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しくじり転生 〜うまく転生出来ていないのに村まで追い出されどういうこと神様?〜  作者: Ruqu Shimosaka


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雪山の山頂

 ベスに違和感があったと言われて思い出すと、確かに飛んでいる数に対して存在感が凄まじいので勘違いをしたのかもしれない。


「解体する時に一気に取り出せばあんな感じなのかな」

「そういえば一度に取り出した事はありませんでしたわ」

「一度、大量にウェンディゴを取り出して、ウェンディゴの存在感に慣れておくと山頂に行く時は良いかもしれないな」


 吹雪の中を通ったので顔が皆すごい状態で、顔を綺麗にするついでにお湯を作る事にする。洞窟の入り口にある雪を取ろうとすると、雪というよりは氷だと気づく。短剣を鞘に入れたままで氷を割って、皆の元に持っていく。


「外が雪じゃなくて、ほぼ氷だったよ」

「山頂が氷の可能性は考えていましたが、本当に氷だとは思いませんでしたわ」

「俺もだよ」


 氷を溶かしてお湯にするが足りなさそうなので追加で氷を取りに行く。氷を砕いていて気づいたが、山頂は地肌が出ている場所がある。今更ながらに雪山で採取をしていないことに気づいた。氷を持って帰って皆に採取をしていないことを話す。


「忘れていましたわ。最近は攻略速度を優先していたので、採取はあまりしていませんでしたわね

「山頂は山の地肌が出ている場所があって、そういう場所で採取するのかな?」

「採取できるのは山頂だけとは思えませんわ」


 山の麓で採取する場合は雪を掘り進めば採取はできそうだが、そこまでする冒険者は絶対いないと思う。採取はもっと簡単そうだが、簡単なのだと雪になる。雪が採取する素材だとすれば夏なら欲しいかもしれないが、それ以外の季節は要らなそうだ。


「採取については帰ってからジョーにでも聞いてみるか」

「それが良いですわ」


 氷が溶けてお湯ができたので、洞窟全体に酸素を供給するため、魔道具を起動する。酸素が十分に増えたところで、マスクを取って皆で飲み始める。ただのお湯だが、体が温まり美味しく感じる。顔の眉毛などが凍っていたのが溶けたのを感じる。


「俺たちは飛んでいるから余計に寒かった可能性もあるけど、顔も布で覆わないと凍傷になりそうだ」

「服が優秀なので凍傷になるような状態にはなりませんでしたが、用意した方が良さそうですわ」

「小さい物だし、使わなくてもあった方が良さそうだな」


 体が温まったところで、吹雪を超えた事で装備に問題がないか皆で確認をする。装備に問題がなさそうなので、ウェンディゴを倒すのか無視して進むのかを話し始めた。まずウェンディゴに襲われた場合で最悪の状況を想定していく。


「やっぱり、ウェンディゴから集団で襲われた場合が怖すぎるな」

「進行方向に居るウェンディゴを倒して進むしかありませんわ」


 ドリーとリオがほとんどの魔力を使っていないので、かなり魔力が余っているようだ。ベスの言う通りに、進行方向にいるウェンディゴはドリーとリオの魔法で倒していく事になった。


「それじゃ休憩が終わったら行こうか」

「エド殿、その前に洞窟の奥を見てみたいのですが、良いですかな?」

「洞窟の奥? そんなに奥まであるの?」

「見通せないくらいには深くまで続いているようですな」


 ウェンディゴに慌てた事で洞窟に入ったが、こんな場所に洞窟など不自然だと未だに感じており、俺は奥に行くのは躊躇する。俺はフレッドに何故奥に行きたいのか尋ねた。


「宝箱があるかもしれないと思ったのですぞ。宝箱がない可能性もありますが、奥深くまで続いているのは不自然ですな」

「宝箱か」


 以前宝箱が出たのはルーシー様を治した薬草を拾った時以来だ。それ以来ダンジョンで宝箱を見た事はない。ドリーが宝箱を見つけた時も特殊な位置に穴があって、中に宝箱が置かれていた。


「以前の状況に似ていると言えば似ているのか」

「拙者もそう思いましてな」

「今宝箱にそこまでこだわる必要もないけど、洞窟内はそこまで寒くないし少し確認してみるのも良いかな」


 洞窟の奥にあるのが宝箱なら良いが、違った場合は洞窟の奥から魔獣が現れる可能性もあり、休憩中に襲われれば倒すのが大変だと休憩するにも危険がないか確認をしたいとベスが言う。


