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雪山を探索

 ダンジョンは強い魔獣を出てこないようにしている仕掛けだとすると、雪山で魔獣が出てこないようにしていると考えられる。雪山の次にいる魔獣はどのような強さなのだろうか。


「あくまで予想なので、絶対に強い魔獣がいるとは限らない」

「ですが強い魔獣がいる可能性は高いですわ」

「ああ。なので入り口に辿り着いたからといって油断はしないように」

「分かりましたわ」


 確かに今まで湖まで到達できれば魔獣は居ないと、余裕があった。だが湖で魔獣が止められないと考えたら、湖の入り口に辿り着いたとしても油断はできないのか。


「私が言えるのはその程度だな」

「お父様、参考になりましたわ」

「十分に気をつけているとは思うが、一番困難な場所だいつも以上に気をつけるのだぞ」

「心得ますわ」


 レオン様にお礼を言って、ジョーに装備について聞きに行くために協会に向かう事にする。


「ジョー、聞きたい事があるんだけど」

「エド、どうしたんじゃ?」

「雪山の装備が欲しくてさ、色々あるとは聞いてるんだけどどんな物があるのかなって」

「ああ。エドたちもとうとう雪山なんじゃな」


 ジョーが色々と装備を用意してくれる。雪の上や氷の上を移動するので、アイゼン、スノーシュー、ピッケルような物があり、意外と魔道具以外の物も多く、ジョーが持っているのが不思議だ。


「ジョー、魔道具が少ないみたいだけど何でジョーが持ってるの?」

「エドたちのために揃えていたのもあるんじゃが、魔道具にできないかと相談を冒険者やギルドから相談を受けるので、常に予備が手元にあるんじゃ」

「俺たちの為に、ジョーありがとう」

「気にする必要はないぞ」


 ジョーが魔道具にしてない理由を詳しく教えてくれた。体重でつける魔法が変わったり、人によって欲しい効果が違うので完成品にはしていないようだ。


「エドたちも欲しい魔道具に変えるんじゃぞ」

「分かった」


 俺たちの場合は移動方法がどうなるか分からないが、飛んで移動する事になると予想できる。道具を魔道具にするのは更に特殊な方法になりそうだ。明日試してみてどのような魔道具にするかは決める事にしよう。

 その後は雪山をどうやって攻略するか皆で考えていると時間が経ち、明日もダンジョンに向かう事を考えて早めに解散する事にした。


 今日は雪山を調査するために色々と装備を揃えた。空を飛んで移動するのが安定すれば良いのだが、どうだろうか。

 俺たちはダンジョンを進み、雪山まで辿り着く。


「最低限の戦闘しかしてないから魔力はあるから、まずは飛んでみるかな?」

「そうですわね」


 雪山がどのような場所か分からないので、斜面の近くを飛んで移動する。


「意外と余裕だな。でも、斜面の近く飛んでいるけど、落ちたらどっちにしろ大変な事になりそうだ」

「転げ落ちて行きそうですわ」

「斜面から遠い方が良いかもしれない」


 俺たちは飛んでいる高度を上げて、どこまで飛べるか試していると、リオが調子が悪いと言い始める。


「リオ、大丈夫?」

「頭が痛いです」

「一度山に降りようか」

「すみません」


 山に降りてリオの症状を俺、ドリー、アンで確認する。リオの症状を確認していると、心当たりができて皆にもリオと同じような頭痛や吐き気があったりしないかと尋ねると、アンとドリーが少しあると言う。


「これは高山病かも」

「高山病ですか?」

「要は酸欠だ。ダンジョンだから酸素が薄くなることはないと思ってたけど、敢えて酸素まで薄くしているのか?」


 アンが高山病という名前を知らないようなので、アルバトロスでは高山病は知られていないようだ。アルバトロスの近くにこの山ほど高い山はないので、当然かもしれない。

 俺が魔法で酸素を作り出すとリオの調子が回復した。やはり高山病だったようだ。


「これは魔法で酸素を作らないと頂上まで行くのは無理じゃないかな」

「他の冒険者たちもこの高さで高山病とやらになるのですか?」

「いや、身体が順応するから俺たちみたいに飛んで急激に高度を上げなければ、ここまで酷くはならないと思う。だけど山頂まで行こうと思ったら酸素の魔法は必要かも」

「それならギルドに報告すべきでしょうね」


 レオン様やギルドでライノから説明を受けなかったという事は、高山病が知られていない可能性が高そうだ。酸素を魔法で作るのを教えるのは良いが、酸素も高濃度になれば毒なので、魔法を使う場合の注意をしっかりしないといけないだろう。


