魔法を次の段階へ
協会へ戻ると、荷物はもう運び込まれているようで、普段使っていない部屋に山積みになっている。
「改めてみると凄い量だな、部屋を二つにしてよかった」
「にーちゃ、すごい量」
流石にドリーも驚いているようだ、見ていても消えて無くなることはないので、作ろうと思うが、一度に何人分の量を作るかが問題になってくる。
一度に大量に作ると粘度の問題もあり、混ぜ合わせられる気がしないのだ。
「とりあえず、五人分でやってみるか」
「うん」
シャンプーとトリートメントに別れて分量を計って作ってみると、混ぜ合わせるのに時間がかかり、俺は作れそうだが、ドリーには少しきつそうだ、エマ師匠が時々手伝っていた。
「ドリーは、三人分でやろうか」
「そうする」
作ったシャンプーとトリートメントを薬師組合で買った容器に入れて、エマ師匠に渡すと喜んでくれる、作り終わったらお昼だったので昼食を食べに行く。
食堂に着いて食事を貰うと、エマ師匠は空いている場所ではなく、人がいる場所へと向かっていく。
席に座っていた人達に、俺とドリーをエマ師匠は紹介して、一緒に食事をする事になった。
食事をしていると、エマ師匠は作ったシャンプーとトリートメントを、早速渡している。
食事を終えて部屋に戻ると、エマ師匠に気になったことを尋ねる。
「エマ師匠は、今みたいな感じでシャンプーとトリートメントを、渡して行くんですか?」
「それ以外にも、治癒を掛けに行くうちに仲良くなった人だったり、魔法使いになる前からの知り合いに渡そうと思っています」
「なるほど」
「それでエド、ドリー、今は弟子ができたばかりだからと治癒の仕事を断っているんだけれど、ずっとは無理なの。この先出かける事も増えると思うわ」
「分かりました」
「うん…」
寂しそうにドリーが返事をすると、エマ師匠はドリーを抱き寄せると話しかける。
「ドリー、すぐ帰ってくるから待っていて」
「うん…」
ドリーがまだ寂しそうな顔をしているので、エマ師匠は何か決めたようで。
「ドリー、それなら一緒に来ますか?」
「いいの?」
「良い子にしてないとダメですが、ドリーなら問題ないでしょう」
「ドリー、いい子にしてる」
「分かりました、一緒に行きましょう」
エマ師匠はドリーを連れて行くことを決めた後に、俺に顔を向けるとどうするか尋ねてくる。
「エドはどうしますか」
「俺も行っていいんですか?」
「女性しか入れない場所もありますが、問題ないところは連れて行けますよ」
「では、その時はお願いします」
ドリーは俺が一緒にいけないとは思わなかったようで、抱きついてくる。
「にーちゃ」
「ドリー、俺は入れない場所もあるから、エマ師匠と行くか、俺と待ってるかは選べると思うから、ドリーの好きな方でいいんだよ」
俺の言葉に、エマ師匠も同意してくれる。
「そうですよドリー、その時好きな方に付いて行けば、問題ありません」
「うん」
ターブ村ではドリーは常に俺と一緒に居たので、エマ師匠と行動することで俺としては寂しいが、兄離れして行くのも良いだろう。
話が終わったところで、シャンプーとトリートメント作りを再開していく。それから夕食までの間作り続けたが、やはり作るのに時間がかかり、一日で作れる数は限られそうだ。
「粘度があるから完全に混ぜ合わせるのに力と時間がかかりますね、出来上がったのはエマ師匠に渡しておきますね」
「ありがとう」
「いえ」
お金も渡されそうになるが、薬を作るのに使う道具なども大量に買ってもらっているので断っておいたが、次回は受け取るようにと言われてしまった。
夕食を食べに食堂に行くと、昼にシャンプーとトリートメントを渡した人が、もう使ったようで、髪が綺麗になったと喜んでくれた。
食べ終わった後に風呂を交代で入りつつ、エマ師匠とドリーが風呂に入っている時は服を縫っていく、二人が風呂から戻ってくると、今日の朝起きるのが遅かったので、今日は早めに寝る事にした。
次の日、早めに起きれたので朝の準備をしていると、ドリーも起きてきて、一緒に準備をしていく。
俺は服を縫って、ドリーは薬を作って、エマ師匠を待っていると、ノックが聞こえて出ると、エマ師匠が居て朝の挨拶を済ませると、いつも通りとなってきた魔法の訓練へと向かう。
「エドは昨日成功しましたが、もう何回かは全力で魔法を使うように、暴走しないと判断できれば次に進みます」
「分かりました」
昨日と同じように魔力を移動させて、魔法を使うと魔法は安定している、エマ師匠も魔法を見て安定していると感じた様子で、褒めてくれる。
「良いですね、次は魔法を消してみてください」
「分かりました」
昨日教わったように魔法を上書きすることで、消すという魔法を発動させる、うまく行ったようで、魔法は消え去ってしまうが、魔力は残っている。
「魔法は消えましたが、魔力が残っているんですが」
「消すことに成功しているようですね、魔力が残っている場合は制御を手放します」
「この状態は、まだ制御できているんですか」
エマ師匠に制御を手放すと言われて気づくが、魔力だけの状態で制御できてるようだ。
