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他称邪神のアイリスさん  作者: イトーちゃん
第一章 魔王軍元帥のアイリスさん
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8.範を示す

1.魔王城・アイリスの自室


 あっぶねぇな!

 私はスペアボディで目を覚ました。

 これは勇者くんとは絶対に本体で会えないな……


 ――ヒュンッ


「アイリスさまー! あ、やっぱり生きてる!」


 ニルバーナちゃんを置き去りにしてしまった事に悩んでいたら転移して来た。転移魔法結晶を渡して置いてよかった。

 見事にやられたのにひょっこり顔を出すのも何か変な感じになるし助かった。


 いやびっくりしたね。自分の殺し方を一つ知ってしまったよ。


「ところで勇者たちを置き去りにしてしまった訳ですが……」


 そりゃあいかん!

 私を殺してしまったと思ってるかも知れない。

 顔は合わせ辛いから無事を知らせる手紙でも書こうか。

 サラサラッとしたためた手紙を咥えて頭を取り外し転移魔法陣に放り込んだ。

 これでよし。

 シュルシュルと頭を生成しなおす。


「顔合わせちゃってるじゃないですか」


 誰からかも分からない手紙だと読まれないかもだし。


「生首が咥えて来た手紙とどっちが読み辛いですかね〜」

「随分とお楽しみのようですね?」


 さて、拉致勇者の事は一旦忘れて額に青筋立ててる宰相くんをなんとかしないとな。




 痛いよ〜。重いよ〜。


 石畳みの上に正座した私は石板を10枚抱いていた。


「何故そんな嘘を?」


 反省のポーズ?


「……イラつくだけなので止めて下さい。しかし貴女が適当言ってる訳でなければ勇者が3人新たに現れたと。そして人間共の攻勢が考えられると…やはり侵攻計画を進めなければ」


 本当は私を部屋に封印している筈の三日間に計画を決めるつもりだった様だ。


「有用な情報を持ち帰った事は認めますが謹慎を守らなかったのもまた事実です。これから本格的な軍事行動も再開するのですから貴女にも元帥としての範を示して頂かなければ困りますよ」


 分かった。




 分かった。


2.魔王城・会議室


 魔王くんが頭を抱えていた。

 軍団の様子が芳しくないのだろうか…


「貴女の様子が芳しくないんですよ」


 私は体を「範」の字に変形させて会議室の天井に貼り付いていた。


「疲れないのか?」


 マーメイドちゃんからツッコミが入った。

 まあとても疲れる。

 私は自然体で力を抜いていれば生前の姿を取る。

 そこから形を変えるのは自然な状態ではない。

 人間だって卍ポーズをずっと続けるのは無理があるだろう。

 しかし迂闊な事を言った宰相くんへの嫌がらせのためなら許容出来るレベルではある。


「範を示す。っていうのはお手本となる様な行動をして見せるって事ですぜ? そんな悪ふざけをして見せたら逆効果なのでは……」


 そんな事は分かってるわい。


 ミノタルロス君は私が意味も無くふざけていると勘違いしてしまった様だ。

 私はただ強いと言うだけで範を示しているので親しみやすいキャラクターをアピールしている旨を伝えた。


「元帥の奇行は味方殺しの予告……」


 私はイフリートくんに向けて魔力ビームをピ……ピ……撃てねえ。

 元々メモリの無駄遣い技である魔力ビームだ。

 体の変形にもリソースを割いてるせいでビームにまで集中出来ぬ。

 人間的に例えるなら変顔しながら喋れるかと言う話である。

 どんな顔をしているかにもよるがまず口を開ける事すら難しいだろう。


 ニルバーナちゃん。


「はい!」


 以心伝心。

 ニルバーナちゃんは座っていた椅子でイフリートくんを殴りつけた。

 椅子がバラバラになり自分が座る椅子が無くなってしまったのでイフリートくんの椅子を奪って座った。


「毒されている……」


 魔王くんは切なげに鳴いた。


3.魔王城・出陣式


 会議から5日が経ち、ついに人間勢力への第二次攻勢作戦が発令された。

 私も元帥として将兵を鼓舞しなければらない。

 一つ士気が上がる演説でもしてやるかぁ!

 私は範を示し続けていた。


「士気が下がるので消えてくれませんか?」


 宰相くんが変な事を言ってるな。


 美人女上司が登壇したら嫌でも士気なんてぶちあがるやろがい!


「生物の形をしてから言ってもらえます?」


 5日も城内で範を示し続けていたので今更引っ込みがつかんわ。

 もうこういう生き物だと思われてるんじゃないか?


 兵士諸君! これから我々は人間国家へと攻勢をかける!

 ぬるま湯の様な天大陸で愚かな同族殺しばかりしている人間共を討ち滅ぼし魔族が人に劣った存在では無い事を知らしめるのだ!


 私は心にも無い事を言った。

 まず根本的な問題として魔族は人間の上位互換だ。

 魔族に神器が与えられないのは元々狂ってるパワーバランスが更におかしくなるからだろう。

 私が神器の権能を模倣出来てしまっている事からもそれは明らかだ。

 神器があるから人間が滅ぼされずに済んでいる。

 蟻を踏み潰す程度の労力で済むのなら過去の魔族が気まぐれで滅ぼしているだろう。

 神器という高位魔族に痛手を与えられる切り札が存在してるからこそ特にメリットが無い天大陸への攻撃が抑えられている。

 魔力が薄い所で暮らすと内包魔力も下がる。凡そ全ての魔族にとって天大陸とそこに住む人間は興味の無い存在なのだ。

 言われてみればそんな生き物いたな? ってレベルである。

 よって魔王軍のような勘違いさんが歴史上初の本格的な大陸間戦争を起こした。

 まず負けるだろうがな。


「まさかの続行!? 引っ込めと言ってるのが分からないのですか? せめて人型に戻りなさい!」


 宰相くんが私を壇上から引きずり降ろそうとしてきた。

 やかましい。宰相くんのせいで私はこんなバカみたいな格好をするハメになったんだぞ!

 私は怒りの魔力ビームを放とうとしたがやはり無理があった。


 ビームは無理だったので私は自爆した。

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