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ドラゴンが街道を走る

 俺たちは移動し始めたドラゴンやメガロケロスを追いかけて森の外へと出る。


「駆け足じゃないから追いかけられたけど、森の中だから流石に追い越すのは無理だったな」

「先にお父様がドラゴンが出てくるかもしれないと、注意しておいたのは良かったですわ」

「そうだね」


 ドラゴンやメガロケロスは森を出たところで止まっている。次は何処に行くか分からないから止まっているのかもしれない。次の目的地を決める前に連絡をした方が良さそうだ。


「レオン様、先に騎士を集めてお願いを聞いた方が良さそうです」

「そうだな。騎士を集めるので少し待って貰おう。災害級の魔獣が出たと聞いた時点で騎士には集合するように命令してある。すぐに騎士は来れるだろう」


 レオン様はそういうと、森を警備していた騎士に命令している。ベスが騎士にブラシを持ってくるようにと伝えると、騎士は理解したのか頷いている。あの騎士は一緒にターブ村から帰ってきた騎士の一人か。


「これでどうにかなりますわ」

「後は待つだけか」

「と言うか、私たちの装備が必要ですわ」


 すっかり忘れていたが今日はダンジョンに行っていた訳ではないので、最低限の装備しか持っていない。


「レオン様、急ぎ出てきたので装備がないです」

「それはいかんな。一度戻って装備を取ってくるのだ。下手したらこのまま出発する事になる」

「分かりました。取りに帰ります」


 ガーちゃんにも一度戻って装備を取ってくると伝えた後に、俺たちは馬車に乗ってアルバトロスへと戻る。俺は一つ気になっていた事があって移動中にフレッドに尋ねる。


「フレッド」

「なんですかな?」

「ガーちゃんってオスかメスどっちなの?」


 今更ながらにガーちゃんの性別が気になったのだ。メガロケロスはツノで判断できるが、ドラゴンは性別の判別ができていなかった。


「ん? オスですぞ。エド殿は知らなかったのですかな?」

「オスだったのか。流石に性別までは判断できなくて分からなかったよ」

「拙者は声と見た目で分かりましたぞ」

「それもドラゴン族だから分かったのかな?」

「なるほど。拙者はドラゴン族だから分かっただけなのですな」


 ガーちゃんの性別を教えてくれたフレッドにお礼を言うと、フレッドからも違和感なく理解できていた事が分かったとお礼を言われた。

 話をしていると、アルバトロスの中で順番に装備を取りに戻り、皆の装備が揃ったところで森へと再び向かう。


「レオン様、戻りました」

「騎士たちも揃っている。協会の魔法使いやギルドの冒険者も直に揃うだろう」

「間に合ったようで良かったです」

「作戦の要だから置いてはいかんさ。それに指揮は今回もベスに任せる予定だ」


 確かにベスが行くなら二人が行く必要はないか。レオン様がベスに権限を移して、ベスが辺境伯代理として指揮を取ることになった。


「ガーちゃんが居れば余裕ですわ」

「気を抜くなよ?」

「気は抜きませんが、ドラゴンとメガロケロスを止められるかの方が心配ですわ」

「それに関しては騎士たちが機嫌を取っている」


 ドラゴンとメガロケロスを確認すると、確かに騎士たちにブラシで綺麗にされている。機嫌取りにレオン様が獣医も同伴させるつもりだと言う。確かにいれば機嫌が良くなりそうだ。


「獣医がドラゴンとメガロケロスを見れるかは分からんがな」

「確かに普通の獣医はそもそも魔獣を見ませんわ」

「そうだな」


 獣医の知識が役に立つことを祈ろう。レオン様とベスは災害級の魔獣が出た位置や、途中で合流することになる騎士との待ち合わせ場所を話し合っている。


「男爵領に繋がる街道のメガロケロス側の街で騎士は待っている」

「分かりましたわ」


 皆が揃うまでガーちゃんに子供のドラゴンやメガロケロスが生まれたら見たいと伝えておく。親の警戒心があるのですぐには見せて貰えないだろうが、言っておけばそのうち見せて貰えそうだ。


「揃ったようだな」

「お父様、行って参りますわ」

「気をつけるんだぞ」


 メガロケロス領は広いので移動に何日も掛かる。なので冒険者や協会の魔法使いも馬に騎乗しており、かなりの速度で街道を移動していく。ドラゴンとメガロケロスを中心にして移動しているが、とても旅人から目立っているのがわかる。俺はメガロケロスに乗っているので、旅人とよく視線が合うし、指まで差している。


