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つちのこうやのラブコメ (それぞれ別々にお読みいただけます)

自称恋愛の勘がするどすぎる妹が、クラスの美少女が僕のことを好きに違いないと言い張るけど、今日もイケメンと歩いてたし流石にそれはないな。「ねえ、今日の放課後、ちょっと来てほしいの」「え?」


 とても騒がしい夕飯だった。


 どう騒がしいかといえば妹が騒がしい。


「だからね、絶対あの子はお兄ちゃんのこと好きなんだって。いやなんでかっこよくもないしむしろダサさしかないまであるお兄ちゃんが好きなのかはわかんないけどね、ま、でもお兄ちゃんも優しいところあるからさ……うん、だから好きなんだって。間違いない!」


「ほんとかよそれ……」


「ほんとだよ。ほんとだね!」


 妹は言い張る。僕とクラスの美少女の松中さんが歩いてるのを見ていて、そう思ったらしい。


 ちなみに妹は高一で僕は高二で同じ高校なので、時々学校で遭遇するのだ。


「私の恋愛の勘はするどすぎるから。お兄ちゃんも少し松中さんのこと意識していこう。めちゃ可愛いしお兄ちゃんどうせちょろさ発揮するだろうけど」


「はあ」


 なめられているが、確かに松中さんが僕のことを好きなんてなったら意識してしまうだろう。ていうか割ともともと意識してるし。


 まあそれは置いといて、そもそも松中さんが僕のことを好きなのが無いんだって。


 今日だってクラスのイケメン男子と楽しそうに歩いてたし。いやまあそれはただの友達な可能性はあるけどさ。


「いやー、妹としても安心だ。お兄ちゃんに彼女ができれば大変よろしいね」


「なんだよ偉そうだな。彼氏いるの?」


「わたし? 私はとっくにいるし超仲良し超長続きだよ」


「まじかよ」


 ……いやほんとかな? まあいいや。


 とにかく謎の勘でもって勝手に、クラスの美少女が僕のことを好きって決めるのは、よくないぞ。




 と思いながら僕は次の日もとてもごく普通に過ごしていたのだけど。


 松中さんに話しかけられた。


 斜め前の席だから一回くらい話しかけられるのは不思議ではないけどね。


 だけど松中さんはこう言った。


「ねえ、今日の放課後、ちょっと来てほしいの」


「え? あ、うん。わかった」


 そして、ほら! ほらほらほら! きた! みたいな妹が思い浮かぶ。


 いやしかし、まだ呼び出されただけだ。


 何にも起こってないというか、なんかめちゃくちゃ怒られるかもしれないし。


 斜め後ろにいるだけでうざいとか。


 いやそれだったら怖くてうずくまっちゃうけどね。弱い人間だしそれを隠して強がることもできないので。




 だけどその後結局僕は……


「あの……私、海老名くんが、好きです」


 告白されていた。学校の中で一番売れてない自販機の横で。


「……」


「ていうか、気づいてた? 私……結構色々したのに、全然気づいてもらえてなさそうだったんですけど」


「い、一応気づきかけてたということで、お願いします」


 昨日妹に言われたからな。うん、僕は妹を大変信用していましたっと。


「……ほんと? 私たくさん話しかけて……あと、いっぱい褒めたし、どきっとしそうなことも言ったよ」


「ああ」


 やばいあんま気づいてなかった。


「あ、はいだめねこれは。ぜったい気づいてなかったね?」


「はい」


「まあ知ってたわよ。だから今言ったの」


「はい」


 告白がお説教になってるわ。


 悪いことしたのに気づいてなかった小学生ポジションだわ。


「私の気持ち、全然考えてくれなかったのは悔しいけど、今から死ぬほど、伝えてやるからっ」


 そして……いきなり、抱きついてきた。


「どうだ。どうだどうだどうだっ!」


 身長は、時折未だに抱きついてくる妹と同じくらいなのに、全然違った。


 いや、妹より胸が大きいのはそうだけどね。感触的に。松中さんが……たぶん相当大きい。

 

 でもそういう問題じゃない。


 顔がちょっと下にある。


 こっちを向かずにしたをむいてる。


 僕の服に頬が密着してる。


「……」


 そのまま頭をぐりぐりして、気持ちが伝わってきた。


「返事まってるよ」


 そう松中さんはつぶやいた。



 


 そしてその日の夜。


「ほーらほーらほーらほーらほーら〜! はいじゃんじゃん! ほらそうだったじゃん♪」


 妹が、私すごいでしょ認めるしかないわよ、の歌を歌っていた。


 うるさい。こっちは松中さんのことしか考えてないし考えられないよ。


「お兄ちゃん私のこと褒めてよ。あてたじゃん……あ、お兄ちゃん聞いてないな?」


「……」


「まああれか、女の子の気持ちに向き合うお兄ちゃん可愛いからゆるす。恋愛し慣れてないもんねお兄ちゃん」


「……」


「ちょっと煽っても反応なし⁈ お兄ちゃん無視するなするなー。私的中させたんだぞなんか奢って!」


 騒がしい妹の声は僕の耳に入ってもなんも認識しない。


 だめだ。これが……松中さんのパワーなのか。


 僕は頭を机に置いた。


 まだ松中さんがそこにいそうだ。待ってそうだ。


「うおおあおおあ!」


「……! いきなり叫ばないでお兄ちゃんうるさい!」


「さっきからうるさかったのはそっちだろ?」


「だってお兄ちゃん彼女のことばっかり考えて私のこと褒めてくれないじゃん」


「まだ彼女じゃないー!」


「いやそんだけ考えちゃってるなら彼女になるでしょ」


「いや僕は真剣に考えてるんだ」


「はい頑張れーがんばーってくださいな」


「……」


「私の応援をスルーしない!」


「今反応しようと思ってたんだよ気が短いな!」


 夜だというのに言い合いをする兄妹の声が、響いていた。


お読みいただきありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
[一言] 甘々な展開になることを期待してるので続きが読みたいです!
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