沼地の攻略方法
魔法でワニを倒す方法を模索すると、地面から突き上げるように魔法を使うのが正解のようだ。ワニの急所に当たる確率は低いが、ワニがひっくり返りはするので、矢か魔法で急所に当てられれば倒せるようだ。
「フレッドとベスの方が効率は良いな」
「遠距離からですと、ワニの急所に当てるのが難しいようですな」
「足止めにはなるから良いかな」
「そうですな」
ワニを倒して進み続けると、沼地の階段まで来てしまった。今日は沼地を行く予定はなかったのだが、余裕がかなりあるし、どのような場所か確認だけすることに。
「もっと汚い沼を想像してたんだけど、沼地っていうか湿原に近そうだね」
「そうですな。ですが草が多いので隠れる場所も多そうですぞ」
「確かに、草の中からワニが出てきたら怖いな」
泊まるのが濡れて大変そうだが、泥だらけになるような感じでもないので、少し安心できる。今日は沼地で戦う気は無いので、階段を上がってワニの階層へと戻る。ワニを倒して帰ってもいいが、採取をしてみようと、取れるものを採取していく。
薬草を採取しながら進んでいると、アンが鉱石というか泥を採掘して持って来た。
「鉱石はそこまで珍しい物ではありませんね」
「これは俺にも分かるかも、泥炭かな? 確かにこの階層で出ても困るな」
「そうです。泥炭ですね。薬草を採取した方が良さそうです」
泥炭は燃料として使えなくもないが、この階層で掘って利益が出るような物ではない。使い道もなくは無いが、価値に見合わないので、薬草だけを採取して進む事にした。逆に薬草は珍しいものが多く、採取する頻度がかなり多い。
「洞窟でこれなら沼地は凄そうだな」
「そうですね。楽しみです」
採取しながらダンジョンを進むと、時間は掛かったが、かなりの量の薬草を採取できた。時間も結構経過したのでダンジョンを出る事にした。
ダンジョンを出て解体場へと向かい、倒したスライムの出し方をギルド職員に相談すると、特殊な入れ物の中に出すように言われた。入れ物の中にスライムを出していくと、倒した量に驚かれた。不思議に思って聞くと、普通はこんなにスライムを倒さないらしい。
「倒した数に驚かれてしまった」
「魔力量の確認ですから、私たちでも普通はあのように倒しませんわ」
「そういえば、魔力は余裕だったな」
ドリーとリオにも確認すると、二人とも魔力量はかなり余裕があるとのことで、スライムを倒して移動しても問題が無さそうだ。ワニの方がワニを持ち上げるのに魔力を結構使っているが、それでも問題は無さそうだ。
「倒しながら進んでも問題なさそうですわ」
「本当に魔力量が凄いことになってるんだな」
「ようやく実感できましたの?」
「まともに使ったのが船だけだったから」
元々多いと言われていた魔力量だったのに、そこから更に増えたことで、とんでも無い魔力量になってしまったようだ。平均的な魔法使いの二人分以上の魔力量があるのかもしれない。
「エド、その魔力量なら泊まらないで沼地を越えられそうですわ」
「流石にそれはどうなんだろ?」
「私、フレッド、アンの魔力量が足りないですが、エド、ドリー、リオの後ろに乗せて貰えば可能かもしれませんわ」
「余裕がありそうなら試してみるか」
沼地に泊まる準備はする予定だったが、泊まらないで沼地を越えられるなら楽だろう。ベスの提案を試してみる価値はありそうだ。
「飛び続けるのはやってみたいな。成功するか分からないから、泊まる準備はしないとダメだろうけど」
「成功すればかなり楽になりますわ」
皆も試してみたいと言うので、どうやったら良いか相談する。
「そういえばアンはまだ空を飛んだことが無いんじゃ?」
「実は以前一緒に飛んだのが楽しくて、エレンさんにお願いして魔法を覚えるのに組み込んで貰って、練習をしていました」
「そうだったのか。それなら飛んで移動できるのか。後は時間の問題かな」
「そうですね」
沼地を抜けるのに時間が掛かるので、朝早めに出て夜までに帰ってくるか、夜が明けるまで安全な場所で馬車を待つかの案が出た。朝早めに出て夜までに帰ってこなければ馬車に帰ってもらう事にした。
