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しくじり転生 〜うまく転生出来ていないのに村まで追い出されどういうこと神様?〜  作者: Ruqu Shimosaka


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メイオラニアの治安

 アビゲイルさんがダンフォースさんから情報を聞き出したところで、俺たちの行動範囲が決まっていく。


「メガロケロスと比べると随分と治安が悪化しているんですね」

「これでも改善したのですが、治安の問題は喫緊の課題です」

「メイオラニアの魔法使いや兵士は多そうなのに、それでも改善しないんですか?」

「それが不思議なのです。一部に魔法使いを怖がらない勢力が入り込んで暴れ回っているのです」


 それはメガロケロスでも聞いたことのある話だ。ダンフォースさんにメガロケロスの貧民街で起きたことを説明した。


「もしかしたらメイオラニアからアルバトロスに流れて行ったのかもしれません。ですが間諜ですか。可能性はあると思っていましたが、明らかに間諜である人は今まで捕まっていないのですが…」

「メガロケロスとは違うんですね」

「はい。船員だったり商人だったりと、一般人だと聞いています。間諜をできるように訓練している様に見えるとは聞いていません。表の職業ではなく、裏の家業として入り込んでいる可能性があります。フィリップ様にお伝えすべきですね」


 ダンフォースさんはフィル師匠の側近だったと言っていたが、今でもフィル師匠の側近のような行動をしているようだ。何故フィル師匠の元を離れて協会長をしているか尋ねる。するとダンフォースさんは、協会長の成り手がいないから協会長をしていると言う。


「協会長の成り手って居ないんですか?」

「協会長に立候補する魔法使いは普通居ません。実際、協会長をやってみると面倒ですし」

「エド、お祖母様もアルバトロスの協会長をやりたくてやっている訳ではありませんわ」

「メアリー様も?」


 二人の話を聞いたところ、リング王国とツヴィ王国で微妙に事情は違うが、どちらも協会長としての事務作業だったり仕事をしたくないと、魔法使いたちが協会長になることを拒否するので、領主の一族から誰かが協会長になることが多いと言う。


「領主の一族が成るものだと思ってた」

「領主の一族が協会長になると問題になる事が稀にあるので、むしろ一族以外の協会長であった方が本来はいいですわ。ですがやりたがる人が居ませんの」

「そういえば、協会は独自に運営されているって最初に聞いた気がする」

「その通りで、協会は貴族でも簡単に踏み込めない場所になっていますわ」


 ダンフォースさんもフィル師匠の側近として戻りたいが、戻るのは無理そうなので、協会長をしながらフィル師匠の手伝いをしていると話してくれた。


「それは大変そうですね」

「大変です。先先代辺境伯も子供が多い人ではありませんでしたので、一族は大半が役職を持っていて、役職を持っていない者は子供くらいしか居ません。メイオラニアが普通の状態であれば十分な人数なのですが、治安がここまで悪化すると人が足りませんでした」


 治安が回復しているのは、フィル師匠の悲恋が有名になったことで、メイオラニア以外からも優秀な人がやって来たことで、人員が足りてきて治安は良くなっていると、ダンフォースさんが説明してくれた。


「すごい効果ですね」

「ええ。フィリップ様は嫌がっておられますが、私たちとしては助かりました」

「フィル師匠はやっぱり嫌がっているんですか」

「フィル師匠?」


 ダンフォースさんが俺のフィル師匠というのが不思議に思った様なので、呼ぶ様になった理由を説明すると納得された。


「エマ師匠と同じように師匠と呼ばれたのを喜んでいた様に見えました」

「エマさんとの事になると、フィリップ様は昔から変わりませんね」


 ダンフォースさんが笑いながらそう言うと、部屋に丁度フィル師匠が尋ねてきた。ダンフォースさんが笑っているのをフィル師匠が不思議そうに見ている。


「ダン、どうしたのだ?」

「いえ、昔話をしていただけです。エマさんとは久しぶりに会いましたから」

「そうか」


 フィル師匠はダンフォースさんにうまいこと誤魔化されてしまったようだ。誤魔化されたなど知らないフィル師匠はエマ師匠と楽しそうに話をしている。


「エマ、すまない。理論の説明中には来れる予定だったのだが、間に合わなかった」

「問題ありませんよ。フィルも魔法の使い方を聞きますか?」

「いいのか? もし良ければ教えて欲しい」

「分かりました」


 エマ師匠が理論を説明して、フィル師匠が使えるように魔法を練習している。やはり難しいようで覚えるのは大変そうだ。エマ師匠はメイオラニアに来るまでに作った酔い止めの魔法もフィル師匠に教えると、フィル師匠はこちらはすぐに使える様になった。


