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しくじり転生 〜うまく転生出来ていないのに村まで追い出されどういうこと神様?〜  作者: Ruqu Shimosaka


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ウェンディゴの特性

 昨日は魔法薬の錠剤を作り終わった後に、ジョーの魔道具製作を手伝ったが、気体を発生させる魔道具の作成は難航している。危ない気体が発生することもあり、試作する場合は部屋を考えた方が良いという結果になった。

 皆を迎えに行って、ダンジョンに向かう馬車の中で雑談していると、ベスから声を掛けられる。


「エド、酸素の事ですがお父様に報告しておきましたわ」

「伝え忘れてたな。ありがとうベス」

「いえ。私も忘れていましたわ」


 俺たちは魔法でどうにかできてしまうので、報告が必要だとは思っていたが、フレッドの事もあって忘れてしまったようだ。

 俺たちはダンジョン内に入ると雪山まで一気に進む。


「何回見ても凄い山だな」

「そうですわね。まずはウェンディゴを探しながら飛んでみますの?」

「そうしようか」


 落ちても問題ない高度で飛んでウェンディゴを探すが、クマは見つかるがウェンディゴは見つからない。他にも試したいことはあると、酸素を作って徐々に山の斜面を上がっていくと、突然後ろから存在感を感じて俺は振り返る。


「ウェンディゴですわ!」


 ベスの後ろにウェンディゴは居てベスに腕らしきものを振り下ろしているとこだった。ベスは咄嗟に避けたようだが、ふらついている。


「ベス!」

「少し触りましたわ。飛べない程ではありませんわ。それより攻撃を!」

「分かった」


 ウェンディゴの後ろに人がいないのを確認すると魔法の準備をする。前回よりも更に魔力量を減らした光線はウェンディゴを撃ち抜いて胴体に大きな穴を開けた。ウェンディゴは雪の上に落ちていく。


「やりましたの?」

「多分。ベスの体調を見たいから下に降りよう」

「分かりましたわ」


 皆で雪の上に降りると、まずはウェンディゴが死んでいるか確認をする。前回は急いでいたため回収してすぐに空に飛び立ったので気づかなかったが、解体した時同様にすごい存在感だ。存在感が凄いが故に、生きているのか、死んでいるのかが分からない。


「これは死んでいるのか?」

「拙者が回収してみますぞ」

「頼む」


 俺はフレッドに任せて魔法を待機させて警戒する事にする。俺たちが見守る中フレッドが盾を雪に突き刺してウェンディゴに近づいていく。フレッドが魔道具でウェンディゴに触れるとウェンディゴが消えた。


「回収できましたぞ」

「良かった。前回は緊急事態だったから気付かなかったけど、ウェンディゴを回収するのに死んでいるかの確認が難しいな」

「前回以上に体が残っているので存在感が強いのかもしれませんな。疑問は色々とありますが、とりあえずベス殿の体調を確認した方が良いですぞ」

「そうだな」


 俺はベスの体調を確認して魔法薬の量を調整する。見るだけでは分からないので、軽く動いて貰ったりして、ベスが三錠ほど飲んだところで俺はベスが回復したと判断した。


「かなり判断が難しいな」

「エドでも難しいのなら、普通の冒険者には判断するのは無理ですわ」

「何か判断基準になる魔道具を作るか、過剰に摂取した場合は排出するようにしないといけないかも」

「どちらも難しそうですの」


 俺たちだけ管理者になるだけでは後に続く冒険者が居なくなってしまうので、今後のためにも何か考えておいた方がよさそうだ。ウェンディゴに触れられたら何錠飲めば良いと決まっていれば良いが、ベスとフレッドでは明らかに体調の差があり、触れられた時間で奪われる栄養の量が違うのは明らかだ。


