4月10日、日曜日。思い出した。
なんだか身体がすっきりして気持ちがいい。頑張った自分を褒めてあげたくなる。自分に自信がある人っていつもこんな感じなのだろう。生きるのが楽そうでいいなと思う。寝る前になって昨日の二つ目を思い出したので、それを今日の日記として書いておこうと思う。では改めに改めて、
二つ目、部活の話。驚いたというとちょっと違う気もするが、なんにせよ部活の話。忘れてしまうぐらいのことだったというか、それ以外の出来事の衝撃が強くて吹っ飛んでいたというか。これもハンナちゃんが関係している。
入りたい部活があったわけではないのだ。それどころか深く考えようともしていなかった。部活に入る人もいるんだなぁ。という程度。そんな私に、ハンナちゃんが言った。
「軽音楽部に入りたいんだけど、一緒に来ない?」
距離をつめるのが早いと思った。それ以上に、本来はフレンドリーで活発な子なんだろう。入学式や教室での緊張した状態から、仲間に巡り合えた開放感のようなものもあったのかもしれない。話を聞くと、彼女の場合、教室で女子たちからの質問攻め、というようなことも無かったらしい。真っ黒な黒人が怖いという、見た目の印象から来る畏怖のイメージがそうさせたんだろう。そうすると、まあまあ話しかけられた私は接しやすい方だったのかなと思った。恵まれている。彼女がそうでないのではなくて、私は恵まれているんだ。
そう考えると、周囲が彼女に向ける視線と私に向けるそれとでは、質が異なるものなのかもしれない。周囲の気持ちは分からないでもないが、気持ちで留めるのが大人だろう。それを、ただの視線と言えども実行してしまうようでは、赤ん坊と同レベルだ。謝罪に来ないのが腹立たしいくらい幼稚だ。
彼女の味方でありたいと思った。そんな私の心が言わせた。
「来週、見学に行ってみよっか」
その来週が、明日来る。
という話を聞いたお父さんは非常に喜んだ。娘が自分の選んだ道を歩もうとしていることが嬉しいのだろう。そんなに重大なことだとは思ってないけど、喜んでるなら、喜ばせとけばいい。今から楽器屋に行こうという父を母が英語で止めた。深夜だから、しょうがない。なんで英語なんだろう。カタコトで「ヤメテ」というのは確かに少し違和感があるが、以前そんなことで嫌な思いでもしたのだろうか。
それにしても、そうだ。軽音楽部に入るということは、何か楽器をやるということか。とりあえずは見学でいいとしても、ずっとそうというわけにはいかない。ハンナちゃんは何かできるのだろうか。楽器が好きだから入りたいと思ったのか、音楽が好きだからやってみたいと思ったのか。明日のお昼に聞いてみよう。