「言われてみればそうだな」

「ついでに宝箱も確認すれば良いですわ」

「そうしようか」


 確認をするため洞窟を少し奥に進んでみる事になった。まずは洞窟がどの程度続いているのか確認をする事にする。光の魔法を飛ばして奥がどうなっているか確認をする。


「今何か見えましたぞ?」

「私も見えましたわ」


 光の魔法を奥まで飛ばすと、俺には何も見えなかったが、視力が良いフレッドとベスが何かを見つけたようだ。何回か光の魔法を飛ばすが、フレッドとベスも見えた物が何かは分からないようだ。


「少なくとも宝箱ではありませんな」

「ええ。ですがクマやユキヒョウでもありませんわ」

「毛がなくて、もっと艶があるように見えますな」


 結局何かわからないと、襲われたら大変だと近づいて討伐する事になった。フレッドが盾を構えて進んでいくと、俺の視力でも何かが居るのがわかった。どう見たも宝箱ではないが、何者かは分からない。


「俺も見えたけど動かないね」

「拙者も動いた様子は今のところ見ていませんな」

「この距離で見えるって言うことはかなりの大きさだけど何なのか分からないな」


 フレッドが慎重に進んでいくと、徐々に謎だった物が近づいてきた。かなり近づいてもフレッドやベスでも何か分からないと、さらに近づいていく。目の前まで来たところで、六本の足があるのが分かった。


「横に倒れて足が三本見えるって事は合計六本で昆虫かな?」

「昆虫にしては大きすぎですぞ?」

「確かに。この距離であの大きさだと、俺たちより大きそうだ」


 フレッドがさらに近づいて剣で昆虫らしき物を触る。剣で触られても昆虫は一切動く気配がない。フレッドが注意しながら昆虫をひっくり返すと全体が分かるようになった。


「見た目はアリですな」

「アリにしては大きすぎだろ」


 アリは死んでいるようで、フレッドにひっくり返された状態でも動く様子はない。アリの大きさは丸まった状態で二メートル近い。本来は二メートルを超えていそうだ。しかもかなり強靭な顎を持っているようで、噛みつかれたら大変な事になりそうだ。


「どう見ても魔獣だと思うけど、何で動かないんだ?」

「もしかしたら次の階層の魔獣なのかもしれませんな」

「階層を超えている? 溢れた魔獣と言うことか」

「溢れていると言うより、ここで止めている可能性がありますな」


 レオン様が以前に、次の階層の魔獣を止めるために雪山があると仮説を言っていた。アリが冒険者のたどり着いていない山頂で動かなくなっていると言うことは、フレッドの説明でレオン様が言っていた仮説が証明された事になる。


「アリが死んでいるか確認したいな」

「死んでいるなら魔道具で回収できますな」

「回収してみよう」


 フレッドが盾を構えながら、慎重に魔道具を使うとアリは消えた。消えたということは、アリは死んでいたようだ。


「死んでたみたいだな」

「そのようですな」


 洞窟はまだ続いているようで他にもアリが居ないか進んでみるが、行き止まりになっている。アリは一体で他には何も無かったようだ。


「行き止まりになっているのか」

「このような一本道の洞窟は今までダンジョンで見たことがありませんな?」


 確かにこのように高さのない道はダンジョンで階段部分くらいしかなかった。先ほど死んでいたアリが通れば道が一杯になるような大きさ……一杯になる大きさ?


「もしかしてアリが掘った穴なのか?」

「…考えられなくもないですな」


 アリが掘った穴だとすれば行き止まりになっているのも、アリが掘るのを諦めた時点で止まっているなら説明がつくと皆に話すが、アンによって否定される。


「エド、行き止まりになっている壁が綺麗すぎます。アリが掘ったのならもっと傷が多いはずです」

「言われてみれば傷がないな」

「それにアリが死んでいた場所が不自然です。山肌に近い、私たちが入ってきた入口に近い場所で死んでいました」


 アンに言われたことで自分の考えに違和感を感じるようになった。山肌に近い場所で死んでいたのなら、山肌側に掘って行ったと考えられる。なのに奥は行き止まりになっている。何でだ?


