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他称邪神のアイリスさん  作者: イトーちゃん
第一章 魔王軍元帥のアイリスさん
6/46

6.やらない、やれないと言った事はほぼやってる

1.魔王城・アイリスの自室


「これで私は勇者ですか!?」


 違います。


 物理的に手にしただけで勇者になれるのなら誰も苦労はしないし魔王軍なんてものは必要が無かった。

 寝込みを襲って奪えば済む話になってしまう。


 ニルバーナちゃん。神器に認めて貰えないと勇者にはなれないし権能も使えないんだ。


「どうしたら認めてもらえますか!?」


 神器によって好みが違うから何とも言えないけど戦士としての実力、魔法使いとしての実力、人間性あたりかな……

 概念に作用するタイプの権能持ちは特に人間性を重視していた筈。


「人間性……魔族性じゃ駄目でしょうか……?」


 駄目だから魔王軍発足に至ったんだろうね。


「神器に認められたらそうと分かる何かってあったりします?実は使えるようなってたり「しません」そうですか……」


 神器には意思があって担い手になると思考が繋がるんだ。

 それで権能の効果、使い方が自然と理解出来るようなる。

 歴代勇者の戦闘記憶とかも刻み込まれてるから一度も剣を使った事が無い人間でもいきなり剣の達人さ。


「その理屈だと代を重ねる毎に勇者は強くなっていくんじゃ……」


 そうだよ?

 昔は今よりずっと弱かったねー。

 最近だと魔法縛りすると押し負けそうになるくらい強くなった。

 この調子で勇者の成長が続けば魔大陸22公主に匹敵する実力を得るかも知れない。

 そうなったら今の魔族一強状態も終わってこの世界の在り方が変わるかも知れないね。


「……! ……! やはり私達がなんとかしないといけませんね! このまま人間をのさばらせて置けばやがて魔大陸に災いをもたらすでしょう!」 


 その前に魔族が天大陸に災いをもたらしているのだが……突っ込むのも野暮だろう。

 そもそも者の例えとして言っただけで実際には種族値の関係でどれだけ勇者が経験を重ねようと魔公主に勝つなど不可能なのだ。


「それにしてもアイリスさまは神器とか勇者の事にお詳しいですよね? あまり魔族側にはこの手の情報は来てないって宰相さんも言ってたのに……」


 人間だった頃に勇者やってたからね。


「……は?」


 ヤッベぇ……口が滑った。


 二人だけの秘密だよ?(ニッコリ


「はい! 分かりました! ちなみに何の勇者だったんですか?」


 流石、私のニルバーナちゃんは素直で可愛い。


 畏怖の大鎌だよ。


「いふ」


 怖がられると強くなる、概念系の神器だね。


「怖がられると……なるほど。ちなみに魔族になったから勇者じゃなくなってしまったんですか?」


 そうだよ。


 私は嘘をついた。

 正確には国を滅ぼす決意をした時に資格を剥奪されたのだが私が生まれ故郷を滅ぼして魔族転生した事はトップシークレットであるのでこればかりは口が裂けても言えない。

 言ったら流石のニルバーナちゃんでも私に懐いてはくれなくなるだろう。


「あっ……!」


 お喋りをしていたら堕天の戦鎚がピカッと光って消失した。

 グレゴリオくんが目を覚ましたのだろう。


「私の神器がぁぁぁ……」


 あれはグレゴリオくんのだよ?

 いつか私がニルバーナちゃんを誂えたようにぴったりな神器の担い手にしてあげるからそう落ち込む事は無いよ。


「ほんとぉ〜ですかぁ〜!」


 任せて。可愛いニルバーナちゃんが認められないなんてあり得ないから。疾風の短剣とか属性一致できっと良く似合うよ!

 そうだ!戦鎚さんも飛んで行っちゃったし担い手未定の野良神器にでも会いに行くかい?


「そんな事が出来るんですか?」


 私は月1で行ってるよ。


 私の転移魔法は一度行った場所に行けると言う物だ。

 神器が祀られている星嶺神殿には勇者になった時に行ってるから何時でも行ける。


「お願いします!他の神器も見てみたいです!」


 そういう事になった。


2.星嶺神殿


「ふへぇ〜なんかすごい。でも星嶺神殿って呼ばれてるのに湖の浮島なんですね」


 昔はちゃんと霊峰のてっぺんにあったんだけど隕石ぶつけたら周りの陸地が吹き飛んでこんな感じになっちゃったんだよね。


「……なんでいんせきを?」


 なんかもう神器は世界の理で壊せない風になってるっぽかったから世界の外側…即ち宇宙にあるものをぶつけたらイケるかなって……駄目だったけど。神殿からして硬かったし。


 ――ピッ


 ぐあぁぁぁ!


 神殿の奥から飛来したレーザーに頭を撃ち抜かれて私は転げ回った。


「アイリスさま!? 大丈夫ですか!? というか何故ダメージを!?」


 うぐぅ……これは審判の鏡剣からの攻撃。嫌われてるみたいなんだよね。

 裁きと言う曖昧な概念を権能としているからか何故かダメージを通してくる……

 自分が生き物だって事を忘れないように定期的に食らいに来るんだ。


「それ裁かれて……なんでもありませんでした。中に入りましょう!」


 そうだね。


 神殿の奥に入ると円環状に12の台座が並んでいる広間に出た。

 残っているのはやはり3つ。


 審判の鏡剣。慈愛の聖杖。名誉の長刀だね。


「〜ッ〜ッ〜!? ふぬるぁぁー!!」


 ニルバーナちゃんは聖杖に抱きつくと無理矢理台座から引き抜こうとした。

 それが出来たら完結してしまうわ。


「無理なのはわかってましたけど……ところで名誉ってなんです?」


 魅せる戦いをすると強くなる……だったかな。


「そんなのあります?」


 実際にあるのだから仕方が無い。世界の悪ふざけだろう。

 ここにある神器共は気難しくて担い手が滅多に現れないんだよね。


 オラァッ鏡剣さんよぉ!

 いい加減人間に期待するのは止めて私の物になれぃ!

 この世界の人間にはきみの権能は使いこなせないって分かっただろう?

 私は審判の鏡剣に凄んだ。


「どーいう意味ですか?」


 傾国の神器なんだよ、こいつはね。

 こいつを手にした勇者は手軽に悪人の選別が出来るようになってしまう。人が作った法では無く世界の意思による神の裁きさ。誰にもケチを付けられない公平公正な厳選。

 勇者が善人だけの楽園を作り、楽園に入り損ねた連中が周りに群がる。

 そして勇者が居なくなった後に無垢なる善人は喰い散らかされる訳だ。

 そんな愚かな過ちを3度も繰り返している。度し難い神器だよ。


 永遠の支配者足り得ない定命の人間には扱いようの無い力だ。

 私の様な超越者にこそ相応しい。


 ――カッ


 突如3つの神器それぞれの前で魔法陣が編まれていく。

 魔力の色は…転移系?


「な……いきなり何が……?」


 輝きを失って行く魔法陣の中には人影が……不味い!


「あひぃ?!」


 私は咄嗟に脱色魔法を発動した。

 神殿にダークエルフが居るのを人間に見られるのは不味い。

 漂白されたニルバーナちゃんはホワイトエルフになった。

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