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カレンの日記  作者: ROM太郎
4/28

4月8日、金曜日。おいおいマジかよ。

 一日の出来事にタイトルを付けるというのもなんだか難しい。結果として感想のまとめのようになってしまう。私としてはかっこよく一言で締めくくりたいという想いもある。『嘲笑』とか『HOLIC』や『DRUG』なんてアルファベットもいい。問題は、あざ笑うような出来事も、薬物中毒のような出来事も全く起こっていないということ。日本は平和でいい。ほぼ日本から出たこと無いけど。母の言葉を聞いていると、やっぱり平和なんだなぁとは思う。

 結果、無様なタイトルになった。平和も考えものだ。考えるまでもないけど。四日目だから。三年やればきっと良いタイトルになるから。という考えは甘えだろうか。いつか変わると思っていることは、変えようという想いが無ければ変わらないのだ。小学生の時、六年生はかっこいいなぁ。私もああなるんだなぁ。と思っていたけれど、私が六年生になったら、ちっともかっこよくなかった。ミスばかりで、転んだりもした。一、二年生に笑われて、ピエロになったみたいだ。と思ったのを覚えている。

 ようするに、ダイエットしなきゃ、じゃダメなんだ。今すぐ始めなきゃ、痩せて綺麗になることなんて出来ないんだ。

 でもご飯は美味しいし、今日のタイトルが無様になった理由は他にある。ちなみに、体重は微増していた。なので、書きませーん。


 本題、今日驚いたことが二つあった。

 一つ目は、アフリカ系のハーフ、ハンナちゃんが私の教室まで来てくれたこと。どうやら、彼女も私に興味があったらしい。それは同じクラスの女の子たちの、異物への関心のような興味ではなく、やはり私が彼女に感じた共感のようなそれのようで、はっきりとは言われなかったが、友人候補として、ということのようだった。ここに利害は一致した。その時は二時限目と三時限目の間で休み時間が短かったので、お昼ご飯を一緒に食べることにして別れた。お昼になると、ハンナちゃんは驚異の早さで私の教室に来た。向こうの授業の方が終わるのが早かったらしい。

 赤髪の私と黒い肌のハンナちゃん。異質な二人が教室で机を並べてご飯を食べるというのも、無駄に目立ちそうで、あの突き刺すような周りの目が二倍以上に鋭くなりそうで嫌だったので、他の場所を探した。

 どこがいいかなぁ、二人で校舎の地図を眺めていると、通りすがりの女性の英語教師が話しかけてきた。

「あれ、君たちもう友達になったの?」

 教師の様子から、彼女の頭の中では、私たちが友人になるのは必然のことだったらしい。気持ちは分かるけど。その言葉を聞いたハンナちゃんは、嬉しそうに肯定の意を示した。はしゃいでいる、という感じ。なんだか私も照れてしまう。軽く雑談をしていると、教師が言った。

「学校も何を考えてるんだろうね。私なら君たちを同じクラスにしたのに」

 あなたこそ学校だろう。とは思ったが、生徒数1000人を超えるそれなりに大きな学校、もちろん教師も多い。教師内のパワーバランスのようなものもはっきりしているのかなと思った。単に担当の違いだろうけど。大人も大変だ。

「それでお昼をね、人目につかない場所が良いと。なるほどねぇ……うーん」

 先生は少し悩んだ様子で、目をつぶって首をかしげる。

「しょうがない。教えちゃうか」

 案内されたのは、校舎の奥の方にある小さな中庭のような空間。中庭を囲うように植えられた、もしくは運ばれた木々がざわめいている。人はいくつかあるベンチの上にちらほらいるが、静かでゆったりしている空間。私が知っているこの学校の中庭は、ここではなかった。昇降口の奥に見える、もっと大きくて、もっと自然豊かな所だ。そもそもなぜ中庭が二つもあるのか理解できなかった。授業で使ったりするのだろうか。

「部活用なんだよ。ちなみに、ここを使えるのは軽音楽部の三年生だけってことになってるんだ。彼らが勝手に作ったルールなんだけどね。その辺にゴミみたいに転がってるのが、軽音部の三年生ってわけ。顧問は私だから。君たちは好きに使っていいよ」


 このやさしさが特別なものだとするのなら、先生にはハーフの苦しみが多少なりとも分かるらしい。外国や外人が好きで英語に人生を捧げたのなら、やさしくされても不自然ではない、かな。

 お弁当を持って「先生もご一緒しませんか」と、ハンナちゃんが勝手に聞いた。しかし、私も同じ気持ちだった。この学校ではじめて感じたやさしさに、胸打たれる気持ちもあっただろう。

「私一人が好きなんだ」

 と断られた。なんだか不思議な先生だ。

 ハンナちゃんと二人、その中庭のベンチに座り、お弁当を広げた。そこに目新しさはなく、弁当の中身は二人とも良くも悪くも日本的だった。私たちは間違いなく日本人だと、二人で笑った。

 話を聞いていると、彼女もやっぱり視線が怖いと怯えていたようで、心の拠り所を求めていたらしい。私がそうなるのと同時に、私にとってもハンナちゃんは心の拠り所になった。

「カレンちゃんはいいなぁ。どうせミックスなら私も白人が良かったな」

 とハンナちゃんが言った。たぶん本当はそんなこと思ってなくて、世間の印象に対して皮肉を言ってみただけなんだろう。しかし、気が緩んで本音がこぼれたようでもあった。彼女から見て、私は綺麗に見えるのだろうか。白人の女性は綺麗だというような抽象的な意味で言ったのだろうが、どちらにしても、やっぱり、期待に応えられるくらい綺麗になりたいと思った。100%お母さんの遺伝子を継いでいればなぁ。そうなるとクローンか何かになりそうだ。それでもいいという気持ちもあるくらい、自分に胸を張れる美しさが欲しい。

 ダイエットを成功させて自信を付けるとか、そういうことから始めるしかないかな。

 とにもかくにも、私とハンナちゃんの距離が近づいた一日であることに間違いはない。


 二つ目、もう眠いので、明日書きます。

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