「掘っていた方向が逆だとしたら何で行き止まりになっているんだ?」

「私にも分かりません」


 洞窟の掘られた向きが逆向きだとしたら、アリが外に出なかったのは寒さで死ぬからかと考えられる。皆と行き止まりに何故なっているか、話していても分からなかったが、ベスが何か気づいた様子で慌て始めた。


「急ぎ、きた道を戻りますわ!」

「え?」

「話は後ですわ!」


 ベスが慌てたように皆にこの場を離れるようにとせかし始めた。ベスに言われて俺たちはその場を離れ始めたが、ベスが何故そこまで慌てているのかが分からないのでベスに直接尋ねてみた。


「ベス、何に気づいたの?」

「ダンジョンは時間でリスポーンされますわ。それはダンジョン内の構造物も同じですの」

「あ」


 そうかこの穴もアリによって掘られたなら時間で修復されてしまう。行き止まりが綺麗な壁だったのも、ダンジョンがリスポーンして修復された結果なのか。つまり今この時にリスポーンが始まれば山の中に取り込まれるのか!


「急ごう。最悪すぐに飛び立つ事になりそうだ」

「いつ掘られた穴か分かりませんから、その方が良いかもしれませんわ」

「山の中に閉じ込められたら生きて戻れるとは思えない」


 急いで移動しながら俺は皆にベスが気づいた事を伝えていく。俺とベスが話を進めると、皆の顔色が悪くなる。山肌に近い穴の入り口に置いてあった荷物をまとめると、慌てて穴から飛び立つ。


「エド殿、飛び出しましたが何処を目指せば良いですかな?」

「最初は山頂を目指そう。それで見つからなかったら山頂付近から探して回るしかないな」

「了解致した」


 フレッドを先頭に、風に流されながらも前に進んでいく。ウェンディゴの存在感を確認しながら後方を警戒していると、偶然吹雪が吹いている雲のように白い層が見える。吹雪は上から見ると山を中心に円を描くように渦巻いている。


「凄いな」

「どうしましたの?」

「吹雪が上から見るとどういう状況になっているのかよく分かるよ」

「本当ですわね。よく通って来れましたわ」


 警戒しているがまだウェンディゴに気づかれた様子もなく、また俺たちが進んでいる先にもウェンディゴは居ないようだ。回るように山を登っているので、ほぼ全てのウェンディゴと戦う事になりそうだ。


「ウェンディゴはかなり上にいるんだな」

「そのようですわ。山頂を飛んでいるのかもしれませんわね」

「山頂に何かあるのか?」


 俺が山頂を確認しても何も見えないので、ベスに確認してもらう。ベスがウェンディゴ以外に何か飛んでいるのが見えると言う。


「何かまでは分かりませんが、ウェンディゴは何かを追っているように見えますわ」

「こんな場所を飛ぶって、また違う階層の魔獣か?」

「かもしれませんわね」


 風に流されながらも徐々に高度を上げていき、山頂がかなり近くなったところで、ウェンディゴが進行方向にいるようになった。ドリーとリオが風に飛ばされないように守られながらウェンディゴを倒していく。


「エド、飛んでいるのは虫に見えますわ」

「アリに続いて、また虫か」

「アリ同様にかなり大きいようですわ」


 俺にも見えるようになってきた虫は巨大なトンボと、トンボに似た何かの虫だ。虫をウェンディゴが攻撃しているが、ウェンディゴもトンボから攻撃されているようだ。


「ダンジョンの魔獣同士で戦っているのか」

「ここまで大規模に戦っているのは珍しいですわ」

「もしかして俺たちが目の前を通らなければ攻撃されないかもしれないな」


 ウェンディゴを倒すのは最小限にして山頂を目指して進んでいく。山頂付近には虫の死体が転がっている。回収してどのような魔獣か調べたいが、無理はしないで山頂を目指す。山頂に近づくほど魔獣の量が増えていく。


「ドリー、リオ、魔力は大丈夫か?」

「うん」

「問題ありません」


 俺も魔力を待機状態にして、ドリーとリオがウェンディゴを倒して進んでいると、トンボが俺に襲いかかってくる。俺は魔法でトンボを撃ち落とす。


「トンボの方がウェンディゴより動きが早い分強そうだ」

「魔獣とはいえ、この風の中あのような動きをよくできますわね」

「普通だったら吹き飛ばされそうだけど、魔法を使っているのかもしれないな」


 山頂はもうすぐだと俺たちは襲ってくるトンボや、進行方向にいるウェンディゴを倒しながら進む。


「山頂ですぞ!」

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― 新着の感想 ―
[一言] これはあれかな? ウェンディゴは次の階層から溢れた魔獣を狩る役割持ちだけど知能が低くて、空を飛んだり同じ階層の魔獣と戦っているせいで虫と誤認されたとか?
[一言] 次の階層は虫が多いって事なんかな? 蚊取り線香とか殺虫剤とか界面活性剤とか準備せんと(棒
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