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他称邪神のアイリスさん  作者: イトーちゃん
第一章 魔王軍元帥のアイリスさん
4/46

4.1000万の命の上に私は立っている

1.魔王城・アイリスの自室・謹慎5分目






2.ウーア帝国・ゼクス領


 3日は暇になったので人間の国に観光しに来た。

 謹慎とか言ってたけど扉からは出てないから問題は無かろう。

 ウーア帝国は私が滅ぼしたイネファブル皇国の跡地に出来た国なので感慨深い物がある。

 私は外見だけならただの人間の美少女と言っても差し支えがないので堂々と入り込めてしまうのだ。

 出店で買い食いをしたり遺構見物をしたりして観光を満喫していた所、お高そうなローブに身を包んだ老魔法使い然とした男に声をかけられた。


「貴様……魔族か? ……何故こんな所に魔族が居る?」


 なんのことですか?


 私はすっとぼけた。


「それだけ邪悪な魔力を発して置いて隠し通せるとでも思ったのか……?」


 人間のくせに魔力の色を感じ取れるやつが居るとはな。

 それよりも……だ。

 私は産まれながらにして不治の病に冒されていた。

 それを知ったのは6歳の時。20歳までは生きられないだろうとの事だった。

 到底受け容れられる運命では無かった。私は天才だった。勉強、魔法、武術。同年代で私に勝てる者等居なかった。自分は選ばれた人間だと思っていた。

 いつかこの狭い城を出て広い世界を自由気ままに旅をするのだと夢に見ていた。

 私は死神の手をはたき落とす決意をした。

 以来、城では古文書や歴史書、魔法書を読み漁り国中をフィールドワークしありとあらゆる手段で延命の手立てを探った。

 結果として10年掛かりで布石を打ち、国土の真下を通っているマナラインをも利用した大規模儀式魔法により臣民全ての命と引き換えに現在の不滅の肉体と副産物として無限に均しき莫大な内包魔力を得た。

 結局何が言いたいのかと言うと私の魔力は愛する家族、臣民達の犠牲の上に成り立つ尊くて純粋な力だと言う事だ。

 この命この魔力は私だけのものではない。

 犠牲となった1000万の命を背負って私は今日も生きている。

 その……その……その魔力を侮辱するとは許せんよなぁー!


 ピシュン……許せん私は魔力ビームを老魔法使いに射出した。


「かっ……はっ……」


 体の中心に大穴が空いた。向こう側から太陽さんがこんにちは。日光が風穴を突き抜けて、いっそ幻想的とすら感じる光の射し方だ。

 人が一人死のうとも世界の美しさは変わらない…

 私は風流をして発作的な殺人を誤魔化した。


 ズシャァッ……

 一拍遅れて老魔法使いが崩れ落ちた。

 普段私が戯れてる魔族共に輪を掛けて人間が脆い生き物だということを失念していた。


「人殺しだー!」「魔族が出たぞー!」


 大通りは蜂の巣突付いた様な大騒ぎになった。

 待て、殺しはともかくなんで魔族確定なんだ? 意図的に体の形状を変えなければ私の外見は傾国の美少女だぞ?

 むーんと唸ってからハタと気付く。

 この老魔法使いは高名な人物なのでは?

 客観的に見ると民が言葉を疑わない実績を持つ魔法使いが魔族指摘をした所、本性を表した様に見えるわけだ。

 良く見ると本当に高そうなローブだ……紋章とか入ってる。

 高価そうな懐中時計や装飾品を老魔法使いの死体からむしり取り自分のコートのポケットにねじ込みながら私は納得した。


3.ゼクス領・郊外


 騎士団に囲まれて居た。


「おおっ!」「そらぁっ!」


 騎士達のランスチャージが私の体に突き刺さる。

 一瞬、体が抉れるもののすぐにシュルシュルと復元されていく。


「不死身かよっ……」


 正解なのだが早々に士気崩壊をされてもつまらないので嘘を付く事にした。


 火力がまるで足りてませんよ? その程度の攻撃で魔王軍元帥であるこのアイリス様に手傷を負わせようとは片腹痛しですわね!


「魔王軍……だと……」

「噂に聞いた事はあったが……実在したのか……」


 悲報。魔大陸のサークル活動こと魔王軍。まるで天大陸において認知されていなかった。

 当事者以外だとそんな物なのか……この国には勇者グレゴリオくんが居た筈だが……

 魔族が神器に認められる日は遠そうだぞ魔王くん。


 思考の裏側では戦闘続行中だ。まずは馬から落っことす!

 足元の影を触手状にふるい全方位を広く薙ぎ払う。

 騎士共は落馬するが態勢は崩さない。

 触手半径外に居た兵士達から雨の様に矢弾と魔法が浴びせかけられる。

 私に追撃をさせない為かな。

 当然ダメージにはならないが前が見えん。


「「……!」」


 ドスドスドスっと体に槍が突き刺さる。

 騎士共は土煙に紛れて音も出さずに接近してきていたらしい。健気な努力で大変結構。

 刺さった槍を両手で一本ずつ引き抜き左右から接近してくる騎士にそれぞれ投擲する。


「ぐあっ!」「っ……!」


 左手側の騎士に着弾し右手側の騎士は回避した。

 回避した勢いそのままに騎士は私の心臓がありそうな所に槍を突き刺した。


「すらぁっ!」


 私の顔色が変わらない事からダメージ無しと判断したか、即座に腰の剣を抜き放ち私の首を凪ぐ。

 首無し状態で活動してアンデット扱いされるのも嫌だったので剣を摘んで受け止める。


「っ!?」


 驚愕する騎士に、ニッコリ笑って差し上げてからデコピンをプレゼント。

 クルクルと独楽の様に回って吹き飛んだ。

 動きが良かったので殺してしまって無いか確認するため、ビッと触手を伸ばして手元まで引き寄せた。


「……」


 白目剥いて泡を吹いているが外傷無し。咄嗟に魔力で守りを固めたらしい。

 ほーう。かなり優秀なのでは?将来の勇者候補かもな……

 将来有望な若手精鋭騎士くんの顔に私はペッと唾をつけた。


「そこまでだ! 悪魔大元帥アイリス! わが祖国、ウーア帝国での蛮行断じて許せん! 今日こそは貴様を討つ!」


 適当な覚え方しないでくださる? ボケちゃったのお爺ちゃん。


 雑兵と適当に戯れたら帰るつもりだったのに来てしまったか。

 堕天の戦鎚、適合勇者。グレゴリオくんだ。

 辺境の他国にも駆け付けてたしフットワークが軽すぎる。

 もう還暦迎えてるんだからもう少し自分を大切にしてほしいです。


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