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他称邪神のアイリスさん  作者: イトーちゃん
第一章 魔王軍元帥のアイリスさん
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7.異世界召喚勇者

1.星嶺神殿


「愛理! 宗一郎! 無事か!?」

「兄さん! そー君! 良かったぁ……」

「愛理、勇斗……」


 転移してきた三人は知り合いなのかな?

 私とニルバーナちゃんは広間の隅っこに並んで正座をして様子見をする事にした。

 念話魔法を繋ぐ。


『エルフのふりしてね?』

『レッサーエルフのふりを……』


 以外と毒を吐く。まあ実際に天大陸在住のエルフさんは魔力が濃密な魔大陸で産まれ育ったダークエルフさんと比べたら雑魚なのは事実ですが。


『この体色、一生このままじゃないですよね?』

『心配しなくても私なら好きに色を変えられる。ゴールデンエルフになってみる?』

『嫌です!』


「いったいここは…?」

「道場に居た筈なのに……」

「あそこで正座して俺達を見てる人に聞けばいいんじゃないか?」


 おっと秒でバレたぞ。予想だにしなかった展開なので嘘の用意が出来てない。返事に迷うような事を聞かれたらどうしよう。


「そこの人! ちょっと聞きたい事があぁぁぁぁ……ぬぅぅぉぉぉぉ……」

「ふざけてる場合か……」

「ちげえ! これ以上前に進めねーんだ!」


 神器から一定以上離れられないらしい。

 自分の担い手にする為に態々人間を呼び付けたくらいだ。

 台座から抜かずに立ち去る等許さないという凄味を感じる。

 行動を縛ってくるとかもはや呪器じゃん……いよいよ神聖なふりをするのを止めたか。


 目の前の武器を台座から引き抜けば自由に動けるようになるよ。


「えい! ……抜けた!」

「よっ! おお……大太刀じゃないか…」

「抜ける時はあんなにあっさりなんですね……」

「おぁぁぁぁ!!?」


 鏡剣に選ばれた子が忙しないな。


「今度はどうした!」

「あぁぁ頭の中に……裁け裁け裁け裁けってエンドレスな声がぁ!」


 腐っても神器が担い手を蝕むなやっ!


 私は洗脳されつつある勇者くんから鏡剣を分捕り転移魔法で太陽の中に転送した。


 ――カッ


「うわっ戻ってきた……」


 間髪入れずに勇者くんの手の中に強制帰還。

 呪いの装備じゃん。

 百年の孤独が審判の鏡剣をおかしくしてしまったのか。

 直接触ると害がありそうだったので柄に魔布を巻き付けて一応の対処をした。


 落ち着いた所で私達は互いに自己紹介をした。

 結果としてニルバーナちゃんが白くなる必要は無かったので元に戻した。


「屈辱的なレッサーカラーからの開放!」

「差し出がましい事かも知れないが……体の背面がトリコロールカラーになってるのは元からか?」

「嘘でしょ!? アイリスさま!?」


 嘘だよ。


 私は確認される前に元に戻した。

 しかしな……まさかこの世界に適した人間が居ないからって他所の世界から人を召喚するとは……

 拉致じゃねーか。

 私とてここまで悪い事はした事無いぞ。


「俺たちこれからどうすれば……」


 本当にどうしたらいいのだろうか。

 降って湧いた異世界産の勇者。既存の人間国家からしたら失っても惜しくは無いだろう。

 このまま現地人に引き渡したらあの手この手で言いくるめらて最前線に送り込まれる未来は想像に難くない。

 とりあえずそうなった時の為に恩でも売っておくか。


 地球産の拉致られ勇者御一行に天魔世界をご案内〜。


2.ウーア帝国・ノイン領


「植物が二足歩行してる……」


 トレントの一種だね。


 星嶺神殿が浮いてる湖は4つの国の国境沿いにある。

 どこかの国が独占しようとすると戦争になる為中立不可侵の領域とされている。

 特徴としては神殿に近づく程魔力が濃くなり魔物が湧きやすくなる。全然神聖ではなかった。

 天大陸のマナラインの中心だから仕方が無いのだが。


 さぁ! 戦うのだ選ばれし勇者たちよ!


 争いを知らないらしい日本人とやらの戦闘適正を見てやる事にした。

 血が出ない魔物を選ぶこの配慮よ。

 まぁ態々時空を跨いでまで選ばれた勇者だ。適正が無い筈が無い。


「それっ!」


 慈愛の聖杖に選ばれた勇者ちゃん、聖辺愛理が牽制の光弾を杖から射出。


「そらぁっ!」


 名誉の長刀に選ばれた勇者さん、柳生宗一郎が跳ねる様に接近し回転切りを浴びせる。


「止めだ!」


 呪縛の邪剣……じゃなかった。審判の鏡剣に選ばれた勇者くん、聖辺勇斗が一撃の重さを感じさせる縦一文字を決めてフィニッシュだ。

 危なげ無いにも程があるな。


「初陣の筈ですよね……これが神器の戦闘記憶……」

『どれだけ動きが良かろうと、いざとなったら大魔法で土地ごと蒸発させればいいだけだから言う程驚異にはならないよ。』


 君たち強いねー。流石は勇者に選ばれるだけの事はある!

 さて次はどうする?ナマモノ行ってみる?


「生き物相手はちょっと……」


 勇者ちゃんの中ではトレントは生き物扱いされていなかった。まぁあまり可愛くも無いし気持ちは分かる。


 ならば私と模擬戦だな。心配するな。私は不死身だから遠慮せずかかってくるがいい。

 遠慮せずかかってきたのは勇者さんだけだった。長刀が舞うように振られ、私は影から生成したロングソードで払う。

 剣舞によって魅せた事により剣速が増して行く。

 捌き切れなくなった私の首が刎ね飛ばされた。


「「「あっ」」」


 不死身でーす。


 私はシュルシュルと頭を再生させた。


「そういう事なら俺も」


 不敵な笑みを浮かべ勇者くんも攻撃に加わり、仲間外れにされたくない勇者ちゃんも加わる。


 ハッハッハ! 楽しくなってきたなぁ〜。


「はっはっは! 裁け! 悪性審判!」


 興が乗った勇者くんが権能を発動した。

 サブリミナル的に洗脳されてた可能性もある。

 権能の効果は刃の鏡に写った対象が魂に抱える悪性を肉体的ダメージに変換すると言うものだ。


「それはヤバいのでは」


 ニルバーナちゃんはヤバいと言うが私は言う程に悪い存在だろうか?

 確かに悪い事は沢山してるが良い事も相応にしてるぞ?

 つまり中庸だと言う事だ。

 しかし審判の鏡剣さんはそう思わなかった様だ。


 私の体は分子レベルで結合を剥がされ、塵一つ残さずこの世界から消滅した。

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