸素の濃度が測れないかって。数値があれば定期的に確認するだけで酸素の量を増やすだけで良いから」
最終的には自動で酸素の量を増やせれば冒険者の負担は減りそうだが、短期間でそこまでの改良は難しい。まずは酸素濃度を一目で分かる濃度計を作りたいとジョーに説明する。
「酸素の濃度を測れれば、自動で量を調整するのも目処がつくんじゃがな」
「うん。濃度計が出来れば炉を動かしている場所や、鉱山でも使えるんだけどな」
「便利ではあるようじゃな」
一番最初にカナリアで酸素濃度を測る方法は思いついたが、雪山ではカナリアが死んだとしても凍死なのか、酸欠なのか分からないし、途中で登るのを止める訳にはいかない。カナリアは使えないと、濃度計を作る必要がどうしても出来た。
「時間がある時に試作してみるしかないかな」
「そうじゃな。簡単には覚えられんが、経験を重ねて酸素量を調整できるようにすれば登頂は可能かもしれんぞ」
「確かにそちらの方が魔道具が完成するより早いかもしれないな」
酸素の魔道具を更に効率化する必要もあるし、雪山で必要な魔道具に関してはやる事が多い。ジョーに酸素の魔道具のマスクに、防寒具として温度管理を付けておいた方が良いと助言をすると、簡単にできるので仕様書に追加しておくとジョーが言う。
「他の部分はほとんど隠れてたから良かったけど、顔が寒かったよ」
「前が見えるように作る必要がありそうじゃな」
「動きや視界を阻害しないようにしないとダメだね」
他にも雪山で欲しかった装備を相談すると、方位が分かる魔道具が欲しいと言うと、ジョーが一度山頂の位置が必要だと言う。
「あれって磁石とかではないのか」
「ダンジョンで磁石はほぼ意味がないぞ」
「そうだったのか」
位置情報は複製する事ができると言うので、俺たちが一度山頂まで行って魔道具に位置情報を入れて来る必要があるようだ。湖の位置はかなり下なので一度山頂まで行く必要がありそうだ。
「そうなると酸素が必要になるな」
「エド、そういえば次はライノから話が聞けませんから、私たちで必要な物を考える必要がありますわ」
「そっちも有ったか」
ジョーに改造してもらっているベスの槍もあるので、明日また集まって体調を確認してから準備をすることに決めた。
「エド、明日は船の操舵を練習したいですわ。マギーが暖かくなってきたし練習するには良い気候になってきたと言ってきましたわ」
「確かに暖かくなってきたし落ちても震えること無さそうだ」
「冬でも落ちることはないと思いますが、冬は寒いですわ」
冬の間にメイオラニアに行ったのにそこまで寒かったと思ったことはないのだが、何故だろうと思ったら服が優秀だから気にならなかったのか。
「それじゃ明日は海に行こうか」
「マギーに伝えておきますわ。他にも船に興味があるようなら来てもいいと言っていましたわ」
皆にどうするか聞くと、特にやることはない様子で、一緒に船の操舵を練習する事になった。ベスから集まる場所を教えられて、皆でその場所に集合する事になった。
朝起きると俺はドリーと一緒に港まで向かう。アンは徒歩でも向かえない距離ではないが、フレッドが迎えに行くと言うので、任せてベスが指定した港の一角まで向かう。
「マギー、お久しぶりです」
「お久しぶりです」
俺はマギーにドリーを紹介した後に、マギーから真珠の養殖について聞いていると、皆揃ったので皆をマギーに紹介した後に船へと案内される。
「この人数ですと、そこそこ大きな帆付きの船になりますね」
「最初から大きいのは難しくないですか?」
「多少難しくはありますが、私が補助しますので問題ないですよ」
桟橋から船に乗るとマギーが船の出し方から帆の張り方まで教えてくれる。
「この大きさの船ですと最初から帆を張るよりは、手漕ぎで桟橋から距離を取った方が簡単ですね」
「分かりました」
船を漕ぐためのオールを渡されて、マギーの号令でオールを漕いで行く。結構大変なので魔法格闘術を使って漕ぐと速度が出やすいようだ。マギーが陸との距離を見ている。
「船の速度が早いですね?」
「魔法を使っているので」
マギーが不思議そうだったので、魔法格闘術を使っていると言うと、そんな使い方があるのかと驚かれた。ツヴィ王国だったらこれを使って特攻してそうだが? フレッドに尋ねると海辺の出身ではないので知らないと言う。今度ピートに聞いてみよう。
「そろそろ十分でしょう。帆を張ってみましょう。浮標を浮かべるので一周まわるように動かして回収してみましょう」
教わった通りに帆を張って操舵を順番に練習をするが、かなりの難易度でマギーに手伝ってもらいながら、皆で覚えていく。ある程度操舵が出来るようになったところで、魔法を使ってみるようにと言われる。
「あれ、簡単だ」
「魔法を使えば、風の向きを読む必要がないので簡単なのです」
「言われてみればそうですね」
苦戦ばかりしていても面白くないだろうと、マギーさんは後は魔法で好きに走らせると良いと言ってくれた。順番に自ら魔法で風を起こして操舵をしていく。操舵を皆が終わったところで、マギーさんが養殖場を案内すると船の向かう先を指定してきた。
「こちらは漁師には人気がないとのことで、養殖場にしました」
「魚が少ないんですか?」
「魚はいるのですが小舟だと危ない場所らしいのです。今乗っている七人乗れるような船なら問題ないようです」
筏を組み上げて養殖場にしているので、大きさもあるので問題はないだろうとマギーさんは言う。こちらは水深の深い養殖場らしい。
「すでにしっかりと養殖場ができてるんですね」
「資金を投入しているのもありますが、漁師も養殖に期待しているようです。浅瀬の養殖場もほぼ完成しているので見に行きましょう。」
水深の浅い養殖場も見学をして、操舵の練習は終わった。
ブックマーク、評価、感想がありましたらお願いします。
 