「リオも回復した様子だし、一度戻ろうか」

「僕はまだ進めますよ?」

「飛びながら酸素作って進むと、俺たちの魔力量でも山頂まで魔力が足りるか怪しいかもしれない。それの調査をもう少し山の下の方で試そう」

「確かに、調査するならこの場所より階段近くが良さそうです」


 ウェンディゴがどのような魔獣なのか一度は戦ってみたい。ウェンディゴの攻撃で体力を奪われたとしても、もう少し階段近くの方がダンジョンから帰りやすそうだ。


「空からクマは見えるけど、ウェンディゴとユキヒョウは全く見えないな」

「そうですわね。視力が良くなりましたが、視力が良くなっても景色と同化されたら分かりませんわ」


 階段近くで魔力の消費量を確認していると、ベスが何かを見つけたようだ。


「冒険者ですわ」

「俺にはちゃんと分からないけど、あの点かな?」

「クマとは少し色が違うと思うのでわかると思いますの」

「なんとなく分かるよ」


 ベスは冒険者がユキヒョウと戦っているようだと教えてくれた。ベスが冒険者の戦い方を話していると慌て始めた。


「ウェンディゴですわ!」

「え? この距離で分かるの?」

「偶然分かりましたわ。それより冒険者が危ないですの」

「助けに行こう」


 俺たちが近づいていくと冒険者がユキヒョウと何とか戦っているのが見える。空から魔法で援護したり、ユキヒョウの魔法を奪って、冒険者が戦いやすいように援護をする。

 冒険者たちがユキヒョウを何とか倒したところで、俺たちに声をかけてくる。


「助かった!」

「ウェンディゴが出たようですが大丈夫ですか?」

「二人体力を持って行かれた、帰るしか無いようだ」

「階段まで送りましょうか?」

「すまない。頼めるか?」


 冒険者は俺たちの人数と同数だったので乗せて飛び立ったところで、アンの後ろにウェンディゴだと思われる何かが居るのに気づく。


「アン!」


 アンを守るようにフレッドが盾を構えた。フレッドがウェンディゴの攻撃を受け切ったと思ったがフレッドは力が抜けたように落ちていく。


「フレッド!」


 俺はウェンディゴに向けて光線を打ち出す。ウェンディゴに当たったようで、半透明な何かが雪の上に落ちる。

 俺はフレッドの無事を確認するために雪の上に降りる。


「フレッド、無事か?」

「何とか魔法格闘術は使えましたな。ですが凄まじく気分が悪いですぞ」

「魔力に問題がないのなら早くダンジョンから出よう」

「承知致した」


 冒険者を乗せているのでフレッドを一緒に載せられず、何とか頑張って階段まで戻ってくる。先にウェンディゴに襲われた冒険者に謝られる。


「私たちのせいだ。すまない」

「いえ。助けると決めたのは俺たちですから」

「本当に助かった」


 このまま一緒にダンジョンを出る事に決めて、ダンジョンを進む。湖まで辿り着くと、再び冒険者から感謝をされ、何かあれば手伝うので言って欲しいと言われる。


「手伝うにしてもウェンディゴの攻撃から回復しないと手伝うのも難しいがな」

「ウェンディゴの攻撃はそんなに長引くんですか?」

「長いと一週間近くかかるな。早く回復したいのならたくさん食べる事だ」

「食べるんですか?」

「ああ。それが一番早いと分かっている」

「分かりました。ありがとうございます」


 フレッドは有り得ない量を食べるので、ウェンディゴの攻撃からすぐに回復するかもしれない。湖まで来れば草原は余裕があるため、冒険者とダンジョンを出るまで話をしながら進んでいく。