「ジョーにはすでに魔道具の製作を頼んでいるから、どうしようかな」

「お父様に相談してみるべきですわ」

「レオン様にか。確かに雪山の踏破に関する物だから、辺境伯として協会に依頼するかもしれないか」


 ベスと話し合った結果、魔法薬については帰ってから相談することにした。今はウェンディゴについて話し合いをする。


「ウェンディゴは気づいたら後ろにいましたわ」

「やっぱり魔法で存在感を消しているのかな」

「そうだと思いますわ。気づいたら手の届く範囲にいましたから驚きましたわ」


 俺から見てもベスの真後ろにウェンディゴがいて驚いた。その後ウェンディゴの攻撃からベスは避けられたと思ったのだが実際には攻撃が当たっていたようだ。


「俺からはベスはウェンディゴの攻撃を避けたように見えたけど、実際にはどの程度当たったの?」

「かすった程度ですの。それでも気持ち悪かったですわ」

「攻撃を受けると気持ち悪いのか」

「体の中を何かが通っていく感覚と同時に悪寒がしますわ」


 フレッドもベスの経験に同意している。ウェンディゴの攻撃は物理的に衝撃はないようで、かなり独特のようだ。独特といえば倒した後も大変のようだ、あの存在感では倒したか分からない。


「さっき回収した時にも言ったけど、存在感のせいでウェンディゴは死んでいるか分からないな」

「今にも起き上がってきそうでしたわ」

「不思議な生き物だよ本当に」


 内臓も見当たらないので、生き物であるかは微妙なところだ。内臓がないといえばスライムのような存在かもしれないが、ウェンディゴは人型なのが不思議な存在だ。それにスライムにはウェンディゴのように存在感は無い。


「存在感で思い出しましたが、解体した時のウェンディゴと、今回倒したウェンディゴだと、今回のウェンディゴの方が存在感が有りませんでしたかな?」

「そう言われてみるとそうかも」

「倒して残った部位が多かったからですかな?」

「そうかもしれないな。解体して小さくすると存在感がどんどん薄れていったから」


 ウェンディゴの体が多く残ったのは、今回はウェンディゴを倒すのに急がなかった事もあり魔力量の調整ができたからだ。今回の威力でウェンディゴを倒すことができるのなら今後はかなり早く魔法を打つことができそうだ。皆に今回使った魔力量を伝える。


「その魔力量であれば、私やフレッドでも使うことは出来そうですわ」

「飛んで移動することを考えると魔力は節約したいけど、ウェンディゴ相手にはそんな事も言ってられないか」

「そもそも雪山を一日で登り切れるとは思えませんわ」

「魔力の節約を考えるより安全を優先か」


 泊まる事を前提にするなら泊まり方が問題だ。泊まる用の道具は色々と準備しているが、他の階層以上に自由に動き回っている魔獣が怖い。皆に相談して、試しに雪でビバークするように雪を洞窟状に掘ってみる事にする。


「今回は魔法で掘ってしまうけど、この形が良さそうなら道具を持ってこないとな」

「このような方法があるのですな」

「雪を積み上げて掘る方法もあるけど、クマだと側面を壊しそうだからな。だったら入り口を決めて穴を掘って、入り口だけを監視して倒してしまった方が簡単そうだ」


 かまくらのように雪を積み上げて中に空間を作る方法は、ベスもフレッドも知らないようだ。冬の一番寒い時期をほとんど船の上と、メイオラニアで過ごしたのでアルバトロスの冬を知らないのでベスに雪がどの程度積もるか聞いてみた。


「雪は降りますが、この雪山のような雪ではありませんわ。もっと水分を含んだ雪で、すぐに溶けてしまいますわ」

「それじゃ雪を使う方法をアルバトロスの人は知らないのか」

「雪を使う方法を知っているような、雪が大量に降る地域からアルバトロスに来るのは船乗りくらいだと思いますわ」


 雪の中に、ビバークと言うには広すぎる洞窟状の穴を掘り終わってから気づいたが、酸素の魔法を止めなければ常に魔法を使い続けるため、魔力の回復ができない。このままではジョーたちに頼んだ魔道具が完成しないと、俺たちは雪山を踏破できなくなってしまう。俺は皆に相談すると、皆悩み始めた。