「そうです、魔法を使わなくても、魔力は制御下にあります」
「魔法を使わなくても、魔力だけで制御できるんですね、不思議です」
「安全な魔法の練習は、魔力だけを外に出すのが、安全ではあると言われていますが、最初は魔法を発動させないで、魔力だけを外に出せる人は居ないとも、言われています」
エマ師匠が言ってることは、理論的には安全だが、不可能だと言う事なのだろう。
「理論上は可能だけれど、現実的には不可能だということですか?」
「そうです、仮説に過ぎないと思っておけば良いです」
確かに俺が魔法を最初に発動させた時も、無理やり魔力を動かして記憶がなくなったが、水の玉だと強く思っていたから、水の玉になっただけな気がする。
魔力だけ操っていたら、大変なものが出ていた気がする。
そんなことを考えながら魔力の制御を手放してみようと思うが、中々上手くいかないが色々試していると、急に魔力を操っている感覚がなくなった。
「あ!」
「制御を手放せましたね」
「はい」
手放してから聞くのも何だが、魔力をそのまま手放して良かったのだろうか。
「魔力の制御って、手放して問題ないんですか」
「正確なことは分かっていませんが、魔法の制御を手放して問題ないように、魔力の制御を手放しても、問題になった事はないですね」
「なるほど」
確かに魔法の制御は最終的には手放す物だろうし、魔法と魔力は変化はしているが、基本的に同じものと考えられるという事だろう。
「ではエドの今日の訓練は終わりです、次はドリーやってみましょう」
「うん」
昨日のドリーと違って自信があるのか、杖を構えて魔力を動かし始める、見ていると昨日までとは違って、魔力が綺麗に動いて魔法になる。
「できた!」
「ドリー、制御をそのままで、もう少し様子を見ましょう」
「うん!」
昨日までとは手応えが違ったのだろう、魔法を発動させたと同時にドリーが喜び、エマ師匠の言う通りに魔法の制御をそのままで、魔法を安定して維持している。
「ドリー、魔法は安定しているようですから、次は消してみましょう」
「はい」
ドリーは少し手間取っていたが、魔法を消すことに成功する。
「きえた!けど、のこってる?」
「そうですね、魔力が残っているので、制御を手放しましょう」
俺のを見ていたから早いのか、ドリーが上手いのか分からないが、魔法を消すことはかなり早くできたが、魔力の制御を手放すのが難しいようで、唸っている。
「んー、できない」
「手を離すような想像だったり、魔力の制御を手放すのは暴走に近いと、言われたりもします」
「んー」
ドリーが頑張っていると、ドリーが制御している魔力が不安定になって行き、魔力は拡散したかのように薄く漂い始めた。
「できた!」
「そのようです、良くできましたドリー」
「うん!」
「四回目で成功させるとは、とても凄いです」
「ありがとー!」
ドリーは褒められて、照れながらエマ師匠にお礼を言っている、俺もドリーを褒める。
「凄いぞ、ドリー」
「ありがとー!」
「魔法を消すのは、前回失敗した俺より上手だったし」
「にーちゃも、綺麗だった」
「ありがとう」
ドリーが制御を手放すのに困っていた時に、エマ師匠が暴走に近いと言っていたのが不思議に思って、質問してみる。
「エマ師匠、ドリーへの説明で、制御を手放すのは暴走に近いって言ってましたが、どういう事なんですか?」
「確証はないのですが、暴走は手放そうとして失敗している状態だと、言われています」
「確かに制御ができないのなら、手放そうとしますね」
「心理的にそうなるだろうと言われているのと、後は実際に制御を手放そうとするのに感覚が近い人が多いらしいです」
「なるほど、ありがとうございます」
エマ師匠は他に質問があるかと聞いてくるが、俺もドリーも無かったので、今日の訓練は終わり部屋に戻ることに。
「では、部屋に戻りましょう」
「「はい」」
部屋に戻ると、今日はどこかに行く予定もないので、部屋でシャンプーやトリートメントをひたすら作って行った。
それから三日くらいは同じような日々を過ごして行き。
四日目の魔法の訓練で、エマ師匠に前日までとは違い、魔法を全力ではなく二回発動できるように、調整してみるようにと言われる。
「では、魔法を二回使えるように魔力を調整して、魔法を使ってみてください」
「はい」
言われた通りに、魔力を大体二等分にしようと調整するが、魔力全体が動いてしまう、試行錯誤していくと魔力を切り離す事ができ、片方を魔法に変える。
「できました」
「魔力は自然な状態ですし、魔法になったものは安定してるようですね」
エマ師匠は、俺の魔力と魔法を確認したようで、続けて。
「では、もう少しそのままの状態を維持してください」
「はい」
少しすると、エマ師匠が魔法を消すようにと言ったので、魔法を消していく。
「問題なく消えましたね」
「はい、魔力を切り離すのに少し手間取りましたが、それ以外は問題なかったです」