「もし時間までに帰ってこれなくても、ダンジョンの外で寝るか、ダンジョンの中でも湖の周辺なら安全で寝やすそうだから、沼地で寝るよりは良さそう」
「そうですわね」
解体場から帰る前に馬車の御者に相談すると、朝早いのは対応してくれるとの事だ。待ち時間が長時間なら、一度帰って別の人が戻って来てもいいと御者が説明してくれた。確かに、御者に一度帰ってもらった方が良いかもしれない。予定が決まったら受付経由で御者に伝える事にした。
「試すことができそうだ」
「成功すればダンジョンを進むのが楽になりますわ」
「ズルしている気分になるな」
「これも才能ですわ。それに、ダンジョンで飛んでいる魔獣が居れば使えなくなりますわ」
それもそうだ。今は急いで管理者を目指すのだから、ズルとか考えないで先に進んだ方が良いだろう。
話し合いを終わらせて、馬車に乗り込んで協会へと帰る。協会でジョーとエレンさんにも飛んで沼地を越えることを相談してみると、可能ならやってみれば良いと言われた。
「エドたちの装備は、かなり先まで交換が必要ないんじゃ。魔獣との戦闘で苦労しないのであれば先に進むべきだと思うぞ」
「私もそう思いますよ」
確かにスライムとワニは苦労をしないで倒せているし、先に進むべきなのだと改めて認識する。ジョーにダンジョンで泊まる用の道具はどうすれば良いかと尋ねると、砂漠用に用意した道具が優秀なのでそのままで良いとジョーが教えてくれた。
「それなら特に準備は必要ないのか」
「そうじゃな」
明日にも沼地に行けるようだ。ずっと休んでいたような物だから調子は良い。
「明日試してみようか」
「良いですわね」
そういえば今日はドリーがエマ師匠と泊まりたいと言っていた事を思い出して、どうしようかとベスに相談する。
「それならば、屋敷に泊まると良いですわ」
「急に皆で泊まって良いのかな?」
「問題ありませんわ。それに、馬車も屋敷で出せますし、泊まっていた方が朝早くに出れますわ」
フレッドとアンに確認をすると、アンは伝えておけば問題ないと言うので、屋敷に行く前にバーバラさんに伝えにいく事になった。
「エドたちなら問題ないとは思うが、無理はしないんじゃぞ」
「分かった」
俺たちは馬車に乗ってバーバラさんに説明した後に屋敷へと向かう。
屋敷でトリス様やルーシー様に沼地を明日越えることを伝えると、二人には驚かれるが許可された。管理者を目指しているのだから止める気はないが、今回のように泊まる事を事前に伝えて欲しいと、トリス様とルーシー様の二人に言われた。
「それと沼地に泊まらずに飛んで移動しようと思っているので、俺たちが屋敷に泊まっても良いですか? それとドリーがエマ師匠と寝たいみたいなんですが」
「飛んでですか。確かにそれが出来るなら早く攻略できますね。泊まるのは構いませんよ」
トリス様の許可が出たことで、エマ師匠にドリーをお願いすると許可してくれた。
「ルーシーと一緒にエマの教育をしているのですが、ドリーも手伝ってくれますか?」
「うん!」
トリス様とルーシー様が一緒にいるのが不思議だと思ったが、トリス様だけでなくルーシー様もエマ師匠に教えていたのか。エマ師匠は大変そうだ。
俺たちは夕食を食べた後に、早めに出発するつもりなので、早めに休む事にする。
まだ日も登っていない早朝に起きると、準備をして馬車に乗り込む。
「眠いですわ」
「この時間に起きたのは久しぶりかも」
ドリーと一緒に寝ていたエマ師匠に見送られて、俺たちはダンジョンへと出発する。馬車を降りた後にベスが御者と話して、迎えの時間や、時間内に来なかった場合を再確認した。
「これで問題ありませんわ」
「なら行こうか」
ダンジョンを進み始める。以前と同じように極力戦わないで進んでいく。今回はワニが食べられそうなので、泊まる事を考えてワニを一匹解体して食べやすい大きさに切り分けていく予定だ。
「朝食を用意して貰ったから湖のところで食べようか」
「そうですわね」
警備している者たちに挨拶をした後、朝食を食べると警備している人に一言断ってから朝食を食べた。先に進もうとすると、警備している人から気をつけるように声をかけられ、俺たちは返事をして湖を渡る。
「スライムは無視して進むよ」