「すでに寒いのですから、イフリートを倒した時のように、酸素とやらを凍らせて徐々に溶かすのはどうですな?」

「酸素を凍らせた物は燃えるというか、爆発すると思う。すごい危ないよ」

「…エド殿、魔道具作った方がいいと思いますぞ」

「時間かかりそうなんだよ」


 色々と話し合うがどうにかなりそうな案は出ない。リオから耐えられる場所から一気に頂上を目指すのはどうかと言われるが、俺としてはあまりやりたくはない。


「俺でも低酸素状態で体が持つか不安があるから、リオやドリーだと体が持たない可能性があるんだ。できれば酸素は供給したままにしたい」

「体に負担がかかるのですか」

「そうなんだよ。だから限界を攻めるような攻略はしたくないな」


 皆の意見を聞くと、やはり酸素を作り出す魔道具を作ってから、雪山を攻略した方が良さそうだと言う話にまとまった。登山用の装備も無しに登れるような山では無さそうだ。


「ダンジョンの攻略速度は十分に早いですわ。焦る必要はありませんの」

「そうだね。今までが凄く早く攻略していたから、少し焦っていたかも」

「最悪、別のダンジョンに向かいますわ」


 王都のダンジョンなどは攻略実績があるとベスが教えてくれた。他にも何箇所か攻略されたダンジョンがあり、そちらに移動する事も考えても良いとベスは言う。


「攻略された情報があるとしても、難しいのは変わりませんの。それにダンジョンを最初からやり直しになるので、あまりダンジョンを移動はしませんわ」

「ダンジョンを移動すると最初からになるのか」

「そうですわ。私たちなら場所を選んで移動するのも手かもしれませんが、ダンジョンを移動するにはまだ早いと思いますの」


 確かにまだ雪山を探索したのは実質二回で、ウェンディゴの対策もできてきたのだし、結論を出すのはまだ早そうだ。


「確かにそうだ。雪山の調査を続けようか」

「ええ。では外に出ますわ」


 俺たちは雪で作った洞窟を出ると、空に飛び上がる。ベスのようにウェンディゴの攻撃を避けられれば墜落することは無さそうだと、今回はもう少し高度を上げて飛んでウェンディゴが現れるか確認をする。


「きた!」


 飛んでいると後ろから存在感を感じて、魔法の準備をしながら後ろを確認すると、一番後ろにいるベスの後ろにウェンディゴがいる。俺はウェンディゴの更に奥を確認して、ベスがウェンディゴから離れたところで、用意しておいた魔法を打ち出す。


「ベス、大丈夫だった?」

「今回は攻撃される前に避けれましたわ」


 ベスの無事を確認した後に、ウェンディゴを回収して再び空に飛び上がる。連続でベスが狙われたのは理由があるのか皆で話し合っていると、ベスが何か気づいたようだ。


「私の時だけではなく、アンの時もそうですが、一番後ろにいる者がウェンディゴに襲われていますわ」

「一番後ろか。今度は俺が一番後ろになってみるよ」

「エド、構いませんが、ウェンディゴの気配がしたと思ったら一気に逃げると、ウェンディゴの攻撃が当たらないようですわ」


 ベスの助言に従って逃げられるように意識をして飛んでいると、背後から凄まじい存在感を感じて驚く。ウェンディゴは近いとこんなに存在感があるのか! 背後を振り向く事もなく加速して存在感を振り切るように動く。ドリーが魔法を使うと同時に存在感が下に落ちていくのを感じる。


「近いと想像以上に存在感を感じて緊張するな。ベスの助言がなければ動き出すのが遅かったかもしれない」

「確かに後ろに現れた時が一番存在感を感じたかもしれませんわ」


 落ちていったウェンディゴを回収して再び空を飛び始める。ベスの予想通りに一番後ろにいる俺にウェンディゴが襲いかかってきた。ほぼ確定でウェンディゴが後ろにいる人を襲うと分かった。


「一番後ろは注意をする必要があるな。襲われると分かっているなら、集中力が必要だから途中で交代した方がいいかも」

「ウェンディゴに襲われるのを体験しておくといいかもしれませんわ」

「確かに逃げるって意識をしてれば逃げられるようだし、練習しておくのも良いかもな」


 交代してウェンディゴの攻撃を避ける。アンの魔力が足りなくなってきたところで、全員が練習は出来なかったが、十分戦ったので俺たちは帰ることにする。


「結構な範囲を移動したのに、ウェンディゴって意外と襲ってこないよね。ウェンディゴ自体の量はそこまで居ないのかな?」

「私たちが飛んでいるからウェンディゴが気づいたとしても、私たちの移動速度に追いつけないのかもしれませんわ」

「確かに飛んでいたら、雪の上にいるウェンディゴは気づいたとしても追いつけないか」


 ダンジョンを出てからどこにいくか迷う。ウェンディゴを解体場に出しても解体が難しそうだ。


「エド、今回分と前回分のクマやユキヒョウも解体していませんわ」

「それもあったな。一度解体場へ行ってクマとユキヒョウをお願いするか。その時にウェンディゴについて聞いてみよう」

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