「見た事ないと思ったら、雪山に来たばかりなのか。魔法使いがそこまで多いのなら雪山も越えられるかもしれないな」

「そうだと良いんですが。簡単には行かなそうです」


 ダンジョンを出たところで冒険者と別れて、俺たちはレオン様の屋敷へと向かう。


「フレッド、どんな感じ?」

「色々合わさったような気分の悪さですな」


 屋敷に着くまでにフレッドを見るが、体力が奪われたというより、何かの病気のように見えるのだが、何かが分からない。屋敷でしっかりと診察をした方が良さそうだ。

 屋敷に着くと、ベスがメイドさんに命令をして部屋を用意させてくれた。フレッドをその部屋へと運び込む。俺、ドリー、アンでフレッドの状態を見ていく。


「こんなに症状が出ていたら何かが分からないな」

「エド、フレッドは大丈夫なのですか?」

「アンも聞いていたと思うけど、ライノからウェンディゴの攻撃は致命傷にならないと言っていたから、フレッドも問題はないと思うんだけど、これは体力が減っているとは違うと思うんだよな」

「そうでしたね。私のせいでこのような状態になったので動揺していたようです」


 アンの動揺も分かる。イフリートの時を除いてフレッドがこのように倒れる事は初めてだ。再びフレッドの病状を確認していく。


「そう言えば冒険者が沢山食べれば治りが早いって言ってたな」

「言っていましたね。ですが何故でしょうか? 病気だからと言っても食べたからと言って早く良くなるとは思えません」

「そうだよね。でも食べ物か」


 フレッドの症状を一つずつ確認していくと気づいた。全ての症状が適合する病気を探していたが、これは全て別の病気が元だとすれば納得がいく。


「これビタミン欠乏症だ」

「最近エドとドリーが作ったものですか?」

「そう。どうやってかは分からないけど、ウェンディゴは栄養だけ吸い取ってるみたいだ」

「そんなことが可能なのですか?」

「実際にフレッドがこの症状だし、ビタミンを処方してみよう」


 ビタミンを飲んですぐに劇的に良くなるものではないが、フレッドにビタミンを普通より多めに摂取してもらう。あとは食事を大量に食べれるだけの体調が戻れば、フレッドならすぐに回復すると、俺は診断の結果をフレッドに伝えた。


「フレッド、調子が戻るまでは安静にするんだよ」

「承知致した」


 ベスがフレッドにしばらく屋敷に泊まるように言って、フレッドも動ける状態ではないと思ったようで、ベスに同意し感謝している。ベスがメイドさんに事情を説明すると、メイドさんがフレッドの食事管理をしてくれるようだ。

 フレッドが寝れるように俺たちは部屋を出る。


「フレッドが回復するまではダンジョンは中止だね」

「ですわね」


 先ほどの冒険者にもビタミンを届けたいが住んでいる場所が分からないので、ギルドに届けてもらう事にする。ビタミンはトリス様とルーシー様によって薬師組合で量産されているので、すぐに手に入るだろう。

 俺がギルドに向かうつもりだと言うと、フレッドが心配なのでアン、ドリー、リオが残って、俺とベスのニ人で組合に寄ってからギルドに向かう事にする。俺とベスで馬車に乗って移動していると、ベスが話しかけてきた。


「ウェンディゴの攻撃は、盾を突き抜けて攻撃できると思いませんでしたわ」

「フレッドってやっぱり盾で防御していたよね?」

「ええ。盾で防御していましたわ」


 ウェンディゴはかなり特殊な魔獣のようで相手をするのは難しそうだ。

 組合でビタミンを買って、ギルドに向かう。ギルドでライノに今日のことを伝えて、ビタミンを冒険者に渡して欲しいと伝えた。


「この薬ですぐに治るのか?」

「どの程度奪われているか分からないんだけど、吸収する時間が必要だから、すぐには無理かも」

「その場で回復するような物ではないか」

「それは無理だね」


 今まで分かっていなかった攻撃が多少分かっただけでもありがたいと、ライノが俺にお礼をしてきた。


「偶然分かっただけだから」

「薬があるだけでも助かるな。瞬時に回復できれば雪山の攻略も安定しそうだが、今後に期待か」

「瞬時に回復か」


 ビタミンを一瞬で吸収したところで意味はないから考えていなかったが、魔法薬にすれば可能かもしれない。ライノに考えを伝えると協会に依頼してみると言う。


「今後絶対に必要だからな。依頼をするだけの価値はありそうだ」

「確かにフレッドでも一撃で倒れたから、ウェンディゴから身を守るのは難しそうだ」

「正確には分からないのだが、ウェンディゴは触れた時間が長いほど重症になると言われている」

「なるほど。時間なのか」


 フレッドは盾で身を守ろうとしたから重症なのか。

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