スライムがいる階層を抜けるとワニの階層にたどり着き、ワニを倒しながら進んでいく。ワニはひっくり返して倒さないといけないないので、時間がかかりつつも階段近くまでたどり着く。階段の近くでワニを倒したら解体して、昼食と晩御飯用に切り分ける。
「ワニを解体してみて分かったけど、背中は骨だらけなのか」
「私も知りませんでしたわ。槍が深くまで刺さらない訳ですわ」
沼地で上手く調理できるか分からないので、早いが昼食を食べてしまう事にする。ワニの味は確かに思っていたより美味しく、味付け次第では更に美味しくなりそうだ。
「それじゃ行こうか」
「最初は自分で飛びますわ」
アン、ベス、フレッドは、魔力を全部使う前に俺たちの後ろに乗ると事前に話し合っている。俺たちは空に飛び立ち、沼地を飛んで移動していく。ワームの時ほど高度を上げないので沼地の魔獣が動き回っているのが見える。
「あれがアンコウのような魔獣かな?」
「攻撃範囲に入らない限りは攻撃しないと言っていましたが、確かに微動だにしていませんわ。それにしても、結構な大きさですわ」
「草より背が高いから水深の深いところにいない限りは発見しやすそうだね」
アンコウは美味しいという知識があるので、あれも美味しいのだろうか? 気になるが、今は先を急ぐので沼地を抜けてから後で倒しに来ればいいだろう。
「すいません、そろそろ魔力が無くなりそうです」
「アンは魔法使いに成ったばかりですから魔力量が少なくて当然ですわ。むしろ魔法使いに成ったばかりにしては多い方だと思いますの」
「エレンさんからも多いと言われました。普通の魔法使い程度の魔力量があると」
沼地の中にある陸地に降り立って、アンはドリーの後ろに乗った。
俺は魔法使いにダンジョンで成った場合は魔力が少ないのかとアンに尋ねると、アンはエレンさんから聞いた話だと言いながら教えてくれた。
「生まれた時からの魔法使いに比べてかなり少ないようです。ですが、ダンジョンを進み続ければ魔力量が増えていくので、最終的には普通の魔法使いかそれ以上の魔力量になるとはエレンさんが言っていました」
「そうだったのか」
「エレンさんが予想していましたが、私はイフリートが強すぎたので、最初から有り得ないほどの魔力が有るのかもしれないと言われました」
俺たちの成長速度を考えれば、アンの魔力量が最初から多いのも納得ができる。
アンが普通の魔法使いと同じような魔力量だとすると、限界だった地点が普通の魔法使いが飛んで移動できる現実的な場所なのか。体感だが沼地を半分は行っていない気がする。そうなるとダンジョンを飛んで移動するのは難しそうだ。
「エド、私も降りますわ。まだ余裕がありますが、戦える分を多めに残したいですの」
「拙者も同じように、お願いしますかな」
沼地に降りると、フレッドを俺が乗せることも考えたが、リオがまだ魔力に余裕があると言うのでフレッドをリオに任せて、俺はベスを後ろに乗せた。
「本当に飛んで移動できそうですわ。エドは魔力量はどうですの?」
「まだ余裕があるよ」
「本当にすごい量ですわ」
俺と同じようにベスとフレッドも成長していると予想されるので、魔力ではなく身体能力が上がっていると考えると、どれだけ身体能力が上がっているのだろう。ベスとフレッドに尋ねると、分からないが相当力は上がっていると言う。雑談をしながら沼地を飛んでいると、ベスが声を出した。
「エド、湖に続く洞窟が見えましたわ」
「え? どこだろ?」
「あそこですわ」
ベスが指を刺している方向を見ても何も見えない。だがフレッドだけは違い、ベスと同じように洞窟を見つけたようだ。
「二人とも凄いな」
「身体能力に入れていいのかわかりませんが、視力も良く成っているようですわ」
「そうみたいだね」
ベスが指を刺している方向に進んでいくと洞窟を発見した。
「本当にあったよ」
「嘘は言いませんわ」
「嘘っていうか、遠すぎて分からなかったよ」
「船だと気づきませんでしたが、飛んでいると見やすいようですわ」
洞窟の前に俺たちは降り立って、湖がある場所まで移動する。
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