「そうですか。普通は二つに分けた魔力と魔法どちらも制御してしまったり、制御に失敗して暴走したりして、魔法を発動させるのに苦労するのですが、優秀ですね」
次は残った魔力を使い切り、魔法を発動させるように言われたので、残った魔力で魔法を発動させる。
「できました」
「安定していますね、全力で発動させるだけなら十分な練度になりましたね」
「エマ師匠のおかげです」
「いえ、エドが優秀だからですよ、何人か教えていますが、ここまで修得が早かったのは居ませんでした」
「ありがとうございます」
俺は照れながら、お礼を言った。
「では、魔法を消して、次はドリーです」
「はい」
俺が返事をして魔法を消すと、ドリーが準備をする。
「ドリーも同じように、魔法を二回発動できるように、魔力を半分にしてください」
「うん」
ドリーは返事をした後に集中し始めて魔力が動き始めるが、俺と同じように切る事ができないようで苦労しているようだ。
ドリーの魔力を見ていると徐々に魔力が分かれ始めた、ドリーは俺とは違う方法で魔力を二つにしているようだ。
ドリーの魔力が二つに完全に分かれると、片方を魔法にしたが何か思った事と違ったようで、ドリーが戸惑って声を出す。
「あれ?魔力…?」
「ドリー、魔力の制御をしたままになっています」
「あ!」
エマ師匠の助言にドリーはどう言う状態か理解したようで、再び集中し始めると、体に残っていた魔力が制御を離れて普通の状態となる。
「できた!」
「では、少ししたら魔法を消してください」
「はい!」
少ししてエマ師匠が合図をすると、ドリーは魔法を消した。
「ドリー、とても上手にできましたね」
「ちょっと、むずかしかった」
「最初からそれだけできれば、優秀です」
「えへへ」
ドリーはエマ師匠に褒められて嬉しそうで、俺も嬉しくなる。
「では続けて、残りの魔力も魔法にしてしまいましょう」
「はい!」
ドリーは言われた通りに魔力を魔法に発動させると、とても安定した様子で魔法が使えている、エマ師匠も同じように感じたらしく。
「問題ありませんね、消しても良いですよ」
「はい」
ドリーが魔法を消すと、エマ師匠は満足そうに頷いた後。
「エドもドリーもとても優秀です、一応明日も今日と同じことをして、二日後からは魔力をさらに細かくして行きます」
「「はい」」
「それで今日は治癒のお仕事がありますので出かけますが、二人も付いてきますか?」
「俺も行っても良いんですか?」
「今日の相手は問題ありません」
「では、エマ師匠が魔法を使っているところを見てみたいです」
「分かりました、一緒に行きましょう」
エマ師匠に付いて協会を出ると、馬車で移動するようで乗ると馬車が走り出す。
ドリーは初めて乗る馬車に驚きつつも興奮してるようで、楽しそうに中を見たり外を見たりしている。
ちなみに俺も地球で馬車なんて乗った記憶がないので、結構楽しい。
馬車が思ったより揺れないので、エマ師匠に聞いてみると。
馬車自体が協会の物で魔道具になっているそうだ、街の外だとそれでも揺れるが、街中なら速度を出さなければ、そこまで揺れないと教えてくれる。
馬車が止まり、馬車から降りると立派な家があって、その家のノッカーをエマ師匠は叩くと、中から執事が出てきて案内してくれる。
執事が案内してくれた場所にいる人物が屋敷の主人なのだろう、エマ師匠が挨拶をして、俺とドリーを紹介してくれたので、俺とドリーも挨拶をする。
エマ師匠は治療の中に俺とドリーが居ることの許可を取ってくれ、見学できることになった。
治療するのは、俺より少し年齢が上の子供のようで、エマ師匠が診察した後に、治癒の魔法を使っていく。
エマ師匠が魔法を使うと明らかに元気になって行き、屋敷の人も安堵した様子で、エマ師匠にお礼を言っている。
エマ師匠が使ったほうがいい薬などを紹介して、高くなるけれど自分から買うか、薬師から買うかと聞くと。
屋敷の主人はエマ師匠から買うと言うので、エマ師匠は必要な薬を出して渡していく。
治療が終わったので、お金を受け取って帰ることになって、家の前で待っていた馬車に乗り込むと、協会へと帰る。
「エド、ドリーどうでしたか、今日の患者は外的な傷では無かったので、分かりにくかったかも知れませんが」
「いえ、治癒を使ったら、明らかに元気になったのが分かりました」
「うん!元気になった!」
「薬師をしていたからですかね、普通の魔法使いには中々分かりにくいので、外的な傷以外は難しいと言う人が多いのですが」
確かにオジジから色々聞いている為、普通の人よりは俺とドリーは、治療行為については詳しいのかも知れない。
「言われてみると、そうかも知れません」
「どのような魔法を極めるにしろ、治癒は使えたほうが便利ですので、二人の才能は貴重ですよ」
「「はい」」
協会に帰りながら、エマ師匠は診察の順番などを教えてくれ、俺とドリーはその説明を真剣に聞いていると、協会に戻ってきた。
部屋に戻るといつもと同じく、シャンプーとトリートメントを作る作業をする。
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