「酔い止めか。こちらの方が覚えたい人は多そうだ」

「馬車に関してはまだ試していませんが、船酔い以外にも馬車の酔いにも効くと思いますから、便利ではありそうです」

「効けば便利そうだ」


 エマ師匠は魔法の説明が終わると、フィル師匠に悲恋が歌や劇になっている事を尋ねると、フィル師匠は申し訳なさそうに謝っている。エマ師匠がフィル師匠に謝る必要はないが、話しておいて欲しかったと言う。


「私も全てを把握している訳では無いというか、恥ずかしくて詳しくは調べたく無いのだ」

「確かに自分が歌になるなんて、恥ずかしいです」

「そうだろ? 貴族の集まる夜会や御前会議でも話題に出るのだぞ」

「民衆に有名なのではなかったのですか?」

「民衆にも有名だな」


 どうやらフィル師匠とエマ師匠の悲恋は娯楽として優秀だったようで、あまりにも有名になってしまっているようだ。

 エマ師匠は慌てて、自分がメイオラニアに居ることが噂になっていないか、フィル師匠に確認している。


「ピーターやあの場にいたメイドには口止めをしたが、どこまで効果があるかは怪しいな」

「フィルの口止めでも効果がないのですか?」

「私の手に負える状態ではないので、すでに諦めている。だが、エマに迷惑はかけられないので、私がエマからの返答を貰うまでは、秘密にして欲しいとは言ってある」


 メイオラニア辺境伯の口止めで話が漏れるって、そんなに人気なのかフィル師匠とエマ師匠の悲恋は。エマ師匠は嫌がりそうだが、一度歌で良いから聞いてみたいと思ってしまう。


「私は船に篭っていたくなって来ました」

「すまない」


 フィル師匠とダンフォースさんがエマ師匠に謝り続けている。だがここまで有名だと、エマ師匠が元恋人だと知られたらメイオラニアから動けなく成りそうだ。ベスやアビゲイルさんと相談して行動には注意しないと不味そうだ。

 エマ師匠に謝るのが終わったところで、ダンフォースさんがフィル師匠にアルバトロスで起きた間諜騒ぎについて説明すると、フィル師匠は調べてみると言う。


「エリザベス殿下。イフリートを倒せるのだから心配は要らないと思うが、危険な場所には行かない様にして欲しい」

「ツヴィ王国に迷惑をかける訳にはいきませんから、分かっておりますわ」


 言われてみればイフリートより怖い相手なんてそうそう居ないだろし、俺たちが危険というよりは、俺たちが相手に魔法などで攻撃すると街が大変な事になりそうだな。自衛のために魔法を使うのは仕方ないとはいえ、街を壊すのはやり過ぎだと思うし、やはり危険な場所には近づかない方が良さそうだ。


「フィル師匠、危険な場所などを教えてくれませんか」

「そうですね。普通は教えないのですが、事前に教えておきます。ダンフォース、地図はありますか?」


 ダンフォースさんが用意した地図で、先ほどダンフォースさんから聞いた以上に近づいてはいけない地区や、場所についての詳しい情報を、フィル師匠が説明してくれた。地図は貰う事が出来ないので、俺は地理を暗記していく。

 協会での話が終わったところで、俺たちはフィル師匠の屋敷へと戻り、夕食を一緒に食べた。食事中はフィル師匠とエマ師匠が楽しそうに話をしていて、そんな二人をピーターが嬉しそうに見ていた。