「目立つね。さっきから俺たちの進行を邪魔しないように脇に避けている人たちが、ドラゴンやメガロケロスに指を差してるよ」

「見ることのない光景ですから仕方ありませんわ。以前のように人に見つからないように移動していたら、倍以上の日数がかかりますわ。急ぐのなら街道で行くしかありませんわ」

「絶対に噂になるよね」

「覚悟の上ですわ」


 災害級の魔獣が走っているのだから噂になるし、その上魔獣を守るように騎士たちが取り囲んで、魔獣の上には人が乗っているのだ。噂になるのは諦めるけど、フィル師匠のように俺たちが歌にはなりませんように。


 三日移動すると、目的地になっている街へとたどり着いた。この街を進んだ先が男爵領になっているようだ。


「急いでも三日はかかるのか」

「街が無事で安心しましたわ」

「サイクロプスは男爵領からまだ出てきてないって事かな?」

「分かりませんわ。街で待機している騎士に聞きますわ」


 騎士に聞こうにも、俺たちは人数が多い上に、ドラゴンとメガロケロスが居るので当然街の中には入れない。騎士を呼びに行くかとベスと話していると、街から騎士が走ってきていると周囲にいる騎士が伝えてくれた。


「目立つから来てくれたのか」

「ガーちゃんたちを連れて街の中には入れませんから、助かりますわ」


 街から来た騎士はベスの前までやってきた。騎士は女性で年齢も結構行っているように見える。


「クリス、久しぶりですわ」

「エリザベスお嬢様、お久しぶりです」


 どうやら騎士はベスの知り合いだったようだ。クリスさんという騎士はサイクロプスはまだ男爵領に居座っていると教えてくれた。


「森に帰った訳ではなく、まだ男爵領ですの?」

「はい。次に襲われる予定だった村の中に大量に食料を用意しておきました」

「食料を食べていて動かないという事ですの」

「監視させている騎士からはサイクロプスが動いていないと言っているので、その通りかと」


 サイクロプスに視認される距離まで近づくと襲われる危険があるので、遠距離から確認しており、実際に食べているかは分からないとクリスさんが話してくれた。


「被害を抑えられているのなら良かったですわ」

「可能な限りは抑えていますが、食料を食べ終えれば街道を進み始めることが予想されます」

「その前に倒しきりたいですわ」

「はい」


 ベスが報告を聞き終わったところで、俺にクリスと呼んだ騎士を紹介してくれる。


「エド、彼女はクリスティン、お祖母様の幼馴染ですわ」

「クリスティンです。是非クリスとお呼びください」

「エドワードです。エドと呼んで下さい」


 俺はクリスティンさんをクリスさんと呼んで良いいのか、年齢差があるので疑問に思う。


「クリスさんと呼んで良いのですか?」

「ジョーから皆様の事は手紙で聞いていますので、是非クリスと」

「ジョーから?」

「ジョーは私の夫ですから」

「え?」


 クリスさんがジョーの奥さんなのか。以前に簡単には会えないと言っていたが騎士だったのか。それにジョーがメアリー様と気軽に喋っていた理由が何となくわかった。クリスさんを通して元々知り合いだったのかもしれない。


「ベスは知ってたの?」

「ジョーと結婚している事は最近聞きましたわ。ジョーには会った記憶がないのですが、ですがクリスはお祖母様の幼馴染なのもあって、私とも顔を何回も合わせていますわ」

「同時に会った事がなかったのか」

「ええ。クリスは騎士としてメガロケロス領を動き回っておりますから」


 クリスさんはメガロケロスの騎士でもかなり高い地位のようだ。それなら家臣としてジョーと共にレオン様やトリス様に挨拶くらいしてそうだが、何故ジョーが会わなかったのか不思議に思って、クリスさんに尋ねてみた。