「エド、この後に少し話がありますわ」

「分かった」


 ベスは俺だけで良いと言うので、俺だけがベスに付いて部屋に向かう。部屋でベスとアビゲイルさんが話し始めた。


「二人の結婚を前提に動いた方が良さそうだと思いますが、アビゲイルはどう考えておりますの?」

「エリザベス様。私もエマ様とフィリップ様の結婚を前提に動いた方が良さそうだと思います。どう見ても二人は両思いです」

「アビゲイルが私と同意見で安心しましたわ」


 俺が見てもそう見えるのだから、当然の話だとは思う。問題はこの短期間でエマ師匠がフィル師匠の告白を受け入れるかどうかだ。


「エドはどう思いますの?」

「俺も同じ意見だけど、エマ師匠とフィル師匠の悲恋がここまで有名になってるのは驚いたな」

「それに関しては同意しますわ。エマが恋人だったと知れたら大変な事になりそうですわ」

「アルバトロスに帰れるか怪しいかも」

「それもありますわね」


 ベスは更に、メガロケロス辺境伯の養子にならなくてもエマ師匠は結婚出来そうだと言う。エマ師匠は魔法使いだから、あり得なくは無さそうだが、フィル師匠はベスのように王族ではないが、それでも地位の差が大きすぎる気がする。


「そこまでの話なのかな?」

「御前会議で話題に出るほどですから、エマが魔法使いなのもあって可能だと思いますわ。リング王国やツヴィ王国ですと、魔法使い同士ならば身分差があっても、養子になれば結婚は普通許されますの」

「魔法使いではない一般人と、貴族が結婚は現実的ではないけど、魔法使い同士で本来なら結婚できるのに、結婚出来ていないから、フィル師匠とエマ師匠の悲恋が貴族にも受けているのか」

「そうだと思いますわ」


 アルバトロスを出る前に、慌ててアビゲイルさんを随員に増やしたのは正解だったが、思ってた以上にエマ師匠の問題は大事になったな。


「ダンジョンが溢れた事を伝えるより、エマ師匠とフィル師匠の結婚がどうなるかの方が大変だね」

「そうですわね。色々と完全に想定外ですわ」

「もう少しアルバトロスで噂を集めてくるべきでした。私の失敗です。民衆にも有名ならツヴィ王国から来ている船員でも知っていたはずです」


 確かにアビゲイルさんの言った通り、そこまで有名な話ならアルバトロスで知っている人も居そうだ。むしろ何故知らなかったのか不思議なくらいではある。


「ここまで有名なら知っていても良さそうだけど何故知らなかったんですかね?」

「アルバトロスに帰還してから、もう一度調べる予定です。ですが、可能性の一つとしては、エマ様とフィリップ様の話だと思わなかったのではないかと」

「それはありそうですね」


 フィル師匠の恋人だった人がエマ師匠だったというのは最近知ったのだし、あり得そうだ。


「エド、こんな事はしたくありませんが、エマに決断を急いでもらう必要がありますわ」

「それで俺だけ呼んだの?」

「そうですわ。リオやドリーにも手伝って欲しいですが、二人の年齢を考えると難しい気もするんですの」

「いや。俺より、ドリーの方が誘導というか、核心に迫るように話すのは上手かったりするけどな」


 俺のドリーの方が上手いという話を、ベスとアビゲイルさんも思い当たる事があるのか、納得している。


「では、ドリーに伝えておいて欲しいですわ」

「分かったよ」

「私からはリオに伝えておきますわ」


 作戦らしい作戦はないのだが、皆でエマ師匠とフィル師匠の対応をする事になった。


「そういえばさ、エマ師匠とフィル師匠の歌聞いてみたいな」

「それは私も思いましたわ。ですがエマは嫌がりそうですの」

「だよね。別々に行動するのも難しそうだし、今回は無理かな」

「今聞かなければ、二人が結婚した後には別の歌になりそうですわ」

「確かにそれはそうかも。そうなると、エマ師匠もフィル師匠も歌からは逃げられないのか…」


 ベスは歌が変わる前に聞いてみたいと言い、アビゲイルさんも驚いた事に聞いてみたいと言う。アビゲイルさんもそういう話は好きだったのか。


「ツヴィ王国で流行ったのですから、リング王国でも流行る可能性が高いです。歌や劇を調べておきたいので、船員で歌が上手いものに覚えてもらいます」

「そこまでするんですか?」

「個人的な興味がないといえば嘘になりますが、ベアトリス様への報告の一環です。貴族として流行を先に知っておくのは重要なのです」


 このまま行くとエマ師匠とフィル師匠の歌は、リング王国でも有名になりそうだ。ツヴィ王国の歌はフィル師匠視点の歌だろし、リング王国で流行れば、エマ師匠視点の歌まで出来てしまうのではないだろうか。

 俺が聞いてみたいと話し出した話題ではあるが、エマ師匠に申し訳なくなってくる。俺は興味本位だったのだが…

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