「ジョーは辺境伯の集まりに出れば、爵位を薦められるから面倒だ、と言って出ないので、私だけが集まりに出席していました」

「ジョーなら確かに言いそうかも」


 クリスさんと会話をしているところで、ベスから話しかけられる。


「ところでエド」

「ベスどうかした?」

「エド、今名前を名乗るのを失敗していましたわよ?」

「え? あ!」


 そうかエドワード・フォン・メイオラニアと名乗らないとダメだった。


「クリスさん、すいません。俺の名前はエドワード・フォン・メイオラニアです」

「メイオラニアですか?」

「クリス、エドはメイオラニア辺境伯の養子になりましたわ」


 どうやらクリスさんには養子になったことが伝わっていなかったようだ。


「それは、おめでとうございます」

「ありがとうございます」


 俺はなんて返すのが正解か分からずお礼を言っておく。養子になってからも普段の生活が変わらないのでまた忘れそうだ。今度から名前を名乗る時にメイオラニアを忘れないようにしないと。


「辺境伯の養子になられたのも凄いですが、このドラゴンとメガロケロスも凄い」

「クリスはドラゴンとメガロケロスについては、お父様から聞いておりましたの?」

「はい。一時的にアルバトロスで警備を頼むかもしれないと、レオン様から言われておりました。ところでドラゴンとメガロケロスを連れてきたと言うことは、もしや?」

「戦闘に参加しますわ」


 ベスが参加すると言うとクリスさんは驚いている。ベスが更にドラゴンとメガロケロスの状況を説明すると、クリスさんは顔が引き攣っている。


「エリザベスお嬢様、問題はないのですか?」

「無いとは言い切れませんが、これが被害を一番少なくする方法ですわ。ここまでの道のりでも休憩中に機嫌取りをかなりしていますの。それに人に向かって魔法を使うとは思いませんわ」

「エリザベス様がそこまで言われるのなら私は問題ありませんが…」


 人にはドラゴンやメガロケロスの機嫌なんて普通分からないので、クリスさんのようになるのも理解できる。だが、俺たちにはフレッドが居るので、フレッドがドラゴンの機嫌がかなり良くなっていると言っているし、ガーちゃんからも走り回った事で気が紛れたようだと教わっている。


「それでエリザベスお嬢様、作戦はどのように?」

「移動中にドラゴンに意見を聞いたり、騎士たちと相談したのですが、サイクロプスを逃がさないようにしますわ」

「逃がさない?」

「ドラゴンのガーちゃんがサイクロプスはドラゴンを見たら逃げるだろうと言っていますわ。向かってくる場合はダンジョンから溢れた魔獣の可能性が高いようですの。サイクロプスが向かってくる場合は簡単に倒せると言っていましたわ」


 俺たちもガーちゃんから聞いた時は驚いたのだが、ドラゴンからするとサイクロプスはそこまで強い魔獣では無いようで、同数のサイクロプスなら確実に勝てると言われた。なのでドラゴンの三倍以上にサイクロプスがいれば向かってくるかもしれないが、二倍程度なら逃げ出すとガーちゃんは予想していた。


「災害級の魔獣が逃げるのですか?」

「私も驚きましたが、サイクロプスのような頭が良い魔獣は逃げるようですわ」

「そうなのですか…」


 サイクロプスを逃したら他で暴れる可能性があると、今回は逃がさないように立ち回ることになったとベスが説明した。


「逃がさないように立ち回るとはどうするつもりなのですか?」

「ドラゴンの魔法が当たらない範囲から魔法や弓で足止めしますわ。それと私は飛んで上空から指示しますわ」

「飛んでですか」

「ええ。以前似たような事をしたのですが、かなり効果がありましたの」

「分かりました」


 ベスは空から合図の方法をクリスさんに伝える。クリスさんは合図を街にいた騎士たちに伝えると言う。


「エリザベスお嬢様、出発はいつ頃に?」

「出発ですか。サイクロプスがいる村までの距離は?」

「今から出ますと夜中になるかと」

「地形が分かりませんから今日は休んで、明日早朝に出発することにしましょう」

「かしこまりました」


 クリスさんが補給について聞いてきたので、水だけ貰うことになった。食べ物に関しては、収納の魔道具に入った食料があって問題はない。緊急だったので捌いていない動物や魔獣だが、捌く手間はかかるが食べるのに問題はない。


「それでは私は待機している騎士に伝えて参ります」

「クリス、頼みましたわ」


 クリスさんが馬に乗って離れて行った。

 話し合いが終わったところで、俺はドラゴンとメガロケロスの様子を見ると、獣医に指導されて騎士たちがドラゴンやメガロケロスを綺麗にしていた。何となくだが、ドラゴンやメガロケロスは満足そうに見える。

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